企業の残業削減に関する調査(従業員数10名以上300名未満の会社の経営者および従業員、男女20歳~69歳対象) 

2018年08月22日

あしたのチームは、企業の残業削減に関するインターネット調査を実施いたしました。

その結果、残業削減の取り組みをしている企業では残業がなくなることによる収入減が不満につながるおそれがあり、残業削減と生産性向上にともなった正当な人事評価制度構築が重要と考えられることが明らかになりました。
調査対象は、従業員数10名以上300名未満の会社の経営者および従業員、男女20歳~69歳。
有効回答数:200人(会社経営者:100名、従業員:100名)

調査トピックス


≪残業の実態≫

■中小企業の7割で、恒常的または時々、残業が存在している
「恒常的にしている」29.5%、「時々している」43.5%と、7割以上の企業で残業をしていることがわかった。

■月平均残業時間が「30時間以上」の回答割合は23.2%。年360時間以内の働き方改革法案に抵触のおそれあり
月平均の残業時間は「30時間~40時間未満」9.6%、「40時間~50時間未満」6.8%、「60時間以上」6.8%。
月平均30時間以上の割合が23.2%と、およそ4分の1の企業が働き方改革法案で定める「残業時間の上限 月45時間以内、年360時間以内」の基準を超えることが明らかとなった。

≪残業削減の取り組み≫

■6割以上の企業で残業削減の取り組みを行っていない
残業削減の「取り組みを行っている」38.5%と、6割以上の企業では残業削減の取り組みを行っていない。

■残業削減の取り組みに対する従業員満足度は、経営者と従業員で乖離が。
経営者は「満足していると思う」30.2%、「やや満足していると思う」55.8%を合わせて86.0%、これに対し従業員は「満足している」5.9%、「やや満足している」38.2%を合わせて44.1%と、経営者と従業員で「満足している」と感じる割合に大きな差があることがわかった。

≪残業削減と人事評価≫

■残業削減によって「収入が減った」との声が約3割
「収入は変わらない」が58.8%であるものの、残業削減により「収入が減った」従業員が29.4%と約3割に。

■残業削減と人事評価について
7割近くが「残業時間に関わりなく生産性のみで評価されるべき」と回答。個人の生産性のみでの評価を望む意見が最多に。一方、やり方を工夫して残業時間を削減したこと自体を評価に反映してほしいとの声も半数を超えた。

調査結果


1.残業の実態

① 残業の有無について
あなたの会社にお勤めの従業員は、「残業」をしていますか。(単一回答)n=100  ※経営者 n=100
あなたは、お勤めの会社で「残業」をしていますか。(単一回答)n=100  ※従業員 n=100

残業があるかどうかお聞きしたところ、全体で「恒常的にしている」29.5%、「時々している」43.5%と、7割以上の企業で残業をしていることがわかりました。経営者と従業員で残業をしているとの回答割合に大きな差はありませんでした。

② 残業時間について
あなたの「月の平均的な残業時間」をお答えください。(単一回答)n=73  ※従業員 n=73

残業を「恒常的にしている」「時々している」と回答した従業員に月の平均的な残業時間をお聞きしました。その結果、「30時間~40時間未満」9.6%、「40時間~50時間未満」6.8%、「60時間以上」6.8%で、「月平均30時間以上」の回答割合はあわせて23.2%となりました。現在国会審議中の「働き方改革法案」では残業時間の上限を「月45時間以内、年360時間以内」としています。中小企業の4分の1近くが、この基準に抵触するおそれのあることがわかりました。​​

2.残業削減の取り組みについて

① 残業削減の取り組みの有無について
あなたの会社では、残業を削減する為に、何か取り組みを行っていますか。(単一回答) n=200
※経営者 n=100、従業員 n=100

残業削減のために何か取り組みをしているかをしているかお聞きすると、全体では「取り組みを行っている」が38.5%となり、6割以上の企業では残業削減について具体的な取り組みを行っていないという結果になりました。また経営者の「取り組みを行っている」の割合が43.0%であったのに対し、従業員では34.0%と9.0ポイントの乖離がありました。

② 残業削減の取り組みの満足度について
あなたは、会社が行っている【残業削減の取組み】について、従業員は満足していると思いますか。(単一回答)
n=43 ※経営者n=43
あなたのお勤めの会社で行われている【残業削減の取組み】について、満足度をお答えください。(単一回答)
n=34 ※従業員 n=34

前問で残業削減の取り組みを行っていると回答した経営者と従業員に、取り組みについて従業員の満足度をお聞きしました。経営者は「満足していると思う」30.2%、「やや満足していると思う」55.8%を合わせて「満足していると思う」の割合が86.0%となりました。これに対し従業員は「満足している」5.9%、「やや満足している」38.2%で「満足している」の割合は合わせて44.1%となり、経営者と従業員で「満足している」と感じる割合に大きな差があることがわかりました。「満足していない」の回答理由をみると、残業代がなくなることにより収入が減ることが多く挙げられました。

【「満足していない」の回答理由】(自由回答)
・「給料が減る」(57歳男性/経営者)
・「あまり減らしてもらっても給料が減るだけ」(61歳女性/従業員)
・「受け入れられる仕事量が減り、会社全体の売り上げが伸ばせない。」(61歳男性/従業員)
・「業務内容改善がない。」(41歳男性/従業員)

③ 効果があると思う残業削減の取り組みについて
あなたの職場で実際に行っている、残業削減の取り組みをお答えください。(複数回答)n=77 
※経営者 n=43、従業員 n=34

残業削減の取り組みをしていると回答した経営者と従業員に、実際に行っている取り組みをお聞きしました。全体での回答割合の多い順に、1位「業務の平準化」67.5%、2位「ノー残業デーの設定」39.0%、3位「フレックスタイムの導入」26.0%となりました。

あなたが実際に効果的だと思う、残業削減の取り組みをお答えください。(複数回答)n=77
※経営者 n=43、従業員 n=34

実際に残業削減に効果的だと思う取り組みは、全体では1位「業務の平準化」50.6%、2位「ノー残業デーの設定」33.8%、3位「フレックスタイムの導入」19.5%となりました。現在行っている取り組みと同じ順位となっており、現在の取り組みで効果が出ていると思う方が多いのでしょうか。一方、経営者と従業員で、効果があると思う取り組みの順位には違いがありました。経営者は1位「業務の平準化」62.8%、2位「ノー残業デーの設定」30.2%、3位「フレックスタイムの導入」20.9%ですが、従業員は1位「ノー残業デーの設定」38.2%、2位「業務の平準化」35.3%、3位「長時間の残業を規制するルールを新たに作る」20.6%となっています。従業員は実際に残業時間を減らすためには、ルール化して半ば強制的に帰宅するような仕組みが効果的だと思うのかもしれません。

3.残業削減の取り組みと人事評価について

① 残業削減の取り組みと収入の変化について
あなたは残業削減の取り組みにより、収入に変化はありましたか。(単一回答)n=34 ※従業員 n=34

残業削減の取り組みを行っている企業の従業員に、収入に変化があったか聞いたところ、最も回答割合が多いのは「収入は変わらない」58.8%となりました。しかし、残業削減により「収入が減った」という方が29.4%と約3割いることがわかりました。残業削減の取り組みにより業務効率を改善して生産性が上がっているにも関わらず、単純に残業代がないために収入が減ってしまっているとしたら、正当な評価とは言えません。残業削減に取り組むと同時に、実態に合った人事評価制度の見直しが企業の課題となるでしょう。

② 残業削減の取り組みと人事評価について
残業削減について、あなたは、会社からどのような評価がされるべきだと思いますか。
【残業削減に応じて評価されるべき】【残業時間に関わりなく生産性のみで評価されるべき】【長時間労働をしている従業員が評価されるべき】のそれぞれについてあなたのお考えにあてはまるものをお答えください。 (単一回答)
 n=34 ※従業員 n=34

残業削減の取り組みを行っている企業の従業員に、人事評価において残業削減がどのように評価されるべきだと思うかお聞きしました。ご自身の考えに「あてはまる」「ややあてはまる」の合計割合で見ると、最も多いのは“残業時間の増減や多い少ないは問わず、個人の生産性のみで評価されるべき”とする「残業時間に関わりなく生産性のみで評価されるべき」合計67.6%となりました。次いで、“残業削減したことそのものが評価されるべき”とする「残業削減に応じて評価されるべき」合計52.9%が多くなりました。前問では残業削減の取り組みにより収入が減った方もいましたが、残業削減に取り組む前と比べて、短時間でも業務量や質が変わらない(=生産性が上がっている)とすれば、仕事への取り組み方の工夫やその努力を認めて人事評価に反映してほしいと望む従業員が多いことがわかりました。“残業を含め、長時間働いていることが評価されるべき”とする「長時間労働をしている従業員が評価されるべき」は合計35.3%と、働き方改革の流れの中で、生産性向上をともなわない長時間労働が評価に値すると考える方は少数派であることがわかりました。

4.企業の業績と残業削減の取り組みについて

あなたの会社の直近の業績をお答えください。(単一回答)n=200 ※経営者 n=100、従業員 n=100
あなたの会社では残業削減の取り組みを行っていますか。(単一回答)n=200 ※経営者 n=100、従業員 n=100

直近の業績(予想含む)別に残業削減の取り組みをしているかをお聞きしました。その結果「増益(増益予想)」と回答した企業の6割以上が「取り組みを行っている」と回答し、「横ばい(横ばい予想)」、「減益(減益予想)」の企業よりも残業削減に取り組んでいる割合が多いことがわかりました。業績が伸びている企業ではすでに残業削減に取り組んでいるようです。一方で、現在日本企業全体では、これまで「残業代」として支払われていたが、残業削減の取り組みが始まって以降支払われなくなった人件費予算が8.5兆円あるとされています。
本調査における設問では残業削減により「収入が減った」という従業員が約3割おり、また従業員の残業削減と人事評価に対する考えとして「生産性で評価されるべき」との回答が最多となりました。
残業削減と生産性向上を前提とした人事評価制度構築の対応が遅れると、従業員エンゲージメントは低下してしまいます。「働き方改革」は「人事評価制度改革」でもあるのです。

調査概要


調査方法:インターネット調査
調査対象:従業員数10名以上300名未満の会社の経営者および従業員、男女20歳~69歳を対象に実施
有効回答数:200人(会社経営者:100名、従業員:100名)
調査実施日:2018年5月15日(火)~2018年5月18日(金)

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