2015年の日中貿易について 

2016年02月17日
ジェトロが財務省貿易統計と中国海関統計を基に、2015年の日中貿易を双方輸入ベースでみたところ、総額は前年比11.8%減の3,032億8,609万ドルで、リーマン・ショック直後の2009年以来6年ぶりの2桁減少に転じました(注1)。

2015年は主に円がドルに対して14.5%下落(注2)したことから、輸出(中国の対日輸入、以下同じ)は12.3%減の1,427億1,566万ドル、輸入は11.3%減の1,605億7,043万ドルとなりました。ただし円換算では、総額が0.8%増の36兆7,033億円、輸出が0.2%増の17兆2,810億円、輸入が1.3%増の19兆4,223億円となります。
日本側の貿易赤字は前年比2.7%減少の178億5,477万ドルとなります。赤字は2012年以降4年連続となりました。

この分析は、日本の対中輸出を中国の輸入統計でみる「双方輸入ベース」となっております。これは貿易統計が輸出を仕向地主義、輸入を原産地主義で計上しており、香港経由の対中輸出(仕向地を香港としている財)が、日本の統計では対中輸出に計上されないためです。中国の輸入統計には日本を原産地とする財がすべて計上されることから、両国間の貿易は双方の輸入統計のデータがより実態に近いと考えました。なお、中国の輸入統計はドルベース、日本の輸入統計はGlobal Trade Atlasによるドル換算値を用いております。

<調査結果のポイント>

1.2015年の特徴
<1>輸出:食料品以外は軒並み減少

輸出は、円安の進展を受け、ほぼすべての品目で減少し、前年比12.3%減の1,427億1,566万ドルと前年の微増から2桁減に転じた。構成比最大品目の電気機器は、ICと通信機が増加したものの全体では減少した。輸送用機器は、乗用車が前年の2割増から2割減に転じた。一般機械は電算機類(含周辺機器)を除き軒並み減少、中でも前年3割近く伸びた金属加工機械が2割減少した。
(品目別の特徴)
(1)電気機器は、中国で生産されるスマートフォン向け部品の高性能化・高価格化を反映し、通信機(部分品含む)、ICが増加したものの、コネクタなどの電気回路等の機器、重電機器などが軒並み減少した。
(2)一般機械は、主要品目のマシニングセンタ(金属加工機械)が、スマートフォン向け特需があった前年の急増の反動減で、台数が3割近く減少したため、金額も減少した。
(3)化学製品や鉄鋼等の原料別製品は、市況を反映しほぼすべての品目で価格が低下し、輸出額が減少した。
(4)輸送用機器は、乗用車が前年の2割増(台数・金額)から、台数1割減、金額2割減に転じた。ただし、ステーションワゴンは好調(台数2割増)で、うち15年10月から減税措置の対象となった小型車は5.4倍に増加し下半期の輸出を牽引した。
(5)食料品は、その3割を占めるホタテ貝が数量で1.9倍、金額で5割増と急増した。

<2>輸入:前年の横ばいから減少へ
輸入も、ほぼすべての品目で減少し、前年比11.3%減の1,605億7,043万ドルとなった。構成比最大品目の電気機器は、通信機、光電池の減少が主因で前年の微増から1割減へ、一般機械はパソコンなどの電算機類の減少が主因で前年の微増から1割強の減少に転じた。衣類・同付属品は前年に引き続き1割減少した。
(品目別の特徴)
(1)電気機器は、スマートフォンなどの携帯電話端末が9月以降に数量・金額ともに上半期より伸びが高まったが通年では数量が横ばい、金額が1割減少。前年に金額が6割増加した光電池は太陽光の買い取り価格低下の影響とみられる数量減を主因として金額が2割減少した。
(2)一般機械は、ノートパソコンやタブレット型端末などの携帯用自動データ処理機が2014年の駆け込み需要(消費増税、ウィンドウズ XPのサポート終了前)の反動等で2割強減少した。
(3)衣類・同付属品は、前年に引き続き1割減少。日本のベトナム、インドネシア、バングラデシュ等アジア新興国からの輸入が増加していることから、中国に集中していた生産の移管の進展が減少の主因とみられる。

<3>対中貿易収支:4年連続で日本側の赤字
対中貿易収支は2012年以降4年連続で日本側の赤字となった。日本側の貿易赤字は前年比2.7%減少の178億5,477万ドルとなった。貿易赤字額は2013年をピークに減少している。

2.2016年の見通し
<1>輸出:中国の景気減速や市況の低迷が下押し

(1)電気機器は、スマートフォン市場の成長鈍化で半導体等電子部品の大幅な増加は期待できないものの、高性能化による1台当たりの部品点数の増加・高価格化により一定の需要が見込まれる。
(2)一般機械は、構成比の高いマシニングセンタなどスマートフォン製造関連装置については14年並みの特需は見込めないもののスマートフォンの新製品導入の度に需要が生じること、また、中国で工場の自動化・省力化のニーズがあり工作機械の需要が堅調であることから、一定の需要が見込まれる。
(3)化学製品や鉄鋼等の原料別製品は、原油安、中国の景気減速や過剰生産等により生じている原材料の市況が反転上昇することがすぐには期待できず、日本からの輸出は減少傾向が続くとみられる。
(4)輸送用機器は、15年下半期の乗用車輸出微増に貢献した小型車を対象とした中国の減税措置が16年末まで継続するものの、中国景気の減速が懸念される中、業界の自動車販売予想も1桁の伸びにとどまり、日本からの輸出は微増にとどまるとみられる。

<2>輸入:反動減の影響は一巡するも減少続く
(1)衣類・同付属品は、中国における人件費の高騰等を背景に低賃金国への生産移管がさらに進み、中国からの輸入は減少基調で推移するものとみられる。
(2)14年の特需剥落で15年は大幅減となった光電池、ノートパソコンやタブレット型端末などの携帯用自動データ処理機は、15年比で需要が持ち直すものと見込まれる。
(3)化学製品や鉄鋼等の原料別製品は、原油安、中国の景気減速や過剰生産等により低下する輸入価格がすぐに反転することが期待できないことから、輸入額の増加要素にはなりにくいとみられる。

<3>貿易総額および収支:貿易総額は減少し、5年連続の貿易赤字に
これらを勘案すると2016年の貿易総額は減少傾向が続くものとみられる。輸入が輸出を上回る状況は変わらず、対中貿易収支は5年連続赤字となる可能性が高い。

3.日本の輸入に占める中国の構成比は過去最高の24.8%(財務省貿易統計)
日本の貿易総額に占める中国の構成比は21.2%(14年比0.7ポイント上昇)、輸出では17.5%(0.8ポイント低下)、輸入では24.8%(2.5ポイント上昇)。貿易総額と輸入に占める中国の構成比は過去最高となり、それぞれ、07年以降9年連続、02年以降14年連続1位となっている。輸出は、構成比が米国に次ぐ2位、日本の輸出減少(9.5%減)に対する寄与度(2.5ポイント減少)は最大だった。


(注1)財務省貿易統計(輸出確報、輸入9桁速報)では、総額が32兆6,516億円(0.3%増)、輸出が13兆2,293億円(1.1%減)、輸入が19兆4,223億円(1.3%増)。輸出数量指数は前年比4.1%減、輸入数量指数は同8.2%減。
(注2)Global Trade Atlasで使用している連邦準備制度理事会の為替レート(円/ドル:2014年105.74、2015年121.05)。

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[ジェトロ]
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