2016年度 米国進出日系企業実態調査(米国進出日系企業(製造業のみ)対象) 

2016年11月04日
ジェトロは、2016年9月15日から10月28日まで、米国に進出している日系企業に対し、経営実態に関するアンケート調査を実施しました。今般、11月8日の大統領選挙を控え、「米国新政権の政策」に対する企業の関心事項について速報としてとりまとめましたので、集計結果を以下の通り発表します。また、10月28日から11月1日にかけて「ジェトロ・クイック調査」モニター企業(日本国内)向けにも同様のアンケートを行いましたので、併せて発表します。

【調査結果概要】

「外交」、「通商」への関心が最多: 6割の企業が選択。

・関心ある政策分野として、外交(455社、64.4%)、通商(416社、58.9%)、税制(360社、51.0%)が上位3項目として挙がった(図表1)。その他、医療保険(346社、49.0%)、賃金・雇用(344社、48.7%)への関心も高い。
・回答企業のコメントとして、「反グローバリゼーション、反自由貿易的機運があることに懸念」(輸送用機器など複数)や「トランプ大統領の下での経済・外交政策による混乱を心配」(輸送用機器部品など複数)など米国内の保護主義的な動きやトランプ候補が選挙に勝利した場合の先行き不透明さを不安視する声が目立った。

外交政策:「対中政策」への関心企業が3割でメキシコを上回る。「対日政策」に次ぐ。

・外交政策への関心を国・地域別にみると、日本(378社、53.5%)、中国(200社、28.3%)、メキシコ(169社、23.9%)が上位に並んだ(図表2)。半数以上の企業が、ビジネスへの直接の影響が大きい対日外交への関心を示した。
・日本以外で最も関心が高かった中国については、「いずれが大統領になっても対中関係の悪化を心配する」(金属製品)など、調達先の中国から米国への輸入等への影響を心配する声が目立った。一方、鉄鋼製品やゴム製品などの素材産業を中心に、廉価な競合品の米国への流入によって米国市場での競争が激化していることを指摘する企業もいた。

通商政策:経済連携などの新政権による方針に注目集まる。

・通商分野の関心内容としては、TPP(298社、42.2%)への関心が高く、NAFTA(109社、15.4%)、アンチ・ダンピング税、相殺関税(104社、14.7%)が続いた(図表3)。
・TPPへの関心については、発効見通しと新政権による方針に関心が集まった。「コスト競争も激しいため、関税削減による生産コストの削減効果を期待している」(電気/電子部品など多数)、「米国とメキシコで生産工程を分担し、米州としてひとまとめに生産管理を行っているため、トランプ氏が大統領となった場合、対メキシコ通商政策が生産体制に与える影響について懸念している」(鉄鋼)などのコメントがあった。
・「米国の通商政策が保護貿易的になるのか動向を注視している」(輸送機器)、「保護主義が高まると当社ビジネスへの影響が心配」(電気機械/電子機器)など、選挙戦を通じて主要な論点の1つとなった米国の内向き志向を懸念する声も複数あがった。

今後のビジネスチャンス:「環境エネルギー」、「インフラストラクチャー」にも関心。

・環境エネルギー、インフラストラクチャーに関心を示した企業は、それぞれ258社(36.5%)、165社(23.4%)(図表1)。
・環境・エネルギーでは「環境規制全般」に関心を示す企業が202社(28.6%)、輸送機械の燃費規制である「企業平均燃費(CAFE)規制」が61社(8.6%)、発電分野を対象にした「クリーン・パワー・プラン」が42社(5.9%)となった(図表5)。インフラストラクチャーでは、「港湾」(73社、10.3%)、「鉄道」(64社、9.1%)、「高速道路」(48社、6.8%)が上位を占めた(図表6)。

移民政策:北東部での関心の高さが目立つ。

・移民政策に関心を示した企業(216社、30.6%)を地域別にみると、北東部(31社、43.1%)が、その他の西部(50社、35.5%)、南部(68社、27.5%)、中西部(67社、27.2%)と比べて高い数値となった(図表7)。
・回答企業からは「トランプ氏が選出された場合の移民規制への影響」「我々が雇用する移民の立場などが守られるか」などといったコメントが聞かれた。人件費、生産コストが全国平均より高い北東部の製造業ではコスト上昇を招きうる移民政策への関心が相対的に高かったと考えられる。

日本国内でも、「通商」、「外交」に高い関心。

・日本国内では、通商(86社、82.7%)、外交(82社、78.8%)への関心が高く、在米日系企業に比べても関心の高さが際立つ結果となった。一方、それ以外の項目は、概ね在米法人の関心水準を下回った(図表8)。在米日系法人はより総合的な見方をしていることがうかがえる。
・通商政策の関心分野としては、85社(81.7%)がTPPを選択したほか、NAFTA(18社、17.3%)、TTIP(17社、16.3%)が続いた(図表9)。
・外交政策では、日本(76社、73.1%)、中国(59社、56.7%)、EU(24社、23.1%)が上位を占めた。在米日系企業に比べて、対中政策への関心の高さが目立った(図表10)。


【調査概要】
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
実施時期:9月15日~10月28日(日本国内は10月28日~11月1日)
アンケート送付先:
 米国進出日系企業(製造業のみ)1,027社(回答企業数706社、有効回答率68.7%)
 クイック調査登録企業(国内企業のみ)482社(回答企業数104社、有効回答率21.6%)
質問項目:米国新政権の政策に対する具体的な関心内容

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[ジェトロ]
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