パンデミック(新型コロナウイルス対策)と働き方調査 

2020年04月20日

NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、東京都など7都府県に安倍総理大臣が法律に基づく「緊急事態宣言」を発令した4月7日からの4日間で「緊急調査:パンデミック(新型コロナウイルス対策)と働き方に関する調査」を実施しました。

本調査では、企業の新型コロナウイルス対策や業務への影響、テレワーク/リモートワークへの取り組み状況やその課題を確認しています。続いて、感染拡大を止めるために「STAY HOME」が要請されている中で、ライフスタイルの変化や現在の不安・心配・悩みについて調査を行っています。

調査結果


1. 新型コロナウイルス対策と業務への影響

1-1. 新型コロナウイルス対策

◆ 新型コロナウイルス対策として、8 割以上の企業が衛生対策、6 割以上が体調不良時の対応方法の周知を行っている。一方で、完全在宅勤務を実施している企業は約1割であり、時差出勤の許可や奨励を行っている企業は 3 分の 1 程度である。

手洗い・うがい等の衛生対策やマスク着用等の周知は 80.8%の企業で、発熱やせきなどの体調不良時の対応方法は 60.8%の企業で周知している。
一方で、時差出勤の許可や奨励は 34.7%、完全在宅勤務を実施している企業は 10.1%にとどまっており、特別な取り組みを行っていない企業は 10.0%という結果となっている。

1-2. 業務への影響

◆ 約半数の企業で会議・業務上のイベントや国内外の出張の中止・延期、約4割の企業で歓送迎会等の中止・延期を行っている。2020年 4月の時点で約3割の企業が「売上の減少」があると回答している一方で、特に業務への影響がないと回答している企業は約 15%である。

48.5%の企業で会議や業務上のイベントの中止・延期、47.3%で国内外の出張の中止・延期や43.9%で歓送迎会等の中止・延期を行うなど、業務への影響があると回答している。
2020 年 4 月の時点では、30.7%の企業で売上の減少がみられる一方で、売上が増加している企業は、1.0%という結果であり、特に業務上の影響はないと回答している企業は 14.7%である。

2. テレワーク/リモートワークへの取り組み状況

2-1. 働き方改革とテレワーク/リモートワーク取り組み状況

◆ 2020 年 4 月の時点で全体の半数以上の企業が働き方改革に取り組んでいる一方で、テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業は約 4 割である。2020 年 2 月以降は、毎月 6.5%以上取り組み企業が増加し、2020 年 1 月までと比べ、2020 年 4 月の時点で 2 倍以上の企業がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる結果となった。

全体で2018年以前からテレワーク/リモートワークを開始している企業は13.0%、2019年4月~2020年 1 月で開始した企業は 5.4%であり、あわせて 18.4%だったのに対して、2020 年 2 月以降は毎月6.5%以上増加。2020年4月時点で、2020年1月まで(18.4%)と比べ、2倍以上の企業(39.1%)が取り組んでいる結果となっている。
2020 年 4 月時点で、1,000 人以上の企業で 61.7%がテレワーク/リモートワークを開始している一方で、100 人以上 1,000 人未満の企業では 35.1%、100 人未満では 22.2%にとどまっている。ただし、100人未満の企業は、2月以降の増加により4月の時点で1月までと比べると3倍以上の企業がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる。

◆ 政府が 2020 年 4 月 7 日に緊急事態宣言を発令した 7 都府県をみると、東京都に居住する人が勤務する企業は約6割がテレワーク/リモートワークに取り組み、神奈川県では約半数、埼玉県、千葉県や大阪府は 4 割超であり、全体平均を上回っている。

7 都府県に居住している人が勤務している企業をみると、東京都 57.9%、神奈川県 50.8%、埼玉県42.8%、千葉県43.6%、大阪府42.3%、兵庫県32.2%、福岡県24.2%がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる結果となっている。
いずれも、2020 年 1 月までと比べると 4 月の時点では 2 倍以上がテレワーク/リモートワークに取り組んでいる結果となり、全国で急速にテレワーク/リモートワークが進んでいると言える。

2-2. テレワーク/リモートワークの利用頻度

◆ 2020 年 1 月までの利用頻度と 2020 年 4 月の利用頻度を比べると、約 12倍の従業員が「ほぼ毎日」テレワーク/リモートワークを利用している。

2020 年 1 月までは会社としてテレワーク/リモートワークに取り組んでいても、半数以上の従業員が「ほとんど利用していない」状況であったが、2 月以降、毎月「ほぼ毎日」利用する従業員が増加。2020年 1 月までの利用頻度と 2020 年 4 月の利用頻度を比べると、約 12 倍の従業員が「ほぼ毎日」テレワーク/リモートワークを利用している結果となっている。
4 月の時点で「ほぼ毎日」テレワーク/リモートワークを利用している人は 31.6%、週に 3-4 回以上利用している人は 19.6%であり、あわせて週に 3-4 回以上利用している人は 51.2%である。月に 1-2 回は6.6%、ほとんどなかった 25.2%であり、あわせて月 1-2 回以下は 31.8%である。

◆ 2020 年 4 月時点で、週 3-4 回以上のテレワーク/リモートワークを利用している人は全体で20.0%、東京都に居住している人では 36.5%である。

2020 年 4 月の時点で週 3-4 回以上テレワーク/リモートワークを利用している人は、取り組んでいる企業に勤務する人(39.1%)のうち 51.2%である。全体でみると、20.0%(39.1%×51.2%)が 2020 年 4月の時点で週 3-4 回以上テレワーク/リモートワークを利用している結果となっている。
東京都の場合をみると、2020 年 4 月の時点で週 3-4 回以上テレワーク/リモートワークを利用している人は、取り組んでいる企業に勤務する人(57.9%)のうち 63.1%である。したがって、東京都に居住する人の36.5%(57.9%×63.1%)が2020年4月の時点で週3-4回以上テレワーク/リモートワークを利用している結果となっている。

2-3.テレワーク/リモートワークの利用場所

テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員がテレワーク/リモートワークを実施する場所としては自宅が多いものの、2020年4月の時点でも専用型・共用型のサテライトオフィスやカフェを利用する人が一定数存在し、1 割超が全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない。

テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員がテレワーク/リモートワークを実施する場所は、自宅で実施している人が 2020年1月までの 162名から 397名と 2倍以上になっているものの、4月時点においても専用型・共用型のサテライトオフィス、カフェや知人・友人の家を利用する人が一定数存在している。なお、これらの 5 ヶ所以外を利用している人はゼロ人であった。
全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない人は、54 人(テレワーク/リモートワークを実施している人(453 人)の 11.9%)である。

◆ 2020年4月時点で、全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない理由として、自宅で全く仕事をしていない人の約3割が自宅で仕事をする習慣がないこと、4分の1が自宅に仕事をするスペースがないことを挙げている。

2020 年 4 月時点で、全く自宅でテレワーク/リモートワークを行っていない最も多い理由は、「特に理由はないが、自宅で仕事をする習慣がない」(30.4%)であり、続いて「自宅に仕事をするスペースがない」(26.8%)が挙がっている。他の理由としては、「騒音や子どもの声などがあり、集中できない」(17.9%)や「自宅にWi-Fi環境がない」(14.3%)などの環境面での理由が挙がっている。
「その他」の理由の中には、「仕事は会社でするもの」という回答もあった。

2-4.テレワーク/リモートワークの利用ツール

◆ データやソフトウェアに外部からアクセスするツール、コミュニケーションツールやオンライン会議ツールの利用は、2020 年 4 月時点で、同年 1 月までと比べると約 2 倍利用されている。

データやソフトウェアに外部からアクセスするツール(リモートデスクトップ方式、クラウドアプリ方式、VPN 方式等)、電子メール以外のテキスト(文章)によるコミュニケーションツール(ビジネスチャット、LINE、Slack 等)やオンライン会議ツールの利用は、毎月増加しており、2020 年 1 月までと比べると 4 月時点では約 2 倍となっている。

◆ オンライン会議ツールをみると、テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員の約 4割が Skype for Business(Teams)、3 割超で Zoom が 4 月時点で利用されている。

テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員が 4 月時点で利用しているオンライン会議ツールは、39.1%が Skype for Business(Teams)、31.7%が Zoom であった。
次に、Webex Meeting(19.3%)や Google ハングアウト(Meet)(17.8%)が続いている。

2-5.テレワーク/リモートワークの課題

◆ テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の 4 割超の人が「自分で管理することの難しさ」をその課題として挙げている。次いで、上司・部下・同僚とのコミュニケーションなどの「従来とは違う仕事のやり方への戸惑い」が課題として挙がっている。「特に課題や難しいことはない」と回答した人はわずか 6.6%である。

最も多くの人が挙げているテレワーク/リモートワークの課題は、「自分で自分の時間を管理すること」(42.8%)である。続いて、「仕事とプライベートの区別がつかないこと」(40.4%)や「運動不足になること」(38.4%)が挙がり、「自分で管理することの難しさ」が課題の上位に挙がっている。
次に、「上司・部下・同僚とコミュニケーションがとりにくいこと」(37.7%)、「テレワーク/リモートワークでできる仕事には限界があること」(34.2%)、「職場の様子がわからないこと」(31.6%)や「社内の情報が確認しづらいこと」(30.0%)であり、「従来とは違う仕事のやり方への戸惑い」が課題として挙がっている。
一方で、「特に課題や難しいことはない」と回答した人はわずか 6.6%である。

2-6. テレワーク/リモートワークの継続意向

◆ 「通勤時間や移動時間を削減できること」を理由に、新型コロナウイルスの終息後もテレワーク/リモートワークを利用している人の 52.8%が継続したいと考えている。一方で、「できる仕事に限界があること」や「コミュニケーションのとりにくさ」を理由に、34.2%の人が継続したくないと考えている。

テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員(39.1%)のうち、「現在と同じ頻度で利用したい」(23.0%)と「利用頻度は増やしていきたい」(29.8%)をあわせて、「継続したい」人は 52.8%である。
「利用頻度は減らしたい」(25.8%)と「継続したくない」(34.2%)をあわせて、「継続したくない」人は 34.2%である。
「継続したい」理由は、継続したい人の79.9%が「通勤時間や移動時間を削減できること」を挙げている。続いて、「自由に使える時間が増える」(30.1%)、 「業務効率が高まる」(29.3%) 「オフィスで仕事をするよりも集中できる」(28.5%)がある。
「継続したくない」理由は、テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員(39.1%)のうち、40.6%が「テレワーク/リモートワークでできる仕事には限界があること」、40.0%が「上司・部下・同僚とコミュニケーションがとりにくいこと」を挙げている。続いて、「仕事とプライベートの区別がつかないこと」(38.7%)、「社内の情報が確認しづらいこと」(34.8%)、「運動不足になること」(33.5%)や「職場の様子がわからない」(31.6%)が挙がっている。

2-7.テレワーク/リモートワークの利用意向

◆ テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員の約 3 分の 2 の人が、「テレワーク/リモートワークで実施できる業務がない」と考えている。経営トップ層の導入への理解がないと考える人は 1 割超である。

テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員の 65.9%が、「テレワーク/リモートワークで実施できる業務がない」と考えている。次いで、ICT環境(18.0%)、労務管理・人事制度等(15.0%)の環境が整備されていないことや紙ベースの業務で行っていること(11.3%)を挙げている。経営トップ層の導入への理解のなさを挙げる人は、11.3%である

◆ テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員のうち、約 3 分の1の人が「利用してみたい」と回答している。

テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員のうち、「ぜひ利用したいと思う」(15.6%)と「少し利用してみたいと思う」(19.2%)人をあわせた「利用してみたい」人は、34.8%である。
同様に、「あまり利用したいと思わない」(10.3%)と「少し利用してみたいと思う」(14.6%)をあわせた「利用したくない」人は、24.9%である。

3. ライフスタイルの変化と現在の不安・心配・悩み

3-1. ライフスタイルの変化

◆ 2月以降のライフスタイルの変化をみると、4割以上の人が「職場での飲み会」、3割以上の人が「友人や恋人と一緒に過ごす時間」や「家族と一緒に過ごす時間」に変化があったと回答している。
「職場での飲み会」が減っている人は、コロナ終息後は減ったままのライフスタイルが好ましいとしたと思う人が 2 割超であり、「家族と一緒に過ごす時間」ではコロナ終息後も増えたままのライフスタイルが好ましい思う人は 16%程度である。

2月以降のライフスタイルの変化をみると、40%以上の人が「職場での飲み会」、30%以上で「友人や恋人と一緒に過ごす時間」や「家族と一緒に過ごす時間」の変化があり、20%程度の変化には、「施設利用や集合することによって行うスポーツをする時間」、「TV や YouTube 等の視聴時間」「読書する時間」や「睡眠時間」が挙がっている。特に、「職場での飲み会」が減っている人は 39.1%であり、減ったままのライフスタイルが好ましいとしたと思う人は 22.3%、元の時間程度の増やしたいと思う人は 16.8%である。一方で、「家族と一緒に過ごす時間」が増えている人は 22.5%であり、増えたままのライフスタイルが好ましい思う人は 16.8%という結果になっている。
「施設利用や集合することによって行うスポーツをする時間」は、17.4%の人がコロナ終息後は元の時間程度に増やしたいと思っている。

3-2. 現在の不安・心配・悩み

◆ 現在の不安・心配・悩みについて、約4分の3の人が「この状況がいつまで続くかわからない漫然とした不安」を感じており、半数以上の人が「感染への恐怖」を感じている。「特に不安・心配・悩みはない」と回答した人はわずか 7.4%である。

現在の不安・心配・悩みの上位 2 つの回答は、「この状況がいつまで続くかわからない漫然とした不安がある」(75.6%)、「感染への恐怖」(53.5%)である。続いて、「金融危機等の世界恐慌への不安」(27.7%)、「自分自身のストレスの蓄積」(26.4%)や「周囲のストレスの蓄積」(21.8%)となっている。
本調査は、従業員規模 10 名以上、経営者・役員を含む雇用者(正社員)、20 歳以上のホワイトカラー職種を対象としているが、20.4%の人が「自分の給与カットが心配」、17.2%の人が「自分の会社の事業継続が心配」といった回答結果となっている。
「特に不安・心配・悩みはない」と回答した人は、わずか 7.4%である。

4. まとめ

本調査は、従業員規模10 名以上、経営者・役員を含む雇用者(正社員)、20 歳以上のホワイトカラー職種を対象としており、他の職種と比べてテレワーク/リモートワークに取り組みやすいと考えられるが、4 月の時点で週3~4 回以上実施している人は全国平均で20.0%、東京都に居住する人でも 36.5%にとどまっている。それでも、2020 年 2 月以降は、全国平均で毎月 6.5%以上取り組み企業が増加し、東京都に居住する人が勤務する企業では4 月からの開始は1 割を超えている。現在取り組んでいない企業の3 割以上の従業員も「利用してみたい」と回答しているため、今後一層の拡大が見込める。

取り組んでいる企業も取り組んでいない企業も「テレワーク/リモートワークで実施できる業務に限界がある」ことを課題に挙げているが、早期コロナ終息に向けた「人と人との接触を8 割削減」するためには、テレワーク/リモートワークで業務が遂行できるように工夫することが、企業と従業員一人ひとりにより一層求められている。また、既存のテレワーク/リモートワークの取り組み企業の利用頻度を高め、必ず自宅で仕事をするように企業側からの周知やサポートも必要かもしれない。出勤が必要な場合は、時差通勤の許可や奨励も「人と人との接触を8 割削減」への企業側でできる有効な措置と言えるのではないか。

テレワーク/リモートワークで実施できない業務は、「中止・延期」などの経営者や職場リーダの英断と、サービスの提供を受ける発注者側の理解が最重要な観点と思われる。思い切った「中止・延期」は、今後の業務効率化につながる可能性もあり、決してマイナスの側面ばかりではないと筆者は考える。

2 月以降のライフスタイルの変化をみても、コロナによる変化が悪いことばかりではない。「職場の飲み会」や「家族と過ごす時間」などのように、これまでよりも好ましい時間を過ごしている人もいる。一方で、「緊急事態宣言」発令時の調査において、4 分の3 以上の人が漫然とした不安を抱えている現状から、長期的な視点では、感染リスクや経済損失に加え、今後一層、メンタルケアの重要性も本調査では示唆している。

調査概要


■調査対象: NTT コム リサーチ クローズド調査
■調査方法: 非公開型インターネットアンケート
■調査期間: 2020 年 4 月7日~2020 年 4 月 10 日
■有効回答者数:1,158 人
■標本設計: 従業員規模 10 名以上、経営者・役員を含む雇用者(正社員)、20 歳以上のホワイトカラー職種を対象。なお、男女は均等に割り付け、役職(*2)も一般社員と管理職も均等割り付け。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[NTTデータ経営研究所]
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