小・中・高校生の科学技術に関する情報に対する意識と情報源(2015年の日本人研究者によるノーベル賞受賞決定直後の親子意識調査より) 

2016年03月10日
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、インターネットを利用した意識調査により、2015年の日本人研究者によるノーベル賞の受賞決定の話題を切り口に、我が国の次世代の科学技術を担う子ども(小・中・高校生)とその保護者(親)における科学技術に対する興味関心、科学技術情報の日常的な情報源及びその信頼性について明らかにしました。

【調査結果】

調査回答者(保護者(親))数は、2,380 人(男性 1,461 人、女性 919 人)でであった。また、保護者(親)と同居の小・中・高校生数は 3,335 人(男性 1,700 人、女性 1,635 人)で、その内、小学生が 1,120 人、中学生が 1,101 人、高校生が 1,114 人であった。

(1)保護者(親)における情報源に対する信頼性
保護者(親)がもっとも信頼出来るとした情報源は、「新聞(電子版を含む)」であった。続いて、専門書籍や論文雑誌(電子版を含む)、技術者、科学者、大学となっており、専門的な機関や職業に就いている個人や団体が発信する情報に対して信頼性が高い傾向が認められた。一方で、娯楽性の高い情報媒体や個人の見解が述べられている媒体に対しては、信頼性が低い傾向にあった。
このことより、情報受容者は
、情報源の属性に応じて発信された情報の信頼性を判断し、受容しているものと思われる。

(2)子どもが科学技術について調べる際に保護者(親)が勧める情報源
 いずれの学齢群においても、「新聞」、「テレビ」、「インターネット(SNS、電子版の新聞を除く)」、「科学技術に関連する書籍や雑誌」、「学校の先生」を選択する保護者(親)が多かった。この内、「インターネット(SNS、電子版の新聞を除く)」については、保護者(親)が信頼する情報源としては必ずしも信頼性の高い情報源とは位置づけられてはいないが、自発的に特定の情報を入手する際には最も簡便な方法の一つであることから、子どもに勧める情報源として選択されたものと思われる。

(3)ノーベル賞受賞決定についての子どもの認知状況
 受賞について知っている子どもの割合は、小学生では 58.8%(低学年で 50.6%、高学年で66.3%)、中学生で 70.4%、高校生で 71.3%であり、学齢が上がるにつれて認知度の上昇が認められた。

(4)子どものノーベル賞受賞決定に関する情報源
 ノーベル賞の受賞決定について知っていると回答した子どもの主たる情報源は、いずれの学齢群においても「テレビ」がトップであり、次いで「新聞(電子版を含む)」や「学校の先生」であった。「インターネット(SNS、電子版の新聞を除く)」を情報源とする回答は、学齢が上がるにつれて増加し、高校生では「テレビ」に次ぐ情報源となっている。

(5)ノーベル賞受賞決定について保護者(親)と会話をした子どもの割合
ノーベル賞の受賞決定について、保護者(親)と何らかの会話をした子どもは、全体で 33.2%であり、小学生合計で 28.3%(低学年で 22.2%、高学年で 33.9%)、中学生で 36.1%、高校生で35.4%であった。小学校低学年においては、ノーベル賞そのものに対する理解度の低さから、他の学齢群よりも保護者(親)との会話が少なかったものと思われる。(※本調査に関連して子どもに認知の有無や情報源について聞き取りを行った行為については、「会話」には含めない。)

(6)保護者(親)の科学技術に対する興味関心の有無と子どもとの会話の有無との関係
 いずれの学齢群においても、ノーベル賞の受賞決定について保護者(親)と会話をした子どもは、しなかった子どもに比べて科学技術に対して興味関心を有する保護者(親)をもつ割合が高い傾向が認められた。この傾向は、高校生の子どもと保護者(親)との間において特に顕著であり、子どもがノーベル賞を十分に認知しており、その研究内容についてもある程度理解し議論できる年齢に達していることに加え、近い将来の大学進学や就職等の対象として科学技術に積極的に関心を向ける時期にあることなどがその理由の一部として考えられる。また、会話の有無と保護者(親)の専門性(文系か理系か)には相関性は認められなかった。

(7)理系科目に対する子どもの意識
 各学齢群において、理科を「非常に好き」または「どちらかというと好き」と答えた子どもは、小学生で 33.4%(低学年で 27.5%、高学年で 39.0%)、中学生で 35.9%、高校生で 28.0%であった。小学校高学年、中学生、高校生と学齢が上がっていくに従って「非常に好き」あるいは「どちらかというと好き」と答えた子どもがそれぞれ 3.1 ポイント、7.9 ポイント減少し、「どちらかというと嫌い」または「非常に嫌い」と答えた子どもがそれぞれ 6.7 ポイント、6.1 ポイント増加している。これは、学齢が上がるに伴って、学習内容が観察や実験などの体験的なものから理論的なものに変化して難度が上がっていくことが一要因と考えられる。
また、ノーベル賞の受賞決定を機に、理系科目への興味関心が「非常に高まった」または「どちらかというと高まった」と答えた子どもは、いずれの学齢群においても 13%程度(ただし、小学校高学年では、14.9%)であった。一方、「どちらかというと高まらなかった」または「全く高まらなかった」と答えた子どもは、小学生で 20.4%、中学生で 25.2%、高校生で 29.7%であり、学齢が上がるに伴って既に興味関心の対象が固定されており、外的要因に左右されにくい可能性が示唆される。

(8)研究者の仕事に対する子どもの興味関心
いずれの学齢群においても、ノーベル賞受賞決定後に研究者の仕事に対する子どもの興味関心が高まっている。また、受賞決定前には「全く興味関心を持っていない」を選択していた群が受賞決定後には大幅に減少して興味関心を有するとする群に転じていることが興味深い。今回の受賞決定やそれに伴う様々な報道等により、子どもの意識において「研究者」というものが「職業」として新たに加わった可能性も高く、将来の仕事の選択肢を広げるきっかけとなったことを期待したい。

(9)保護者(親)における子どもの理系進学に対する意識
いずれの学齢群においても、ノーベル賞受賞決定後に子どもの理系進学を希望する保護者(親)の減少が認められた。受賞決定を機に「研究者」の仕事に対する子どもの興味関心の高まりが認められたにも関わらず、保護者(親)の意識が逆行していることが興味深い。この現象の一要因としては、受賞決定の報道と併せて、研究者の仕事の苦労についても多くが取り上げられたことから、我が子を積極的に理系に進学させることを躊躇する保護者(親)が増えた可能性が推察される。

(10)保護者(親)における子どもの理系進学に対する意識(追跡調査)
2012 年度に実施した意識調査において中学生の子どもを持つと回答した保護者(親)を対象に3年後の意識の変化を調査したところ、子どもの理系進学に関して明確な意思を有している群においては、意識の変化は起こりにくく、「どちらともいえない」と回答した群において変化が生じやすい傾向が認められた。


【調査概要】
2015 年 10 月 30 日~11 月 11 日、インターネット調査会社(株式会社クロス・マーケティング(保有モニター数:約 180 万人)の保有する登録モニターの内、同居の小・中・高校生の子どもを持つ全国の男女(保護者(親))を調査対象とし、保護者(親)に対して子どもの意識を問う(子どもから意識等を聞き取ってもらう)形でインターネットを利用したアンケート調査を実施した。調査内容は、科学技術情報の情報源とその信頼性、2015 年の日本人研究者2名によるノーベル賞の受賞決定の認知状況、受賞決定のニュースをきっかけとした科学技術に対する興味関心や意識の変化等についての諸項目である。

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[科学技術・学術政策研究所]
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