国内の不動産テック市場調査 

2018年11月28日

矢野経済研究所は、国内の不動産テック市場を調査し、物件探しから契約、価格査定などのサービス領域ごとの市場動向、参入企業動向、将来展望等を明らかにした。

<不動産テック市場とは>
不動産テックとは、「不動産(Real Estate)」と「技術(Technology)」を掛け合わせた造語であり、現時点では、FinTechのように明確な呼称はないが、ICT(情報通信技術)を活用することで、物件探しから契約、物件利用(シェアリング)仲介、価格査定などのサービス領域において消費者に新たなサービスを提供したり、事業者に対する業務支援など、不動産(業務)に関する課題を解決しようとする製品やサービスの総称である。

本調査における不動産テックとは、消費者に対するB to C領域として、①物件探し等のメディア、②マッチングサービス、③設計・施工サービス、④ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)⑤物件利用(シェアリング)仲介、また事業者に対するB to B領域として、⑥不動産情報提供サービス、⑦業務支援システム・サービス、⑧物件の価格査定、⑨VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術を活用した支援サービス、⑩クラウド型監視カメラを対象とする。なおB to C領域の市場規模には住宅ローンを、B to B領域の市場規模にはマッチングサービス、スマートロックを含まない。

<市場に含まれる商品・サービス>
<B to C領域>メディア/マッチング/設計・施工/住宅ローン/ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)/シェアリング <B to B領域>不動産情報/マッチング/業務支援/価格査定/VR・AR/IoT(クラウド型カメラ)※なお、B to C領域の市場規模には住宅ローン、B to B領域の市場規模にはマッチング、スマートロックは含まれていない。

1.市場概況

不動産テックとは、「不動産(Real Estate)」と「技術(Technology)」を掛け合わせた造語であり、ICT(情報通信技術)を活用して、消費者に新たなサービスを提供したり、事業者に対する業務支援など、不動産(業務)に関する課題を解決する製品やサービスの総称である。

​現下、ベンチャー企業や異業種からの新規参入が活発化しつつあるなか、大手・中堅不動産会社を中心にこうした取組みが始まっている。

2017年度の国内不動産テック市場規模は3,818億円を見込む。このうち、消費者向けサービスのB to C領域における市場規模は2,957億円、事業者向けサービスのB to B領域​における​市場規模は861億円である。

2.注目トピック

今後の高い成長が期待されるのはB to C領域ではマッチング市場、B to B領域ではVR・AR市場
不動産テック市場のうち、消費者向けのB to C領域で最も高い成長が見込まれるのは、不動産仲介サービスにおけるマッチング市場であるものと考える。中古住宅流通は徐々に拡大しているが、中古住宅流通市場の活性化は政府の成長戦略で掲げられていることもあり、マッチングサービスを後押しするものとみる。また消費者に対し、チラシなどの集客手法とは対照的に、ICTを駆使して効率的な集客を行うベンチャー企業の取組みが徐々に市場に浸透し、市場拡大に貢献するものと考える。

一方、事業者向けのB to B領域で最も高い成長が見込まれるのは、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術を活用した業務支援サービス市場と考える。VR・AR技術の活用は設計・建築・施工管理や、物件の内覧、インテリア等のレイアウトシミュレーションなど、事業者間や、消費者とのコミュニケーションを効率的に行うことを可能にする。
​普及の障害とされるVR・AR技術の導入価格(初期投資)に値ごろ感が出ているだけでなく、大手不動産会社を中心にVRによって成約率や効率性を向上させようとする動きがあり、今後、中小事業者へ波及するとみられる。現時点におけるVR・AR市場はまだ小規模であるが、今後大きく成長するものと予測する。

3.将来展望

国内不動産テック市場規模は2020年度には2017年度比64.1%増の6,267億円に拡大すると予測する。このうち、消費者向けサービスのB to C領域は2017年度比43.8%増の4,252億円、事業者向けサービスのB to B領域は同134.0%増の2,015億円の拡大を予測する。

現在はある程度、参入事業者は不動産取引におけるサービス領域ごとに区分けされているが、既に不動産テック事業者とFinTech事業者、VR事業者とAR事業者などによる協業が始まっており、今後は領域間でのこうしたサービス融合が進展し、相乗効果を創出していくものと考える。​またベンチャー企業は今後の成長過程において、現在のサービス領域に留まらず、領域間をまたがる事業を展開していくものとみる。

ICTの利活用が遅れているといわれる不動産業界において、ベンチャー企業や異業種参入をはじめ、大手不動産会社ほか、大手事業者によるベンチャー企業の育成、協業が活性化することで、現在のサービス領域がさらに発展、拡大、あるいは、革新的なサービスが誕生することが期待される。

調査概要


調査期間:2018年2月~5月
調査対象:不動産テック事業者等
調査方法:当社専門研究員による直接面談、及び文献調査併用

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[矢野経済研究所]
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