若年者の離職状況と離職後のキャリア形成 (若年者の能力開発と職場への定着に関する調査) 

2017年02月14日
労働政策研究・研修機構は、若年者の離職状況と離職後のキャリア形成(若年者の能力開発と職場への定着に関する調査)を発表。

【概要】
研究の目的
若年正社員の離職状況および離職後のキャリア形成状況を把握し整理することで、若年者が安定的かつ健全にキャリアを形成できる職場の条件および社会のあり方を探索することを目的とする。

研究の方法
Webモニターアンケート調査「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」

調査時期:平成28年2~3月調査対象:以下の条件に全て該当する人が本調査へ進むようスクリーニング調査を実施
1.生年月:1982年4月~1995年3月生まれ(調査時21~33歳)
2.職歴:正社員として勤務した経験が1回以上ある人
3.最終学歴:高校、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)、大学、大学院修士課程を卒業(修了)または中退した人
4.離学時期:2007年3月~2013年3月に離学(卒業・中退)
回収時には、「就業構造基本調査(総務省統計局2012年10月1日実施)」の特別集計の結果(JILPT 2014)をもとに、性・年齢層・学歴ごとに回収目標数を割付けた。

【主な事実発見】

1.学校卒業後初めて正社員として勤務した会社等(以下「初めての正社員勤務先」と略す)を離職した若者には、女性・低学歴層・中退者など労働市場で不利な属性をもつ人が多い。ただし新卒時の円滑な就職と離職とは関係がない。

2.離職者と勤続者の「初めての正社員勤務先」での経験を比べると、離職者は長時間労働者が多く、採用時に聞いた労働条件と現実とが異なる人が多い。また離職者は、「残業代の不払い」「人手不足」「希望した日に有給休暇が取れない」など多様な職場トラブルの経験者が多く(図表1)、女性では「結婚・出産・育児・介護を理由に辞めるよういわれた」人の86.8%が、男性では「暴言・暴力・いじめ・嫌がらせ」を受けた人の49.5%がその後離職している。

3.離職者には採用後3ヶ月間に「指示が曖昧なまま放置され、何をしたらよいか分からな」かった人や、「先輩社員と同等の業務を初めからまかせられた」人が多い。また高校卒男性は「歓迎会」をしてもらった場合、専修・短大・高専卒男性は「他事業所・他部署の人に紹介された」場合に勤続傾向が高まるのに対し、低学歴層の女性では若者側から「分からないことがあったとき自分から相談した」「希望の仕事内容や働き方を伝えた」「働きぶりに意見・感想を求めた」場合にむしろ離職傾向が高まることから、上司や先輩社員の側からのコミュニケーションの不足が離職の一因である可能性が示唆された。

4.「初めての正社員勤務先」の勤続期間が同じである人同士を比べると、男女とも勤続者は採用直後から現在までにあらゆる行動特性への自己評価が高まるのに対し、離職者は自己評価が上がる人と下がる人がいる。

5.性別・学歴問わず多い離職理由(図表2)は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」であり、この理由を挙げた人のうち現在他の会社等で正社員として働いている人は、男女とも労働時間が大幅に短くなっている。また特に男性で「キャリアアップ」「やりたい仕事とは異なる」ことを理由とする人が多く、その人たちはこれらの理由と整合的な転職をした傾向が高いことから、若年期の離職にはよりよい状況を試行錯誤しながら模索するポジティブな一面もあるといえる。一方、女性の離職理由は学歴問わず「結婚・出産」が最多だが、上記2)より会社から強要されたケースも含まれると推察され、額面通りにだけ受け取るべきではない。

6.「初めての正社員勤務先」離職者の離職後1年間の状況を見ると、男性では正社員として働いていた者が6割弱、正社員以外の雇用形態で働いていた者が約3割で、女性では、正社員は約3割、正社員以外の雇用が4~5割であった。調査時点においては男性では正社員比率がやや高まる一方、女性は正社員も正社員以外の雇用も減少し、もっぱら家族の世話などをしている人が増えた。初めての正社員勤続期間によって就業状況は異なり(図表3)、短期で離職した人ほどいずれの時点においても正社員割合は小さく、また、現在の勤務先に対する満足感は、1年未満の早期離職をした男性において特に低い傾向がみられた。1年未満の特に早い離職については、その後のキャリアに与える影響も大きいと考えられる。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[労働政策研究・研修機構]
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