国内のワークスタイル変革ソリューション市場 

2018年10月09日

矢野経済研究所は、国内のワークスタイル変革ソリューション市場を調査し、製品カテゴリー別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<ワークスタイル変革ソリューション市場とは>
働き方改革においては、法整備や社会インフラの充実のほか、ICTの活用が重要な役割を担う。本調査では、働き方改革を目的として業務効率化・生産性向上を実現するICT製品・サービス・ソリューションをワークスタイル変革ソリューションと定義した。
また、ワークスタイル変革ソリューション市場規模は、1.環境(ファシリティ・設備)、2.テレワーク・モバイルワーク、3.業務サポート、4.コミュニケーション・情報共有、5.文書電子化・ペーパレス化、6.人事・労務・総務・健康経営、7.業種特化型および個別ソリューションの7領域のICT製品・サービス・ソリューションを対象とし、事業者売上高ベースで算出した。

<市場に含まれる商品・サービス>
1.フリーアドレス構築、2.サウンドマスキングシステム・オフィス向けBGMサービス、3.電子掲示板(デジタルサイネージ)、4.シェアオフィス・コワーキングスペース、5.シンクライアント・デスクトップ仮想化・クライアント仮想化(VDI : Virtual Desktop Infrastructure)、6.BYOD(Bring Your Own Device)、7.MDM(Mobile Device Management)、8.CRM / SFA、9.名刺管理システム、10.ワークフロー、11.RPA、12.経費精算システム、13.ビデオ・Web会議システム、14.グループウェア・社内ポータル 、15.社内SNS・ビジネスチャット、16.在席管理システム、17.クラウドPBX、18.文書保管・保存・文書電子化・デジタル化・ファイル共有サービス、19.複合機連携サービス、20.電子認証サービス・電子証明書、21.労務可視化・残業時間抑止、22.EAP、23.タレントマネジメント、24.健康指導・健康支援、25.従業員エンゲージメント強化、26.オフィス向けBtoEサービス、27.現場管理運営、28.来客対応、29.VR/3D見学システム、30.トイレ空き室管理システムなど

1.市場概況

 2017年度の国内ワークスタイル変革ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)を前年度比5.0%増の4,170億円と推計した。2017年の動向としては、3月の「働き方改革実行計画」の閣議決定に加え、長時間残業による労災問題が社会的に注目を集め、長時間残業抑止ツールや勤怠・労務管理システムの導入及び入れ替えが広がった。

 また、7月には政府主管で「テレワーク・デイ」第一回目が実施され、企業におけるテレワーク浸透が推進された。テレワークはセキュリティ・マネジメント面での課題があるため、制度およびシステム導入は一部企業に留まってはいるが、テレワーク関連商材(デスクトップ仮想化、在席管理システム、Web会議システム、モバイル端末管理など)の普及が進んだ。しかし、導入はしたものの利用率が高まっていないという課題があり、今後はテレワーク利用における定着化や遠隔コミュニケーション強化、データ・ナレッジ共有を含めた支援サービスの需要が高まると考える。

 加えて、大手企業では、社内で活用していた各種のコミュニケーションや情報共有のためのツールやOffice製品を、統合型情報共有クラウドサービスに集約するといった動きがみられた。フリーアドレス制オフィスの導入を行った企業では、各種ICT設備投資のほか、電話を固定電話からモバイル回線に一部置き換え、内線電話をスマートフォンで受信可能にするなど、物理的なオフィスの変革に合わせたIT投資が始まっている。また、これまではIT投資に様子見であった企業でも、比較的初期投資を抑えることができる、Web会議システム・クラウド型グループウェア・名刺管理システム・タスク管理機能つきビジネスチャットツールなどの導入が進んだ。

2.注目トピック

シェアオフィス・コワーキングスペース
 柔軟な働き方の実現を目的に、テレワーク・モバイルワークが浸透する中で、シェアオフィス・コワーキングスペースへの新たな需要が高まっている。シェアオフィス・コワーキングスペースとは、その企業で働く人だけが使用するような従来のオフィスではなく、様々な企業・業種の従業員や個人利用者が執務スペースを共有する、という新しい形のオフィスを指す。

 シェアオフィス・コワーキングスペースでは、複数の会社の従業員や個人利用者が、多人数で一つの空間を共有し、フリーアドレス制の執務スペースを提供される。シェアオフィス・コワーキングスペースを利用する利点として、①通勤・移動時間の短縮、②移動交通費の削減、③社外リソースとの協働、などが挙げられる。シェアオフィス・コワーキングスペースの間に明確な定義はないが、シェアオフィスは「仕事の作業場」、コワーキングスペースは「利用者同士のコミュニケーションとコミュニティ形成」が活用の主目的とされる。コワーキングスペースでは、利用者同士のコミュニケーションを活性化させるようなイベントや支援サービスが提供されている。

 過去、シェアオフィス・コワーキングスペースの利用者は個人事業者や小規模事業所、スタートアップ企業など、オフィス投資の予算が小額の場合や、限定された期間利用のケースが多かった。しかし近年、働き方の多様化に伴う「サードプレイスオフィス」に対する需要、グローバルでの市場競争に対抗するための協働・協創ニーズへの高まりを背景に、大手・中堅企業の法人契約が進んでいる。こういった企業にとって、シェアオフィス・コワーキングスペースの利用は一時的措置ではなく、経営戦略の一つとして、長期利用を選択している。

 このような背景から、数年前までは、比較的、隙間産業と見られる傾向のあったシェアオフィス・コワーキングスペース市場へ、この1~2年で多数の大手事業者が参入している。今後、東京では今後数年にわたり、不動産市場でグレードが高いオフィスの大量供給を控えており、これとともに空室率の上昇が予見される。不動産事業者によるサードプレイスオフィス創出の取り組みは、ユーザー企業の需要の高まりや、政府による働き方改革の推進といった要因が追い風となり、一層進んでいくだろう。

3.将来展望

 2018年度以降、働き方改革に向けた投資を本格化する企業が増加し、初期投資が膨らみやすいファシリティ関連ソリューション、後回しになりがちであったセキュリティ関連ソリューション、各種システム・機能の統合を目的としたインテグレーション案件が増加する見通しである。このほか、ホワイトカラー職種の定型業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)は、認知度が高まった2017年度は導入には様子見の企業が大半であったものの、2018年度には導入に踏み込む企業が増加する見込みである。

 以上のようなことから、当該市場は今後も堅調に拡大していき、2016年度から2022年度までの年平均成長率(CAGR)は6.0%で推移し、2022年度の国内ワークスタイル変革ソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は5,618億4千万円になると予測する。

調査概要


調査期間: 2018年1月~8月
調査対象: ワークスタイル変革関連ソリューション提供事業者・関連団体
調査方法: 当社専門研究員による直接面談、文献調査その他併用

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[矢野経済研究所]
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