スポーツ関連産業の創出に向けた企業の意識・取り組みに関する調査(「スポーツビジネス振興シンポジウム」参加者対象) 

2016年12月20日
大阪商工会議所が10月に主催した「スポーツビジネス振興シンポジウム」参加者を対象に「スポーツ関連産業の創出に向けた企業の意識・取り組みに関する調査」を実施。

回答人数の約3分の1がスポーツビジネスへの取り組みを進めており、高機能なスポーツ用品やヘルスケアウェア、スポーツ医科学を応用した健康機器などの開発、スポーツイベントの開催運営等への関心が高いことがわかった。一方、スポーツビジネスへの参入課題として、関連情報の入手や具体的なアプローチ方法をあげる回答が多かった。

【調査概要】

○スポーツビジネスに対して、「具体的な取り組みを始めている」との回答は21.9%で、「今後取り組む予定で、現在準備を進めている」(11.8%)と合わせると、全体の3分の1が具体的な取り組みを進めている。(P4)

○スポーツを核としたビジネスは多岐にわたるが、企業は多彩な分野に関心を寄せている。「新機能や高機能のモノやサービスの開発」については、あらゆる業種の企業の関心が高かった。スポーツビジネス経験企業については、新たなタイプの事業展開への関心が伺えた。(P5~6)

○スポーツビジネスに取り組むにあたり課題となるのは、「スポーツビジネスに関連する情報を入手する手段がない」(24.0%)と、情報不足に関する回答が最も多かった。ノウハウや経営資源の不足を課題とする企業も多くみられた。(P7~8)

○大阪商工会議所に求める支援については、「様々なスポーツビジネスの事例・種類の紹介」(49.1%)、「スポーツビジネスに参入した先進事例の収集及び情報提供」(47.3%)と、情報の提供を求める企業が多い。「プロや実業団、大学等のチームが求める製品・サービスに対して提案する場の提供」(14.3%)、「スポーツイベントのある競技場周辺等で、製品・サービスを提供できる場の設置」(14.3%)など自社の製品・サービスの市場性を確認したり、提案できる機会提供を求める声も多い。スポーツビジネス経験企業の中には、「研究開発拠点整備」の必要性を示す企業もある。(P9~10)


【調査結果】

1.スポーツビジネスに対する各社の取り組み状況について
~約3分の 1 の企業が、すでに具体的な取り組みを進めている~
スポーツに関連するビジネスについて、各社の現在の取り組み状況を尋ねたところ、「具体的な取り組みを始めている」(21.9%)、「今後取り組む予定で、現在準備を進めている」(11.8%)と、すでに具体的な取り組みに進んでいる企業が 33.7%で全体の約3分の1に上った。「今後取り組む予定で、具体的な取組は現在検討中」(14.0%)とあわせると 47.7%と、約半数の企業がスポーツビジネスに積極的に携わっている。その他の企業も、「具体的な取組の検討はまだだが、関心はある」(45.9%)としており、スポーツビジネスへ企業の注目の高さが伺える。

<業種別、企業別にみた取り組み状況>
業種別に「具体的な取り組みを始めている」、「今後取り組む予定で、現在準備を進めている」を合わせた割合をみると、卸・小売業 38.1%、サービス・飲食業 42.2%が他の業種と比較して高い。情報通信業も 36.4%で積極的な企業が多い。従業員数別の企業規模で見た場合には、特段の差や傾向は見られなかった。

2.スポーツを核とした産業の様々な事例や取り組みについて
スポーツを核にしたビジネスには、「スポーツ×モノづくり」、「スポーツ×IT」、「スポーツ×サービス」、「スポーツ×食」、「スポーツ×空間産業」など、様々な分野、多彩なビジネスモデルが考えられる。各社がどのような取り組みに関心を持っているかを尋ねた。

①新機能・高機能のモノやサービスの開発に回答が集まる
全体としては、「モノやサービスの開発」に分類される項目を挙げた企業が多かった。なかでも、「新機能、高機能を持つウェア・シューズ等のスポーツ用品開発」(18.3%)や「新機能・高機能を持つトレーニング用機器の開発」(11.8%)、「新機能・高機能を持つ競技用スポーツ用具の開発」(9.7%)など高付加価値のモノづくりを挙げる企業が多い。「スポーツ医科学を応用した健康機器開発」(15.1%)、「スポーツ医科学を応用した健康飲料、食品」(11.1%)など、産学連携による共同研究、エビデンスが必要な開発を挙げる企業も多い。一方、「高齢者向けのヘルスケアウェア開発」(17.6%)といった高齢化に伴い市場拡大が見込まれるビジネスに関心をもつ企業も多い。

②スポーツイベントや関連サービスなど一般向けサービスにも関心が高い
「イベント・関連サービス」の分野では、「スポーツイベントの開催・運営」(20.1%)が最も多い回答となった。その他にも、「ランニングステーションなどまちなかスポーツのサービス提供」(12.2%)など、一般のスポーツ愛好家向けのサービスにも関心が示されている。

③スポーツができる空間拡大にも関心の声
「空間関連」の分野では、「スポーツをコンセプトにしたまちづくり」が 26.2%で最も多かった。「公共空間をまちなかスポーツの場へ活用」(15.4%)、「既存の建物のスポーツ施設への活用」(12.5%)、「新たなスポーツ施設の建設」(10.0%)など、一般市民がスポーツを楽しめる空間を拡大することにも関心が高い。

<業種別、企業別にみた関心分野>
①スポーツビジネス実績企業は新展開に関心
関心分野について、業種ごとに見ていくと、これまでにスポーツビジネスで実績のあるスポーツ用品メーカーについては、大手企業、新規参入ともに、「スポーツウェアの機能を応用したファッションへの展開」を挙げる企業がみられる。大手スポーツ用品メーカーの中には、「スポーツイベントの開催」への関心を示したり、「スポーツ施設の管理に携わる」例があるなど、製品開発だけでなく、スポーツに人々が触れる機会に関連したビジネス展開への動きが見られる。
また、スポーツジム運営企業の中には、「データ分析ができるデバイス開発」に関心を示す企業もみられ、「スポーツジムの高機能サービス化」とあわせると、スポーツジム、フィットネスクラブといったサービス企業においても、顧客サービスの高付加価値化を図り、差別化を目指すことが推測される。

②大手電機メーカーは研究開発力を活かした分野参入に関心
大手電機メーカーは、「スポーツ医科学を応用した健康機器開発」や「新機能・高機能を持つトレーニング用機器の開発」、「データ分析ができるデバイスの開発」に関心があり、これまで培った研究開発の力を活用した高付加価値製品の開発に注目している。さらに、化粧品メーカーで「新機能・高機能を持つスポーツ用品の開発」や「スポーツ医科学を応用した健康飲料、食品の開発」に関心を持つ企業もあり、美容、健康、スポーツと視野を広げていこうとする動きと見受けられる。

③スポーツ医科学のための分析や応用した製品開発には、多様な業種が関心
「スポーツ医科学のためのデータ分析・解析」は、飲料メーカー、印刷関連企業、電鉄、金融機関など、様々な業種の大手企業が関心を示している。
また、複数の大手百貨店で、「スポーツ医科学を応用した健康飲料、食品の開発」、「スポーツ医科学を応用した健康機器開発」や「高齢者向けのヘルスケアウェア開発」に関心が示されており、流通業界でもスポーツや健康分野で高付加価値製品を求めていることがわかる。スポーツイベントの運営に経験のある運輸大手では、「スポーツジムの高機能サービス化」や「新たなスポーツ施設の建設」にも関心を寄せており、スポーツビジネス分野を拡大することに関心があるのがわかる。

3.スポーツビジネス分野に取り組む際の課題について
①スポーツ関連ビジネスの情報不足が課題とする企業が最多
スポーツビジネスに取り組む際に課題となることについて尋ねたところ、「スポーツビジネスに関連する情報を入手する手段がない」(24.0%)と、情報不足を挙げる声が最多となった。

②ビジネスに関するノウハウ不足や経営資源不足を課題とする企業も多いスポーツビジネスに対して、「自社の強みを活かしたアプローチ方法が分からない」(23.3%)、「ビジネスの可能性を見出すことが難しい」(21.1%)、「販路開拓が難しい」(18.6%)と、スポーツビジネスに関してノウハウが不足している点、また、「社内に必要な人材が足りない」(18.6%)、「新たな取り組みを行う資金がない」(10.4%)といった経営資源不足を挙げる企業もある。

③多くの企業が連携先を探索
連携先を見つけることを課題に挙げる企業も多い。「スポーツチームやアスリートとの連携が難しい」(15.4%)、「共同開発を行う相手先企業を見つけることが難しい」(14.7%)となっている。

④社会環境が課題とする指摘も
「行政や経済団体を挙げてスポーツを盛り上げようとする動きが少ない」(22.6%)、「人口減少や高齢化に伴う国内スポーツ市場の縮小」(21.9%)といった、社会環境面での問題を課題として挙げる企業も多い。

<業種別、企業別にみた課題>
①大手スポーツ用品メーカーでは、スポーツからの新展開が課題
大手スポーツ用品メーカーは、「スポーツから展開した新しいビジネスへの進出が難しい」としている。中小スポーツ用品メーカーでは、「自社商品の効果測定をする手立てがない」といった課題を持ち、大手スポーツジムでも、「スポーツビジネス関連情報を入手する手段がない」ことや、「スポーツチームやアスリートとの連携が難しい」としており、スポーツビジネス経験企業にも様々な課題が存在する。

②販路開拓や効果測定の手立て、スポーツチームとの連携は多くの業種で課題
繊維や飲料、製薬企業大手など様々な業種で、「販路開拓」や、「自社商品の効果測定をする手立てがない」、「スポーツチームやアスリートとの連携が難しい」としている。

4.大阪商工会議所に求めるものについて
①スポーツビジネス事例に関する情報提供を求める声が最も多い
先の質問項目からもわかるように、企業がスポーツビジネスに取り組むには多くの課題が存在する。それらを解決する為に大阪商工会議所に求めるものを尋ねたところ、「様々なスポーツビジネスの事例・種類の紹介」(49.1%)、「スポーツビジネスに参入した先進事例の収集および情報提供」(47.3%)、が上位回答となった。

②マッチングへのニーズも高い
また、「既にスポーツビジネスを行っている企業とのマッチング」を求めている企業の割合も 34.8%と高く、「製品・サービスの機能や効果を科学的に検証できる大学とのマッチング」も 14.0%の企業が求めており、企業間連携や産学連携によって新しいビジネスを興すための支援が不可欠となっている。

③自社の製品・サービスの市場性を確かめる機会が求められる
「自社ビジネスを拡大する機会の提供やスポーツが普及する環境」では、「スポーツ人口を増やすために、スポーツを楽しめる環境の整備支援」が 24.4%と、スポーツ自体の盛り上げを求める企業が多かった。「プロや実業団、大学等のチームが求める製品・サービスに対して提案する場の提供」(14.3%)、「スポーツイベントのある競技場周辺等で、製品・サービスを提供できる場の設置」(14.3%)など自社の製品・サービスの市場性を確認したり、提案できる機会を求める企業も多い。

<業種、企業別に大商に求めるもの>
①大手スポーツ用品メーカーやジムでも、産学連携のみならず、情報提供を求めている。
大手スポーツ用品メーカー等、スポーツビジネス経験のある企業からは、「研究開発拠点の整備」を望む声がある。ただ、経験企業も、「スポーツビジネスの事例紹介」を求めており、情報提供の必要性の高さが確認できた。その他、スポーツ用品メーカーの多くが、「大学と共同で研究開発や効果検証ができる機会」、「被験者が整う実証の場の設定」を求めている。
大手スポーツジムでは、産学連携や企業連携を可能とするマッチングを望んでいる声があるが、「スポーツビジネスに参入した先進事例の紹介」といった情報提供も必要としている。

②多くの業種が「スポーツチームに製品・サービスを提案する機会」を求める
大手商社をはじめ、印刷や製紙会社、製薬企業、機能性食品メーカー、服飾関連製品、保険会社等、多様な業種の企業が「スポーツチームへ製品・サービスを提案する機会」を求めている。

③その他のメーカー
電機メーカーや繊維関連企業、化粧品大手では、「大学と共同で研究開発や効果検証ができる機会」や「スポーツビジネスで実績のある企業とのマッチング」を望んでいる。また、「自社製品を使用してくれるアスリートとの仲介」や、「被験者が整う実証の場の設定」を求める企業もある。


【調査概要】
・調査目的:スポーツ関連ビジネスに対する企業の意識や現在の取り組み状況、新しい事業展開や新規参入における支援のニーズを把握し、新たなビジネス創出を促進する方策を検討する。
・調査時期:平成28年10月17日(月)
・調査対象:スポーツビジネス振興シンポジウム「スポーツが創るこれからのビジネス・社会~スポーツビジネス、成長への期待~」参加者 402名
・調査方法: 所定の調査票によるアンケート方式(当日回収)
・有効回答数(回答率): 279件(69.4%)

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