IT人材に関する各国比較調査(概要版) 

2016年06月10日
経済産業省は、IT人材に関する各国比較調査(概要版)を発表。

【調査の概要】

・ITは今後も我が国産業の成長にとって重要な役割を担うことが強く期待されており、十分なIT人材を確保することは、これまで同様、今後もきわめて重要な課題であるといえる。2015年度、経済産業省では、こうした問題意識のもとで、IT人材の中長期的な需給動向を展望するとともに、今後のIT人材の確保・育成に向けた方策についての検討を行った。(報告書本体は、経済産業省WEBサイトを参照)
・上記調査の一環として、我が国のIT関連業界及びIT人材の状況を客観的に把握するために、 「IT人材に関する各国比較調査」を実施し、IT人材の属性や実態について他国との比較を試みた。調査の概要は、以下のとおりである。

・調査実施国:米国、日本、韓国、中国、インド、ベトナム、タイ、インドネシア
・回答者条件:各国に居住している方のうち、IT関連の仕事に就いている方(各国500名、ベトナムのみ300名)
・調査方法:WEBアンケート(株式会社マクロミル及び同社提携先等のWEB調査モニターを利用)
・調査期間:2016年3月上旬~中旬
・主な調査内容:
 年代、性別、担当業務
 最終学歴、専攻分野
 IT関連の業務経験年数
 年収水準
 ITスキル標準のレベル
 転職経験、転職に対する考え方
 現在の仕事や職場に対する満足度
 仕事やキャリアに対する考え方
 自己研鑽の状況 等

【調査結果のポイント】

海外のIT関連職の人気は高いのか?

・日本のIT人材に関して、国内におけるIT関連職種の人気が低下気味であり、優秀な人材の獲得が以前より難しくなっているのではないか、という問題意識が議論されることがある。
・今回の調査において、こうした点について他国との比較を試みたところ、以下のとおり、日本のみ肯定的な回答が半数を大幅に下回る結果となった。国によって多少の差はあるものの、今回の比較対象となった他国では、日本よりもITに関する仕事の人気が高いと言える。特に、米国のほか、インド、インドネシアでは、ITに関する仕事の人気が非常に高いことが読み取れる。

海外のIT関連職の満足度は高いのか?

・日本のIT人材に関しては、仕事に対する満足度が注目されることがある。こうした点を踏まえて、今回の調査においても、仕事に対する満足度について他国との比較を試みた。
・その結果、日本のIT人材の「仕事の充実感・やりがい」の面で満足度はそれほど低いわけではないものの、他国と比較すると肯定的な回答がやや少なくなっている。また、「自分の仕事の成果に対する評価」については、日本のみ肯定的な回答が半数を下回る結果となった。この背景には、日本の企業における評価基準等も関連していると考えられる。

海外のIT関連職の年収は高いのか?

・IT関連職種の人気や満足度の違いの背景として、年収水準の違いが指摘されることがある。こうした点を踏まえて、今回の調査では、回答者の年収水準を尋ね、他国との比較を試みた。
・その結果、IT先進国である米国と日本のIT人材の平均年収には2倍近くの差があることが明らかとなった。また、調査対象国の国内他産業の年収水準とIT人材の平均年収を比較すると、米国やインドでは大きな差がある(IT人材が国内平均よりも大幅に高い年収を得ている)ものの、日本や韓国では、国内他産業の平均年収とIT人材の平均年収にそれほどの差はないことも把握された。
・給与・報酬に対する満足度を見ると、IT人材の平均年収が非常に高い米国や、国内全産業の9倍近くの年収が得られるインドでは、給与に対する満足度も非常に高いことがわかる。逆に、国内全産業との差が大きくない日本や韓国では、給与に対する満足度が低くなっている。

年収と仕事の人気の関係

・ITに関する仕事の人気も、年収水準と強く関連していることが明らかになった。たとえば、ITに関する仕事に「絶対に就きたいと思っていた」という回答が全体の6割を超えるインド、インドネシアは、IT人材の平均年収が国内全産業の平均年収の10倍近くとなっている。また、平均年収の水準そのものが他国よりも非常に高く、1,000万円を超えている米国も、同様にIT関連の仕事の人気が非常に高い。
・IT人材の平均年収と国内全産業の平均年収の差が他国よりも小さい韓国と日本では、IT関連の仕事に「就いてもよいと思っていた(選択肢の一つとして考えていた)」という回答が最も多くなっており、ITに関する仕事の人気は他国ほど高くはない状況にある。

人材のレベルと年収の関係

・IT人材のレベルも、年収水準と関連している可能性があることが把握された。
・各国の回答者の平均レベルと給与の高さに対する認識を見ると、おおむね回答者のレベルが高い国のほうが、「給与が高い」と感じている割合が高い傾向にあることが読み取れる。各国の人材のレベルの高さが、各国のIT関連職種や業種の競争力の高さにつながり、結果として高い給与水準が実現されている可能性も考えられる。

海外のIT人材の流動性は高いのか?

・日本と海外の労働市場の違いとして、「流動性の高さ」が指摘されることがある。こうした問題意識を踏まえて、今回の調査では、各国のIT人材の転職経験や転職に対する考え方についても尋ねた。
・その結果、日本のIT人材は、約半数が「転職したことはない」と回答しており、他国と比較すると、人材の流動性が低い状況にあることが把握された。また、日本のIT人材の転職に対する考え方は最も保守的であることも、あわせて明らかとなった。

海外のIT人材のスキルアップに対する意識は高いのか?

・技術の進歩が速いIT関連業界で活躍するIT人材にとって、自らスキルアップするための意欲や取組は非常に重要である。こうした観点から、今回の調査では、各国のIT人材が「業務以外でどのくらい勉強しているのか」、また「どのような取組を行っているのか」について尋ねた。
・その結果、それほど大きな差ではないものの、「業務で必要かどうかにかかわらず、自主的に勉強している」という回答は、日本において最も低いという結果になった。また、具体的な取組については、WEB上での情報収集は積極的に行っているものの、WEB上で開講される教育・研修を受講したり、社外の研修・セミナーに参加したり、コミュニティ活動に参加している人材の割合は、他国よりもかなり少ないことが把握された。

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
リンク先リサーチPDF
[経済産業省]
 マイページ TOP