第4回上場企業の課長に関する実態調査(上場企業に勤務し、部下を1人以上持つ課長対象) 

2018年01月16日
産業能率大学は、従業員数100人以上の上場企業に勤務し部下を1人以上持つ課長を対象に、職場の状況や課長自身の意識などに関するアンケートを実施し「第4回上場企業の課長に関する実態調査」としてまとめました。

このテーマに関する調査は、第1回(2010年9月実施)、第2回(2012年12月実施)、3回目(2015年11月実施)に続き4回目となります。調査は2017年11月10日から13日までの4日間、インターネット会社を通じてインターネットリサーチで実施し717人(男性692人、女性25人)から回答を得ました。

【結果概要】

3年前と比較した職場の状況の変化

 3年前と比較した職場の変化について「業務量が増加している」との回答が58.9%(前回調査比2.5㌽増)で過去最高となりました。また「労働時間・場所に制約がある社員が増加している」13.7%(前回比5.9㌽増)、「非正規社員が増加している」13.5%(前回比1.7㌽増)、「外国人社員が増加している」7.4%(前回比0.9㌽増)とそれぞれ増加し、いずれも過去最高となっています。

99.2%がプレイングマネジャー

 現在の仕事におけるプレーヤーとしての役割を、「0%(無し)」から10%刻み(「1%~10%」、「11%~20%」…)で尋ねました。プレーヤーとしての役割が全く無いのはわずか0.8%で、99.2%の課長がプレーヤーとマネジャーを兼務しています。【下図】
 こうした状況の中、「プレーヤーとしての活動がどの程度マネジメント業務に支障があるか」を尋ねたところ、“支障がある”とする回答が59.1%(「とても支障がある」14.1%+「どちらかと言えば支障がある」45.0%)となりました。

部下に関する悩みが増加

 課長として悩みを感じることについて、選択肢の中から当てはまるものを複数回答で選択してもらいました。前回調査と比較して、「部下の人事評価が難しい」(前回調査比4.6㌽増)、「部下の人事評価のフィードバックがうまくできない」(前回調査比4.5㌽増)、「部下が自分の指示通りに動かない」(前回調査比0.4㌽増)など部下に関する項目が増加しています。課長の悩みは、第2回調査(2012年12月調査)、第3回調査(2015年11月調査)に続き、3調査連続で「部下がなかなか育たない」が最多になりました。

【調査結果】

1.課長を取り巻く状況
・プレーヤーとしての業務はマネジメント業務に“支障がある” 約6割
・課長の悩み 「部下がなかなか育たない」が最多


1-1.管理する職場の状況
3 年前と比較した職場の状況を複数回答で尋ねたところ(P.12-13/問 1)、「業務量が増加している」(58.9%)が最も多く、次いで「成果に対するプレッシャーが強まっている」(37.5%)、「コンプライアンスのために制約が厳しくなっている」(36.5%)が上位 3 項目となりました。

第 1 回から第 4 回までの調査を比較すると、「業務量が増加している」、「コンプライアンスのために制約が厳しくなっている」、「メンバーの業務分担の偏りが大きくなっている」、「メンタル不調を訴える社員が増加している」、「労働時間・場所に制約がある社員が増加している」、「非正規社員が増加している」、「外国人社員が増加している」の 7 項目が過去最高となりました。業務量は増加する一方で、管理する職場は多様化しています。

1-2.プレーヤーとしての仕事の割合
職場のマネジメントを担う課長に、現在の仕事におけるプレーヤーとしての仕事の割合を 0%から 100%まで 10%刻みで尋ねました(P.14/問 2)。「0%」(プレーヤーとしての仕事は無い)と回答したのは全体の 0.8%にとどまり、程度の差はありますが 99.2%の課長がプレイングマネジャーとして業務を行っています。

1-3.マネジメント業務への支障
プレーヤーとしての役割がある課長に対し、「プレーヤーとしての業務がマネジメント業務に何らかの支障を与えているか」を尋ねました(P.15/問 3)。その結果、「全く支障はない」(10.7%)、「どちらかと言えば支障はない」(30.2%)、「どちらかと言えば支障がある」(45.0%)、「とても支障がある」(14.1%)となりました。プレーヤーとしての役割を持つおよそ 6 割の課長が、プレーヤー業務がマネジメント業務に“支障をきたしている”(「とても支障がある」14.1%+「どちらかと言えば支障がある」45.0%)と感じています。

1-4.課長の悩み
課長としての悩みについて複数回答で尋ねたところ(P.16-17/問 4)、第 2 回(2012 年 12 月調査)、第 3 回(2015 年 11 月調査)に続き、今回も「部下がなかなか育たない」(39.9%)が最多となりました。2 位は「部下の人事評価が難しい」(31.9%)、3 位は「職場の(or 自分の)業務量が多すぎる」(26.6%)となりました。今回、「求められる成果が出せていない」、「部下が自分の指示どおりに動かない」、「目標のハードルが高すぎる」の 3 項目が過去最高となりました。

・課長として組織の期待を大きく上回る 「他部門などとの調整役を果すこと」
・課長として組織の期待を大きく下回る 「長期的なキャリアを見据えた部下育成」


1-5.課長として組織から最も期待されていること
課長として組織から「最も期待されていること」を尋ねました(P.18/問 5)。上位 3 項目は、「職場運営の方向性を明確に示すこと」(24.4%)、「長期的なキャリアを見据えた部下育成」(20.9%)、「メンバーに適切に業務を分担すること」(20.1%)でした。

1-6.課長として組織の期待に最も応えられていること
こうした組織からの期待に対して、「最も応えられているもの」についても尋ねました(P.19/問 6)。その結果、1 位は組織からの期待と同様に「職場運営の方向性を明確に示すこと」(23.3%)となり、2 位は「メンバーに適切に業務を分担すること」(17.4%)となりました。3 位には「プレーヤーとして職場の目標達成に貢献すること」(16.2%)が入っています。

1-7.組織の期待と貢献度
問 5.6 を比較したところ、組織の期待を大きく上回ったのは、「他部門などとの調整役を果すこと」、「プレーヤーとして職場の目標達成に貢献すること」でした。一方、「長期的なキャリアを見据えた部下育成」は組織の期待が大きいものの、その期待を 11.0 ㌽下回り、「メンバーに適切に業務を分担すること」についても期待を 2.7 ㌽下回りました。プレーヤーとしての目標達成や他部門などとの調整役を果すことについては一定の貢献ができていると感じている一方で、長期的なキャリアを見据えた部下育成やメンバーへの適切な業務分担については、貢献できていないと認識している課長が多いようです。

2.部下(育成)について
・部下に不足している能力 「新しいアイデアを生み出す力」が最多
・部下育成は部長(上司)や人材開発部門ではなく、「自分(課長)が担うべき」との認識


2-1.職場の部下について
職場の部下についても尋ねました(P.20-21/問 7)。「自分よりも年上の部下がいる」は 50.9%で過半数となり、次いで「自分より職場の在籍年数が長い部下がいる」(37.2%)、「自分より仕事に関する専門性が高い部下がいる」(30.7%)となりました。

2-2.部下に不足していると感じる知識・能力・態度
「あなたの部下に不足していると感じる知識・能力・態度」は何かを複数回答で尋ねました(P.22/問 8)。
その結果、「新しいアイデアを生み出す力」(33.5%)、「課題を明確にする力」(28.9%)、「問題を把握する力」(26.6%)が上位 3 項目となりました。前回調査と比較すると「新しいアイデアを生み出す力」(前回調査比 3.1㌽増)、「問題を把握する力」(前回調査比 2.6 ㌽増)、「ストレスに対処する力」(前回調査比 1.3 ㌽増)などが増加しています。

2-3.部下育成における役割認識について
部下育成における役割分担についての認識を、選択肢ごとにそれぞれ[部長(上司)が担うべき/課長(自分)が担うべき/人材開発部門が担うべき]の 3 択で尋ねました(P.24/問 9)。

その結果、
「部下が担当する業務の指導」 [部長 7.7%、課長 87.0%、人材開発部門 5.3%]、
「部下の成長を考えた仕事の割り振り」 [部長 11.3%、課長 85.1%、人材開発部門 3.6%]、
「部下のキャリア形成支援」 [部長 15.2%、課長 55.0%、人材開発部門 29.8%]、
「部下の能力開発の機会提供」 [部長 14.4%、課長 47.0%、人材開発部門 38.6%]、
「部下のジョブローテーション」 [部長 35.6%、課長 45.5%、人材開発部門 19.0%]

となりました。全ての項目において、課長(自分)が担うべきだという回答が最多となりました。特に、「部下が担当する業務の指導」や「部下の成長を考えた仕事の割り振り」については、8 割以上が「課長(自分)が担うべき」という認識を持っています。

2-4.部下とのコミュニケーションに有効だと思う施策について
部下とのコミュニケーションに有効だと思う施策について尋ねたところ(P.25/問 10)、「飲み会」(57.2%)が最も多く、次いで「社内グループウエア」(22.0%)となりました。一方「有効だと思う施策はない」とする回答は 20.5%で、全体で 3 番目に高い数値となっています。

3.海外志向
・「どんな国・地域でも働きたい」約1割
・海外で働きたくない理由 「自分の語学力に自信がないから」


3-1.語学力(英語)・海外勤務経験・海外勤務期間
語学(英語)レベルについて尋ねた結果(P.26/問 11)、「ネイティブと変わらないレベルの会話ができる」(1.3%)、「交渉・折衝も含めてビジネス上で不自由しない程度の会話ができる」(6.8%)、「日常生活で不自由しない程度の会話ができる」(12.3%)、「海外旅行で不自由しない程度の会話ができる」(17.2%)、「ごく限られた場面で短いフレーズの会話ができる」(42.3%)、「全く会話ができない」(20.2%)となりました。

また、海外勤務経験の有無についても尋ねたところ(P.27/問 12)、「ある」(21.1%)、「ない」(78.9%)となりました。
業種別のクロス集計を見ると、「海外勤務経験がある」とする回答は製造業が最も多く、全体を 6.9 ㌽上回りました。海外勤務経験者の赴任期間は(P.28/問 13)、「5 年以上」17.2%、「4 年以上 5 年未満」7.9%、「3 年以上 4 年未満」13.2%、「2 年以上 3 年未満」15.9%、「1 年以上 2 年未満」23.8%、「1 年未満」21.9%でした。

3-2.海外志向
「海外で働きたいと思うか」という設問では(P.29/問 14)、「働きたいとは思わない」が 48.7%、「国・地域によっては働きたい」40.9%、「どんな国・地域でも働きたい」10.5%となりました。業種別に見ると、「働きたいとは思わない」は「金融・保険業」が全体を 16.8 ㌽上回り 65.5%、「どんな国・地域でも働きたい」は「サービス業」が全体を 11.1 ㌽上回り 21.6%でした。本学が 2017 年 10 月に発表した調査では、2017 年入社の新入社員は 60.4%が「働きたいとは思わない」 (『第 7 回 新入社員のグローバル意識調査』より) と回答しています。

3-3.海外で働きたい (地域・理由・不安)/海外で働きたくない(理由)
問 14 で「どんな国・地域でも働きたい」、「国・地域によっては働きたい」とした回答者に、働いてみたい地域を複数回答で尋ねました(P.30/問 15)。上位 3 項目は「北米」(59.0%)、「欧米」(58.4%)、「アジア」(51.5%)でした。
“海外で働きたい”理由については(P.31/問 16)、「日本ではできない経験を積みたいから」(59.2%)、「自分自身の視野を広げたいから」(59.0%)、「自分の能力を高めることができると思うから」(38.0%)となっています。海外勤務を命じられた際の不安は(P.32/問 17)、「現地の治安」(67.9%)が最も多くなりました。
「働きたいとは思わない」理由は(P.33/問 18)、「自分の語学力に自信がないから」61.6%、「生活面が不安だから」50.1)%、「海外に魅力を感じないから」(33.0%)となっています。

3-4.外国人[経営トップ/上司/部下/取引先]への抵抗感
外国人[経営トップ・上司・部下・同僚・取引先]への抵抗感については (P.34/問 19)、ポジションによる抵抗感に違いが見られました。“抵抗を感じる”(「抵抗を感じる」+「どちらかと言えば抵抗を感じる」)は、経営トップと上司は約 6 割、部下は約 5 割、同僚・取引先は約 4 割でした。

4.課長のこれから
・不足を感じる能力=「語学力」/今後強化したい能力=「戦略的にものごとを考える力」
・最終的になりたい立場 「プレーヤーの立場に戻る」過去最高


4-1.不足を感じる知識・能力
不足を感じている知識・能力について、選択肢の中から複数回答で尋ねた結果(P.35‐36/問 20)、「語学力」が最も多く 49.8%、以下「戦略的にものごとを考える力」(32.4%)、「上司を動かす力」(26.9%)、「財務・管理会計に関する知識」(23.7%)、「戦略経営/マーケティングに関する知識」(22.9%)となりました。
前回調査から大幅に増加した項目は、「自社の理念や価値観を語り継ぐ力」(前回調査比 4.7 ㌽増)、「職場の課題を形成していく力」(前回調査比 3.2 ㌽増)、「戦略経営/マーケティングに関する知識」(前回調査比 2.6 ㌽増)となりました。

4-2.今後強化したい知識・能力
今後強化したい知識・能力についても選択肢の中から複数回答で尋ねました(P.37‐38/問 21)。上位 3 項目は不足を感じている知識・能力と同じで「語学力」(31.0%)、「戦略的にものごとを考える力」(31.0%)、「上司を動かす力」(21.1%)でした。4 位は「部下を育成する力」(20.8%)、5 位は「職場の構想(ミッションやビジョン)を描く力」(20.5%)が続いています。前回調査と比較すると、「部下を適正に評価する力」(前回調査比 1.8 ㌽増)、「リスクマネジメントに関する知識」(前回調査比 1.3 ㌽増)などが増加しています。

4-3.最終的になりたい立場
最終的になりたい立場について尋ねました(P.40/問 22)。「経営者(社長)になる」4.3%、「役員クラスのポジションに就く」(10.2%)、「部長クラスのポジションに就く」(36.0%)、「現在のポジション(課長)を維持する」(35.0%)、「プレーヤーの立場に戻る」(14.5%)となりました。“出世を望んでいない”(「プレーヤーの立場に戻る」14.5%+「現在のポジション(課長)を維持する」35.0%)課長は全体の約 5 割で、前回調査とほぼ同じ結果となりました。


【調査概要】
調査対象 従業員数 100 人以上の上場企業に勤務し、部下を1人以上持つ課長
調査時期 2017 年 11 月 10~13 日 (4 日間)
調査方法 インターネットリサーチ
有効回答 717 人 (男性:692 人/女性:25 人)

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[産業能率大学]
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