CFOサーベイ 2015 

2015年09月29日
トーマツは、CFO(Chief Financial Officer: 財務担当役員)の課題認識に関する「CFOサーベイ 2015」を実施した。本サーベイは、2015年9月9日に「CFOプログラム」の一環としてデロイト トーマツ グループが開催したCFO向けのカンファレンスである「CFO VISION 2015」に参加した上場企業を中心とした約100社のCFOを対象に実施したもので、2013年、2014年に続き今回で3回目となる。

調査内容は4つのパートで構成されている。前半2つのパートは、経営環境や課題認識について質問し、CFOの意識変化について考察した。後半2つのパートでは、CFOがCEOと事業部門の「ビジネスパートナー」としての役割を果たしているかどうかの認識、企業が新しい価値を生み出すためのポイントやその中でのCFOの役割に関する意識を確認した。

1.昨今の経営環境に対する認識

(1)現在の景気動向
国内景気については、53.6%のCFOが「順調に拡大」、または「緩やかながら拡大」と回答する一方、46.4%が「横ばい」や「緩やかながら悪化」と回答し2014年(19.8%)や2013年(20.2%)と比較して大幅に増加。多くのCFOが国内景気が停滞・減速しているという認識を持っていることが分かった。世界景気についても、「横ばい」、または「緩やかながら悪化」という回答が68.3%を占め、2014年の回答結果(23.6%)および2013年の回答結果(48.8%)と比較すると世界景気についても停滞・減速しているという認識を持っていることが判明した。(図表1)

(2)今後の日本企業のポジション
今後の日本企業のポジションについては、61.0%のCFOが「グローバル競争が激化し、相対的に低下する」と回答しており、2014年(55.1%)や2013年(33.3%)よりも、日本企業の状況について厳しい見方が広がっていることがうかがえる。

2.CFOとしての課題認識

(1)グローバル化において対応すべき課題
グローバル化が進む中、CFOが認識している課題(複数回答)は、2013年、2014年に引き続き「グローバル化をリードする人材の獲得・育成」が75.6%で最多で、2013年とは同様、2014年(66.3%)と比較すると増加している。次いで「世界に通用する商品・サービスの開発」(52.4%)が多く、前回・前々回と同様、この課題への対応が重要であることが分かった。また、「新興国市場でのビジネスチャンスの発掘」は課題認識が年々低下していることが分かった。その一方、回答率は低いが、「先進国市場でのシェア拡大」(6.1%)が前回(3.4%)から2倍近く増加し、2013年(7.0%)と同程度となっており、先進国への意識が再び高まっている。(図表2)

(2)CFOにとっての重要課題
CFO自身が取り組むべき重要な課題は、「企業価値最大化を達成する投資マネジメントの徹底」が3年連続で最も多い80.5%で、投資機運が拡大しつつある日本企業において課題認識が強まっていると言える。これに関連して「M&Aプロセスの洗練」が前回から急伸しており、投資の一形態であるM&Aの意識が高まっていることも分かった。また、「事業管理に資する情報の提供」(36.6%)は前回同様に課題認識が強いものの、「キャッシュマネジメントの高度化」(34.1%)が3番目の項目となり、海外事業が拡大する中、重要な経営資源の1つであるキャッシュに注目が集まっていることが読み取れる。(図表3)

3.CEOや事業部門のビジネスパートナーとしてのCFOの役割
90.3%のCFOが「ビジネスパートナーとしての役割を果たしている」と回答しているものの、そのうち「役割を十分に果たしている」は15.9%にとどまり、「役割を一定程度果たしている」(74.4%)が大多数を占めた。前回同様に、一定の貢献はできているものの、期待役割を十分には果たしていないという認識があることが分かった。この傾向は、経理・財務部門全体として果たしている役割でも変わらず、「役割を果たしている」との回答は87.8%に上る一方で、「役割を十分に果たしている」との回答は9.8%にとどまっている。

4.企業が新しい価値を生み出すためのポイントやその中でのCFOの役割に関する意識

(1)新しい価値を生み出すためのポイント
企業が新しい価値を生み出すためのポイントに関しては、「新しいことに挑戦する企業の風土」(59.2%)への回答が最も多かった。「イノベーションに携わる人材の質」が19.7%、「経営者の攻めの姿勢」が12.7%と続き、「事業部間の垣根の低さ」(4.2%)、「事業化するためのプロセス」(4.2%)の回答は少なかった。

(2)新しい価値を生み出すためのCFOの役割として取り組みが不十分であるもの
新しい価値を生み出すためのCFOの役割として3点の役割を提示し、どの役割への取り組みが不十分かどうかを確認したところ、「Verification:新陳代謝を含めた厳しい目線での検証」が60.6%で最多となり、「Judgment:事業内容を理解した上での総合的な判断」(36.6%)、「Finance:投資対象に適した資金調達」(2.8%)がそれに続くという結果になった。

(3)企業の新陳代謝の意思決定を困難にしているもの
事業からの撤退を中心とし、企業の新陳代謝の意思決定を困難にしているものについて確認したところ、「過去のしがらみ」が32.4%で最多となり、「従業員の解雇・配置転換の困難さ」が23.9%でこれに次いだ。その後の順位は、「リーダーシップの弱さ」(21.1%)、「新しい事業のパイプラインの少なさ」(15.5%)、「収益目標の低さ」(7.0%)となっており、新しい価値を生み出し続けるための前提ともなる企業の新陳代謝を進めていくためには、過去との決別がポイントになることが浮き彫りになった。

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[トーマツ]
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