若年期の地域移動に関する調査 

2016年05月31日
労働政策研究・研修機構(JILPT)では、UIJ ターンの促進・支援と地方の活性化が国・地方自治体双方にとって重点課題となる中、若年期の地域移動(地方出身者の出身地からの転出とUターン、大都市出身者の地方移住)の実態把握と行政支援ニーズの所在・中身を明らかにする目的で個人アンケート調査を実施しました。

【主な事実発見】

(1)地方出身者の出身地からの転出

出身地からの転出は、大学・専門学校等への進学や就職に伴う移動が主であり、年齢でいうと18歳時が過半数を占める。転出の理由をみると、「地元には進学を希望する学校がなかった」「地元から通える進学先が限られていた」といった教育機会の地理的偏在と進路選択に大きく依拠し、「親元を離れて暮らしたかった」「都会で生活してみたかった」などの生活上の選択も重なり合った結果、もたらされるものといえる。

(2)地方出身者のUターン移動

地方出身者の出身県へのUターンは、就職や学校卒業をきっかけとして、実家(もしくは実家近く)に戻る移動が主となっている。年齢でいうと22歳時が中心であるが、新卒就職のタイミングを過ぎても、20代は離転職や結婚を機としたUターンが少なくない。

出身市町村へUターンする(できる)かどうかには、出身市町村の位置づけによる違いも関係する。つまり、同じ地方圏でも大都市部の出身者ほど出身市町村に戻る(戻れる)が、都市部から離れた地域の出身者では、県内の大都市部へのJターンとなるケースが多い。背景には、地元に十分な雇用の受け皿がないことが考えられる。

Uターンにあたっての仕事面の気がかりとしては「求人が少ない」「収入が下がってしまう」「希望にかなう仕事が見つからない」などが多く挙げられる。特に女性では、Uターンに際して「求人が少ない」「希望にかなう仕事が見つからない」という気がかりが男性に比べて多い。

なお、出身県外に居住している者についても、「出身地に戻りたい」というUターン希望が少なくない。特に、20代を中心とした若年者(35歳未満の者)においてUターン希望が多く、潜在的な支援ニーズの所在を示しているといえる。また、出身地に愛着がある者ほど強いUターン希望をもつほか、出身地を離れる前に地元企業をよく知っていた者ほどUターン希望が強い(図表1)。そして、Uターンするための行政支援としては、「仕事情報の提供」「転居費用の支援」「無料職業紹介」などが希望されている。

(3)大都市出身者の地方移住

地方移住(Iターン)は、転勤等を機としたものを多く含むが、転職、結婚、就職を機とした移住も多く見られる。なお、就職、転職、転勤等に伴う地方移住者には業種・職種の特徴がみられ、結婚による地方移住者には女性が多いという特徴がみられた。

地方移住の年齢については、Uターンよりも幅があるが、就職を機とした移動は22~25歳頃、転職を機とした移住は20代半ば~30代後半、結婚を機とした移住は20代後半(25~30歳頃)、転勤等を機とした移動は20代後半~30代で多い。

地方に移住した当初の苦労としては、仕事面よりも、「休日に遊べる場所が乏しかった」「買い物が不便だった」「困ったことを相談する人がいなかった」などの生活面の苦労が多く挙げられるが、女性は、男性に比べて「仕事がなかなか見つからなかった」などの仕事面の苦労を挙げる人が多くみられた(図表2)。

転職を伴った地方移住者について、地方移住による仕事面・生活面の変化をみると、地方移住に伴い、仕事面では収入低下を伴う場合が少なくないが、通勤の負担低下などによって時間面・精神面でゆとりも生まれ、居住スペースの増加も相まって生活の質向上をもたらす可能性があることがうかがえた。

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[労働政策研究・研修機構]
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