商工中金 調査部は、中小企業の「働き方改革」に関する調査(2017 年 1 月調査)を実施。

【調査結果の要旨】

■ 中小企業の雇用の不足感は強まっており、過半の企業が雇用不足を感じている。このような中、「働き方改革」で議論されている各取り組み・制度について、中小企業の導入・実施の状況等を調査した。

 「長時間労働の管理・抑制」「社員教育」「自己啓発の支援」「シニア層の活用」は、既に多くの中小企業が導入・実施しており、そのプラス効果も十分に感じている。

 「子育て世代の支援」「妊娠・出産期の女性支援」「介護離職の防止」は、多くの企業で導入・実施されているものの、対象者・利用者が比較的少なく、効果は分からないとする企業が多い。

 「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」「外国人労働者の活用」は、適した仕事・職種がない(または対象者がいない)と考えられているため、導入・実施が進んでいない。

 「副業・兼業の容認」については、業務上の支障があると考え導入・実施していない企業が多い。また、既に導入・実施している企業でも、その効果は分からないとする意見が多い。

【調査結果】

1.現在の雇用の過不足感

1.1 全体
全体的な雇用の過不足感をみると、「大幅に不足」と「やや不足」の合計(以下、「不足」計)が58.7%と過半を占めた。同様の調査を実施した 2011 年1、2008 年2と比較すると、「不足」計の回答割合は大きく増加している。一方、「大幅に過剰」と「やや過剰」の合計(以下、「過剰」計)は5.6%となり、2011 年、2008 年の調査と比較して回答割合は減少している。(図表 1-1)
雇用判断 DI(「不足」計回答割合-「過剰」計回答割合)は+53.1 となり、2011 年調査(+0.1)、2008 年調査(▲15.2)と比べ、全体的な雇用の不足感は強まっている。
業種別に比較すると、建設業、運輸業、情報通信業、飲食店・宿泊業で「不足」計の回答割合が70%を超え、雇用の不足感が特に強い。

1.2 職種別
職種別の雇用の過不足感をみると、各職種とも雇用判断 DI はプラス(「不足」計超)となり、雇用の不足感がある。同様の調査を実施した 2014 年3と比較すると、①営業、②販売・サービス、④現業・生産で雇用判断 DI の「不足」計超幅が大きく拡大している。③総務・企画・人事・経理(以下、総務・企画等)、⑤研究開発・商品開発・設計(以下、研究開発等)、⑥その他でも雇用判断 DI の「不足」計超幅は拡大しているものの、比較的小幅の変化に留まった。(図表 1-2)

1.3 雇用形態別
雇用形態別の過不足感をみると、各職種とも雇用判断 DI はプラス(「不足」計超)となり、雇用の不足感がある。①正社員では、過半の企業が「大幅に不足」または「やや不足」と感じている。同様の調査を実施した 2008 年および 2014 年4と比較しても、①正社員の雇用判断 DI の「不足」計超幅が大きく拡大している。(図表 1-3)

2.「働き方改革」に関する取り組み・制度の導入・実施の状況等

2.1 概要
現在、議論が進められている「働き方改革」において注目されている以下の①~⑫の取り組みや制度について、中小企業の導入・実施の状況を調査した。

① 長時間労働の管理・抑制に向けた取り組み
② OJT・OFF-JT など、社員教育の制度
③ 資格取得・通信教育への補助金など、自己啓発の支援
④ 在宅勤務制度
⑤ 勤務先や移動中におけるパソコン等を活用した勤務制度 (モバイルワーク)
⑥ サテライトオフィス勤務制度
⑦ 副業・兼業の容認
⑧ 定年延長など、シニア層活用の制度
⑨ 育児休業や短時間勤務など、子育て世代支援の制度
⑩ 妊娠・出産期の女性支援の制度
⑪ 介護休業など、介護離職防止の制度
⑫ 外国人労働者活用の制度

上記 12 の取り組み・制度について、「既に導入・実施している」と回答した企業の割合を比較した。
⑧シニア層の活用や⑨子育て世代の支援では、過半の企業が何らかの取り組み・制度を導入・実施している。一方、④在宅勤務や⑥サテライトオフィス、⑦副業・兼業の容認を導入・実施している企業は全体の 1 割未満であった。(図表 2-1-1)

これらの取り組み・制度は、総じて従業員数でみた企業規模の大きい企業ほど導入・実施している割合が高い。詳細は次頁以降で紹介するが、例えば②社員教育や⑨子育て世代の支援、⑩妊娠・出産期の女性支援などでは、従業員数が少ない企業では対応に難しさを感じている様子が窺える。(図表 2-1-2)

2.2 長時間労働の管理・抑制
①長時間労働の管理・抑制に関する取り組み・制度は、46.1%の企業が導入・実施している。業種別では、窯業・土石製造業や電気機器製造業で導入・実施の割合が高く、建設業や繊維製造業で低い。(業種別の詳細は巻末統計②参照、以降同様)導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 25.2%、「ややプラス効果がある」が53.0%となり、合わせて 78.1%5の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 22.7%であり、その理由として「現在(または以前)の制度で十分」が 62.1%で最多となっている。(図表 2-2-1)

2.3 OJT・OFF-JT など、社員教育の制度
②社員教育に関する取り組み・制度は、40.7%の企業が導入・実施している。業種別では、電気機器製造業や化学製造業、情報通信業で導入・実施の割合が高く、繊維製造業や木材・木製品製造業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 33.6%、「ややプラス効果がある」が57.1%となり、合わせて 90.7%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 34.0%であり、その理由として「現在(または以前)の制度で十分」が 41.2%で最多となっている。(図表 2-3-1)

2.4 資格取得・通信教育への補助金など、自己啓発の支援
③自己啓発の支援に関する取り組み・制度は、46.8%の企業が導入・実施している。業種別では、建設業や窯業・土石製造業で導入・実施の割合が高く、飲食店・宿泊業や食料品製造業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 37.4%、「ややプラス効果がある」が50.7%となり、合わせて 88.1%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 33.0%であり、その理由として「従業員からの要望がない」が 33.3%、「現在(または以前)の制度で十分」が 31.3%となっている。(図表 2-4-1)

2.5 在宅勤務制度
④在宅勤務に関する取り組み・制度を導入・実施している企業は 3.6%のみであった。業種別で
は、情報通信業で導入・実施の割合が高い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 44.4%、「ややプラス効果がある」が33.3%となり、合わせて 77.8%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 90.0%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 54.8%で最多となっている。(図表 2-5-1)

2.6 顧客先や移動中におけるパソコン等を活用した勤務制度 (モバイルワーク)
⑤モバイルワークに関する取り組み・制度は、21.2%の企業が導入・実施している。業種別では、情報通信業や印刷業で導入・実施の割合が高く、木材・木製品製造業や運輸業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 46.8%、「ややプラス効果がある」が42.5%となり、合わせて 89.3%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 64.4%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 50.3%で最多となっている。(図表 2-6-1)

2.7 サテライトオフィス勤務制度
⑥サテライトオフィスに関する取り組み・制度を導入・実施している企業は 1.7%のみであった。業種別では、建設業や金属製品製造業で導入・実施の割合がやや高いものの、大きな違いはみられなかった。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 49.2%、「ややプラス効果がある」が34.4%となり、合わせて 83.6%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 93.4%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 48.4%で最多となっている。(図表 2-7-1)

2.8 副業・兼業の容認
⑦副業・兼業の容認に関する取り組み・制度を導入・実施している企業は 7.6%のみであった。業種別では、情報通信業や飲食店・宿泊業で導入・実施の割合が高い。
導入・実施している企業では、その効果として「プラス効果はみられない、分からない」が 45.9%と最多であり、「プラス効果が十分にある」と「ややプラス効果がある」の合計は 35.5%に留まっている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 84.9%であり、その理由として「業務上の支障がある」が 41.5%で最多となっている。(図表 2-8-1)

2.9 定年延長など、シニア層活用の制度
⑧シニア層の活用に関する取り組み・制度は、61.6%の企業が導入・実施している。業種別では、鉄・非鉄製造業や電気機器製造業、木材・木製品製造業で導入・実施の割合が高く、情報通信業や不動産業・物品賃貸業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 48.4%、「ややプラス効果がある」が41.0%となり、合わせて 89.4%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 16.8%であり、その理由として「現行(または以前)の制度で十分」が 46.4%で最多となっている。(図表 2-9-1)

2.10 育児休業や短時間勤務など、子育て世代支援の制度
⑨子育て世代の支援に関する取り組み・制度は、50.5%の企業が導入・実施している。業種別では、電気機器製造業や情報通信業、サービス業で導入・実施の割合が高く、運輸業や不動産業・物品賃貸業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 25.4%、「ややプラス効果がある」が32.0%となり、合わせて 57.4%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。また、「対象者・利用者がいないため効果は不明」が 17.5%とやや多い。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 26.0%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 37.9%で最多となっている。(図表 2-10-1)

2.11 妊娠・出産期の女性支援の制度
⑩妊娠・出産期の女性の支援に関する取り組み・制度は、42.8%の企業が導入・実施している。
業種別では、情報通信業や印刷業、サービス業で導入・実施の割合が高く、運輸業や鉄・非鉄製造業、不動産業・物品賃貸業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 25.6%、「ややプラス効果がある」が30.0%となり、合わせて 55.6%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。また、前頁の子育て世代の支援に関する取り組みと同様、「対象者・利用者がいないため効果は不明」が 20.7%とやや多い。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 30.8%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 40.4%で最多となっている。(図表 2-11-1)

2.12 介護休業など、介護離職防止の制度
⑪介護離職の防止に関する取り組み・制度は、33.0%の企業が導入・実施している。業種別では、情報通信業で導入・実施の割合が高く、不動産業・物品賃貸業や飲食店・宿泊業で低い。
もっとも、導入・実施している企業でも、その効果については「対象者・利用者がいないため効果は不明」が43.3%で最多となっている。「プラス効果が十分にある」および「ややプラス効果がある」の合計は、31.6%となっている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 34.5%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 29.4%、「現行(または以前)の制度で十分」が 28.4%、「従業員からの要望がない」が 26.3%と、3 つの理由が概ね同程度となっている。(図表 2-12-1)

2.13 外国人労働者活用の制度
⑫外国人労働者の活用に関する取り組み・制度は、18.0%の企業が導入・実施している。業種別では、輸送用機器製造業や飲食店・宿泊業で導入・実施の割合が高く、不動産業・物品賃貸業や小売業、運輸業で低い。
導入・実施している企業では、「プラス効果が十分にある」が 50.6%、「ややプラス効果がある」が35.6%となり、合わせて 86.2%の企業が導入・実施によるプラス効果を感じている。
一方、「導入・実施していない」は合わせて 64.2%であり、その理由として「適した仕事・職種がない、対象者がいない」が 37.9%、「現行(または以前)の制度で十分」が 34.1%となっている。(図表2-13-1)

2.14 まとめ
以上の 12 の項目について、導入の有無とプラス効果の有無により分類すると、図表 2-14-1 に示すようなグループに分けることができる。
「長時間労働の管理・抑制」「社員教育」「自己啓発の支援」「シニア層の活用」は、既に多くの中小企業が導入・実施しており、そのプラス効果も十分に感じている。
「子育て世代の支援」「妊娠・出産期の女性支援」「介護離職の防止」は、多くの企業で導入・実施されているものの、対象者・利用者が比較的少なく、効果は分からないとする企業が多い。
「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」「外国人労働者の活用」は、適した仕事・職種がない(または対象者がいない)と考えられているため、導入・実施が進んでいない。
「副業・兼業の容認」については、業務上の支障があると考え導入・実施していない企業が多い。
また、既に導入・実施している企業でも、その効果は分からないとする意見が多い。


【調査概要】
・調査目的:中小企業の現在の雇用の過不足感や、「働き方改革」の議論において注目されている取り組みや制度の導入・実施の状況等について調査。
・調査期間:2017 年 1 月 1 日現在
・調査対象先:当金庫取引先中小企業 10,022 社、有効回答数 4,828 社(回収率 48.2%)
・調査方法:調査票によるアンケート調査(郵送自記入方式)

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