役員報酬サーベイ(2016年度版) 

2017年01月27日
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下DTC)は、日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度およびコーポレートガバナンスへの対応状況の実態調査を行った結果をまとめましたのでお知らせします。

この調査は2016年8月~10月にかけて実施し、東証一部上場企業を中心に194社から得た回答をもとにしています。また本サーベイは、2002年以降実施している調査で、日系企業の参加社数規模でみると、日本最大級の調査です。

【調査結果のサマリーとポイント】

今回の調査結果では、2015年6月のコーポレートガバナンス・コードの適用開始を受け、中長期的な企業価値向上を意識した役員報酬制度の設計やガバナンス対応の取り組んだ結果が表れている。とりわけ株式関連報酬の導入を検討する企業が増加しており、DTCへの引き合いも大幅に増加している。また、調査結果に表れる日本の役員報酬は、現時点では欧米と比較して、非常に低い水準にあることが分かる。しかし業績を伸ばした企業経営者には相応の報酬が支払われるべき、という株主や機関投資家等の意向を受け、役員報酬は近年上昇傾向にある。

■報酬水準
社長の報酬総額水準の中央値は、4,698万円。従業員の最高報酬額を1とした場合の社長との報酬格差は、3.51倍に。また、社外取締役の報酬総額水準は中央値で652万円。

■インセンティブ
約40%の企業が何らかの株式関連報酬を既に導入していると回答。個別制度ごとの導入検討中までを含めた企業数は、株式報酬型ストックオプションで、既に導入済みの企業数の2倍となる63社、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)で同じく17倍となる52社、株式交付信託で同じく3倍となる51社となり、今後、多様な株式関連報酬の導入が進展する可能性が高い。

■ガバナンス
任意の報酬委員会を設置する企業の割合は40%で、昨年の19%から約2倍に。また、任意の指名委員会の設置企業割合は33%で、昨年の15%から約2倍に増加。

【『役員報酬サーベイ(2016年度版)』の調査結果概要】

■報酬水準
・役員報酬のうち、報酬総額の水準は、参加全企業194社の中央値で社長4,698万円、専務3,665万円、常務3,042万円、取締役・執行役員1,875万円、社外取締役(グループ会社外から招聘)652万円となった(図1)。

・従業員の最高報酬額を1とした場合、社長の報酬はその3.51倍で、昨年3.24倍よりも拡大した。

■インセンティブ
・採用している業績連動報酬の種類は、前年の業績等に応じて翌年の定期同額給与(法人税法第34条第1項第1号に規定)に反映する年俸の変動化*1が28%、事前届出確定給与(法人税法第34条第1項第2号に規定)が6%、利益連動給与(法人税法第34条第1項第3号に規定)が20%となり、損金不算入型の賞与は51%(図2)*2となった。
*1:本来的な意味での賞与ではないが業績に応じて変動する点で賞与と類似
*2:「金銭による業績連動報酬を導入している」と回答した151社の回答

・コーポレートガバナンス・コード(CGC)の適用開始を受け、株式関連報酬の導入を検討している企業が増加している。参加企業のうち、約40%の企業が何らかの株式関連報酬を既に導入しているが、導入検討を含めた企業数では、株式報酬型ストックオプション*3が現状の2倍となる63社、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)が現状の17倍となる52社、株式交付信託(信託の設定による株式付与)が現状の3倍となる51社(図3)となっており、今後多様な株式関連報酬の導入が進展する可能性が高い。
*3:権利行使価格が極めて低い価格(1円等)に設定され、実質、譲渡制限付き株式が譲渡と同様の効果が得られるストックオプション制度

・役員評価制度を導入している企業は、全参加企業の27%であった。明確な評価制度は存在しないものの、何らかの評価基準が存在する企業は41%となっており、「何となく」評価を実施している企業が多いことがうかがえる。また評価を行っていない企業も32%存在する。

・報酬に関連付けられる経営指標は「売上高(51%)」「営業利益(47%)」「経常利益(36%)」「当期利益(27%)」となっている。また「売上高成長率(9%)」や「売上高営業利益率(13%)」を使用する企業もあった。利益関連指標では「ROE(24%)」「ROA(9%)」「フリーキャッシュフロー(11%)」となっており、利益関連指標は昨年よりも採用率が高くなっている(図4)。なお、欧米で一般的に使用されるEPS(1株当たり利益)やTSR(株主総利回り)を使用している企業は存在しなかった*4。
*4:「明文化された役員評価制度の有無」で「あり」を選択した52社のうち、「全社業績の報酬への反映の有無」で「あり」を選択した45社の回答

■ガバナンス
・91%の企業で社外取締役を導入している。また昨年と比較して社外取締役の人数を増員した企業も37%存在する。

・社外取締役に期待する役割では、「経営方針や経営改善に関する助言」が96%と最も多く、「適切なリスク管理体制の構築に関する助言」が70%、「株主・会社・経営陣との利益相反の監督」が44%と続いている(図5)*5。
*5:「社外取締役の人数」で「0人」と回答した企業を除く174社の回答

・社外取締役の報酬総額の中央値は、グループ会社以外から招聘している場合は、前述(図1)のとおり652万円であるが、グループ会社からの登用の場合は大半が無報酬であった。

・任意の報酬委員会を設置している企業は40%で、昨年の19%から大幅に増加している(図6-1)*6。多くの企業が「取締役会、経営会議体等への諮問、アドバイスを行う機関」として、報酬委員会を位置づけている。また、報酬委員会の議長は、「社外取締役」「社長」が最も多く、それぞれ39%となっている。

・任意の指名委員会を設置している企業は33%で、昨年の15%から大幅に増加している(図6-1)*6。多くの企業が「取締役会、経営会議体等への諮問、アドバイスを行う機関」として、指名委員会を位置づけている。また、指名委員会の議長は、「社外取締役」「社長」が最も多く、それぞれ39%となっている。

・指名委員会の協議事項は取締役等の選解任だけでなく、社外取締役の選解任(77%)や執行役員の人事(59%)となっている(図6-2)*7。
*6:「経営機関の形態」で「指名委員会等設置会社」を選択した企業を除いた回答
*7:「任意の指名委員会の設置状況」で「設置している」を選択した61社の回答

・コーポレートガバナンス・コード(CGC)の開示状況について、ほとんどの項目において、「実施している(コンプライ)」が8割超となっている。一方で「取締役会の実効性分析・評価」は、「実施している(コンプライ)」が64%と低水準であった。またエクスプレインしている(今後の取組予定や対応時期を説明している)企業も29%存在しており、次年度以降は「実施している(コンプライ)」となる企業が増加すると考えられる(図7-1、7-2)。

■その他(グローバルでの経営幹部報酬制度について)
・経営幹部の報酬制度をグローバルで「共通化していない」企業は60%。共通化している企業では「考え方のみ共通化」が最も多く12%で、次いで、「一部の海外グループ会社で共通化」が3%であった。本社と全海外グループ会社全体で共通化できている企業は1%しか存在しなかった 。また本社として海外グループ会社の状況を把握していない企業も17%存在した。

・本社が企画するグローバルでの長期インセンティブプランを「導入していない」企業が85%で。導入済みの企業のうち、「一部の海外グループ会社で導入済み」が最も多い4%であった。


<調査概要>
・調査期間:2016年8月~2016年10月
・調査目的:日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応状況等の現状に関する調査・分析
・回答企業数:上場企業176社(うち東証1部126社)、非上場企業18社、計194社(集計対象役員総数 3,454名)

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[デロイト トーマツ コンサルティング]
 マイページ TOP