中高生の運動部活動状況分析(野球部) 

2018年08月20日

笹川スポーツ財団(SSF)では、本年 3 月に 4~21 歳のスポーツライフ関する調査結果、『子ども・青少年のスポーツライフ・データ』を刊行しました。その中で、中学生・高校生の学校運動部活動に関する調査も実施しています。今回、運動部ごとの活動状況を分析し、中・高生ともに野球部の練習時間が長く、練習時間に対する部員の意識が他の運動部とは異なる、などの分析結果をまとめました。

全国高等学校野球選手権大会が 100 回目を迎え大きな盛り上がりを見せる一方で、2018 年 3 月にスポーツ庁は「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を発表し、野球部のみならず本格的に部活動改革への指針を示しました。このような中、今回の分析結果から学生野球を維持・発展させていくために、なにが必要か、野球部員の練習時間に対する意識構造をもとに考察し報告いたします。

主な分析結果


  • 中・高ともに、野球部は週当たりの平均活動日数と練習時間が多い(長い)
    特に、高校野球部の休日の練習時間は 7.7 時間と長く、他の運動部の 2 倍である
  • 野球部員は練習時間の長さに不満が少なく、他の運動部員と感覚の“ずれ”がある
    是正するには、長時間練習の弊害を認識し時間短縮に努めるなど、指導方法の改善が必要 

分析結果のポイント


中・高ともに、野球部は週当たりの平均活動日数と練習時間が多い(長い)
特に、高校野球部の休日の練習時間は 7.7 時間と長く、他の運動部の 2 倍である

中学校期と高校期の活動日数・活動時間を分析すると、前述のスポーツ庁が示した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」にある、休養日は週 2 日・活動時間は平日 2 時間程度・休日は 3時間程度という範囲を大きく超えていることがわかった。

野球部に着目すると、中学生の週当たりの平均活動日数は 6.10 日(他の運動部 5.63 日)、平日の 1日あたりの平均活動時間は 2.43 時間(2.22 時間)、休日は 5.71 時間(3.65 時間)であり、高校生の平均活動日数は 6.57 日(5.73 日)、平日の平均活動時間は 3.43 時間(2.58 時間)、休日は 7.70 時間(3.74時間)と、野球部の活動日数・活動時間は平均よりも明らかに多い(長い)。
特に高校期の休日の活動時間は、他の運動部と比較し、7.70 時間(他の運動部 3.74 時間)と約 2 倍の長さとなっている。

野球部員は練習時間の長さに不満が少なく、他の運動部員と“感覚のずれ”が見られる
是正するには、長時間練習の弊害を認識し時間短縮に努めるなど、指導方法の改善が必要

野球部員の部活動に対する悩みや不満を見ると、「遊んだり勉強する時間がない」ことに不満を感じている部員は中学生 28.6%・高校生 43.5%、「休日が少なすぎる」ことに不満を感じている部員は中学生 38.1%・高校生 52.2%で、不満を持つ部員は一定数いることが確認できた。
注目すべきは、「練習時間が長すぎる」ことに不満を感じている野球部員は、中学生 14.3%・高校生21.7%と低いことだ。練習時間は他の運動部よりも明らかに長いにもかかわらず、野球部員はあまり不満を感じていない様子が読み取れる。

ここで、野球部と野球以外の運動部における、練習時間の長さに対する不満の有無と実際の活動時間を比較する。野球部で練習時間の長さに不満がある者の平均活動時間(休日)は 8.36 時間で、野球以外の運動部における練習時間の長さに不満を感じている者(4.17 時間)よりも、4.19 時間長いことがわかった。

これに加え、野球部で練習時間の長さに不満を感じていない者の平均活動時間(休日)は 6.02 時間で、野球以外の運動部で不満を感じている者(4.17 時間)よりも 1.85 時間長かった。平日の活動についても同様の傾向がみられ、野球部員の練習時間の長さに対する感覚は他の運動部員と比較して異なっていること、練習時間に対する“感覚のずれ”が示唆された。

調査概要


調査名:12~21 歳のスポーツライフに関する調査
調査対象:全国の市区町村に在住する 12~21 歳(3,000 名):有効回収数 1,636 名
 ・中学校期:野球部(n=42)/ 野球以外の運動部(n=308)
 ・高校期:野球部(n=23)/ 野球以外の運動部(n=205)
を抽出し、再分析した。
調査期間:2017 年 6 月 24 日~7 月 20 日:訪問留置法による質問紙調査

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
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[笹川スポーツ財団]
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