第20回世界CEO意識調査(79カ国のCEO対象) 

2017年01月17日
PwC、「第20回世界CEO意識調査」の結果を世界経済フォーラム(ダボス)に合わせて発表。

この調査は2016年9月から12月にかけて実施されました。オンライン、郵送、面談、電話インタビューにより、79カ国1,379名のCEOから回答を得ました。非上場企業のCEOが57%、上場企業のCEOが43%でした。売上高別では、10億ドル米以上の企業のCEOが36%、1.01~9.99億米ドルの企業のCEOが38%、1億米ドル以下の企業のCEOが21%でした。

【調査結果サマリー】

「第20回世界CEO意識調査」では、今後12カ月間の自社の成長見通しに対し非常に自信があると回答したCEOが38%(2016年は35%)であった一方、2017年に世界経済の成長が上向くと回答したCEOは29%(2016年は27%)でした。

ビジネスリーダーは自社の見通しに対する強気な見方を強めている一方、経済の不確実性(82%)、過剰な規制(80%)、鍵となる人材の確保(77%)に対しては、依然として非常に強い懸念を抱いています。また、59%のCEOが保護主義への懸念を表明するなど、保護主義に対する懸念は強まっており、米国とメキシコのCEOでは、その割合が64%まで上昇しています。これらの調査結果は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の開催に合わせ本日発表されました。

CEOはグローバリゼーションが資本、物、人の自由な移動を促す利点について高く評価していますが、貧富の格差是正あるいは気候変動の問題解決に貢献してきたかという点については懐疑的です。こうした見方は、グローバリゼーションの果たす役割についてCEOが高く評価していた1998年の第1回世界CEO意識調査と対照的です。

【調査結果】

■売上拡大への自信を深める

2016年とは大きく異なり、自社の今後1年間の売上拡大に対し自信があると回答したCEOの割合は、世界中のほぼ全ての主要国で増えています。自信があると回答した割合が最も高いのは、インド(71%)、次いでブラジル(57%、昨年の2倍強)であり、オーストラリア(43%)や英国(41%)も上位にランクインしています。また、自信があると回答した割合が上昇した他の国としては、中国(11%増の35%)、米国(6%増の39%)、ドイツ(3%増の31%)などが挙げられます。スイスは、前年の2倍以上となる34%のCEOが、自信があると回答しました。

自信があると回答した割合が低下したのは、スペイン、メキシコ、日本であり、なかでも日本は2016年の28%から14%まで大幅に低下しました。

成長の原動力について、回答が最も多かった項目は今後1年間の「本業の有機的成長」であり、4分の3を超えるCEOがこれを挙げました(79%)。また、41%のCEOが2017年に新たなM&Aを検討し、全CEOの4分の1近く(23%)が新たなビジネス機会を実現化するために組織のイノベーション力を強化する姿勢を打ち出しています。

■CEOが成長を求める分野

PwCが行った「第1回世界CEO意識調査」では、成功が確実に見込める市場として、中国とインドを含む新興市場に期待が寄せられました。しかし、市場は変わりやすく、通貨の大幅な変動がその傾向に拍車をかけたことから、CEOはより多様な国へ目を向けるようになりました。今年の調査結果では、米国、ドイツ、英国の優先順位がより高まった一方、ブラジル、インド、ロシア、アルゼンチンへの投資意欲は3年前に比べて後退しました。

企業の成長にとって最も重要であると考えられている上位5カ国は、米国(1位)、中国(2位)、ドイツ(3位)、英国(4位)、日本(5位)です。成長が期待できる国として英国を高く評価するCEOが、米国(+4%)、中国(+11%)、ドイツ(+8%)、スイス(+25%)で増えています。

また、今後12カ月間の自社の成長にとって、非常に重要な4都市に挙げられたのは、上海、ニューヨーク、ロンドン、北京でした。

■グローバリゼーション

ビジネスリーダーの58%は、保護主義傾向が強まるなか、グローバリゼーションのバランスをとることが難しくなったと考えています。この懸念は、第1回世界CEO意識調査で示された「多くのグローバル企業はビジネス上必要な貿易の自由を十分に享受している」という見解とは対照的です。

過去20年間、CEOはグローバリゼーションが資本、物、人の自由な移動に貢献すると概ね前向きに評価してきました。しかし、今回の調査では、グローバリゼーションが気候変動の抑制や貧富の格差是正を促したとの見方には懐疑的であることが分かりました。この結果は、PwCがこれらの課題に関して22カ国の5,000人を超える一般市民を対象に別途実施した消費者調査における見解と同様のものでした。

「グローバリゼーションが資本、人、物、情報の移動の促進に概ね好影響を与えてきた」と考える割合は、CEOが60%であるのに対し、一般市民はわずか38%でした。「グローバリゼーションが十分な量と質を伴う雇用の創出に貢献している」と考える一般市民は3分の2近く(64%)にとどまりましたが、対照的にCEOでは4分の3超(76%)に上りました。また一般市民は、ビジネスリーダーほど「グローバリゼーションによって、高度な労働力がかなりの程度創出された」と考えていません(一般市民の29%に対し、CEOは37%)。

■テクノロジーと信頼

CEOは「テクノロジーが今や、企業の評判、人材スキルおよび採用、競争、成長にとって切り離すことができないものになっている」との見方を示しています。CEOの4分の1近く(23%)は「テクノロジーが今後5年間で、自社の業界における競争のあり方を完全に変えてしまう」と考えています。

デジタル化がますます進む世界において、テクノロジーは企業と顧客との新たな関係を生み出し、双方に大きな恩恵をもたらしています。その反面、CEOの69%はそうした環境において人々の信頼を獲得し維持することが難しくなっているとも述べています。CEOの87%は、ソーシャルメディア活用にリスクがあり、自社が属する業界の信頼水準に悪影響を与えかねないと考えています。また、CEOの91%は今後5年間において、データの機密性や倫理の問題が自社に対する人々の信頼に影響を与える可能性があると回答しています。

20年前、信頼はCEOにとってビジネス上の主要な関心事ではありませんでした。15年前、「企業に対する一般市民の信頼が著しく低下している」と考えていたCEOはわずか12%に過ぎませんでした。今年、企業への信頼の欠如が自社の成長に打撃を与えるとの懸念を示したCEOは58%と、2013年の37%から増加しました。

大きな注目を集めたテクノロジーやセキュリティの問題が大企業で複数発生したことを受けて、当然のことながらCEOはサイバーセキュリティ、機密情報の漏えい、ITシステムの大きなトラブルをステークホルダーの信頼に対する主要な3つのテクノロジーの脅威と位置付けています。

■人材スキルと雇用

この20年間で、人材スキルに関して懸念を抱くCEOは2倍以上になりました(1998年の31%から、2017年には77%まで増加)。人的資本、多様性の受容、人員の流動性は、CEOが今後必要となる人材スキルを考えるうえで、非常に重要な3つのビジネス課題と言えます。CEOの4分の3以上(77%)が高度人材の獲得について懸念しており、特に強く懸念しているのはアフリカ(80%)やアジア太平洋(82%)のCEOです。

CEOの半数以上(2016年の48%に対し52%)が今後12カ月間で人員増加を計画しています。英国(63%)、中国(60%)、インド(67%)、カナダ(64%)のCEOが非常に意欲的な採用を計画しています。業界別では資産運用(64%)、ヘルスケア(64%)、テクノロジー(59%)が積極的である一方、政府/公共サービス(32%)の回答が最少でした。

自社において雇用削減を予定しているCEOは16%にとどまりましたが、80%のCEOは「雇用はテクノロジーやオートメーションの使用から何らかの形で影響を受ける」と回答しています。テクノロジーが雇用に対し非常に大きな影響力を持つと考えているCEOが多い国は、カナダ(100%)、米国(95%)、ドイツ(93%)、オーストラリア(92%)、ブラジル(91%)です。

CEOの過半数(52%)は、人間と機械の協働にどのような利点があるのかを既に探っており、5人に2人(39%)は人工知能が将来の人材スキルのニーズに及ぼす影響を検討しています。

CEOの70%がテクノロジーの変化のスピードを懸念し、創造性とイノベーション、リーダーシップとEQ(心の知能指数)について最も貴重なスキルと考えていることは驚きではありませんが、同時にそうした人材の獲得が難しいと考えています。デジタルとSTEM(科学、テクノロジー、工学、数学)に長けた人材の確保も過半数のCEOが採用上の課題としています。

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