インターネット上の医療・健康情報に関する調査(医師対象) 

2018年01月23日
Mediplatは、インターネット上の医療・健康情報に関して、医師530人を対象にアンケート調査を実施しました。

【調査の背景】

インターネット上の医療・健康情報の信頼性への疑問が呈される中、2017年12月6日にGoogle日本法人は、「医療・健康」に関する検索結果を改善するためWebサイトの評価方法をアップデートしたと発表しました。これにより、医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなると言います。こうした流れを受け、「医療の専門家である医師たちが、インターネット上の医療・健康情報についてどのような考えを持っているのか」について調査いたしました。

【調査結果のサマリー】

【1】「テレビ」「雑誌」「新聞」「インターネット」で発信される医療・健康情報の内、医師からの信頼が最も高いのは「インターネット」であった。誤った情報が混在している問題はあるものの、情報を見極めるリテラシーがあれば参考になる情報を取得できると評価。

【2】一方、医師の9割が、一般の人がインターネット検索で自分の症状に合った正しい情報にたどり着くのは「容易ではない」という考えを示した。同じ症状でも対象疾患は無数にあり、玉石混交の情報の中から自分に合う正しい情報を判断するのは困難と指摘。

【3】また、医師の8割が「自身の症状についてはインターネット検索よりもまずは医師など医療従事者に直接聞いてほしい」との考えを示し、3割の医師が「インターネット上の情報で自己診断・処置をした患者の対応に困った経験がある」と回答した。

【4】Googleのアップデートによる情報の改善可能性については、「分からない」という医師が7割と大半を占めた。また、高く評価されていく方針の「医師からの情報発信」に関しては、医師の9割が「(現状)発信していなく、今後も発信するつもりはない」と回答した。

【調査結果】

【1】「インターネット」における医療・健康情報は、他メディアよりも信頼性は高いと医師が評価
・「テレビ」「雑誌」「新聞」「インターネット」で発信される医療・健康情報の内、医師からの信頼が最も高いのは「インターネット」であり、66%の医師が信頼できると回答した。次いで「新聞」も過半数の53%が信頼できると回答したが、「テレビ」「雑誌」は過半数が信頼できないと回答した。(Q1)
・「インターネット」の情報は、質のばらつきへの指摘は最も多くあるものの、リテラシーさえあれば様々な情報の中から信頼できる情報を選択できる可能性があることを評価されていた。
・「新聞」は他メディアと比較して事実が掲載されている可能性が高いと評価されており、「テレビ」や「雑誌」は、視聴者や読者の関心を引くために「大げさに」報じることが多いという意見が多かった。

Q1 「各メディアの医療・健康情報は総合的に見て信頼できるか?」

<インターネット>
・玉石混交だか、選別能力があれば利用価値はある。(50代、麻酔科)
・真実とウソの情報をきちんと選択すれば、信頼できる情報も多くあると思います。(40代、泌尿器科)
・情報はあるが、正しいかどうか、自分に合った情報かどうかの判断ができなければ意味がない。(30代、神経内科)
・玉石混淆で、書いている人間も責任をもって書いているわけではない。(50代、一般内科)
・出所が分からない情報が多い。(40代、神経内科)

<新聞>
・雑誌やテレビよりは吟味されている。(50代、老年内科)
・事実誤認は少ないと思う。しかしたぶん誤解して伝わっている。(60代、一般内科)
・疾患について綿密に取材していると感じられる記事もある。(50代、精神科)
・医療関係者が書いたものは正しいかもしれないが、記者が書いたと思われる物は意味不明のものも多い。(60代、リハビリテーション科)

<テレビ>
・番組によりかなり信頼度が異なります。(40代、泌尿器科)
・極端な事を言ったりするからそれで患者さんが沢山受診して困ることもある。(30代、呼吸器内科)
・視聴率を上げるため、非常に珍しい疾患や状態を取り上げることが多い。(70代、一般内科)
・正しいと思うときもあるし、これは?と思うこともあります。(40代、眼科)
・患者さんは影響を受けやすいので、大げさに情報提供しないで欲しい。(40代、産婦人科)

<雑誌>
・文責がはっきりしていて引用文献が書いてあればよい。(50代、血液内科)
・読者の興味を引くため大げさな内容が多い。(50代、脳神経外科)
・偏った考えの医師の意見を扱う雑誌があり、信頼できない情報が多いです。(40代、呼吸器外科)
・一般論は、多くの個別の症例には合わない。雑誌では一般論しか書けない。(50代、代謝・内分泌科)

【2】「インターネット検索」で自分に合った医療情報にたどり着くのは「容易ではない」
・「一般の人がインターネット検索で自分の症状に合った正しい情報にたどり着けるか?」について、半数が「たどり着くのは難しい」、4割が「たどり着けるがコツが必要」と回答し、医師の9割が「容易ではない」という考えを示した。(Q2)
・正しい情報にたどり着くためには、情報源を見極めると同時に、インターネットの情報はあくまで参考として、最終的には専門家に相談することを推奨する声が多かった。信頼できる情報源としては、医療機関や学会、製薬会社、厚労省などの公的機関が運営しているサイトが多く挙がった。(Q3)
・疑わしいサイトの傾向としては、何かしらの商品の宣伝や購買につながっていたり、断定的な表現の多いもの、情報の出所が明記されていないもの、などが挙がった。(Q4)

Q2 「一般の人がインターネット検索で自分の症状に合った正しい情報にたどり着けるか?」

<コメント抜粋>
「たどり着くのは難しい」
・情報の信頼性を一般の人が判断するのは難しいと思う。(50代、精神科)
・同じ症状でも疾患は無数にあります。(50代、一般内科)
・悪い情報ばかり目についてしまうようです。(30代、産婦人科)
・症状のみからは医療従事者でも難しい。(50代、呼吸器内科)

「たどり着けるがコツが必要」
・基礎知識が抜けているので思い込みが激しいと失敗しますね。(50代、健診・予防医学)
・誤った情報が氾濫しているから。(50代、脳神経外科)
・不安を煽る内容に踊らされないことが大切。(50代、一般内科)

Q3 「一般の方が、医療・健康情報をインターネット検索して正しい情報にたどり着くためには、どのような点に注意すればいいと思いますか?」
・ネット情報が、自身のためだけに提示されたものではないことを考えて参考にする。(50代、一般内科)
・参考程度にとどめて、実際の診察をうけることが重要。(40代、小児科)
・キャッチコピーみたいな表現に惑わされない。(50代、一般内科)
・都合の良いものだけを選ばない。情報が正しいかを専門家に確認するのが重要。(50代、一般内科)
・中立で、一般的に信頼されている医療施設や製薬会社などの医療情報サイト、厚生労働省HPなどを利用すること。(50代、一般外科)

Q4 「疑わしいと感じる医療・健康情報サイトには、どのような傾向があると思いますか?」
・良い事しか書いていない、あるいは不安をあおるような内容のサイト。(60代、腎臓内科・透析)
・センセーショナルだったり、過度に断定的な言い方をするサイトは疑わしく思います。(40代、精神科)
・一般的に言われている事は間違っているんだみたいな表現で、人の気をひく。(40代、一般内科)
・何らかの商品を購買させようと導くもの。(50代、小児科)
・科学的根拠の出典が全くない。(60代、小児科)
・個人の信条や推測のみを述べ出典がはっきりしないもの。(50代、救急医療科)

【3】自身の症状については「ネット検索よりもまずは医師など医療従事者に直接聞いてほしい」
・医師の約8割が、「自身の症状はインターネットで検索するよりもまず医師など医療従事者に聞いてほしい」と意向を示した。誤った自己診断で治療が遅延する可能性を指摘する声や、思い込みを後で修正するのが大変だという声が多かった。(Q5)
・実際に、「インターネット検索で自己診断・処置してきた患者さんの対応に困った経験がある」医師は3割だった。薬の副作用情報を見て勝手に服薬を中断し、症状が悪化したり、ネットの情報で思い込んだ自己診断を疑わず、医師の診断を聞き入れなかったりするケースが多かった。(Q6)

Q5 「自身の症状をインターネットで検索して自己診断するのではなく、まずは医師など医療従事者に聞いてほしいと感じますか?」

<コメント抜粋>
「そう思う」
・治療の遅れにつながることがあるので。(30代、一般外科)
・適切な治療を適切なタイミングで始めることが大切だから。(40代、代謝・内分泌科)
・変な先入観が入ると修正不能になる。(50代、一般外科)
・たとえ専門外でも、概ねどの診療科を受診すればよさそうかなどはアドバイスできるから。(20代、健診・予防医学)

「そう思わない」
・ある程度知識があった方が診察しやすい場合もあります。(30代、精神科)
・ある程度自己学習した上での受診はよい。ただし、思い込みは注意。(60代、アレルギー科)
・いつもちょっとした症状のことで外来で相談されていたらこちらは実際に病気の人を見る暇がなくなってしまいます。(40代、一般外科)

Q6 「自分でインターネットで調べた医療・健康情報をもとに自己診断や処置をした患者さんの対応に困ったことはありますか?」

<「ある」場合の具体的な状況(抜粋)>
・薬の副作用について過大に不安をあおり、服薬が中断し、安定していた病状が悪化したことがある。(50代、一般内科)
・ネットのチェックシートで自分で勝手にADHDと診断して、特定の薬剤を要求された。(40代、精神科)
・民間療法を信用してこちらからの治療を拒否。(70代、神経内科)
・発達障害に対して、的外れな方針で育児を歪め、問題行動が激しくなっている例は幾らでもあります。(50代、精神科)
・困ったほどではないが、特に健康食品やサプリなどの乱用を感じたことはあった。(50代、一般内科)

【4】医師の大半は、インターネット上での医療・健康情報の発信に積極的ではない
・2017年12月に発表されたGoogleのアップデートについて、医師の7割はこれによってインターネット上の医療・健康情報が改善されるかどうかは「分からない」と回答。経過を見ないとまだ分からないという声が多いと共に、結局は情報の受け手の判断能力が求められるという声も多く見られた。(Q7)
・Googleの検索表示において優先される方針の医師からの情報に関して、「自身で医療・健康情報を発信している医師」はわずか6%に留まり、9割の医師が今後の発信についても消極的だった。(Q8)

Q7 「2017年12月にGoogleが発表したWEBサイトの評価方法の変更によって、インターネット上の医療・健康情報は改善されると感じますか?」

<「分からない」のコメント抜粋>
・一般の人は自分の意向に沿うサイトを探すから。(50代、小児科)
・一定期間のモニタリングが必要。(50代、その他)
・個人が(情報を)判断するのは元々難しい。(50代、一般内科)
・それで患者が自己判断していいということにはならない。(30代、産婦人科)
・誰がどうチェックするのか、それが正しいかわからない。(40代、眼科)

Q8 「ご自身は、インターネット上で一般向けに医療・健康に関する情報を発信していますか?」

<「今後も発信するつもりはない」のコメント抜粋>
・患者ごとに違いがあるから発信していない。(60代、精神科)
・下手に発信すると逆に攻撃されるかもです。(50代、産婦人科)
・対面以外で物事を正しく伝えるのは難しい(相手の反応や理解度が確認できない)ので。(50代、一般外科)
・誤った捉え方をされないようにするのが難しい。(60代、泌尿器科)
・とてもそんな時間的余裕はない。(50代、精神科)


【調査概要】
調査対象:医師専用コミュニティサイトMedPeerに会員登録をする医師
有効回答:530人
調査期間:2017/12/20 ~ 2017/12/21
調査方法:インターネット調査

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