「在中東進出日系企業実態調査」及び「在アフリカ進出日系企業実態調査」 

2016年02月29日
ジェトロは、2015年9月から11月にかけて、中東・アフリカにおける日系企業活動の実態を把握し、その結果を広く提供することを目的に、中東はアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、トルコの3カ国、アフリカは南アフリカ、エジプト、モロッコ、ケニア、ナイジェリア、コートジボワールなど24カ国の進出日系企業を対象にアンケート調査を実施しました。

【調査結果概要】

(1)中東:治安リスクや原油安にも関わらず、過半が黒字。事業拡大にも意欲。

<1>2015年は、過半の企業が黒字。(図表3)
2015年の営業利益見込みでは、56.2%の企業が「黒字」と回答。「赤字」と回答した企業は15.7%に留まった。国別にみると、黒字企業の割合はUAEが64.3%で最大。他方、赤字企業はトルコが15.2%、UAE11.3%のところを、サウジは前年(35.5%)とほぼ同率(33.3%)で3割を超え、相対的に経営の厳しさが伺えた。

<2>2016年の景況感は、4割強の企業が改善見込み。(図表4~6)
2016年の見通しについては、44.1%の企業が営業利益が「改善」するとし、前年より利益を明るく見込む企業が多かった。改善の理由は「現地市場での売上増加」(74.0%)が最大で、「輸出拡大による売上増加」(51.9%)が続いた。

<3>67.7%の企業が、今後の事業拡大に意欲。(図表7、8)
今後1~2年の事業展開の方向性については、各国・地域共に約70%の企業が「拡大する」と回答した。拡大する理由は「成長性、潜在力の高さ」(68.3%)と「売上の増加」(67.5%)が2大要因で、拡大する機能は「販売機能」(75.6%)が多数を占めた。

<4>経営の現地化のため、日本人駐在員よりも現地人材の採用増に取組む。(図表9~12)
経営の現地化にあたっては、「現地人材の研修・育成の強化」(54.0%)、「即戦力となる現地人材の中途採用」(44.4%)、「現地人材の登用(部長・課長級、店長)」(40.6%)が主な取り組みとなったが、「現地人材の能力・意識」(43.2%)、「幹部候補人材の採用難」(39.3%)が課題として挙がった。こうした現地人材の状況等をふまえた人員体制として、現地従業員については、60.7%の企業が「今後採用増の見込み」とした。他方、日本人駐在員については、圧倒的多数(71.2%)の企業が「今後もほぼ横ばい」との回答だった。

<5>UAEの投資環境は、税制面やフリーゾーンでメリット。コスト増が課題。(図表13)
UAEのみ、域内の投資環境の魅力と課題について進出日系企業に聞いたところ、「税制面でのメリット(法人税・所得税なし)」(78.2%)、「フリーゾーン(外資規制なし、ワンストップサービス)」(70.6%)、「安定した政治・社会情勢」(63.0%)などが魅力として挙がったが、不動産賃料、人件費、各種手数料など、コストの高騰が課題とする企業が多かった。

(2)アフリカ:5割超が事業拡大に意欲。今後の注目国はケニア。日本政府支援に高い期待。

<1>事業拡大に5割超の企業が意欲。(図表2~15)
今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した割合は、前年(69.0%)から減少したものの、依然過半を占める(55.6%)(図表7)。2015年の業績は半数が営業黒字となった模様(52.3%)(図表2)。2016年の見通しは「横ばい」が最多(44.3%)だが、「改善」を見込む企業も4割超(41.0%)ある(図表5)。主に「現地市場での売上増加」を見込んでおり(図表6、8)、「販売機能」を拡大しつつ(73.1%)(図表9)、「現地化を意識した現地人材の研修・育成の強化」(53.3%)」に取り組む企業が多い(図表10)。

<2>経営上の課題は「現地通貨の為替変動」、「従業員の質」、「通関時間」。(図表16~19)
「現地通貨の為替変動」(58.5%)は、ザンビア(80.0%)、ナイジェリア(70.6%)、南アフリカ共和国(66.7%)など、資源国において特に深刻な課題。「従業員の質(技能水準)」(50.0%)はポルトガル語圏が上位。

<3>投資環境は「市場規模・成長性」をプラス評価。「インフラの未整備」を問題視。(図表20~23)
進出先で、積極的に評価できる投資環境は、「市場規模・成長性」が66.5%。タンザニア(90.0%)やナイジェリア(86.7%)などで高評価。一方、リスクは「インフラの未整備」(61.9%)で、「電力」(92.1%)に不満。

<4>「市場の将来性」が進出動機。収益性は61.5%が期待どおりかそれ以上と実感。今後はケニアに注目。(図表24~26)
近年、新たにアフリカでビジネスを展開した日系企業の進出動機は「市場の将来性」への期待が最も高く(90.5%)、市場規模(73.8%)と併せて二大動機。「収益性」への期待は31.0%にとどまるも、進出後の実感としては61.5%の企業がプラス評価。今後の注目国は、ケニアが最多(37.2%)。

<5>進出日系企業の75%が日本政府による支援の強化を望む。(図表27)
具体的な支援項目では、「現地政府への各種要望(各種制度の構築・改善指導等)の取次ぎ」が過半を超えた(58.7%)。資金面(投資金融、貿易保険、スタンドバイ・クレジットなどの拡充)」(46.4%)や二国間協定の締結(FTA/EPA、租税条約、投資保護協定等)」(42.9%)も4割を超えた。アンゴラ、コートジボワール、マダガスカルでは、全回答企業が日本政府は日系企業への支援を「強化すべき」とした。


【調査概要】
・調査方法:アンケート調査
・実施時期:
(1)中東:2015年9月28日~10月22日
(2)アフリカ:2015年9月28日~11月10日
・アンケート回答先: 
(1)中東:中東3カ国の現地進出日系企業191社
 (410社に回答を依頼し、191社より有効回答。有効回答率46.6%)
(2)アフリカ:アフリカ24カ国の現地進出日系企業228社
 (354社に回答を依頼し、228社より有効回答。有効回答率64.4%)
・質問項目:業績・事業展開の方向性、現地の経営上の課題、投資環境のメリット・デメリット等

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[ジェトロ]
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