スポーツ関連業種の出退店動向の調査 

2017年04月13日
リゾームは、同社製品の全国商業施設(以下 SC)・ショップ・ブランド出退店データベース「SC GATE」を活用し、2016年3月1日~2017年2月28日の期間を対象に、スポーツ関連業種の出退店動向の調査を実施しました。

【集計概要】
1.集計期間:2016年3月1日~2017年2月28日
2.対象業種:スポーツ用品
3.集計方法:全国最大級SC・ショップ出退店データベース「SC GATE」での業種別集計結果をもとにした当社分析による。

■用品市場にけん引されて成長しているスポーツ市場

スポーツ用品市場に関する最近の調査によると株式会社矢野経済研究所の「スポーツ用品市場に関する調査(2016年1月~3月)」では、スポーツ用品国内市場は前年比+3.4%の成長が報告されています。また、公益財団法人日本生産性本部が発刊する「レジャー白書」の2016年版によると余暇市場全体では前年比▲1.0%となっていますが、スポーツ部門は+1.9%であり、スポーツ市場の成長は確かなものになっているようです。
レジャー白書によるとスポーツ市場は2011年頃まで10年以上にわたり縮小傾向が続いていましたが、その後回復に転じ、鮮明な回復基調を示すようになったとされています。

先に紹介した矢野経済研究所の調査ではスポーツ用品をゴルフ、スキー・スノーボード、釣りなど18の分野に分けて調査しています。その結果を見ると、全体としては伸びを示しているスポーツ用品市場でも分野別には明暗が分かれ、スポーツシューズ、サイクルスポーツ、バドミントン、フィットネスの4分野は大きな伸びを示しています。また、公益財団法人日本生産性本部のレジャー白書でも、スポーツシューズ、ウエア、スポーツ自転車が好調だとされています。

(参考)
株式会社矢野経済研究所「スポーツ用品市場に関する調査を実施(2016年)」
公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書 2016」

■ウォーキング・ヨガ・アウトドアなどの伸びが好調。注目される「アスレジャー」

次にスポーツ種目への参加人数ベースでの調査結果を見てみましょう。レジャー白書では余暇活動への参加について、スポーツ部門、趣味・創作部門、娯楽部門、観光・行楽部門、その他部門に分けて、種目別に参加人口や参加率、参加希望率などをインターネット調査により集計しています。その結果からスポーツ領域に関連する種目で参加率が10%を超える種目は6種目、参加希望率が10%を超える種目は10種目という結果が得られています。
ここで、市場の伸びと将来性ともいえる「参加率が高い種目」と「参加希望率が参加率より顕著に大きい種目」に着目すると、「ウォーキング」「ジョギング・マラソン」「体操(器具を使わないもの)」「ピクニック・ハイキング・屋外散歩」「ヨガ・ピラティス」「登山」「水泳」「トレーニング」といった種目が浮かび上がり、先ほどの市場規模の調査結果と概ね一致しています。

こうした種目が伸びている背景にはいろいろな要素がからんでいると思われます。例えば、ジョギング・ランニングという視点でまず挙げられるのが2007年からスタートした東京マラソンがその成功を背景にその後多くの市民マラソンの開催につながってきたことが挙げられるでしょう。また、ウォーキング、体操、トレーニングや水泳という視点では、2008年4月から厚生労働省が制度化した「特定健診(特定健康診査)・特定保健指導」(いわゆるメタボ検診)が「何かを始めよう」「何かを始めなくては」という人々の心理に影響したと考えられます。また、登山やピクニック・ハイキング・野外散歩などアウトドアについては、2007年1月に日本政府がユネスコ(国連教育科学文化機関)に富士山の世界文化遺産登録を推薦し、また、同じ2007年に刊行された「ミシュランガイド」にて高尾山が観光地部門で三ツ星を獲得したことなどに加え、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「SUMMER SONIC」「FUJI ROCK FESTIVAL」といったいわゆる「音楽フェス」「夏フェス」の動員数増などもアウトドアブームを下支えしていると考えられます。
こういった流れもあり、現在、スポーツ用品業界では「アスレチック(運動競技)」と「レジャー(余暇)」を組み合わせた「アスレジャー」と呼ばれる新たな市場が好調で、競技としてではなく、日常的にからだを動かすときに気持ちを盛り上げてくれるスポーツ用品に人気が集まってきているようです。

■ショッピングセンターに出店する各ブランドのコンセプト・施策にも注目

こうしたスポーツ市場の成長を、全国のショッピングセンターにおけるショップ出退店データベースSC GATE上で見てみましょう。

2016年3月1日~2017年2月28日のスポーツ・ホビー大業種の出店ランキングでは、ベスト10位までの1位、3位、4位にスポーツ中業種の4つのブランドがランクインしています。
株式会社メガスポーツが運営する「SPORTS AUTHORITY」については、2017年2月までの直近2年間の出退店を時系列でみると、2年前は出店数18店、退店数4店だったのに対し、この1年間は出店数32(移転も含む)、退店数21と、業態変更も含め引き続き積極的な動きをしているようです。店内に大きなボルダリング体験スペースを設けるなど、大手SCの子会社であるメリットを活かした大胆な店舗施策を行っているのも同ブランドの特徴です。

また2位にランクインしている同社運営の「CORNERS SPORTS AUTHORITY」も勢いがあります。スポーツを‘ライフスタイル’として日常に取り入れることをテーマに、ファッション性の高いスニーカーや着こなしなど、商品やサービスの面から提案し、売り上げを伸ばしています。

ゼビオホールディングス株式会社が運営する「SUPER SPORTS XEBIO」は、幅広い年齢層が集うSCという場所で、長時間の滞在でも飽きさせない店舗づくりで魅力を打ち出しています。
また、株式会社スポーツマリオが運営する「SPORTS MARIO Run & Fitness」のようにSCへの出店数は少ないものの、その多くがこの1年間に出店したSC出店意向の非常に強いブランドがあることも伺えます。

■今後ますます盛り上がるスポーツ市場

文部科学省スポーツ庁は2017年3月24日に第2期「スポーツ基本計画」を策定しました。この計画では「ライフステージに応じたスポーツ活動の推進とその環境整備を行う。その結果として、成人のスポーツ実施率を週1回以上が65%程度(障害者は40%程度)、週3回以上が30%程度(障害者は20%程度)となることを目指す。※スポーツ実施率:週1以上が42.5(障害者19.2)%、週3以上が19.7(障害者9.3)%」とされています。また、経済産業省とスポーツ庁が進める「スポーツ未来開拓会議」の中間報告(2016年6月)ではラグビーワールドカップ2019、関西ワールドマスターズゲームズ2021などの大規模な国際スポーツイベントを迎えることから2025年のスポーツ用品市場は現状の約2.3倍になると試算しており、今後とも官民一体の動きの中で大きな成長が期待できるスポーツ用品を見なおしてみる必要がありそうです。

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