平成28年下半期農業景況調査:設備投資 

2017年03月24日
日本政策金融公庫(略称:日本公庫)農林水産事業が、ご融資先の担い手農業者(注1)を対象に実施した「平成 28 年下半期農業景況調査」で、平成 29 年(以下、「29 年」という。)の設備投資見込みやその内容について調査したところ、29 年の設備投資見込みDI(注 2)は 3.6 と調査開始以来、最高値となりました(図)。

設備投資の内容は農業機械(58.8%)が最多で、続いて生産施設、農地の取得など生産関連が多くなっているのが特徴です。設備投資の目的に関しては省力化・生産効率化、規模拡大、設備更新の3つに集中しています。
また、設備投資に踏み切らなかった理由に関しては「現状維持でいい」が大半の一方で「後継者がいないため」といった切実な理由もあり、後継者対策に課題があると言えそうです。調査結果のポイントは以下のとおりです。

<調査結果のポイント>

○ 畜産で強い投資意欲、施設園芸等ではやや低く地域差も(表1)
29 年の設備投資見込み DI は、28 年(▲12.8)から 16.4 ポイント上昇して 3.6 と過去最高で、調査開始以来初のプラス値となり、農業者の設備投資意欲が高まっていることが分かりました。
業種別では畜産が全ての業種でプラス値となり、設備投資意欲が高くなっています。
一方、施設野菜(▲7.4)、施設花き(▲17.8)等の園芸品目や茶(▲8.6)、きのこ(▲5.4)はマイナス値となりました。施設野菜は地域差が大きく、北海道(47.8)、北陸(50.0)といった新興産地では投資意欲の高まりが見られます。

○ 農業機械投資は稲作、露地・施設野菜に集中、農地取得も(表2)
設備投資の検討内容について聞いたところ、全体では農業機械(58.8%)が最多で、続いて生産施設(37.6%)、農地(農地の取得:27.0%、農地整備:23.5%)と生産関連での回答が多く集まりました。
中でも、稲作や露地野菜等は定期的な機械の更新が必要なため、農業機械の割合が高く、畜産では畜舎の建設・整備等の生産施設の割合が高くなっています。果樹は加工施設の割合が 35.6%と高く、6 次産業化の動きを反映したものとみられます。
生産関連以外の項目では雇用対策が 8.4%と高く、労働力問題への関心の高さがうかがえます。労働者不足を解消するため、宿泊施設を併設した農業用倉庫の建設などの具体的な投資に関する声も寄せられています。

○ 生産効率化投資に加え新商品・新技術への取組みや雇用対策投資も(表3、4)
設備投資の目的を聞いたところ、「設備更新」(43.9%)の他では「省力化・生産効率化のため」(50.6%)、「規模(生産)拡大のため」(45.4%)、と生産関連の回答が多くなりました。
一方で、茶や果樹は「新技術導入のため」(茶:19.7%、果樹:21.3%)及び「新たな商品の展開のため」(茶:12.7%、果樹:17.7%)の回答も多く、果樹であれば高糖度品種、茶では旨みや甘みの強い「おおい茶(※)」、のように商品の差別化の展開が期待されます。
また、設備投資の目的と検討内容を照らし合わせると、「流通の合理化」、「新たな商品の展開」や「法人化」を目的とする投資として、事務所の設置等の「雇用対策」への設備投資を行うとの回答が一定数あることが特徴です。(流通の合理化:21.4%、新たな商品の展開:16.8%、法人化:20.8%)。
(※)玉露、てん茶、かぶせ茶など一定期間遮光した覆下(おおいした)茶園で栽培された茶葉を用いたものが「おおい茶」と呼ばれ、玉露やてん茶は高級茶として取り扱われる。

○ 設備投資を行わない理由は「現状維持」79%、後継者不足理由も(表5)
設備投資をしない理由としては、「現状規模を維持する方針のため」が最多となりました(79.0%)。一方で、「経営が逼迫しているため」との回答が畑作(24.3%)、茶(25.3%)で多くなっているのも特徴です。また、酪農については「後継者がいないため」(21.6%)、「必要な機能を外部委託するため」(13.5%)との回答が多く、後継者不足による担い手の減少、労働力のアウトソーシングが進むと考えられます。
地域別では北海道で「後継者がいない」(23.8%)、「経営が逼迫」(17.9%)、「外部委託」(10.6%)が他地域より高くなっており、労働力や経営内容を理由としている点が特徴です。

(注1)認定農業者の経営改善の取組を後押しするスーパーL資金又は担い手農業者の新たな取組みを支援する農業改良資金のご融資先
(注2)DI の算出方法については、添付資料P1の図に付記した注を参照


【調査概要】
調査時期 平成29年1月
調査方法 往復はがきによる郵送アンケート調査
調査対象 スーパーL資金又は農業改良資金のご融資先のうち22,102先
有効回答数 7,379先(回収率:33.4%)
稲作(北海道):868、稲作(都府県): 1,929、畑作:633、露地野菜:629、施設野菜:596、茶:162、果樹:367、施設花き:220、きのこ:94、酪農(北海道):307、酪農(都府県):287、肉用牛:479、養豚:225、採卵鶏:125、ブロイラー:62、その他:396

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