日本企業の統合報告書に関する調査2016 

2017年03月24日
KPMGジャパンの統合報告アドバイザリーグループは、「日本企業の統合報告書に関する調査2016」の結果をとりまとめました。

複雑化するビジネス環境においては、経営者自らが企業の変革を担い、また変化を改革の機会として捉え、俯瞰的かつ長期的な観点から方向性を示していく必要があります。統合報告はこの展開を支援するための重要なツールであり、統合報告書を作成する企業は年々増加の一途をたどっていますが、よりよい統合報告を行うため、以下の3つの点が重要であると私たちは考えています。

1. 中長期的な企業価値のためには戦略を明確に示し、ガバナンスについての充実を図ること。
2. 重要性(マテリアリティ)の開示により、マネジメントの課題に対する認識を示し、具体的な戦略に落とし込むこと。
3. 不確実性の高い時代からこそ、リスクと機会の認識や取組みの開示を通じて持続可能性を具体的に示すこと。

統合報告の発行という企業の取り組みは、企業と投資家との対話の促進を通じた価値向上と日本企業の競争力の向上に役立ちますが、その現状と課題を明らかにすることもまた有意義と考え、KPMGジャパンでは2014年から継続して調査を行い、今年で3回目となります。

【調査結果】

■増加する報告書発行企業
2016年の統合報告書発行数は前年から比べて59社増の279社となり、特に東証一部上場企業が71社増の262社となっています。業種では電気機器が前年比5社増の30社と最も多くなっています。売上高一兆円を超える上場企業151社に占める発行企業数の割合は62%となり、昨年の43%から大幅な増加となりました。また、日経225構成銘柄の50%が統合報告書を発行している点からも、全体的に事業規模が大きく、株主構成等も含めてグローバル化が進む企業において報告書発行の動きが引き続き活発であるといえます。
ページ数については年々簡素化が進み、2014年の平均71ページ、2015年の平均68ページからさらに減った平均66ページとなっており、また、半数以上の企業(52%)が60ページ以内で報告書を発行しています。また、279社中245社が日本語版に加えて英語版も発行し、そのうち53%にあたる122社が日本語版と英語版を同時に発行するなど、グローバルベースでの訴求を意識したコミュニケーションツールとして活用していることが伺えます。

■ビジネスモデルを開示する企業は年々増加
ビジネスモデルについて開示している企業は年々増加しており、今回の調査では135社(48%)が開示を行いました。また、傾向としては、IIRCの国際統合フレームワークの中で示されているような、いわゆる「オクトパスモデル」を適用しない、個性のあるものが多くなってきています。また、フレームワークに捉われることなく、自社独自の資本を特定している企業も多くなってきており、ビジネスモデルと資本の関連性の説明に注力している企業も増えていますが、これらは企業の価値創造の包括的な説明のための議論が深化してきている表れではないかとみられています。

■人的資本の開示において女性管理職について記載する企業が増加
資本ごとの開示に大きな変動はみられませんでしたが、その中で特筆すべきなのが、女性管理職数もしくはその比率を開示する企業が大幅に増加したことです(2015年の17%から2106年は25%へ)。これは、2015年8月成立の「女性活躍推進法」に基づき、企業が女性活躍に関する数値目標を策定したことによるものと推測されます。

■リスクと機会を開示している企業は少ない
リスクと機会を関連づけることで透明性と信頼性を高める開示を行うことができますが、リスクと機会の両方を各自している企業は全体の5%(13社)とまだ少なく、リスクのみを開示している企業が大半(48%)を占めます。
しかし、リスクと機会は表裏一体であり、リスクを社会的な課題を解決する機会ととらえ、企業価値を高めるための活動につなげることが出来るという側面での検討も必要です。


【調査概要】
・調査対象期間:2016年1月~12月
・対象企業:「自己表明型統合レポート」を発行している国内の企業279社
統合報告書の定義については未だ広く合意されたものがないため、昨年に引き続き「自己表明型統合レポート」を発行している国内企業の報告書を対象に調査・分析。
・調査方法:判断基準を定めた上で項目ごとに担当を決め、原則として1人の担当者が全てのレポートを確認する方法で実施。
・調査協力:企業価値レポーティング・ラボ

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