東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査2018 

2018年04月27日

森ビルは、東京23区内で1986年以降に竣工した事務所延床面積10,000㎡以上のオフィスビル(以下「大規模オフィスビル」という)を対象に、需給動向に関する調査を1986年から継続して行っています。また調査結果を多角的に分析することで、将来のオフィスマーケット動向の予測も行っています。

調査結果サマリー


【供給動向】~今後5年間の供給量の平均は過去実績と同水準となる見込み~
  • 東京23区の大規模オフィスビルの供給量は18年と20年に高水準となるが、21年と22年の供給量は低水準となり、今後5年間(18~22年)の平均は過去実績と同水準となる見込みである。また、1物件当たりの平均供給量は増加傾向にあり、10万㎡以上の大規模オフィスビルの供給量は20年に調査開始以来最大となる見込みで、供給物件の「大規模化」が進行している。
  • エリア別に見ると、今後5年間の供給量のうち約7割が都心3区で供給されるなど大規模オフィスビルの「都心化」傾向が続いている。中でも、複数の大規模開発が進行中の「丸の内・大手町」「日本橋・八重洲」「芝浦・海岸・浜松町」「新橋・虎ノ門」「渋谷」の5エリアに集中する。
【需要動向】~オフィス需要は堅調に推移する見通し~
  • 新規賃借意向のある企業の約6割がオフィス面積の拡大を予定しており、今後のワーカー数も増加傾向であることから、オフィス需要は堅調に推移する見通しである。また新規賃借理由の上位が「業容・人員拡大」「立地の良いビルに移りたい」「フロア面積が大きなビルに移りたい」という結果は、「大規模化」「都心化」という供給の流れに見合うことを示している。
【空室率】~旺盛なオフィス需要を背景に、空室率は低下傾向と予測~
  • 17年末の空室率は2.6%まで低下し、続く18年末は供給量が高水準となるものの旺盛なオフィス需要により、ほぼ横ばいで推移する見通しである。なお19年末は供給量の減少とオフィス需要の底堅さを背景に2.5%まで低下すると予想する。

調査結果


1-1 供給量の推移

○ 東京23区の大規模オフィスビルの供給量は18年と20年に高水準となる。
○ 21年と22年の供給量は2年連続で低水準となり、今後5年間の平均は過去実績と同水準となる。


東京23区の大規模オフィスビルの供給量は、2018年(146万㎡)および2020年(168万㎡)に高水準となる一方、2021年(52万㎡)、2022年(42万㎡)は2年連続で低水準となる見込みである。また今後5年間(2018~2022年)の平均は101万㎡/年となり、過去平均並みとなる見込みである(図1)。

図2は今後5年間の供給量について、昨年の調査結果(2017年4月25日リリース)と今年の調査結果を比較したものである。2018年および2020年が高水準の供給であることに変化はないが、2018~2020年の各年で供給量が若干積み上がり平均供給量は増加した(133万㎡/年→138万㎡/年)。主な変動要因は、面積1~2万㎡程度の小規模な計画の表面化であり、各年とも供給量が底上げされる結果となった。

1-2 規模別供給量

○ 1物件当たりの平均供給量は増加傾向にある。
○ 10万㎡以上の物件の供給量は、20年に調査開始以来、最大となる見込み。


図3は年ごとの「1物件当たり平均供給量」の推移を示したものである。1990年前後は「1物件当たり平均供給量」が2~3万㎡/件だったものが、近年では5万㎡/件を超える年が多くなってきており、2020年には1986年の調査開始以来最大の8.0万㎡/件となる見込みである。近似線で見ると「1物件当たり平均供給量」の増加傾向は明確であり、供給されるオフィスビルの大規模化が進行していると言える。

図4は、図1の供給量推移を「事務所延床面積10万㎡以上の物件」と「同10万㎡未満の物件」に区分したものである。「事務所延床面積10万㎡以上の物件」を見ると、2020年(110万㎡)は調査開始以来、最大の供給量となる見込みである。
また単年の供給量に占める「事務所延床面積10万㎡以上の物件」の割合は、2018年(66%)と2020年(65%)で過半を超えており、過去に供給が高水準であった2003年や2012年とは異なり、2018年と2020年は10万㎡以上の大規模オフィスビルの供給が高水準となる見込みである。

1-3 エリア別供給動向

○ 18年、20年の都心3区の供給量は、直近で高水準であった12年を上回る。
○ 18~22年の5年間の供給は、主要ビジネスエリア内の特定の5エリアに集中する。


都心3区(千代田区、中央区、港区)の大規模オフィスビル供給量は、今後5年間の平均が70万㎡/年となり、過去10年の平均60万㎡/年を上回る見通しである(図5)。特に2018年(109万㎡)と2020年(115万㎡)は、直近で高水準であった2012年(97万㎡)を上回る見込みである。また今後5年間の都心3区への供給割合は69%であり、過去5年間の平均である77%は下回るものの高水準となる(図6)。

図7は2018~2022年の5年間の供給量を、主要ビジネスエリアごとに集計したものであり、図8はその上位5エリアの割合を示したものである。23区全体の5年間の総供給量は508万㎡であり、そのうち上位5エリア(338万㎡)で67%を占める。

最も供給量が多いのは「丸の内・大手町エリア」(121万㎡・24%)であり、進行中の複数の大規模開発により供給割合は最大となった。2番目は「日本橋・八重洲エリア」(65万㎡・13%)であり、日本橋の開発に加え八重洲での大規模開発もあることから供給量が押し上げられた。3番目は「芝浦・海岸・浜松町エリア」(62万㎡・12%)であり、浜松町駅および田町駅周辺で進行する大規模開発が供給量の多くを占める。4番目は「新橋・虎ノ門エリア」(60万㎡・12%)であり、虎ノ門ヒルズエリア周辺で複数の大規模開発が進行中である。5番目は「渋谷エリア」(30万㎡・6%)であり、渋谷駅周辺で2019年までに複数のビルが供給される。

2-1 企業のオフィスニーズ

○ 新規賃借意向のある企業の約6割が「オフィス面積の拡大を予定」。
○ 新規賃借理由は「業容・人員拡大」が5年連続1位。
○ 今後ワーカー数が増加する見込みのある企業は約4割。


ここからは、需要動向を考察するために、当社が2003年より継続実施している「東京23区のオフィスニーズに関する調査」(2017年10月に実施した東京23区に本社が立地する資本金上位1万社を対象としたアンケート調査)を改めて整理する。

企業がオフィスを新規賃借する予定について尋ねたところ、24%の企業から「新規賃借の予定がある」と回答があり、2013年以降、その割合は年々増加傾向となっている(図9)。また、新規賃借予定のある企業に対して、面積の拡大・縮小予定を尋ねたところ、「拡大予定」の企業が59%と約6割を占めた(図10)。企業の拡張意欲は旺盛であり、足元のオフィス需要は堅調であることがうかがえる。

新規賃借予定のある企業に新規賃借する「理由」を尋ねたところ、5年連続で「業容・人員拡大」が1位となった。
続いて、「立地の良いビルに移りたい」が「フロア面積が大きなビルに移りたい」と入れ替わり2位となった(図11)。
昨年と比較するとトップ3の内訳は同じ結果であり、ポジティブなオフィス移転のトレンドは継続している。またこの結果は、「大規模化」「都心化」という供給の流れに見合うことを示している。

現在入居中のオフィス内のワーカー数について、昨年と比較した際の増減を尋ねたところ「増加した」と回答した企業は42%であった(図12)。続いて今後の見込みを尋ねたところ「増加見込み」と回答した企業は42%であった(図13)。「増加見込み」が「減少見込み」を大きく上回っており、今後のワーカー数は増加傾向であることがうかがえる。

2-2 吸収量と空室率

次に、「吸収量」という概念を用いて需要動向を見ていく。なお、吸収量とは、当調査が対象とする1986年以降に竣工した全ての大規模オフィスにおける当年の新規稼働床面積(前年末の空室面積+新規供給面積-当年末の空室面積)を示す(図14)。

○ 東京23区の17年末の空室率は、吸収量が供給量を上回ったことで2.6%まで低下。
○18年末の空室率は、供給量が高水準となるものの旺盛なオフィス需要により、横ばいの2.7%と予想。
○ 19年末の空室率は、18年を下回る供給量とオフィス需要の底堅さを受け、2.5%まで低下すると予想。


2017年の東京23区では、吸収量(85万㎡)が供給量(69万㎡)を上回ったことで、空室率が低下(3.2%→2.6%)し(図15)、直近で最も空室率が低下した2007年(2.5%)以来の2%台まで低下した。エリア別で見ると、都心3区は0.3pt低下(3.4%→3.1%)、その他20区では1.0pt低下(2.8%→1.8%)し、その他20区が全体の空室率低下を牽引した(図16)。

足元のオフィス需要は旺盛な状況が継続している。企業は業種や規模の大小を問わず業容拡大が進んでおり、人手不足を背景に人員採用意欲も強く、館内増床や拡張移転、立地改善といったポジティブな移転事例が増加している。その結果2017年は新規供給ビル、既存ビルともにマーケット全体で空室消化が進んだと考えられる。特に都心へのアクセスが良好であり、賃料水準が比較的割安な都心3区周辺での空室消化が先行している様子がうかがえる。

2018年は緩やかな景気回復局面が持続しており、企業の雇用拡大も継続する見込みであることから、オフィス需要も堅調に推移する見通しである。企業の拡張意欲は強く、2018年の供給は高水準にもかかわらず、多くの供給予定ビルでテナント内定が決まっている。今後は新築ビルへの移転により発生する既存ビルの空室、いわゆる「二次空室」が徐々に顕在化するとみられるが、オフィス需要は旺盛であり、2018年末の空室率はほぼ横ばいの2.7%と予測する。

日本経済は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け回復基調が続く見込みであり、2019年もオフィス需要は底堅く推移する見込みである。2018年中は二次空室が顕在化する可能性が高いが、賃料的に新築ビルより値ごろ感がある二次空室の発生は、現在の低空室率の状況で移転先の選択肢が少なく移転時期をうかがっている企業の移転需要を喚起することが期待される。さらに2019年の供給量(99万㎡)は2018年の供給量(146万㎡)より限定的であることから、供給量以上に空室消化が進むと想定し、2019年末の空室率は2.5%まで低下すると予想する。


■「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」調査要項
対象地域 :東京23区
集計対象ビル :事務所延床面積10,000㎡以上(1986年以降竣工)

※供給量に関しては、一般に公開されている情報を基に、2018年1月~2月に実施した現地調査ならびに聞き取り調査によって算出しています。
※1986年以降に竣工した大規模オフィスビル(自社ビルを含む)のうち、店舗、住宅、ホテル等の事務所以外の用途を除いた事務所部分の延床面積(グロス)を集計しています。

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