2015年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査 

2015年12月22日
ジェトロは2015年10~11月、北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア 2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業に対し、現地での活動実態に関するアンケート調査を 実施した(有効回答は4,635社(有効回答率48.3%))。

【調査結果のポイント】

中国での事業拡大意欲、4割弱に低下(別添資料P18、19、20)
今後1~2年の事業展開の方向性を「拡大」と回答した企業の割合は51.2%と、14年調査(56.3%)から5.1ポイント低下。中国では「拡大」と回答した企業の割合が14年調査比8.4ポイント低下の38.1%となり、本設問を開始した1998年以降初めて4割を切り、「現状維持」が51.3%と過半を占めた。ASEANでは「拡大」が前年比6.1ポイント低下の54.2%、うちインドネシア(51.9%、同15.4ポイント低下)、カンボジア(66.7%、同12.8ポイント低下)、タイ(49.0%、同11.9ポイント低下)で減少幅が2桁だった。事業拡大意欲が強いのは、パキスタン(76.7%)、ミャンマー(75.8%)、インド (74.7%)、スリランカ(73.0%)など。

経営上の最大の問題点は「従業員の賃金上昇」(P32、33、69、70)
経営上の問題点は「従業員の賃金上昇」(69.0%)が最大の課題。特に中国、インドネシアでは8割以上の企業が挙げた。2015年の賃金昇給率(前年度比、平均)はカンボジア、インドネシア、ミャンマー、ラオス、パキスタン、インド、ベトナムの7カ国で、2桁を記録。2016年についても、ミャンマー、インドネシア、パキスタンの3カ国で2桁の上昇率を見込む。中国については賃金昇給率の調査を開始した2010年以降2桁上昇が続いたが、2013年以降は1桁の上昇となり2016年は6.7%に低下の見込み。

ASEANでは中国からの調達が上昇(P44、46、47、52)
製造コストに占める割合が6割に達する材料費の低減に向けて、「現地調達率を引き上げる」方針を示した企業の割合は全体の74.1%に上る。中国の現地調達率は64.7%と調査対象国・地域の中で最も高い(2010年は58.3%)。ASEAN5(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)はベトナムを除き現地調達率が5年前(2010年)と比べて低下した。他方、これら5カ国では中国からの調達率が上昇している。

輸送機械器具、電気機械器具業界では自動化・省力化推進が4割以上(P41、43)
コスト上昇への対応策は、「管理費・間接費の削減」(54.2%)、「原材料調達先・調達内容の見直し」(41.1%)、「製品(サービス)価格の引き上げ」(27.4%)となった。「自動化・省力化の推進(産業用ロボットの導入等)」は、マレーシア、中国で約3割、輸送機械器具、電気機械器具といった業種では4割以上に上った。

黒字企業の割合は横ばいだが国・地域でばらつき(P8)
2015年の営業利益(見込み)を「黒字」とした企業の割合は62.2%で、14年調査(63.9%)からほぼ横ばいであった。国・地域別では、韓国(77.2%)、台湾(74.7%)が高く、パキスタン、オーストラリア、フィリピン、タイも7割以上でこれに続く。他方、業歴が浅い企業が多いミャンマー(17.7%)、バングラデシュ(35.4%)、カンボジア(35.8%)などでは、黒字企業の割合が4割未満だった。企業規模別でみると、大企業では68.1%が黒字で、中小企業の51.6%を16.5ポイント上回った。特にベトナム、中国では、大企業の黒字企業の割合が中小企業より20ポイント以上高く、逆に韓国では中小企業の黒字比率が大企業を上回った。

2016年の景況感は改善(P13、14、17)
2016年の見通しについては、営業利益が「改善」するとした企業の割合が44.8%に達する一方、 「悪化」は15年見込みから減少し、13.3%となった。景況感を示すDI値(営業利益が前年比で「改善」した割合から「悪化」した割合を引いた数値)は31.5ポイントとなり、15年見込みと比べ19.0ポイント上昇。改善の理由は「現地市場での売上増加」が最大。また、バングラデシュ、カンボジア、インドなどの新興国では、DI値が60ポイントを上回り、景況感が大幅に改善した。

TPPでは「税関当局および貿易円滑化」や「物品市場アクセス」に期待(P61、63、66)
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加国(シンガポール、マレーシア、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランド)に進出している企業を対象にTPP協定への期待を聞いたところ、「税関当局および貿易円滑化」が6割で最大、これに「物品市場アクセス」が続いた。他方、2015年末に発足するASEAN経済共同体(AEC)および交渉中の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)で検討されている項目に対する期待は、ほぼすべての項目で14年調査から低下傾向がみられた。


【調査概要】
・調査目的:アジア・オセアニアにおける日系企業活動の実態を把握し、その結果を広く提供することを目的とする。
・調査対象:北東アジア5カ国・地域、ASEAN9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業(日本側による直接、間接の出資比率が10%以上の企業)。
・調査時期:2015年(平成27年) 10月8日~11月13日

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[ジェトロ]
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