2020年の地域医療連携システムの市場規模予測 

2016年10月27日
市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは、地域医療連携システムの現状と今後の方向性を調査し、その結果をまとめましたのでお知らせいたします。

少子高齢化や、医療の高度化多様化、患者ニーズの変化、疾病構造の変化(急性疾患から慢性疾患へ)等により、これまでのように、ひとつの病院で全てを完結する「病院完結型医療」で運営していくことが困難となっています。また、医療機関の機能分化を推進する行政施策にともない、各病院が個々の特性を発揮し、地域で病院・診療所・介護施設などと連携して同じ患者の診療・治療を行う「地域完結型医療」への転換が求められ、医療機関間の連携や情報共有が必須課題となっています。

政府は2018年度までを目標に、地域医療連携ネットワークの全国各地への普及を目指しており、加えて、情報化の推進、診療報酬加算、電子処方せんの解禁等、普及を促す政策を打ち出しています。そのため今後も新設のネットワークや各ネットワークにおける参加施設数の増加が見込まれます。

本調査は、地域医療連携調査シリーズ第4弾として、医療連携および医療・介護連携に関する行政施策や、全国の各地域医療連携および医療・介護連携ネットワークの構築状況など、最新の市場環境を整理するとともに、関連企業にヒアリング調査を実施して、市場動向、将来展望を考察しました。

【調査結果のポイント】

地域医療システムとは
3 次医療圏や2 次医療圏などの圏域において、地域中核病院、小規模病院、診療所(医科・歯科)、薬局などの複数の医療機関が、患者の同意のもとに診療情報を共有・相互参照し、患者に対して地域で連携して継続的に適切な医療を提供するためのつながりを地域医療連携という。
こうした人的ネットワークをベースに、電子化された診療情報や画像情報等をセキュアなネットワーク回線を介して共有・参照する仕組みを地域医療連携システムもしくは地域医療情報ネットワークシステムという。

本予測の範囲
地域医療連携システムの範囲を、医療機関間および医療機関と介護施設間の情報共有を支援するシステムとし、在宅医療や在宅介護向け専用の多職種連携支援システムは含めていない。

地域医療連携システムの市場規模は、2020年度に約128億円
 → 2015年度(約89億円)の約1.4倍に拡大
 → 初期導入費とリプレース費用が5割、運用費が5割の構成


2010年度~2015年度
地域医療連携ネットワークは、2000 年頃より構築が始まった。その後、厚生労働省が2009 年度より「地域医療再生基金」を設置し、2012 年度にかけ5 次にわたり財源を投入したことから、2011 年頃から急増した。しかし、再生基金の交付完了にともない2014年をピークに新設ネットワーク数は減少傾向にある。一方で、各ネットワークに参加する施設数は堅調に伸びている。この流れを受けて、地域医療連携システムの市場規模は、2015 年度約89 億円と推定した。

2016年度~2020年度
2016 年6 月に政府が閣議決定した新成長戦略「日本再興戦略2016」では、「2018 年度までを目標とした地域医療情報連携ネットワークの全国各地への普及に向けて、地域医療介護総合確保基金による病床の機能分化・連携のためのネットワーク構築費用の支援や診療報酬におけるICT を使った情報連携への評価を活用するとともに、相互利用が可能なネットワーク構築の仕組みやノウハウの発信を今年度中に行う。」としている。 また、2015 年度より創設された「地域医療総合確保基金」や「地域医療連携推進法人制度」の推進、医療分野におけるID の導入、電子処方箋の普及など、政府が医療情報の電子化や、地域医療情報連携を強力に推進していくことから、2020 年度には約128 億円市場に拡大すると予測した。

2020年度128億円の構成比
2020年度の市場規模128億円の内訳は、初期導入費(*1)とリプレース費が約5割、運用費(*2)が約5割となると予測する。 なお、初期導入費には既存ネットワークに新たに参加する医療機関の導入費用を含む。

(*1) 初期導入費
情報公開病院ではゲートウェイサーバ、ソフトウェア、設置・設置費用、各種部門システムとの接続費、VPN 回線敷設等で2 千万~3 千数百万円程度となることが多い。

(*2) 運用費
連携システム利用料、保守費用、回線費用等。

ネットワーク数は、2015年度の196から2020年度には280に拡大すると予測

政府は2018 年度までを目標に、地域医療連携ネットワークの全国各地への普及を目指しており、また総務省では、2016 年度の第2 次補正予算に、情報システムを新たに構築する団体を募り、全国の医療圏や地域などで活用できる標準的なシステムの構築を目指すことを盛り込んだ。これらの動きから、新設の地域医療連携ネットワークの増加が見込める。この結果、地域医療連携ネットワーク数は2015年度の196から2020 年度には280 に拡大すると予測した。

参加療機関は、調剤薬局が飛躍的に増え2015年度比6倍強、診療所が2015年度比で倍増

各ネットワークに参加する医療機関は年々増加している。今後は、診療所や調剤薬局の増加が見込まれる。2015 年度の参加は診療所11,237、調剤薬局2,650と推計。2020 年には、診療所22,931、調剤薬局16,346になり、診療所の約22%、調剤薬局の約26%が地域医療連携ネットワークに参加すると予測した。
なお、1つの医療機関が複数ネットワークに参加した場合には重複カウントしている。


【調査概要】
調査対象:
(1) 医療連携システムベンダー訪問ヒアリング調査(10 社)
カナミックネットワーク/久保田情報技研/ストローハット/電算/日本電気/ 東日本電信電話/富士ゼロックス/富士通/富士フイルムメディカル/ワイズマン
(2) 地域医療連携ネットワーク事例アンケート調査(10 ネットワーク)
たいせつ安心i 医療ネット「安心i ネット」/みやぎ医療福祉情報ネットワークシステム「MMWIN」/医療情報ネットワーク「ちょうかいネット」/Net4U/埼玉利根保健医療圏地域医療ネットワークシステム「とねっと」/金沢大学附属病院継続診療システム「たまひめネット」/しまね医療情報ネットワーク「まめネット」/医療ネットワーク岡山「晴れやかネット」/佐賀県診療情報地域連携システム「ピカピカリンク」/あじさいネットワーク
調査方法:ヒアリング調査、アンケート調査、文献調査
調査期間:2016年4月~9月

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