2019年度の業績見通しに関する企業の意識調査 

2019年04月11日

帝国データバンクは、2019年度の業績見通しに関する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2019年3月調査とともに行った。

■調査期間は2019年3月15日~31日、調査対象は全国2万3,181社で、有効回答企業数は9,712社(回答率41.9%)。なお、業績見通しに関する調査は2009年3月以降、毎年実施し、今回で11回目

調査結果サマリー


  • 1 2019年度の業績見通しを「増収増益」とする企業は24.8%となり、2018年度見通しから4.5ポイント減少した。一方、「減収減益」は同5.1ポイント増加しており、2019年度の業績はやや厳しい見方となっている
  • 2 2019年度業績見通しの上振れ材料は「個人消費の回復」が27.0%で最高となり、8年連続で上振れ要因のトップ。以下、「消費税率10%への引き上げを控えた駆け込み需要」「公共事業の増加」が続いた。一方、下振れ材料は、前回調査同様「人手不足の深刻化」が39.0%でトップとなり、「中国経済の悪化」「個人消費の一段の低迷」が続いた。人手不足と併せて、海外経済の減速に関しても危惧している様子がうかがえた
  • 3 安倍政権の経済政策(アベノミクス)の成果に対する企業の評価は、100点満点中61.8点。6年余りにわたるアベノミクスについて、企業は60点以上の評価を与えているものの、2年連続で評価を下げており、厳しい見方が強まっている

調査結果


1. 企業の 24.8%が「増収増益」の見通し、前回調査から 4.5 ポイント減少

2019 年度(2019 年 4 月決算~2020 年 3 月決算)の業績見通し(売上高および経常利益)について尋ねたところ、「増収増益(見込み)」と回答した企業は 24.8%となり、前回調査(2018 年 3 月)の 2018 年度見通しから 4.5 ポイント減少した。一方、「減収減益(見込み)」は 5.1 ポイント増加した。「増収増益」の減少幅より「減収減益」の増加幅の方が大きくなっているほか、前回調査より「増収」(前年比 5.5 ポイント減)(「増収」は、「増収増益」「増収減益」「増収だが利益は前年度並み」の合計)および「増益」(同 4.2 ポイント減)(「増益」は、「増収増益」「減収増益」「増益だ
が売り上げは前年度並み」の合計)を見込む企業が減少しているなど、2019 年度の業績はやや厳しい見方となっている。他方、2018 年度実績見込みも「増収増益」が 29.9%、「減収減益」が 22.5%となり、前回調査の 2017 年度実績見込みより悪化した。

2019 年度の業績見通しを従業員数別にみると、1,000 人超の企業では 39.2%(前年 46.6%)が「増収増益」を見込んでいる一方、5 人以下の企業では 22.7%(同 24.8%)となった。企業の業績見通しにおける大企業と中小企業の規模間格差は前回調査より縮小しているが、2019 年度の業績は中小企業だけでなく大企業においても鈍化が進むと予想される。

2. 「人手不足の深刻化」が下振れ材料のトップ、海外経済への懸念も高まる

2019 年度の業績見通しを上振れさせる材料を尋ねたところ、「個人消費の回復」が 27.0%で最高となった。8 年連続で上振れ材料のトップとなったものの、前回調査より 6.0 ポイント減少した。次いで、「消費税率 10%への引き上げを控えた駆け込み需要」「公共事業の増加」「東京五輪需要の拡大」「人手不足の緩和」が続いている。企業からも「増税前の駆け込み需要はかなり期待されるため、自社の体制作りの仕上がりによって売り上げが大きく変わる」(給排水・衛生設備工事、愛知県)といった意見があるように、2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げ前の駆け込み需要などを上振れ材料として考える企業が多数みられた。

一方、2019 年度の業績見通しを下振れさせる材料は、「人手不足の深刻化」が 39.0%で最高となった。前回調査とほぼ同水準の結果となり、引き続き労働力の確保・維持に強い危機感を持っている様子がうかがえる。次いで、「中国経済の悪化」「個人消費の一段の低迷」「消費税率引き上げによる消費低迷」「米国経済の悪化」が続いた。また、「中国経済の悪化」(14.9 ポイント増)、「欧州経済の悪化」(5.3 ポイント増)、「米国経済の悪化」(5.0 ポイント増)となるなど、前回調査より 5 ポイント以上増加した下振れ材料はすべて海外経済に関連していた。企業からは、「消費税増税の影響、中国経済悪化により内需・外需とも弱くなると推測」(貸事務所、東京都)との意見があがっており、人手不足と併せて、海外経済の減速や消費税率引き上げ後の消費低迷を危惧している様子が表れた。

3. アベノミクスへの評価は平均 61.8 点、1 年前より 0.6 ポイント低下

安倍政権による経済政策(アベノミクス)について、現在までのアベノミクスの成果を 100 点満点で評価した場合、何点と評価するか尋ねたところ、1 年前より 0.6 ポイント評価を下げ、平均 61.8 点となった。6 年余りにわたるアベノミクスに対して、企業は 60 点以上の評価をつけているものの、2 年連続で点数は低下しており、徐々に厳しい見方を強めている様子がうかがえた。

企業からは、「バブル崩壊後、実態の有無にかかわらず、“景気の高揚感”を感じさせた」(ビルメンテナンス、広島県、100 点)や「安倍政権に代わってから、今日に至るまで確実に利益を出しやすくなった。全業界の人手不足がその証明だと思う」(古紙卸売、福岡県、99 点)、「アベノミクスで設備投資し、増収増益につなげた」(鍛工品製造、富山県、95 点)といった声があがった。また、高い評価をしつつも、「企業は利益を上げているが、消費者の購入意欲は低いまま」(土地売買、広島県、75 点)との声にあるように、個人消費の回復まで実感を得ていない企業もみられた。

アベノミクスに対する評価は、依然として企業規模や地域による差が表れている。「中小企業にとっては景気が良いとは思えない。求人難であり、一人当たりの仕事量が増えている」(生ゴム・ゴム製品卸売、東京都、25 点)や「恩恵は大企業のみ。中小企業は雇用悪化、販売価格の抑制、仕入単価の上昇に直面している。受注量(売上高)は増えるが、利益は減少している」(一般食堂、群馬県、10 点)など、中小企業や地方においてアベノミクスの効果が実感できないという指摘もみられた。
企業によるアベノミクスへの評価は 60 点以上を維持しているが、「90 点以上」「80~89 点」「70~79 点」の高得点層が前年比で低下しており、評価は平均点付近に集
中する傾向がみられた。

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[帝国データバンク]
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