2016年度「ロシア進出日系企業実態調査」 

2016年12月09日
ジェトロは2016年10~11月にかけて、ロシアに進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。調査結果を以下のとおり発表します。

【調査概要】
調査方法・実施時期:アンケート調査、2016年10月7日~11月4日
アンケート送付先:ロシア進出日系企業 110社(回答企業数83社(うち製造業19社、非製造業64社)、有効回答率75.5%)

【ロシア進出日系企業実態調査の結果のポイント】

・2016年の営業利益を「黒字」と見込む企業が62.7%。前年を13.2ポイント上回り、過去4回の調査で初めて6割を超えた。営業利益改善の主な要因は売上増加で、前年度調査と比べ、コスト削減といったリストラ要因が減少した。ロシア経済の底打ち感に伴い景況感も回復している。2017年の営業利益見通しは「横ばい」が54.2%と最も多かった。

・今後1~2年の事業展開を「拡大」と回答した企業は51.8%。2年ぶりに過半数を超え、復調の兆しが見える。拡大する主な理由は、「売上の増加」、「成長性、潜在力の高さ」。

・経営上の主な問題はおおむね改善。主な指摘は、販売・営業面で「主要販売市場の低迷」(64.6%)、財務・金融・為替面で「現地通貨の対ドル/ユーロ為替レートの変動」(69.5%)。

・2016年5月のソチで行われた日ロ首脳会談で安倍首相がプーチン大統領に提示した8項目の「協力プラン」に対し、関心があるとして、いずれかの項目を選択した企業は62.2%。8項目のうち、ロシアの産業多様化(特に製造業)、都市環境整備、極東地域振興(以上、非製造業中心)に比較的高い関心が寄せられた。


【調査結果概要】

1. 営業利益を「黒字」と見込む企業が6割以上。過去4回の調査で初の6割超え

・2016年の営業利益見込みは製造業・非製造業ともに過半数が「黒字」と回答し、過去4回の調査で初めて6割を超えた(62.7%)。前年比での営業利益見通しは、8割が「改善」または「横ばい」と回答。「悪化」は前回よりも15.2ポイント減少の18.1%となり、ロシアの経済状況が底を打ち復調の兆しが見える。【資料 P8、P9】

・営業利益の改善要因は、「現地市場での売上増加」が前回から22.4ポイント増の61.8%となり、2014年度調査以来の過半数となった。各種コストの削減は前回より15~20ポイント低下、後ろ向きの利益改善策を取る企業が減少した。悪化要因としては、「現地市場での売上減少」、「為替変動」が多く、それぞれ66.7%、60.0%だった。ただし、為替レートの安定を受け「為替変動」は前年と比べ11ポイント減少した。【資料 P10】

・2017年の営業利益見通しは「横ばい」が54.2%で最多。一方、「悪化」は6.0%で前年度調査と比べ約3分の1に減った。市場は安定しつつあるが、急激な回復は見込めないとの見方が現れている。改善要因は依然として「現地市場での売上増加」が圧倒的に多い。悪化要因は、「現地市場での売上減少」が最多だったが、前回より10.6ポイント減少した。【資料 P11、12】


2. 今後の事業展開は「拡大」が過半数。市場の成長性・潜在力に期待

・今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した企業は51.8%で、「現状維持」(47.0%)を上回り、前回調査とは順位が逆転したが、半数近くは将来の展望について慎重に見極めをしていることがわかった。【資料 P14】

・拡大の理由は、「売上の増加」が81.4%で最も多く、次いで「成長性・潜在力の高さ」(53.5%)だった。市場に明るさを見出している企業が多いことが明らかになった。【資料 P15】


3. 経営上の主な問題は改善傾向に

・販売・営業面の問題点では、「主要販売市場の低迷(消費低迷)」が64.6%で最多だった。財務・金融・為替面では、「現地通貨の対ドル/ユーロ為替レートの変動」、「現地通貨の対円為替レートの変動」と続いたが、2016年春以降ルーブルが安定して推移しているため、それぞれ前回より10ポイント以上減少した。【資料 P18】

・貿易制度面の問題点では、「手続きの煩雑さ」を挙げる企業が依然として多いが、「通関に時間を要する」は前回から15.8ポイント減少した。ロシア当局による通関制度の改善については、「変わらない」という回答が多かったが、「通関手続きの電子化」、「通関にかかる時間の短縮」の面で改善したとの回答が若干みられた。【資料 P19】

・現地生産面での課題では、「原材料・部品の現地調達の難しさ」が38.9%で最多。一方、「物流インフラの未整備」、「電力不足・停電」は前年と比べ減少し、インフラ面の改善が見られた。【資料 P20】

・投資環境面でのメリットは、「市場規模/成長性」の回答が75.6%で圧倒的に多かった。前回よりやや減少しているが、依然として「潜在的市場性」がロシア市場の魅力であると言えよう。他に、「安定した政治・社会情勢」が前回から15.3ポイント増加し20.7%だった。投資環境面でのリスクは、「不安定な為替」との回答が最も多かった。「不安定な政治・社会情勢」は前回と比べ18.4ポイント減少した。【資料 P22】


4. 8項目の「協力プラン」、ロシアの産業多様化、都市環境整備、極東振興に関心

・回答企業の62.2%が、2016年5月にソチで行われた日ロ首脳会談で安倍首相がプーチン大統領に提示した「8項目の協力」に示された分野に取り組む可能性があるとして、いずれかの項目を選択した。自動車を中心とする製造業では、「ロシア産業の多様化促進・生産性向上」を挙げる企業が最も多かった。非製造業では、「極東における産業振興・輸出基地化」、「快適・清潔で、住みやすく、活動しやすい都市作り」への回答が多かった。【資料 P28】


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[ジェトロ]
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