シニアのライフスタイルと旅行に関する調査 

2016年03月31日
JTB総合研究所は、「シニアのライフスタイルと旅行に関する調査」を実施しました。

【調査結果概要】

・旅行頻度が減少に向かう転機は70歳。50代から計画や準備がおっくうに

・シニアの旅行頻度を保つためには“旅前”のサポート(準備や計画)が肝心

・自分が慣れ親しんだ「過去」を巡る旅や「健康づくりの旅」がキーワード


【調査結果】

【シニアの生活と消費】
1. 現在の気分を表す一文字は「楽」「静」「快」「健」「爽」


シニアは現在、どのような気分で生活をしているのかをみるために、現在の気分を漢字一文字で表してもらいました。数多くあげられた中で、「楽」が全体でもシニアでも 1 位となりました。全般的にみれば、シニア世代の現在の気分は比較的穏やかと言えるようです。キネマ世代では、「楽」の他、「快」「健」、団塊世代では「静」も上位に来ています。若い世代では、「眠」「疲」「鬱」「忙」なども上位となり、日々の生活に疲れている様子も垣間見られました(表 2、参考表)。

2. 興味のある情報は「政治経済」「時事情報」「カラダや健康に関する豆知識」「旅行」「歴史や文化遺産」

普段から興味のある情報については、団塊世代は「旅行関連のスポット情報(64.6%)」、キネマ世代では「政治・経済情報(65.2%)」が1位となりました。全体と比較すると「時事情報」や「健康に関する豆知識」「スポーツ」「テクノロジー」などが高く、「グルメ情報」や「音楽情報」は低い傾向が見られます。過去の調査でも年代が上がるにつれ、「食」への興味は薄れることがわかっており、同様の傾向となりました(図 8)。

3. 将来的な経済環境には不安も。「海外の景気悪化の影響が心配」(団塊 74.3%、キネマ 77.1%、全体 61.4%)
「生活に関わる費用の値上がりが生活を圧迫」(団塊 62.8%、キネマ 66.6%、全体 59.2%)


今後の経済的な状況について、どのように考えているのかを見てみます。「海外の景気悪化による影響が心配」は全体では 61.4%でしたが、団塊世代では 74.3%、キネマ世代では 77.1%と全体より 10 ポイント以上高くなりました。「物価上昇が生活を圧迫」「マイナス金利の導入で今後の景気が心配」「景気の見通しが悪くなった」など、も全体と比較して高く、将来的な経済状況については決して楽観的ではないようです(図 9)。

4. シニアが現在時間やお金を使っていることは「インターネット」「テレビ視聴」
今後時間やお金を使いたいことは「お出かけ」「趣味」などレジャーと、基盤となる「貯蓄」「健康づくり」
ただし年齢の上昇と共に、旅行やお出かけや健康増進の意欲は下がる傾向


次に時間やお金を使っていることについての実態や意向を聞きました。現在時間やお金を使っていることの1位は「インターネット(団塊 71.1%、キネマ前期 71.4%、キネマ後期 70.5%、全体 65.2%)」。2 位は「テレビ視聴(団塊 59.4%、キネマ前期 59.0%、キネマ後期 63.0%、全体 50.1%)、3 位は「家族とのおでかけ(宿泊)(団塊 58.0%、キネマ前期 49.8%、キネマ後期 52.1%、全体 44.7%*全体では 4 位)でした(図 10)。年齢が上がるにつれ、「テレビ視聴」や「通院」が増える傾向があるようです。

今後時間やお金を使いたいことでは、団塊世代もキネマ世代も「家族とのおでかけ(宿泊)」「家族とのおでかけ(日帰り)」「貯蓄や投資」「健康維持、増進のためのこと」が上位に来ています。また「趣味のサークルやおけいこ事」も比較的高くなりました。今後は、お出かけや趣味などのレジャーと、それを可能とする健康づくりや経済基盤へと支出をしたい意向が見られます。しかしながら、年齢の上昇と共に、お出かけや健康増進に対する意向が減少する傾向にあることがわかりました。

また、孫についての意識を聞いてみると、「孫は可愛いが、たまに会えればよい」が団塊世代、キネマ世代共に 7 割近くとなりました。孫も大きくなり自立するにつれ、あまりべったりとした関係ではなくなってくるのだと考えられます(図 11、12)。

5. 健康のために心がけていること:「バランスの取れた食事」「規則正しい生活」「運動」

健康のために心がけていることの1位は、「バランスの取れた食事(団塊世代 66.1%、キネマ世代 74.9%、全体 51.9%)」でした。団塊世代では全体より約 15 ポイント、キネマ世代では 23 ポイント高くなりました(図13)。前述の図 8 では、グルメ情報への興味は年齢が上がるにつれ減少していましたが、健康のための食事の内容や質には気を配っている様子が伺えます。

【シニアのレジャー】
6. レジャー頻度が減少に転じる境目は 70 歳ごろ
団塊世代では、5 年前よりレジャー頻度が「増えた(30.7%)」人が「減った(27.9%)」人を上回る
キネマ世代では「減った(38.7%)」割合が「増えた(17.9%)」を逆転


5 年前と比較して現在のレジャー頻度が増えたか減ったかを聞きました。全体では、「増えた」と回答した人が 31.3%、「減った」と回答した人が31.6%と、ほぼ同じとなりました。世代別では、団塊世代は「増えた(30.7%)」が「減った(27.9%)」をやや上回る結果でしたが、キネマ世代では「減った(38.7%)」が「増えた(17.9%)」を 20 ポイント以上上回りました。キネマ世代を前期と後期に分けてみると、その傾向はより強く見られました。

レジャー頻度で「減った」が「増えた」を逆転するのが、何歳ごろなのかを明らかにするため、1歳刻みで割合の変化を追ってみました。その結果、70 歳前後を境に減少に転じることがわかりました(図 15)。

7. 旅行の頻度が減る3大要因は「お金がない」「計画や準備がおっくう」「同行者がいない」
旅行頻度が減っても女性は「他の楽しみを見つける」、男性は「楽しみが減る」


旅行が減った理由の上位にあがった項目は、「経済的な余裕がなくなった」(団塊 60.3%、キネマ 42.0%、全体 54.5%)、「旅行には行きたいが、計画したり準備したりがおっくうになってきた」(団塊 17.0%、キネマ 16.0%、全体 11.3%)、「一緒に行ってくれる人がいなくなった」(団塊 13.5%、キネマ 13.6%、全体 13.2%)でした。
特に「計画や準備がおっくう」であることは、団塊世代、キネマ世代共に全体より高く、シニアに特徴的と言えます。年齢別にみると、50 代ごろから計画や準備がおっくうになる気持ちが出てくるようです。

レジャーやお出かけの頻度が増えるきっかけとしてあげられた項目でも、「誘ってくれる人ができれば」(団塊 25.3%、キネマ 21.2%、全体 19.1%)、「旅行の計画や準備をしてくれれば」(団塊 13.9%、キネマ 14.8%、全体 11.4%)が上位に来ており、シニアの旅行頻度の上昇には「計画や準備」のサポートと同行者の確保が不可欠であると言えます。

一方、「今後も旅行頻度は増えないと思うので他の楽しみを見つけたい」の割合は女性で高く、男性では「今後も旅行頻度は増えず、楽しみも減ると思う」の割合が女性より高くなりました。健康などの理由でやむを得ず旅行頻度が減少する場合でも、女性は他の楽しみを見つけようとするのに対し、男性はあきらめてしまう傾向があるようです。定年退職後において、男性が地域になかなか溶け込めず、気力が失われる実態が社会問題となっていることとも関連があるのではないでしょうか(図 16、17、表 3)。

8. 行ってみたい旅行:「全く新しい場所へ行く旅行」は団塊女性で高い。「好きな場所や思い入れが強い場所を繰り返し訪れる旅行」「思い出の場所を巡る旅行」は女性より男性の意向が高い

今後行ってみたい旅行について聞いてみると1位は「全く新しい場所へ行く旅行」で、特に団塊世代の女性で高い割合を示しました。「好きな場所や思い入れが強い場所」や「思い出の場所を巡る旅行」は団塊世代、キネマ世代共に男性で比較的高くなりました。また、「健康づくりのための旅行」については、団塊世代よりもキネマ世代の方が高い割合となっています(図 18)。

9. 旅行頻度低下の「負のスパイラル」を断ち切るために、「家から出る」を“旅”の一歩と捉える

では、実際に旅行やお出かけが減ってしまう過程において、どのようなことが起こっているのでしょうか?

よりその変化の過程を浮き彫りにするため、最近お出かけの頻度が減少した後期高齢者に対してインタビューを実施し、どんな経緯を経て旅行やお出かけの頻度が減ってきたのか、きっかけは何だったのかを深掘りしました。
インタビューの結果から、過去から現在にかけての楽しさや体調について可視化してみると、60 代では、仕事や子育てから解放され、比較的穏やかな時期を過ごし、海外旅行で初めての場所へ行くなど、旅行の頻度も上がる傾向があります。しかしその後、病気や怪我などで体調を崩すことによって、お出かけへの不安が強くなったり、他人のペースに合わせられないことで迷惑をかけたくない気持ちが強くなったりすることが、旅行やお出かけの頻度が低下する大きな要因の一つとなっていることがわかりました(図 19)。

何らかのきっかけで認知や運動能力が衰え、旅行やお出かけの計画がおっくうになる(自分から出かける頻度が減る)⇒誘ってくれれば出かけたいが、他人のペースに合わせるのが苦痛⇒誘いを断る⇒お出かけの頻度が減る、という「お出かけの負のスパイラル」とも言うべき現象が生じることが、旅行やお出かけ減少のからくりであるようです。

また、体力や気力の低下と共に、出かける時間や距離が短くなっていることがわかりました。しかし、自分自身ができる範囲で、できるだけ楽しいことを探すために「家から出る」ことを心がけている様子も明らかとなりました。シニアの旅行やお出かけを考える上では、いわゆる「旅行」という言葉から連想されるように、遠方へ宿泊で出かけることだけではなく、家から一歩出る楽しみは何かということから考えていく必要がありそうです。


【調査概要】
調査1 インターネットアンケート調査
調査対象:
 首都圏、名古屋圏、大阪圏に住む20歳から79歳までの男女3,610名
 過去1年以内に1回以上、宿泊を伴う旅行をしたことがある人(国内、海外問わず)
調査期間:2016年3月8日~3月14日

調査2 インタビュー調査
調査対象:首都圏に住み、「最近おでかけの頻度が減った」シニア女性(79歳~82歳)3名
調査期間:2016年2月

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