企業におけるロボットのビジネス活用動向調査(20代~70代以上の正社員男女対象) 

2018年02月02日

NTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコムリサーチ」登録モニターを対象に、このたび「企業におけるロボットのビジネス活用動向調査」(以下、本調査) を実施しました。

昨今、労働力不足や働き方改革が叫ばれる中、ロボットの実ビジネスへの活用が急速に広がっています。従来のロボットと言えば、産業用ロボットが工場内において人間の代わりに同一反復作業や定型的作業を代替していましたが、近年のテクノロジーの進展に伴い、工場外のフィールドにおけるロボットの活用が広がっています。例えば、介護をはじめ、建設、清掃、警備、接客(小売、金融、サービス)、物流、医療などのフィールドで活用されるサービス用ロボットです。同時に、単純な無人化・省人化のコストダウンの側面だけではなく、ロボットならではの長所(例:24時間365日稼動)を活かした売上アップへの寄与・貢献の側面での活用も出てきています。

こうしたロボットの導入・活用の動向において、「必要なテクノロジーは何なのか?」、「どのような人材が取り組みを推進しているのか?」、「どのようなスキルセットを持った人材が不足しているのか?」、「外部の企業とどのような連携を行っているのか?」、「どのようなハードルがあるのか?」、「今後どのような展開を狙っているのか?」などの観点で各社の取り組み実態について調査しました。

主な調査結果


1. ロボットの導入・活用の実態
  • ロボットの導入・活用の有無は、「導入・活用している (18.9%)」
  • ロボットの導入・活用の最も多い業種・業態は、「製造業 (61.6%)」
  • 最も多いロボットの利用フィールドは、「産業用ロボット(製造、組立、搬送など) (72.1%)」であった。サービス用ロボットは、「サービス用ロボット(企業向け・業務向け) (28.5%)」、「サービス用ロボット(消費者向け) (15.3%)」。
  • サービス用ロボットの種類で最も多いのは、「受付・案内・接客 (33.5%)」
  • サービス用ロボットの導入・活用の目的で最も多いのは、「人間の作業の代替 (52.2%)」、次が「人間の作業の支援・手伝い・能力拡張 (46.0%)」
  • サービス用ロボットのメーカーや製品名を尋ねたところ、最も多いのは「不明 (67回答、41.6%)」、次点が「Softbank社のPepper (54回答、33.5%)」
  • ロボットの導入台数で最も多いのは、「1~10台 (41.3%)」、次点が「11~100台 (32.0%)」
  • ロボットの導入費用で最も多いのは「不明 (42.2%)」、以下が「101万円~1,000万円 (13.5%)」、「1,000万円~5,000万円 (11.9%)」
2.ロボットの導入・活用の成果
  • 定性的な評価結果で最も多いのは、「期待通りの成果が得られている (52.3%)」であった。「期待以上の成果が得られている (8.9%)」「期待通りの成果が得られている (52.3%)」の合計として約6割以上が成果は得られているとの回答
  • 定量的な評価結果で最も多いのは、「定量的な数字としては不明、もしくは今後計測予定 (41.3%)」
  • ロボットの利用フィールドに対していわゆる “成果が得られている” とする割合は、「サービス用ロボット(消費者向け)」が約52%、「サービス用ロボット(企業向け・業務向け)」は約59%、「産業用ロボット(製造、組立、搬送など)」は約67%という昇順
  • サービス用ロボットの種類に対していわゆる “成果が得られている” とする割合は、導入台数の多かった「受付・案内・接客」が約50%。また、「おもちゃ・エンタテイメント」は同割合47%、「見守り・癒し」は同割合44%、「家族・友達・ペット」は同割合45%と全体と比べて低い数字であった。これらに共通している点は、人間との接点やコミュニケーションが多く発生する種類のロボットである点である。逆に「清掃」の同割合91%、「警備・巡回・監視」の同割合87%のように、動き・パターンが定まっており人間とのコミュニケーションが発生しない種類のロボットに成果が出ていた。
  • サービス用ロボットの導入・活用の目的に対していわゆる “成果が得られている” とする割合は、「人間にはできないことの実現③(データの蓄積・分析)」が約78%、「人間にできないことの実現②(24時間365日化)」は約75%、「人間にはできないことの実現①(高所や危険物取扱などの危険作業)」は約71%
3. ロボットの導入・活用に必要なテクノロジー
  • ロボットの導入・活用において取り入れた先進テクノロジーで最も多いのは、「機構技術 (37.2%)」、以下が「高機能センサー (35.8%)」、「制御技術 (34.9%)」と続いた。また、「AI、データマイニング」も29.9%と高い
  • ロボットの導入・活用において不足していると思われる先進テクノロジーで最も多いのは、「AI、データマイニング (34.5%)」
4. ロボットの導入・活用に必要な人材・組織
  • ロボットの導入・活用にあたりリーダーシップを執った人材で最も多いのは、「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア(19.9%)」、次が「ロボット関連のエンジニア(15.5%)」
  • ロボットの導入・活用に関わった人材で最も多いのは、「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア (26.9%)」、以下が「ソフトウェアエンジニア・ITエンジニア (20.5%)」、「ロボット関連のエンジニア (18.9%)」、「研究開発部門の人材 (18.0%)」、「エンジニアではないもののテクノロジーに関する知識やスキルセットを有する技術人材 (17.6%)」
  • ロボットの導入・活用にあたり不足している(さらなる確保が必要)と思われる人材で最も多いのは、「ロボット関連のエンジニア(36.3%)」。以下が「ソフトウェアエンジニア・ITエンジニア (23.1%)」、「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア (20.1%)」、「AI・データアナリスト・データサイエンティストのようなデータの専門家 (16.0%)」
  • ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、実施した外部連携で最も多いのは「ロボット等製品の購買取引・業務委託(41.1%)」、次が「特に外部連携はしていない(全て自前で取り組んだ)(32.9%)」と続いた。また、「技術提携(22.1%)」、「業務提携 (14.4%)」、「代理店提携 (13.9%)」が一定割合存在すると共に、成果として「期待以上の成果が得られている」と回答した人の約61%はロボット購買以外の “他社連携あり” (「技術提携」、「業務提携」、「代理店提携」)
5. ロボットの導入・活用におけるハードルと今後の展開
  • ロボットの導入・活用の取り組みにあたり、難しかった点・ハードルだと感じる点で最も多いのは、「ロボットを用いた一連の取り組みの費用対効果が曖昧・不明な点 (31.3%)」、次点が「技術知識が必要な点 (29.9%)」。さらに「ロボットを用いた一連の取り組みのコンセプト作り (24.2%)」、「ロボットも含めたシステムや設備、適用する業務・作業も含めたトータルコーディネート (22.6%)」、「導入・活用に当たっての実証実験 (18.5%)」が上位に続いた
  • 今後の展開の方向性で最も多いのは、「ロボットによる既存事業の強化 (54.8%)」であった。これは当然の結果の表れであり、むしろ4社に1社近くが「ロボットによる新規事業の創出 (23.3)」である点が注目に値する
  • 今後の展開の方向性の具体的な内容としては、「既存事業の強化」「新規事業の創出」のいずれの方向性においても「製造」工程における取り組みが40%、5%と最も高くなった。
  • 今後の展開の狙いで最も多いのは「コスト削減(61.7%)」、次点が「人手不足の解消(59.6%)」

調査結果


1. ロボットの導入・活用の実態

1.1. ロボットの導入・活用の有無

所属する会社におけるロボット導入・活用の有無を尋ねたところ、全体の81.1%が「導入・活用していない」と回答した。一方で、「導入・活用している」は全体の18.9%であった。

 続けて、「導入・活用していない (81.1%)」と回答した回答者に対して導入・活用が行われていない理由を尋ねた。最も多いのは「これまで導入・活用の検討などは行われたことはない (88.7%)」と、社内で導入・活用の検討の俎上にさえ挙がっていないのが一番の理由であった。

 また、「その他 (1.6%)」と答えた30回答の内訳としては、「わからない・不明」が8回答、「検討中・導入中」が6回答などであった。他には、「必要性がない」「活用性がない」「業務適合性が見えない」「費用対効果」「その事業を止めたため」などといった意見があった。

1.2. ロボットを導入・活用している業種・業態

 前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用を行っている業種・業態を尋ねた。最も多いのは「製造業 (61.6%)」、次点が「建設業 (7.1%)」、「サービス業・複合サービス事業(警備、清掃、建物メンテ、自動車・機械整備、職業紹介・派遣など含む) (6.8%)」、「情報通信業(ソフトウェア・インターネット関連、新聞・出版など含む) (6.8%)」、「金融業、保険業 (5.9%)」と続いた。

1.3. ロボットの利用フィールド

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、導入・活用しているロボットの利用フィールドを尋ねたところ、最も多いのは「産業用ロボット(製造、組立、搬送など) (72.1%)」、次点が「サービス用ロボット(企業向け・業務向け) (28.5%)」、「サービス用ロボット(消費者向け) (15.3%)」と続いた。

1.4. サービス用ロボット

1.4.1.  サービス用ロボットの種類
 前述のロボットの利用フィールドの質問で、サービス用ロボット(「サービス用ロボット(企業向け・業務向け) (28.5%)」及び「サービス用ロボット(消費者向け) (15.3%)」)と回答した回答者に対して、ロボットの種類を尋ねたところ、最も多いのは「受付・案内・接客 (33.5%)」、次点が「搬送・輸送 (20.5%)」と続いた。

1.4.2. サービス用ロボットの導入・活用の目的
 前述のロボットの利用フィールドの質問で、サービス用ロボット(「サービス用ロボット(企業向け・業務向け) (28.5%)」及び「サービス用ロボット(消費者向け) (15.3%)」)と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の目的を尋ねたところ、最も多いのは「人間の作業の代替 (52.2%)」、次点が「人間の作業の支援・手伝い・能力拡張 (46.0%)」と続いた。

1.4.3. サービス用ロボットのメーカー名や製品名
前述のロボットの利用フィールドの質問で、サービス用ロボット(「サービス用ロボット(企業向け・業務向け) (28.5%)」及び「サービス用ロボット(消費者向け) (15.3%)」)と回答した161回答者に対して、ロボットのメーカーや製品名を尋ねたところ、最も多いのは「不明 (67回答、41.6%)」、次点が「Softbank社のPepper (54回答、33.5%)」と続いた。

1.5. ロボットの導入・活用の台数

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、導入・活用しているロボットの台数を尋ねたところ、最も多いのは「1~10台 (41.3%)」、次点が「11~100台 (32.0%)」と続いた。

また、ロボットの導入・活用の台数と利用フィールド(産業用ロボットやサービス用ロボット)の相関を見るため、クロス集計分析を行った。分析結果として、サービス用ロボットの割合は「1~10台」 の約49%であった。これに対して、「11~100台」は約34%、「101~1,000台」は約24%、「1,001~10,000台」は約35%、「10,001台以上」は約29%であった。分析前は、産業用ロボットは台数が多く、サービス用ロボットは台数が少ないと予想していたが、この結果より必ずしもそうでないことが分かった。確かに「1~10台」の約49%がサービス用ロボットで割合としては大きいが、これはPoC(Proof of Concept:概念実証)として少数のロボットを導入しているケースの分が含まれているためと推察される。

1.6. ロボットの導入費用

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、導入・活用しているロボットの導入費用を尋ねたところ、最も多いのは「不明 (42.2%)」、次点が「101万円~1,000万円 (13.5%)」、「1,001万円~5,000万円 (11.9%)」と続いた。

 ロボットの導入費用と利用フィールド(産業用ロボットやサービス用ロボット)の相関を見るため、クロス集計分析を行った。ロボット費用に占めるサービス用ロボットの割合は、「100万円以下」は約74%、「101万円~1,000万円」は約53%、「1,001万円~5,000万円」は約45%、「5,001万円~1億円」は約32%、「1億1円~5億円」は約43%、「5億1円~10億円」は約21%、「10億円以上」は約30%、「不明」は約30%であった。予想していた通り、サービス用ロボットは製造用ロボットよりも安価かつ比較的少ない台数から導入が可能なため、サービス用ロボットは導入費用が少なく済む傾向にあるものと推察する。

2. ロボットの導入・活用の成果

2.1. ロボットの導入・活用の成果(定性評価)

過前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、導入・活用の定性的な評価結果を尋ねたところ、最も多いのは「期待通りの成果が得られている (52.3%)」、次点が「実際の成果は不明(計測不能) (18.3%)」、「一定の成果は得られているが、期待していた程ではない (17.6%)」と続いた。 従って、「期待以上の成果が得られている (8.9%)」「期待通りの成果が得られている (52.3%)」の合計として約6割以上が成果は得られていると回答している。

2.2. ロボットの導入・活用の成果(定量評価)

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、導入・活用の定量的な評価結果を尋ねたところ、最も多いのは「定量的な数字としては不明、もしくは今後計測予定 (41.3%)」であった。

2.3. ロボットの導入・活用の成果とのクロス集計分析

2.3.1.  ロボットの利用フィールドと成果のクロス集計分析
ロボットの利用フィールド(産業用ロボットやサービス用ロボット)と成果(定性評価)の相関を見るため、クロス集計分析を行った。分析結果として、「期待以上の成果が得られている」及び「期待通りの成果が得られている」のいわゆる“成果が得られている” とする割合は、「サービス用ロボット(消費者向け)」は約52%、「サービス用ロボット(企業向け・業務向け)」は約59%、「産業用ロボット(製造、組立、搬送など)」は約67%という昇順となった。これは、特に驚く結果ではなく産業用ロボットのように導入・活用のシーンが多く歴史の長いロボットのほうが良い成果を得られている。

2.3.2.  サービス用ロボットの種類と成果のクロス集計分析
サービス用ロボット(「サービス用ロボット(企業向け・業務向け)」及び「サービス用ロボット(消費者向け)」)と成果(定性評価)の相関を見るため、クロス集計分析を行った。分析結果として、導入台数の多かった「受付・案内・接客」は “成果が得られている“ という割合は約50%であった。また、「おもちゃ・エンタテイメント」は同割合47%、「見守り・癒し」は同割合44%、「家族・友達・ペット」は同割合45%と全体と比べて低い数字であった。これらに共通している点は、人間との接点やコミュニケーションが多く発生する種類のロボットである点である。AIが急速に発展し、画像認識・音声認識・自然言語認識などコミュニケーションに必要な認識技術が高度化しているとは言え、まだまだ人間とのコミュニケーションを満足するには至っていないものと推察される。これと逆の視点として「清掃」の同割合91%、「警備・巡回・監視」の同割合87%のように、動き・パターンが定まっており人間とのコミュニケーションが発生しない種類のロボットの成果が出ている点からもそう言える。

2.3.3.  サービス用ロボットの導入・活用の目的と成果のクロス集計分析
サービス用ロボット(「サービス用ロボット(企業向け・業務向け)」及び「サービス用ロボット(消費者向け)」)と成果(定性評価)の相関を見るため、クロス集計分析を行った。分析結果として、“成果が得られている” という割合は「人間にはできないことの実現③(データの蓄積・分析)」は約78%、「人間にできないことの実現②(24時間365日化)」は約75%、「人間にはできないことの実現①(高所や危険物取扱などの危険作業)」は約71%であった。これは、サービス用ロボットの導入・活用の目的として多かった「人間の作業の代替」や「人間の作業の支援・手伝い・能力拡張」よりも、比較的成果が得られていることが見て取れる。

3. ロボットの導入・活用に必要なテクノロジー

3.1. ロボットの導入・活用において取り入れた先進テクノロジー

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みにおいて「取り入れた先進テクノロジー」について尋ねた。最も多いのは「機構技術 (37.2%)」、次点が「高機能センサー (35.8%)」、「制御技術 (34.9%)」と続いた。これらは産業用ロボットの基本構成要素であり、産業用ロボット本体に初めから組み込まれている可能性が高いため上位に来た可能性が高いと推察される。 一方で、「AI、データマイニング」も29.9%と高かった。これは、従来の産業用ロボットのように工場の製造ラインのようなクローズドな環境で使われるのではなく、コミュニケーションロボットのように周辺環境のセンサーなどと組み合わせたAIやデータマイニングの活用によるロボットが普及している昨今の潮流の表れと考えられる。

3.2. ロボットの導入・活用において不足していると思われる先進テクノロジー

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、「実際に取り入れてみて、不足している(更に取り入れたい)と思われる先進テクノロジー」について尋ねた。最も多いのは「AI、データマイニング (34.5%)」であった。次点に続く「制御技術 (21.5%)」、「高機能センサー (21.0%)」、「機構技術 (19.6%)」は、産業用ロボットの基本構成要素であることから、実際にロボットを導入してみたものの性能が期待に達しなかった可能性が推察される。

注目すべきは「AI、データマイニング (34.5%)」、「ビッグデータ (19.4%)」、「IoT (16.0%)」の3点である。これはロボット本体及び周辺環境のセンサーが相互連携することでビッグデータを収集し、頭脳であるAIでビッグデータ分析を行い、その結果をロボットなどでアウトプットするという活用イメージが求められているためと考えられる。

4. ロボットの導入・活用に必要な人材・組織

4.1. ロボットの導入・活用にあたりリーダーシップを執った人材

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、実際にリーダーシップを執った人材について尋ねた。最も多いのが「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア(19.9%)」、次点が「ロボット関連のエンジニア(15.5%)」と続いた。

「ロボット関連のエンジニア」がリーダーを担うのは当然として、「ソフトウェア・ITエンジニア(10.5%)」、「研究開発部門の人材(10.3%)」、「エンジニアではないもののテクノロジーに関する知識やスキルセットを有する技術人材(8.7%)」が上位に続いたのは、本来であればロボット関連のエンジニアを求めていたものの社内にそれに資する人材が居なかったためであると推察される。また、前述のように産業用ロボット以外の利用フィールドの場合、ロボット本体の知識やスキルだけでなく、ソフトウェアやデータベース、各種センサー等デバイスといった技術スキル全般が求められているためとも考えられる。

4.2. ロボットの導入・活用に関わった人材

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、実際にリーダーシップをとった人以外で、社内で主にロボットに関わった人材について尋ねた。最も多いのが「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア (26.9%)」、次点が「ソフトウェアエンジニア・ITエンジニア (20.5%)」、「ロボット関連のエンジニア (18.9%)」、「研究開発部門の人材 (18.0%)」、「エンジニアではないもののテクノロジーに関する知識やスキルセットを有する技術人材 (17.6%)」と続いた。

これは、前述のようにロボット本体の知識やスキルだけでなく、ソフトウェアやデータベース、各種センサー等デバイスといった技術スキル全般が求められていることの証左と言える。

4.3. ロボットの導入・活用にあたり不足していると思われる人材

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と答えた回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、不足している(更なる確保が必要)と思われる人材について尋ねた。最も多いのが「ロボット関連のエンジニア(36.3%)」であった。次点が「ソフトウェアエンジニア・ITエンジニア (23.1%)」、「ロボット専門ではないが電気・電子関連のエンジニア (20.1%)」、「AI・データアナリスト・データサイエンティストのようなデータの専門家 (16.0%)」と続いた。

ここから、前述のようにロボット導入・活用のトレンドに対して、まずはロボット本体に関するエンジニアが圧倒的に不足していることが見て取れる。

4.4. ロボットの導入・活用のために行った外部連携

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、実施した外部連携について尋ねた。最も多いのは「ロボット等製品の購買取引・業務委託(41.1%)」、次点が「特に外部連携はしていない(全て自前で取り組んだ)(32.9%)」と続いた。

ここで着目すべきは「技術提携(22.1%)」、「業務提携 (14.4%)」、「代理店提携 (13.9%)」が一定割合存在することである。ロボットの購買・業務委託といった縦の関係に留まらず、技術や顧客基盤などの自社で不足するリソースを提携という横の関係によって獲得する動きは、従来の産業用ロボットの導入・活用の時代には見られなかった動向ではないかと推察する。

ここで外部連携のやり方と成果の関係について確認すべく、前述の「期待していた成果」と「ロボットの導入・活用のために行った外部連携」をクロス集計により分析した。分析結果として、成果として「期待以上の成果が得られている」と回答した人の約61%はロボット購買以外の “他社連携あり” (全体から「ロボット等製品の購買取引・業務委託」、「特に外部連携はしていない」を除く)であった。これは、ロボット導入・活用の成功には、提携という横の関係によるリソース獲得が鍵であることの証左である。

5.ロボットの導入・活用におけるハードルと今後の展開

5.1. ロボットの導入・活用におけるハードル

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、難しかった点・ハードルだと感じる点について尋ねた。最も多いのが「ロボットを用いた一連の取り組みの費用対効果が曖昧・不明な点 (31.3%)」、次点が「技術知識が必要な点 (29.9%)」と続いた。取り組みの費用対効果の測定が困難であることは、前述の2.2.ロボットの導入・活用の成果(定量評価)でも示されており、改めて大きな課題であることが認識できる。

さらに「ロボットを用いた一連の取り組みのコンセプト作り (24.2%)」、「ロボットも含めたシステムや設備、適用する業務・作業も含めたトータルコーディネート (22.6%)」、「導入・活用に当たっての実証実験 (18.5%)」が上位に続いた。費用対効果の測定も含め、これらはすべてロボットの導入・活用の取り組みの企画段階が鍵となってくることの表れである

また、「ロボット等製品の選定 (16.0%)」、「ロボット等製品に関する情報収集 (15.5%)」も一定割合存在しており、これは、数あるロボットの中から何かしらの基準を設けてロボットを選定・運用することに苦労していることの表れと推察される。

5.2. 今後の展開の方向性

前述のロボット導入・活用の有無の質問で「導入・活用している」と回答した回答者に対して、ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたり、今後の展開の方向性について尋ねた。最も多いのは「ロボットによる既存事業の強化 (54.8%)」であった。これは当然の結果の現れであり、むしろ4社に1社近くが「ロボットによる新規事業の創出 (23.3)」に取り組もうとしている事実に注目したい。

ここで今後の展開の方向性とロボットの利用フィールドの関係について確認すべく、前述の「ロボットの利用フィールド」と「ロボットの今後の展開の方向性」をクロス集計により分析した。分析結果として、「ロボットによる既存事業の強化」を考えている企業の約70%は「産業用ロボット」であった。また、「ロボットによる新規事業の創出」を考えている企業の約60%は「サービス用ロボット(企業向け・業務向け/消費者向け)であった。

5.3. 今後の展開の方向性の具体的内容

ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたって今後の展開の方向性を「ロボットによる既存事業の強化 (54.8%)」または「ロボットによる新規事業の創出 (23.3)」と回答した回答者に対して、今後の展開の方向性の具体的な内容を自由回答で尋ねた。自由回答を「(Where)ロボットの導入対象となり得るバリューチェーン」と「(Why)今後の展開の方向性」で整理すると、「既存事業の強化」、「新規事業の創出」のいずれの方向性においても「製造」工程が40%、5%と最も高くなった。これはロボットの利用フィールドとして「製造」工程で利用する産業用ロボットが圧倒的に多く、かつサービス用ロボットであってもその導入・活用の目的が「人間の作業の代替 (52.2%)」、「人間の作業の支援・手伝い・能力拡張 (46.0%)」が多いことから導入・活用が「製造」工程中心であることを示している。

5.4. 今後の展開の狙い

ロボットの導入・活用の取り組みを行うにあたって今後の展開の方向性を「ロボットによる既存事業の強化 (54.8%)」または「ロボットによる新規事業の創出 (23.3)」と回答した回答者に対して、今後の展開の狙いについて尋ねた。最も多いのは「コスト削減(61.7%)」、次点が「人手不足の解消(59.6%)」であった。これは、「売上拡大(26.0%)」、「ロボット導入に伴う新たなデータ獲得(20.0%)」という、データ蓄積・分析・活用といった人間ができない作業を行う “攻め” よりも人間ができる作業の代替という “守り” の色合いが濃いものと推察される。

調査概要


調査対象:NTTコム リサーチ クローズド調査
調査方法:非公開型インターネットアンケート
調査期間:2017年11月14日~2017年11月27日
有効回答数:2,321人 サンプル
回答者の属性:
 ✓全国20代~70代以上の男女(男性95%、女性5%)
 ✓正社員(契約社員、派遣社員除く)の雇用形態
 ✓係長・主査クラス以上の職位(下表参照)
 ✓所属企業の年間売上高1億円以上、従業員数10人以上

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[NTTデータ経営研究所]
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