国内の商業施設における呉服・和装ショップの出退店動向調査 

2017年01月27日
リゾームは、同社製品の全国SC・ショップ・ブランド出退店データベース「SC GATE」を活用し2016年1月~2016年12月の期間を対象に、国内の商業施設における呉服・和装ショップの出退店動向の調査を実施しました。

【集計概要】
1.集計期間:2016年1月~2016年12月
2.対象業種:呉服・和装
3.集計方法:SC・ショップ・ブランド出退店データベース「SC GATE」での業種別集計結果をもとにした当社分析による。

今回の調査テーマは「呉服・和装」です。かつては2兆円規模と言われた呉服業者の市場規模は、2011年の着物小売市場規模では約3,200億円、2016年となると2,900億円と推計されるなど、厳しい状況が続いています。

今回、こうした厳しい状況にある「呉服・和装」をテーマに取り上げた理由としては、インバウンド市場が伸びているからでもなければ、成人式や卒業式シーズンだからでもなく、別の重要な理由があります。不調と言われる呉服・和装であるにもかかわらず、現在、SC GATEのファッション業種の出店ランキング上位20位の中に「呉服・和装」小業種のショップ・ブランドが登場しています。さらに上位100位まで拡げると6つのショップ・ブランドが登場していることに注目したからです。
SC GATEの「さがす(ショップ・ブランド)」で小業種「呉服・和装」で検索できる出店数が1以上のショップ・ブランド数は250を超え、運営企業数は170社強ですが、そのうち、1店舗のみ出店という運営企業が3分の2を占めています(図2)。

また、出店数が多い運営企業に目を移すと、経営学的にチェーンストアと定義される11店以上をSCに出店している運営企業数は18社、ショップ・ブランド数は39で、ショップ・ブランド数の構成比で7%強のショップ・ブランドで合計出店数構成比は60%弱を占めるなど、どちらかというと小規模なショップ・ブランドが多い業種の可能性が伺えます。

■「呉服・和装」小業種のショップ・ブランドでは勢いに明暗が

次に運営企業別の2016年1月~12月の出店数と退店数を見てみましょう。

図3の散布図は、上で触れたSCに11店舗以上出店している運営企業について2016年1月~12月の出店数をたて軸、退店数をよこ軸にプロットしたものです。灰色の対角線より上にある運営企業は出店数が退店数より多い運営企業、逆に対角線より下は退店数が出店数より多かった運営企業です。半数以上の運営企業は対角線近くに分布していますが、数社の運営企業が大きく店舗数を増やし、また、数社の運営企業が大きく店舗数を減らしていることがわかります。
SCに51店以上出店している運営企業は4社ですが、この4社に絞ってみても出店数が増加している企業が2社、出店数が減少している企業が2社となっており、「呉服・和装」小業種のショップ・ブランドには勢いのあるショップ・ブランドとそうでないショップ・ブランドが混在していることが伺えます。

■進む呉服業界のカジュアル化

SC GATEデータから見たファッション業種で株式会社二葉屋の「HANAGOROMO(ハナゴロモ)」がファッション全体の中で第14位にランクイン、株式会社ウェディングボックスの「ふりそでMODEwedding・BOX」が31位にランクイン。後者は九州発企業ですが、2013年より都心のファッションビルや高感度駅ビルに出店、成人式の振袖レンタル・販売と前撮り写真までをサービスとしています。
また、きもの・和雑貨・アクセサリーを扱う株式会社BANKANわものや のような新興企業が出店を伸ばしており、老舗がひしめく業界にあって、呉服の世界にもカジュアル化が進んでいます。

■「呉服・和装」業界の動向

冒頭に触れたようにこの業界は大変厳しい状況にあり、その背景には生活の洋風化による「着物離れ」があります。しかし、そうした背景に加え、高額化により市場規模を維持しようとした業界の動きとその後のバブル経済の崩壊が大きく影響し、結果として「着用シーンの減少」「消費者知識の低下」「高価格化」が悪循環を招いているとも指摘されています(「着物関連市場における新たなセグメントとその特性の分析」2013年、立命館大学 吉田満梨、京都市産業観光局商工部伝統産業課)。
確かに着用シーンは減少してきたのかもしれませんが、「夏のファッションとしての浴衣」「成人式」「卒業式」「フォーマル着としての着物」など着用シーンは定着しています。それに加えユニバーサル・スタジオ・ジャパン(R)のハロウィーンイベントでの和仮装トレンド、均一価格ショップのザ・ダイソーによる和雑貨店“わ菜和なKURASHI”出店、「和サンド」など食品業界での和人気などいろいろな分野で「和」テイストに対する意識も高まりつつあります。
「消費者知識の低下」については、2012年度から実施されている中学校の学習指導要領に「和服の基本的な着装」が必修項目として再登場し、NPOが着付け体験授業を実施するなどいろいろな取り組みが始まっています。

こうした流れから、SCやショップでの動きが重要になってきているといえます。若い女性の新しい着方、着る機会のイベント提案、リーズナブルな写真やメイクサービス、関連商品の販売、知識のないお客様への丁寧な接客はもちろんのこと、自分で着用できないお客様向けの着付けのサービス、高額品の押し付けではない安心できる販売に加え、レンタルやリサイクルといった選択肢の追加、和雑貨など関連商品の販売による入りやすさへの工夫など実施できることはたくさんありそうです。
今一度、SCやショップの思いをどのように店ぞろえや店づくりで表現するかを見直す必要があるかもしれません。

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