国内の電子お薬手帳サービスの市場予測 

2017年04月12日
市場調査・コンサルティング会社のシード・プランニングは、国内の電子お薬手帳市場の将来展望に関する調査を実施し、このほど、その結果をまとめましたのでお知らせいたします。

電子お薬手帳サービスは、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT 総合戦略本部)が2010 年5 月に策定した「新たな情報通信技術戦略(新IT 戦略)」をきっかけに議論が開始されました。

翌年2011 年に東日本大震災が発生し、医療機関や薬局も被災して保存していた多くのカルテが失われたことから、お薬手帳の有用性が示されました。しかし、紙のお薬手帳は常に携帯している人が少なく、より携帯性の強いスマートフォンで管理する電子化のメリットが注目されるようになりました。

2012 年9 月には保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)により、電子お薬手帳のデータフォーマット仕様書が公開され、以降さまざまな電子お薬手帳サービスが登場しています。

また政府は電子版お薬手帳サービスの普及を積極的に推進しており、2015 年6 月30 日に閣議決定した「日本再興戦略2015」において、「本年度中に電子版お薬手帳の更なる機能性の向上について検討を行い、2018 年度までを目標とする医療情報連携ネットワークの全国各地への普及と併せて国民への普及を進める。」としており、薬局への導入も進んでいます。

本調査では、調剤情報の電子化・共有化の動きが加速していることから、電子お薬手帳に関する行政動向や、製品・サービス動向など、関連企業にヒアリングを実施して、最新の市場動向を整理しました。また、電子お薬手帳に関連した薬局を取り巻く各種政策動向(かかりつけ薬剤師・薬局、健康サポート薬局、電子処方せんの解禁、地域医療連携、オンライン資格認証、医療等ID等)について整理し、電子お薬手帳サービスの今後の課題と市場動向についてまとめました。

【調査結果のポイント】

電子お薬手帳サービスとは

電子お薬手帳サービスは、従来の紙のお薬手帳の機能を、スマートフォンやIC カード等に搭載した服薬情報管理ツール。

電子お薬手帳アプリの基本的な仕組みは、薬局向けのWeb アプリと、患者向けのスマートフォンアプリで構成されている。服薬情報の登録は、利用者が、①薬局に設置されているリーダー端末にIC カードやスマートフォンをタッチする、②QR コードを読み取る、③画像を撮影する、④手入力する等の方法で行う。また薬局のレセプトコンピュータや電子薬歴と連動していれば、当該システムから調剤情報を自動的に取得することもできる。保存した情報は、クラウドサーバー上に一元管理することで、薬剤師にスマートフォンを渡すことなく共有できる。また日本薬剤師会の電子お薬手帳相互閲覧サービスに加入しているサービスであれば、他社サービスの情報も参照できる。さらに、利用者の利便性を高める仕組みとして、処方せん画像送信機能や服薬スケジュール管理機能など、紙のお薬手帳にはない機能も提供されている。

電子お薬手帳サービスの市場規模は、2025年に約70億円と予測。
2016年7.1億円の9.6倍に拡大。

本調査では、電子お薬手帳サービス事業者にヒアリングを実施し、各社の利用料や導入実績から市場規模を推計した。

その結果、2016 年の市場規模は7.1 億円と推計した。今後、政府の医療情報の電子化の推進や薬剤師・薬局のかかりつけ機能の強化を背景に、ICT を活用した服薬情報の一元的・継続的把握、電子処方せんや医療連携ネットワークとの連携、医療機関等への利用拡大等、電子お薬手帳を軸に様々なデータが一元的に管理されることとなる。
このようなサービスの広がりから2025 年には2016 年比9.6 倍の68.2 億円市場に拡大すると予測。

今後は、電子お薬手帳に情報を一元化し、薬局は健康情報拠点へと進化するとともに、電子お薬手帳は医療・健康情報を患者自身が管理するPHR になると想定される。

利用者数は、2025年に入院・外来患者数の約半数の約422万人。
2016年の利用者112万人の3.8倍に増加。

電子お薬手帳アプリは、スマートフォン保有率の高い20 代~40 代のうち、特に健康意識の高い30 代~40 代を中心に利用されている。
その中でも乳幼児を持つ母親や高齢者家族のいる世代によく利用されている。しかし、保険薬局に来院する患者の約半数は65 歳以上の高齢者で、スマートフォン保有率が低く、電子お薬手帳アプリの普及が進んでいないのが現状である。
本調査では、サービス事業者および導入薬局のヒアリング調査より、利用者数を積み上げた結果、2016 年の利用者数は112 万人と推計した。厚生労働省の「患者調査」によると、2014 年の外来患者数は病院、一般診療所、歯科診療所を含め約724 万人、入院患者数は約130 万人と推計されている。これらの患者数を母数とするならば、2016 年の電子お薬手帳サービスの普及率は約13%におよぶ。しかし、人口比で見た比率は約1%と、まだまだ普及期とはいえない状況である。
一方、紙のお薬手帳は、患者の60%~70%に利用されているといわれる。今後保険薬局へのサービス導入が進み利用環境が整備され、患者自身が自身の医療・健康情報を自己管理する意識が根付けば、紙のお薬手帳並みの普及が見込まれる。そのため2025 年には入院・外来患者数の半数の約422 万人が利用すると予測した。


【調査概要】
・調査対象:
(1)電子お薬手帳開発ベンダー:
NTT ドコモ、ソニー、ファインメディカル、ファルモ、パナソニックヘルスケア、ニッセイ情報テクノロジー、ポケットファーマシー販売、リーベンス
(2)電子お薬手帳導入薬局:
アインホールディングス、クオール、ココカラファイン、総合メディカル、日本調剤、日本薬剤師会
・調査方法:ヒアリング及び文献調査
・調査期間:2016年11月~2017年3月

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[シード・プランニング]
 マイページ TOP