市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは、国内の定置用蓄電システムの市場動向に関する調査を実施。

2010年頃より、スマートグリッド構築や再生可能エネルギー普及に向け、安定した電力の最適な利用のために蓄電システムの重要性が議論されてきました。東日本大震災後、住宅メーカーや家電量販店などが防災対策、エネルギーマネジメントのための蓄電システムの扱いを開始し、2011年度は多くの蓄電システムが出荷されました。その他、2012年度からは経済産業省により補助金が交付され、戸建住宅を中心に蓄電システムの普及が進み、定置用蓄電システムの市場が立ち上がりました。

住宅の更なる省エネや、太陽光発電システム自家消費に向けた動きが強まる中、2016年度の蓄電システムへの国の助成政策は、蓄電システム単体のものから、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)やバーチャルパワープラント(VPP)へと変化しました。蓄電システムの役割は、建物やコミュニティ全体の省エネ、エネルギーを最適化するための重要なアイテムへと進化しつつあります。2019年以降の太陽光発電買取期間終了(2019年問題)に向け、蓄電システムと太陽光発電との連携がさらに進みつつあります。

蓄電システム市場は今後、VPP、2019年問題、国の助成政策などをうけ、今後一層の市場拡大が期待されます。本調査では、2016年度の蓄電システム市場の現状とトレンドを整理分析し、今後2024年度までの市場成長を予測しました。

【調査結果のポイント】

本調査での定置用蓄電システムの範囲

定置用蓄電システムとは、住宅やオフィス、店舗、避難所、発電所などに設置される、二次電池を中心に構成される製品。

・本調査では、キャスターがついている可搬型(ポータブル)の製品も「定置用」として対象とし。
1・kWh 以上の製品を主要調査対象とした。
・移動体に搭載される電池や電気機器(PC、タブレットなど)用の電池、および、蓄電池付きEV 充電設備は定置用蓄電システムに含めていない。

<用途分類>
本調査では用途別に以下のように分類している。

・住宅用 ...戸建住宅、集合住宅の専有部で利用される。主に1~十数kWh。
・業務用 ...オフィス、店舗などで利用される。主に1~十数kWh。
・公共産業用 ...自治体関連施設(学校、避難所、その他公的施設など)、集合住宅共有部、工場、など。主に1~100kWh。
・大規模用 ...今回の市場予測に含めていない。
系統安定化対策や大規模施設の非常用電源、ピークカットなどに利用される。リチウムイオン電池、レドックスフロー電池、NAS 電池などが利用される。100~数万kWh。

市場規模:金額
国内の住宅用/業務用/公共産業用蓄電システムの市場規模は、
2024年には約3,700億円の市場と予測

  → 2016年比5.6倍強の市場に成長
  → 戸建て住宅用蓄電システムが市場を牽引
  → 住宅用/業務用が74%(2,720億円)を占める

市場規模:台数
国内の住宅用/業務用蓄電システムの販売台数は、2024年に42万台と予測

  → 2016年比11.4倍
  → ZEHの約4割に搭載されると予測

住宅用/業務用
後述する”2019 年問題”や”ZEH”、”VPP”用途での需要増、”価格低下による用途”拡大により、2018 年度以降市場が回復する。市場規模としては、2020 年度には約1,700 億円、2024 年度には約3,700 億円にまで拡大すると見込まれる。戸建て住宅用蓄電システムが市場成長を牽引する。

公共産業用
2016 年度公共産業用蓄電システム市場は94 億円を見込む。2015 年度までは9 割超、2016 年度は8 割超をグリーンニューディール(GN)基金向けの販売が占める。グリーンニューディール基金の予算枠に応じて市場が推移しており、グリーンニューディール基金終了年の2016年度には市場が落ち込むことが見込まれる。
2017 年度は一時的に市場が落ち込むものの、VPP 用途での出荷や、価格低下に伴う需要拡大により、2018 年度から市場が回復。2020 年度には360 億円、2024 年度には966 億円にまで成長する。

市場拡大要因

2019年問題
2019年に太陽光発電システムの買取期間が終了する住宅は40~50万軒にのぼるとみられる。2020年以降も15~30万軒/年の住宅で買取期間が終了する。買取期間を終了した住宅では、買電から自家消費にシフトするニーズが高まるとみられる。

また、太陽光発電システムのPCS(パワーコンディショナー)の耐用年数は10~15年といわれている。買取期間終了にあわせて太陽光発電システムのPCSを交換し、ハイブリッドPCS蓄電システムを導入する動きがでてきており、2019年に向けてさらに加速する。買取期間が終了する設置者のうち、2019 年度には15%程度が蓄電システムを導入。導入割合は徐々に高まり、2024 年度には3 割程度が蓄電システムを導入すると予測した。

ZEH
2020年に新築住宅の過半数(約40~50万軒)をZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化することが目指されている。蓄電システム価格低下、ZEHを扱うハウスメーカー、ビルダー、工務店の増加に伴い、ZEHへの蓄電システム搭載率が向上する。
2020 年にはZEH の約1 割、2024 年には約4 割に蓄電システムが搭載されると予測した。

VPP
実証事業をはじめとし、2017年度以降徐々にVPP(バーチャルパワープラント)事業が本格化する。経済産業省では、住宅用蓄電システムの価格目標として、2020年に9万円/kWh(2015年度比約40%)を設定。目標達成に向け、VPP予算をはじめとした各種補助金の要件設定の検討を進めるとしている。VPP市場立ち上がりに伴い蓄電システムの価格低下と普及が進む。
VPP 実証事業最終年である2020 年には、数万台単位の蓄電システムがVPP 用途で出荷されることが見込まれる。

価格低下による用途拡大
国の助成、量産効果による製造コスト低減(EV市場、蓄電システム市場成長)、施工費削減などにより蓄電システムの価格は低下する。
住宅用/業務用のKWhあたりの価格(施工費含む)は、2016 年度23.2 万円/kWh、2020 年10 万円/kWh、2024 年9 万円/kWhと低減し、2020年頃には経済メリットが得られる製品となることが見込まれる。
価格低下に伴い蓄電システムの需要は拡大し、戸建住宅以外の様々な場所で蓄電システムが利用されるようになる。


【調査概要】
・調査方法:
 • 主要プレイヤーへのヒアリング
 • 業界有識者へのヒアリング
 • 公開情報、各社製品カタログ等の収集整理
 • 弊社所有情報整理
・調査対象:
<ヒアリングを実施した主要プレイヤー>
 1.エリーパワー株式会社
 2.オムロン株式会社
 3.シャープ株式会社
 4.住友電気工業株式会社
 5.積水化学工業株式会社
 6.東芝IT コントロールシステム株式会社
 7.長州産業株式会社
 8.株式会社日本エコシステム
 9.日本電気株式会社
 10.パナソニック株式会社
 11.フォーアールエナジー株式会社
 12.株式会社YAMABISHI
・調査期間:2016 年5 月~2017 年4 月

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