長時間労働に関する実態調査(20~30代の若手世代の正社員対象) 

2017年07月20日
リクルートマネジメントソリューションズでは、20~30代の若手世代の正社員を対象とした「長時間労働に関する実態と意識調査」を実施し、結果を公表いたしました。

【背景・目的】

世界的に見て長い傾向のあった日本の労働時間は、1980年代後半をピークに減少してきました。
しかし、これは非正規社員などの短時間労働者の増加によるところが大きく、フルタイム社員の労働時間は、あいかわらず長いままだと言われています。
そこで本調査では、対象を週5日以上勤務の20~30代の正社員に限定し、労働時間についての実態と意識を調査いたしました。

【調査結果サマリー】

・男性の長時間労働が目立ち、過労死ライン越えも約1割
・長時間労働者の7割超が「もっと短い方が望ましい」
・働き方の自由度が時短につながらないケースも
・労働時間を短くしたくない理由は「報酬を維持したい」
・ムダな労働時間は省き、仕事以外の生活を充実させたい

【調査結果】

■男性の長時間労働が目立ち、過労死ライン越えも約1割

まず、労働時間の実態を確認した(図表2)。平均月間労働時間は、男性の最頻値が180時間以上200時間未満(24.2%)、女性は160時間以上180時間未満(40.2%)で、週5日勤務の正社員、一般職と限定したなかでも、女性より男性の方が長時間労働の傾向が見られた。200時間以上の割合は、女性が2割弱(18.5%)に対して、男性は4割強である(42.4%)。また、過労死ラインを越えるレベル(240時間以上:月の労働日を20日とした場合、1日12時間労 働・4時間の時間外労働)も、男性では1割を超えて(12.9%)出現した。

職種群別(営業、サービス、スタッフ、技術)では、200時間以上を合計した割合が最も多いのは、営業(全群平均30.5%に対して38.7%)、次いでサービス(31.1%)だった。

■長時間労働者の7割超が「もっと短い方が望ましい」

次に、労働時間についての希望を尋ねた結果が図表4である。ここからは、図表3のように、労働時間7群を、A、B、 Cの3群に括り、傾向を見ていく。

労働時間が長いA群では実に7割超(71.4%)、B群C群でもそれぞれ4割超(42.2%)、3割超(32.9%)が「もっと短い方が望ましい」と回答した。望ましいと思う労働時間の最頻値は160時間以上180時間未満だった(図表5)。

「もっと短い方が望ましいと思う理由」としては、図表6のとおり、A~C群とも「もっと時間的に余裕のある生活をしたいから」が最も多かったが、A群では、次いで「心身の疲労が限界に達している、達しつつあるから」が6割弱(57.4%)と他群より多い。一方、B群では、「他にやりたいことがあるから(65.3%)」が多かった。

もっと短くしたいのに「短くできない理由」についても聞いた(図表7)。A~C群に共通して最も多いのは「仕事量が多いから」だが、A群では、次いで「突発的な予定、相手の都合(55.7%)」「ゆとりのない納期(43.5%)」「高いノルマ・目標(34.8%)」と、仕事の特徴や目標設定に関する項目が挙がった。

満足度との関係では、この群(もっと短い方が望ましいと思うA群)は、「上司への満足(6件法で平均3.37に対し2.96)」 「会社への満足(平均3.27に対し2.90)」が他群より特に低いのが目立った。

■働き方の自由度が時短につながらないケースも

一方、B群では、2位に「自分で労働時間を決められないから(34.7%)」と、働き方に関する項目が選ばれた。仕事量が多くて帰れない面もあるものの、仕事が早く終わった場合などに柔軟に退社できるなら、労働時間をもっと短くできるはずだと示唆しているように見える。

しかし、図表8からは、別の可能性も読み取れる。労働時間の長いA群は、他群よりも「働く時間や場所について、制約が少なく自己裁量の余地がある」と回答する割合が高い。また、A群では、プロセスよりも「成果で評価される」と回答する割合も、他群より高いことが見て取れる。働き方の自由度が高くても、成果で評価される場合には、長時間労働になる可能性が考えられる。

■労働時間を短くしたくない理由は「報酬を維持したい」

ここまで、労働時間の希望として「もっと短い方が望ましい」と回答した群について述べてきたが、「今と同じでよい」と回答した群(A群24.8%、B群53.7%、C群63.0%)についても、そう思う理由を尋ねている(図表9)。労働時間の長いA群で最も多かったのは、「今の給与水準を維持したいから(62.5%)」で、他群よりも高かった。報酬への欲求が、長時間労働を容認する個人側の最も大きな要因の1つだといえそうだ。

一方、A群では「仕事にやりがいを感じる(20.0%)」「自分の成長に役立つ(17.5%)」といった項目も、他群より高い傾向が見られ、自己実現や成長への欲求が長時間労働につながるケースも一定数あることを示唆している。

なお、この群(今と同じでよいと思うA群)は、「職場への満足(平均3.40に対し4.23)、「会社への満足(平均3.27に対し4.13)」が他群より特に高い傾向があった。

■ムダな労働時間は省き、仕事以外の生活を充実させたい

以上、現状の労働時間、望ましい労働時間やその理由、望まない長時間労働を回避できない理由などについて確認した。

次に、少し視点を変えて、今回の調査対象である20~30代が、労働や労働時間について、どのような考えをもっているかを尋ねたのが図表10である。

「ややあてはまる~とてもあてはまる」の合計で見ると約8割が「自分にとって『働く』とは、主に生計を維持するための営利的な活動である」「仕事以外の生活を充実させたいので、仕事はほどほどにしたい」「労働時間ではなく、成果で評価してほしい」と回答している。「打ち込める仕事であれば」 「報酬や昇進・昇格のためなら」長時間労働を厭わないという回答も少なからず見られるものの、ムダな労働時間は省き、仕事以外の人生も充実させたいという価値観が大勢を占めているといえるだろう。

長時間労働の是正のための法律や各社制度はその実現を後押しするように思える。しかし、実際には「会社・職場の風土」や 「上司」の考え方が変わらなければ時短はできない、「今の50代・60代とは、労働時間や働き方に関する考え方が違う」と約8割が感じていることも分かる。「モチベーションが下がったエピソード(図表11)」で具体的に述べられるように、「残業を減らせと言いながら業務量の調整をまったくしない」「結局残業した方が評価される風潮」「自分の仕事を前倒しで終わらせても、他の仕事を回される」といったマネジメント上の課題が是正されることが必要だろう。

一方、「仕事の内容を聞きもしないで、とにかく早く帰れと言われた」というように、何が何でも時短、という柔軟性に欠けた対応も、仕事のモチベーションを下げかねない。前述の「長時間労働だが今のままが望ましい」群の結果からも見られるように、本人がその仕事にかける思いや、職場や仕事への満足度によって、望ましいと思う労働時間も一通りではない。企業と個人にとって持続可能な働き方であることは大前提にしつつ、多様性をも許容する労働時間マネジメントを検討していくことが、真に個を生かすことにつながるだろう。

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