車載モータの世界市場調査 

2018年05月01日

矢野経済研究所は、車載モータの世界市場の調査を実施し、モータ搭載システム別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

<車載モータ市場とは>
本調査における車載モータとは、スタータやオルタネータ、各種補機類から次世代自動車(HEV/EV)に用いられる主機モータまで、すべてのモータを対象とするが、カーオーディオやナビゲーションシステムに使用されるディスクドライブ・HDD用モータ等の一部は対象外とする。また市場は車両生産地域をベースとする世界市場とし、対象車両は次世代自動車(ハイブリッド車・電気自動車)を含む、すべての乗用車および車両重量3.5t以下の商用車に搭載される車載モータとした。

調査結果


1.市場概況

2016年の車載モータ世界市場は約29億9,900万個(車両生産台数ベース)と約30億個規模に到達した。
市場が拡大を続ける背景には世界規模で厳格化している環境規制が影響していると考える。なかでも2021年にCO2排出量:95g/㎞と世界に先駆けて厳しい規制を施行する欧州や世界最大の自動車市場である中国でも2020年に117g/㎞と主要国に迫る燃費規制目標が定められており、自動車メーカ各社では今まで以上に燃費改善技術の開発が求められている。

また、燃費向上だけでなく安全性や利便性の向上を目的とした高機能化でも、これまでの機械式で稼動させていたシステムを電動化(=モータを採用)することで実現していくことが予想され、パワートレイン、シャシなど各領域で車載モータの搭載数増加の追い風になっている。

本調査では、車載モータをパワートレイン、シャシ、ボディ、次世代自動車システムという4つの領域に分類するが、2016年の世界市場規模において最も大きな比率を占めるのはボディ領域(パワーウィンドウやパワーシート、ダンパモータ等)で、全体の73.6%を占める。一方、次世代自動車システム領域(主機モータや電動コンプレッサ、各種電動ポンプ等を含む)は、現状では需要個数が少なく1%にも満たないが、今後次世代自動車の普及に伴い増加が見込まれ、2025年には全体の2.0%を占めると予測する。

2.注目トピック

主機モータ
次世代自動車の主機モータは、小型軽量化、低コスト、広い動作範囲での高効率化が求められる。モータの体積は搭載性に、重量と効率は燃費やEV(電気自動車)航続距離に影響するため、理想はこれらの要素を高い次元で成立させたモータとなる。なかでもEV航続距離の延長はEV普及の大きな課題であるが、バッテリ搭載量の増加だけでは限界があるため、モータの高効率化は喫緊の課題となっている。しかし、市街地~高速道路などの走行条件、混雑具合など様々な状況下で駆動する主機モータは、家電や産業用など他のモータと比較して動作領域が広く、広範で高効率を実現することが重要である。

主機モータは当然次世代自動車の普及に従って需要が拡大するため、基本的には次世代自動車の推移と連動する。主機モータの価格動向は、モータの出力や特性、冷却方法の違いによっても大きな開きがあり一概に推計するのは困難である。また、PHEV(プラグインハイブリッド車)やEV用はHEV(ハイブリッド車)用と比べ耐久性や信頼度で高いレベルが要求されるため、より高価な価格帯となる。主機モータの価格は永久磁石の市況とも連動するため、大幅な価格下落は見込みにくいが、次世代自動車の普及による量産化によって、緩やかな価格下落が見込まれるものと考える。

需要数では、現状は2モータ方式のHEVが市場の大部分を占めるが、今後はEVの普及や欧州でのPHEV等の需要拡大によって、1モータ方式の普及が拡大することが予測され、車両台数の成長率を上回ることはないと想定する。以上を踏まえ、2016年に約428万個であった主機モータの世界市場は、2020年には970万個、2025年には2,080万個まで市場が拡大すると予測する。

3.将来展望

車載モータの市場動向に大きく影響与える次世代自動車の普及動向は、内燃機関車と比較してモータの搭載総量が増加する。近年では欧米の自動車メーカが2020~2025年にかけてEV、PHEVのラインアップを拡充させる戦略を公表しているほか、中国では原油の輸入依存低減や環境問題への対策として、新エネルギー車(EV、PHEV)の生産・販売を促進する政策を打ち出している。今後も次世代自動車の普及は全世界的な流れとして拡大していくと考えられ、2020年頃を目処に本格的な成長期を迎えると予測する。
また、このような次世代自動車の普及動向に加えて内燃機関車においても高級車を中心に安全性や利便快適性を目的とした高機能化が進むことで車載モータの世界市場は拡大していくとみる。

調査概要


調査期間: 2017年11月~2018年3月
調査対象: 自動車システムメーカ、モータメーカ等
調査方法: 当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング、ならびに文献調査併用

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[矢野経済研究所]
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