日本動画協会は、アニメ産業の調査及び統計・分析を行って、この調査結果を内外に広く発信することを目的に2009年より「アニメ産業レポート」を発行しております。
今回の「2016年版」では、2015年のアニメ産業市場が中国のWeb正式配信への配信権販売などの続伸(前年比178.7%)、ライブ分野の成長(前年比168.4%)により、総額1兆8,255億円(前年比112.0%)と算出しています。

さらなる拡大を続けるアニメ産業、6年連続続伸、3年連続最高売上更新

2009年のボトムから2010年から反転しはじめたアニメ産業市場が6年連続続伸、3年連続最高売上更新という状況となった。内容的にはビデオ(90.9%)と商品化(88.4%)が大幅ダウン、TV(96.8%)と遊興(98.7%)が微減に対し、映画(112.0%)と音楽(108.9%)、配信(107.1%)が好調、ライブエンタテイメント(168.4%)と海外(178.7%)が大躍進といった内訳となった。

2015年〜2016年アニメ産業界トピックス

〈キッズ・ファミリーアニメと深夜アニメの逆転〉
遂に来るべき時が来たというか、キッズ・ファミリーアニメ(全日帯放送)と深夜アニメ(深夜帯放送)の制作分数が逆転した。日本のアニメ史上初めてのことであるのはもちろん、世界でも初めてのことであるが、これが日本独自の現象であるのは、日本以外の国々では未だにアニメは子どものものというのが常識だからである。そんな社会通念を覆す日本のアニメはまさに「クールジャパン」を象徴しているかのように思える。 

今回のキッズ・ファミリーアニメと深夜アニメとの逆転は世界的なアニメの方向性を示唆するものと考えられる。日本は大人向けアニメ制作とそのマーケティングに関して圧倒的な優位性を持っている。「海外動向」の項目で「子供向け作品の増加に留まらずティーン以上の年齢層向けや家族向けの作品制作が増えつつある」といった指摘があったが、日本だけでつくられている大人向けの領域についてはブルーオーシャン状態でありほぼ独占状態にある。現在ネットをキーワードとするビジネスモデルが誕生しつつある中で、日本の産業界としてはこの領域のアニメが海外で持つ可能性をもっと意識してもいいのではないか。いずれにせよ、深夜アニメがマイナーな領域だという認識を改めなければならない時代が訪れた。日本が先導するこのモデルはやがて世界に浸透していくと思われる。

〈海外販売大幅に増加〉
2015年における海外販売は、契約数が前年度の4倍となり、「アニメ産業が積極的に海外市場に対応を始めた年になったといってよいだろう」と本書の「海外動向」に叙述いただいたように、大幅な増加を見せた。過去3年間に渡って輸出額(業界海外売上)の横ばい状態が続いていたところが、突如195億円から349億円と1.79倍となり、過去最高だった2005年の313億円超え、正直唐突な感が免れない史上最高売上となったが、その大きな要因は中国の「爆買い」にあると思われる。もちろん北米やアジア諸国の売上も伸びてはいるが、おそらくはその成長の半分以上は中国が要因と思われる。このことは「市場動向概観」の項目にある制作会社の自由回答からもうかがえるが、ここ2~3年アニメ業界内に潜伏していた状況が2015年になって一気に表面化したと言えるであろう。
アニメ産業にとってはまことに慶賀すべきことではあるが、一方で新たな「バブル」である可能性も否定できない。特に中国においては全ての産業が政治に従属しており、文化産業もその時々の社会状況に翻弄されるという側面が強い。文革については論を俟たないが、近年の尖閣列島抗議デモ、韓国の「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配置による韓流スターやコンテンツに対する報復措置など枚挙に暇がない。中国では政治の干渉・介入とは無縁で市場が推移するとは考えにくく、今回の「バブル」も2006年に施行された政府の規制(ゴールデンタイムにおける海外アニメの放映禁止令)がネットにも適用されれば一気に瓦解する可能性も否定できない。

〈ライブエンタテイメント大躍進〉
ライブエンタテイメントの躍進が止まらない。算出を開始した2013年からわずか3年間でほぼ2倍近の市場となった。その2015年のライブエンタテイメント市場は523億円、前年度比168.4%の大幅アップ。これは調査の精度が上がったこととも関係があるが、国内の総合ライブエンタテイメント市場(アニメ関連ライブエンタテイメントを含むコンサート、ステージ・演劇関連売上)そのものが(特に音楽)、2012年の3,334億円から3年で151%アップの5,030億円と急激に伸びていることと大いに関連があるものと思われる。
同時にアニメミュージアムやアニメ関連展示会、アニメカフェといった非ステージ系のライブエンタテイメント領域も盛況である。売上的にはステージ系には及ばないものの確実な成長を遂げている。アニメも観て楽しむものから体験して感じるものへと変化をしているようだ。アニメ作品やキャラクターとの一体感が得られるこの市場は、モノから体験という時代の要請の中でまだまだ発展しそうな気配である。
ただし、この中にはコンサートやイベント、ミュージアムや展示会場における物販売上はカウントされていない。ケースによってはチケット以上とされる物販売上を併せると、ライブエンタテイメントは一千億円の市場規模となっている可能性が十分あるだろう。 

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