平成28年下半期食品産業動向調査:HACCP 

2017年03月22日
日本政策金融公庫(略称:日本公庫)農林水産事業が平成29年1月に実施した「平成28年下半期食品産業動向調査」の特別設問で、今や国際的な食品衛生管理の基準になっているHACCP(※)の取組みについて、食品製造業者に聞いたところ、「既に導入済み」(33.4%)、または「今後導入予定」(17.1%)、さらに「制度化の内容によって導入を検討」(32.4%)と回答し、8割超の企業が意欲的であることがわかりました。

また、HACCPの制度化が政府で議論されていますが、今回の調査で、政府による制度化を待たずに、消費者意識の向上や輸出先を含めた取引先からの要請に基づいて自主的に導入を検討する企業が多いことが明らかになりました。

※HACCP(ハサップ)とは、1960 年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式で、原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析し、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視し記録する工程管理システムです。

<調査結果のポイント>

○ 3割超の企業が既にHACCP導入済み (資料:図1、図2)
食品製造業の方にHACCP導入への取組み状況を聞いたところ、33.4%の企業が「導入している」と回答しました。また「数年内に導入予定である」が17.1%、「制度化の内容によっては導入を検討する」が32.4%で、これらを合わせると、食品製造業者のうち82.9%がHACCP導入に意欲的であることがわかりました。
また、「導入している」「数年内に導入予定である」「制度化の内容によっては導入を検討する」と回答した食品製造業の方に、導入(取得)済み、もしくは今後導入(取得)・検討予定のHACCP関連の認証の種類(複数回答)について聞いたところ、自治体や業界団体による認証などの国内のHACCP認証が48.9%、自社で自主的に取り組んでいるものは33.4%、国際的なHACCP認証とされるFSSC22000 やISO22000 などは29.4%という結果となりました。
EU(欧州連合)や米国などへの農林水産物や食品の輸出促進と関連し、国際的なHACCP認証が必要となってきており、その点は今後の課題です。

○ HACCP導入のきっかけは異物混入など食品事故などへの対応 (資料:図3)
HACCPを「導入している」「数年内に導入予定である」「制度化の内容によっては導入を検討する」と回答した食品製造業の方にHACCP導入の契機について聞いたところ、「異物混入等の食品事故を契機とする消費者の意識向上」が 41.8%、「取引先からの要請」が 40.6%、「HACCPに関する制度改正(HACCP制度化等)」が 34.4%となりました。
政府によるHACCP制度化の議論が進む中、制度化を見据えてHACCP導入を検討するよりも、消費者や取引先からの要望に基づいて導入を検討しているといった回答が上回りました。

○ 課題は導入時の施設整備や手数料など資金負担問題 (資料:図4)
HACCPを「導入している」「数年内に導入予定である」「制度化の内容によっては導入を検討する」と回答した食品製造業の方にHACCP導入の際の課題について聞いたところ、「施設・設備の整備(初期投資)に掛かる資金」が58.3%、「HACCP導入までに掛かる費用(コンサルタントや認証の手数料など)」が49.2%、「HACCP導入後に掛かるモニタリングや記録管理コスト」が44.7%となり、資金負担面が課題であることがわかりました。
また、HACCPを「今後も導入する予定はない」と回答した食品製造業の方にHACCP導入を行わない理由や導入が困難な理由を聞いたところ、課題として回答した内容と同様の傾向を示し、「施設・設備の整備(初期投資)に掛かる資金」が 54.3%、「HACCP導入までに掛かる費用(コンサルタントや認証の手数料など)」が 47.2%、「HACCP導入後に掛かるモニタリングや記録管理コスト」が33.5%となりました。


【調査概要】
調査時点:平成29 年1 月1 日
調査方法:郵送により調査票を配布し郵送により回収
調査対象:全国の食品関係企業(製造業、卸売業、小売業、飲食業) 6,975 社
有効回収数:全体で2,446 社 (回収率35.1%)
《内訳》 製造業:1,570 社、卸売業:603 社、小売業:216 社、飲食業:57 社

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
リンク先リサーチPDF
[日本政策金融公庫]
 マイページ TOP