診療明細書に関する患者調査2017(直近1ヶ月間に診療所で受診した全国の30歳以上の男女) 

2017年12月06日
連合(日本労働組合総連合会)は、診療所における診療明細書発行の実態を把握するため、2015年に続いて2回目の「診療明細書に関する患者調査」をインターネットリサーチにより、2017年8月8日~8月10日の3日間において実施し、直近1ヶ月間に診療所で受診した全国の30歳以上の男女1,000名の有効サンプルを集計しました。(調査協力機関:ネットエイジア株式会社)

※1 医療法上の定義で「診療所」とは、入院設備がない、あるいは入院できる患者定員が19名以下(19床以下)である医療機関のこと。(20名以上の場合は「病院」と定義されています。)


【調査結果サマリー】

◆診療所における診療明細書の受け取りについて (P.2~P.3)
・診療所で診療明細書を「受け取らなかったことがある」6.7% 2015年調査から減少
・診療明細書を受け取らなかった理由 6割強の人が「出されなかったから」と回答

◆診療明細書の内容に対して感じること (P.4)
・診療明細書の内容に対する印象
 「個々の医療の値段に関心を持った」約5割、「項目名がわかりにくい」2割半
 「後で調べるために使える」や「診療内容に関心を持った」という声も

◆受け取った診療明細書の活用方法について (P.5~P.6)
・診療明細書の活用方法 「病気の記録として保存」約4割、「家計管理」2割強
 高齢者のほうが診療明細書を活用している傾向 65-74歳では約4人に3人が活用
 診療明細書を病気の記録として活用している人が65歳以上では2015年調査より大幅に増加
・診療明細書と医療費通知で「金額の不一致があった」8.3% 2015年調査の1.8%から上昇

◆診療明細書の発行義務免除について (P.7~P.8)
・診療明細書の発行義務免除に対する意識 「常勤医師が高齢の場合でも発行すべき」4割強
 「システム改修が必要な場合でも発行すべき」と
 「窓口自己負担が無料の場合でも発行すべき」は3割強
・診療明細書を活用している人では「常勤医師が高齢の場合でも発行すべき」は約5割に 

【調査結果】

~~診療所における診療明細書の受け取りについて~~
◆診療所で診療明細書を「受け取らなかったことがある」6.7% 2015 年調査から減少
◆診療明細書を受け取らなかった理由 6割強の人が「出されなかったから」と回答

直近1ヶ月間に診療所で受診した全国の30歳以上の男女1,000名(全回答者)に、診療明細書の受け取り状況について聞きました。
まず、全回答者(1,000名)に、直近1ヶ月間に診療所で受診した診療科を聞いたところ、「内科」53.4%、「歯科」22.9%、「整形外科」14.5%、「眼科」12.6%、「皮膚科」10.7%となりました。

続いて、直近 1 ヶ月間に診療所で受診した際に、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取ったか聞いたところ、「毎回、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取った」が 90.5%となった一方、『受け取らなかったことがある(計)』は 6.7%(※2)となりました。
2015年調査と『受け取らなかったことがある(計)』を比較すると、2015年9.9%→2017年6.7%となりました。診療明細書を受け取らなかったことがある人は、2015 年調査でも 1 割程度でしたが、さらに少なくなっているようです。
※2 「診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取らなかったことがある→支払合計額だけ書かれた領収書を受け取ることがあった」5.3%と「診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取らなかったことがある→支払合計額だけ書かれた領収書も受け取っていない」1.4%の合計

それでは、診療明細書を受け取ったとき、また、受け取らなかったときは、どのような状況だったのでしょうか。
毎回、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取った 905 名に、診療明細書を受け取った時の状況を聞いたところ、「何も言わなくても診療明細書が出された」94.5%となりました。他方、「自分から診療明細書を出すよう求めた」(2.3%)といった自分から依頼して受け取った人や、「医療機関から『診療明細書は必要ですか?』と聞かれた上で出された」(3.0%)といった必要かどうか確認されたうえで受け取った人も、僅かではあるもののみられました。診療明細書の発行に積極的ではない診療所もあるようです。

次に、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取らなかったことがある 67 名に、診療明細書を受け取らなかった理由を聞いたところ、「診療明細書が出されなかったから」が 62.7%、「何も言わなくても診療明細書が出されたが、不要だから断った」11.9%、「医療機関から『診療明細書は必要ですか?』と聞かれたので断った」16.4%、「その他」9.0%となりました。断って受け取っていないのではなく、診療明細書が出されなかったという人が多数派のようです。


さらに、診療明細書を受け取らなかった理由を「出されなかったから」とした 42名に、出されなかった時にどうしたか聞いたところ、「特に気にせず、何もしなかった」が 76.2%で最多回答でしたが、「なぜ診療明細書が出されないのか気になったが、言い出せなかった」が 21.4%、「診療明細書を出すようお願いしたが、もらえなかった」が 2.4%となりました。気になったものの言い出せなかったという人は少なくないようで、また、お願いしたにも関わらずもらえなかったという人もいることが明らかになりました。


~~診療明細書の内容に対して感じること~~
◆診療明細書の内容に対する印象 「個々の医療の値段に関心を持った」約5割、「項目名がわかりにくい」2割半

「後で調べるために使える」や「診療内容に関心を持った」という声も
毎回、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取った 905 名に、受け取った診療明細書の内容について、どのようなことを感じているか聞いたところ、最も多かったのは「診療内容の個々の項目の点数(単価)が記載されているので、個々の医療の値段に関心を持った」で 48.8%、以下、「診療内容の個々の項目名が聞き慣れないのでわかりにくい」26.4%、「診療内容の個々の正式名称が記載されているので、後でいろいろと調べることができると思った」17.3%、「診療内容に今まで以上に関心を持った」16.0%が続きました。個々の医療の値段や診療内容に関心を持った人がいた一方で、聞き慣れない項目があってわかりにくいという人もみられるなど、患者にとってわかりやすい診療報酬項目としていくことや、診療報酬の簡素化が課題であると言えます。

~~受け取った診療明細書の活用方法について~~
◆診療明細書の活用方法 「病気の記録として保存」約4割、「家計管理」2割強
高齢者のほうが診療明細書を活用している傾向 65-74歳では約4人に3人が活用
診療明細書を病気の記録として活用している人が65歳以上では2015年調査より大幅に増加
◆診療明細書と医療費通知で「金額の不一致があった」8.3% 2015年調査の1.8%から上昇

では、受け取った診療明細書は、どのようなことに活用されているのでしょうか。
毎回、診療明細書(または内訳がわかる明細が付記されている領収書)を受け取った 905 名に、受け取った診療明細書の活用方法を聞いたところ、「病気の記録として保存している」が最も多く 37.0%、「家計管理に活用している」が 21.4%、「受けた診療内容と一致しているかチェックしている」が 12.5%、「医薬品や検査の名称をみてインターネット等で調べ、医療の知識を深めている」が 9.8%、「保険者(健康保険証の発行者)から後日送付される医療費通知と照らし合わせてチェックしている」が 8.0%になるなどし、活用している人の割合を算出すると 63.9%となりました。

受け取った診療明細書を活用している人の割合を年齢層別にみると、65-74 歳では 73.2%、75 歳以上では 65.9%と、他の年齢層と比べて高くなりました。高齢者のほうが、受け取った診療明細書を活用しているようです。

また、受け取った診療明細書の活用について、前回調査(2015 年調査)と比較をすると、「病気の記録として保存している」では、2015 年 23.8%→2017 年 37.0%と 13.2 ポイントの上昇となりました。受け取った診療明細書を活用して、自身の受診歴や病歴を把握していこうと考える人は増えているようです。
年齢層別にみると、65-74 歳と 75 歳以上では 20 ポイント前後上昇していました。


続いて、毎回、診療明細書を受け取り、診療明細書と医療費通知を照らし合わせてチェックしている 72 名に、チェックした際に、金額が一致しなかったことがあったか聞いたところ、「金額が一致していないことは、なかった」が72.2%となった一方、「金額が一致していないことが、あった」が 8.3%となりました。診療明細書と医療費通知を照らし合わせた人の約 1 割が、金額不一致の経験をしていることがわかりました。
2015 年調査と「金額が一致していないことが、あった」を比較すると、2015 年 1.8%→2017 年 8.3%となっており、2年前よりも増えている様子がうかがえました。


~~診療明細書の発行義務免除について~~
◆診療明細書の発行義務免除に対する意識 「常勤医師が高齢の場合でも発行すべき」4 割強
「システム改修が必要な場合でも発行すべき」と「窓口自己負担が無料の場合でも発行すべき」は 3 割強
◆診療明細書を活用している人では「常勤医師が高齢の場合でも発行すべき」は約 5 割に

診療所では、以下のような場合、診療明細書を出さなくてもよいとされています。
・常勤医師が高齢(※3)の場合
・診療明細書を発行するためにはシステム改修が必要な場合
※3 レセプト・コンピュータを使用している診療所の常勤医師は、生年月日が 1945 年 7 月 2 日以前の場合、レセプト・コンピュータのない診療所の常勤医師は、生年月日が 1946 年 4 月 2 日以前の場合また、診療所に限らずすべての医療機関は、子どもの医療や生活保護を受ける医療など、窓口自己負担が無料の場合、診療明細書を出さなくてもよいとされています(※4)。
※4 ただし、患者の求めがあれば、診療明細書を発行することが努力義務とされている

そこで、全回答者(1,000 名)に、このような発行義務免除について、どう思うか聞いたところ、「常勤医師が高齢の場合でも例外なく無料発行すべき」42.5%、「システム改修が必要な場合でも例外なく無料発行すべき」31.6%、「窓口自己負担が無料の場合でも例外なく無料発行すべき」32.8%となり、「いずれの場合も、例外としてやむを得ない」は 35.4%でした。
ここで、診療明細書の活用状況別にみると、活用している人では「常勤医師が高齢の場合でも例外なく無料発行すべき」が 48.3%と約 5 割だったのに対し、活用していない人では 32.7%にとどまりました。また、「システム改修が必要な場合でも例外なく無料発行すべき」と「窓口自己負担が無料の場合でも例外なく無料発行すべき」は、活用している人では、それぞれ 37.3%、37.2%と約 4 割になりましたが、活用していない人では、それぞれ 22.0%、25.5%と 2割台にとどまりました。診療明細書を活用している人ほど診療明細書の発行義務免除に対し厳しい目を向けているようです。


では、どのような理由から、例外なく無料発行すべきだと考えられているのでしょうか。
「いずれの場合も、例外としてやむを得ない」と回答した人を除く 646 名の回答をみると、常勤医師が高齢の場合では「高齢は理由にならない。患者には医師の年齢は関係ない」(男性・50-64 歳)や「レセプトや精算は医療事務が行うため、医師が高齢でも支障はない」(女性・30-39 歳)、システム改修が必要な場合では「代替手段があるはず」(75 歳以上)や「コストをかけてでも発行すべき」(女性・65-74 歳)、窓口自己負担が無料の場合では「自己負担はなくても治療費は発生しているはず」(男性・30-39 歳)や「自己負担はなくても患者は患者である」(女性・65-74歳)といったことが理由として挙げられました。


「連合調べ」

【調査概要】
・調査タイトル :診療明細書に関する患者調査2017
・調査対象 :ネットエイジアリサーチのモニター会員を母集団とする直近1ヶ月間に診療所(※)で受診した全国の30歳以上の男女
 ※医療法上の定義で「診療所」とは、入院設備がない、あるいは入院できる患者定員が19名以下(19床以下)である医療機関のこと。
・調査期間 :2017年8月8日~8月10日
・調査方法 :インターネット調査
・調査地域 :全国
・有効回答数 :1,000サンプル
(内訳)
 男性:500名(30-39歳 100名/40-49歳 100名/50-64歳 100名/65-74歳 100名/75歳以上100名)
 女性:500名(30-39歳 100名/40-49歳 100名/50-64歳 100名/65-74歳 100名/75歳以上100名)

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