専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査 

2016年08月18日
ベネッセホールディングスの社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」では、2016年3月、全国の「専門学校」(専修学校専門課程)を卒業した学歴を持つ20代から40代の社会人3,771名を対象に、専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査を実施しました。

 近年、高等教育領域では、高大接続改革をはじめ「専門職業大学」(仮称)創設の検討など様々な改革が推し進められています。その一方で、既存の高等教育機関―とりわけ高等学校卒業者(過年度卒含む)の約2割の進学先として存在し続けてきた専門学校が、職業教育を通じてどのような学びの機会を提供し、学生の卒業後の人生や職業生活に影響を与えているのか、教育成果やその後の実態は十分に明らかにされてはいません。

 そこで今回、卒業生の視点から、専門学校における職業教育の実態およびその成果と課題を明らかにし、その結果を広く世に発信していくことを目的に調査を実施しました。

【主な調査結果】

1)専門学校卒業者の約8割が学びが充実していたと回答。学びの充実度は大卒者と同等。
・専門学校時代の学びが「充実していた」(とても+まあ充実していた)と回答した比率は76.2%で、専門学校卒業者の約8割が学びの充実を感じている。
・2015年に大学卒業者約2万人を対象に実施した「大学での学びと成長に関するふりかえり調査」の結果と比較すると、大学時代の学びが「充実していた」と回答した比率は76.4%である。専門学校卒業者の学びの充実度は大学卒業者と同等である。

2)職業教育を通じて協調性や勤勉性など非認知スキルの向上を感じている卒業者は約7割。
 専門学校時代を通じて、学生はどのような資質・能力を獲得しているだろうか。学びの成果に関する上位5項目をみたところ、専門学校卒業者の約7割が、「人と協力しながらものごとを進める」(71.3%)、「何事にも粘り強く取り組む姿勢を持つ」(69.5%)、「学び続ける姿勢をもつ」(68.5%)など、自らの人生を切り拓いたり、社会的活躍を収めていく上で重要だとされる非認知スキル(粘り強く学びに向かう力や仲間と協力して取り組む姿勢など)の向上を感じている。

3)約6割の専門学校卒業者が、専門知識や資格以外に「基本的な学び方」や「社会人としての基礎的な能力」の役立ちを実感。
 職業教育を通じて獲得した資質・能力や経験のうち、何が卒業生のその後の職業生活を支えているのか。専門学校時代の教育成果や経験のうち、これまでの職業生活に役立っているものをたずねたところ、「専門的な知識・技能・ノウハウ」(66.0%)に次いで、「基本的な学習習慣や態度、学び方」(62.5%)、「社会人としての基礎的な能力(61.1%)「学習活動の中で必死に努力した経験」(58.5%)の比率が高い。一般的に専門学校は資格取得や即戦力育成が目的だと思われがちだが、「獲得した資格」(56.8%)と同等かそれ以上に役立ち度を感じている。

4)専門学校卒業者の約65%が現在の「働き方」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に満足も、年収面の満足は4割にとどまる。
 専門学校生は卒業後、どのような職業生活を過ごしているのか。現在の「働き方」「収入」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に関する満足度をみたところ、専門学校卒業者の約65%が「働き方」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に「満足」(とても+まあ満足)している。ただし年収についての満足は4割にとどまる。

5)専門分野によって卒業後の専門分野の「定着率」や「正規雇用率」、「平均年収」に違い。
大学卒業者(全体)との平均年収の差は約100万円。

 専門学校卒業者は、現在どのような分野の仕事に、どのような条件で働いているのか。卒業後の社会での働き方について、専門学校在籍時の専門分野と関連する領域の仕事に就いている比率(「定着率」)、「正規雇用率」、「平均年収」の3つの観点から、専門分野別にその実態をみたところ、「定着率」は、医療分野(81.5%)や教育・社会福祉分野(69.0%)で高く、商業実務分野(34.2%)や文化・教養分野(21.8%)で低い。資格系と非資格系で明確な差がみられる。一方、「正規雇用率」と「平均年収」は、資格系の中でも衛生分野(41.6%、228万円)は低い、非資格系の中でも商業実務分野(61.6%、307万円)は高いなど、専門分野による差が大きい。また「平均年収」について大学卒業者(全体)と比較したところ、約100万円の差が確認された。


【調査概要】
名称:専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査
調査テーマ:専門学校での学びと成長に関する意識と、卒業後の社会への移行のあり方の把握
調査方法:インターネット調査
調査時期:2016年3月
調査対象:20~49歳の日本の専門学校(専修学校専門課程)を卒業した者3,771名
(20~29歳1,237名、30~39歳1,269名、40~49歳1,265名)

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
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[ベネッセホールディングス]
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