2015年度二輪車市場動向調査 

2016年04月08日
日本自動車工業会は、2015年度に実施した二輪車市場動向調査の結果を取りまとめました。

本調査は、二輪車市場動向を把握し、今後の需要拡大に向けた取り組みの方向性を検討する目的で、隔年毎に新車購入ユーザーを対象にアンケート調査を行っているものであります(時系列調査)。
また、本調査と同時に「保有の阻害要因」や「中古車市場」などに注目したトピック調査も行いました。

【調査結果】

新車購入ユーザー(時系列)調査結果

(1)二輪車ユーザーの特性
・二輪車ユーザーの平均年齢は52.9歳。前回より1.5歳上昇した。平均年齢の上昇が男性0.8歳に対し、女性は4.4歳と高年齢化が目立つ。排気量別では、特に50cc以下スクーターの平均年齢が3.1歳上昇。
二輪車ユーザーの女性比率は2割で前回とほぼ同水準であった。
・二輪車の世帯保有台数は、複数保有者が約半数となり、平均台数は1.7台。「2台保有」が35%で前回より9ポイント増加した。

(2)タンデム走行、高速道路走行の経験
・今回購入車によるタンデム走行の経験では、51cc以上保有者の3人に1人が「経験がある」ものの、全体的には減少傾向が続いている。高速道路の走行経験は、7割で前回と同水準。排気量が大きくなるほど経験率が増加し、751cc以上では84%に達している。
・高速道路利用についての改善の要望をみると、「高速料金を安くしてほしい」が52%で突出して高い。
高速道路料金が下がった場合、排気量126cc以上のユーザーで「利用頻度が増える」81%、「利用距離が延びる」56%と、高速料金低減施策によるメリットは大きい。

(3)需要構造の変化と直前使用車の状況
・二輪車の購入形態では、「代替」が約6割を占め、漸増傾向であった。また、オンロード、オフロードでは「増車」の微増傾向がみられた。
・直前使用車の平均使用年数は6.3年で前回とほぼ同水準。直前使用車の処分方法については、「下取り」が47%で前回より7ポイント増加した。50cc以下スクーターは、平均使用年数7.2年と全体平均を上回り、「廃車」も47%と高い。高齢化が顕著にあらわれているカテゴリーであることからも、減少傾向の継続が懸念される。
一方、オンロード、オフロードでは、「増車」の微増傾向から、ユーザーの楽しみ方の広がりに明るい兆しも見られた。

(4)購入状況[1](比較検討状況)
・二輪車購入の際に他の乗り物を比較検討した人は、全体の13%と前回から8ポイント減少。
比較検討した乗り物は、前回同様に「電動アシスト自転車」36%、「軽四輪車」22%の順で高い。
スクーターでは「電動アシスト自転車」との比較が42%、オンロード、オフロードでは、四輪車(「軽四輪車」+「普通四輪車」)との比較が68%で競合している。
・二輪車にした理由としては、生活の足として必要な「維持費の安さ」「他にない機能・便利さ」「利用価値から価格が手頃」「燃費のよさ」が4割を超え高く、オンロード、オフロードでは、「乗車時の爽快感」が高く挙げられている。
・認知経路では、「販売店の店頭」が37%で最も高く、「メーカーのwebサイト」「二輪車専門誌を見て」が1割台で続き、前回と大きな変化はない。女性の半数以上が「販売店の店頭」。排気量125㏄以上では「メーカーwebサイト」「二輪車専門誌を見て」が高い。

(5)購入状況[2](購入重視点・購入理由)
・新規購入理由では、「維持費の安さ」「移動の時間が短縮できる」「自転車より楽だと思う」「燃費のよさ」「身軽に動ける」が3割を超えトップ5。順位は大きく変わらないものの、いずれも前回より減少しており、競合商品と比べたメリットが薄れていることが懸念される。一方、オンロードでは、「趣味として楽しみたい」68%、「二輪車はカッコいいと思う」51%、「二輪車に乗ることに憧れていた」47%、オフロードでは「趣味として楽しみたい」74%、「爽快感を感じられる」54%、「解放感を味わえる」54%が高く、二輪車独自のメリットが購入決定要因となっている。
・代替購入理由では、スクーター、ビジネスタイプでは、使用長期化による不具合が主な原因であるのに対し、オンロード、オフロードでは「欲しいと思う新製品が出た」「前の二輪車と違うタイプに乗りたい」「前の二輪車より大排気量に乗りたい」等、二輪車の魅力をより享受したいと考えるニーズが挙げられている。
さらに増車購入理由からも、「現保有の二輪車と違うタイプに乗りたい」「現保有の二輪車と違う性能・機能のものに乗りたい」「趣味として楽しみたい」が4割を超え、趣味的指向性が他の要因より強い決定理由となっている。

(6)使用実態
・二輪車の使用用途は、「通勤・通学」が約半数を占める。「買い物・用足し」が18%で続くものの、前回より12ポイント減少。また、大きい排気量ほど「ツーリング」が高く、751cc以上では8割を占める。
・使用頻度をみると、週間使用日数の平均が4.1日となり、前回より0.3ポイント減少。オンロードの751cc以上にて、平均使用日数1.8日・平均走行距離467kmで、ともに前回からの増加がみられた。二輪車がコミューターとしての利用、趣味性としての利用への2極化が、より進行している状況が推測される。
・駐車状況に関しては、全体では改善がみられるものの37%が困った経験があり、場所についてはスクーター・ビジネスのうち、126cc以上で「繁華街」「オフィス街」の割合が高くなっている。
引き続き対策が求められる。
・新規ユーザーが期待以上の満足感を得られた項目(期待値に対して満足度が10%以上高い)をみると、「乗っていて爽快感を感じられる」「解放感を味わえる」「二輪車を操る楽しさ」「スピード感を楽しめる」が挙げられた。走ることそのものの魅力が、期待を上回る強い満足感を実際に感じられているとともに、多くの項目で満足度が期待値を上回っていることからも、二輪車が体験価値の高い商品であることが再確認される。
・洋用品の所有状況では、オンロード、オフロードユーザーが市場を牽引しており、全体では、「ライダー用グローブ」「バイクカバー」が3割を超え高く、「盗難防止ロック」「ライダー用ジャケット」等が続く。
衣類とバイク保護のための商品が上位に挙げられた。
また所有意向では、「ライダー用ジャケット」「ナビゲーション」「ライダー用レインウエア」「グリップヒーター」等が上位に挙がり、衣類とともに各種電子機器へも注目の目が向けられている。

(7)今後の意向
・「今後も二輪車に乗りたい」という人は86%で高水準を維持している。排気量が大きいほど、継続意向が高い。
・上級免許の「取得予定あり」は29%で前回と同水準。性・年齢では、男性10~40代、女性30代以下で4割以上の意向がある。上級免許の中では、「大型二輪免許」の人気が高く、現在「普通二輪免許限定なし」保有者の33%が取得意向を示している。エントリーユーザーから上級クラスユーザーへと利用の継続化がはかられるような環境づくりが期待される。

トピック調査結果

1.二輪車保有の阻害要因
(1)運転免許
・二輪免許を保有しているが現在二輪車を所有していない人の、免許取得時に二輪車に乗りたいと思った理由では、女性は男性に比べて「カッコいい」「憧れ」の回答割合が高くなっており、二輪車潜在ユーザーとなり得る女性層の獲得は二輪市場拡大のポイントのひとつであると思われる。ただし、免許取得に対する周囲の反対は、男性が5%に対し、女性は25%と高い。そのため、特に非保有者層に対しては、安全意識の向上に結びついた施策を、女性層の取り込み強化を意識しつつ、引き続き実施していくべきと思われる。
・二輪車ユーザーの40~50代では、免許取得時に二輪車に乗りたいと思った理由で「スピード感」「趣味」「爽快感」 等を挙げており、従来の価値ニーズが根強く残っている層であると言える。
教習生へのヒアリング結果でも30~40代では「趣味の乗り物」「昔からの憧れの実現」といった情緒的要素が免許取得要因となっている様子がみられたが、10代の若年層では、情緒的要素より「便利な交通手段」などの機能的要素を重視している面もみられた。中心ユーザー層である50~60代が、今後更に高齢化していくことを見据えると、次代の若年層の価値ニーズに適合した、二輪車ユーザー像を育成する視点もポイントとなると思われる。

(2)二輪車購入
・二輪免許取得かつ二輪車非保有者の、二輪車の非保有理由をみると、予算や維持費など費用面が大きなネックとなっており、非購入理由でも同様の傾向がみられる。
・女性は今後の購入意向、利用意向ともに男性より低く、その理由としては「運転に自信がない」の割合が高い。
「手入れ」等メンテナンス面の不安も比較的高く、販売店に持ち込むことで負担軽減できることを理解してもらうことも女性層取り込みには重要と思われる。

2.二輪車市場拡大に向けて
(1)二輪車利用に向け、必要なインフラ
・施設やインフラに関する要望は、新規購入者/中古保有者/二輪非保有者のいずれも、「任意保険」や「高速道路」の低料金化への要望が多い。また、二輪非保有者では「契約(自宅)二輪車駐車場の確保」を挙げる割合が保有者より高く、自宅近くでの駐車場確保が困難なことが二輪車保有へのネックとなっている様子がうかがえる。
・製品やサービスへの要望については、二輪車保有状況に関わらず「整備・部品の低価格化」「任意保険サービスの拡充」「安全性を高めた装備の開発」がいずれも上位となり、他の要望との差がみられた。
また、非保有者では「安全性を高めた装備の開発」が新規購入者/中古保有者より高いことも特徴的で、非保有者では安全性の高い二輪車が、購入への一押しとなる可能性をおびている。
・二輪非保有者の女性では、施設やインフラ面では「運転・操作を練習する場所の提供」、製品やサービス面では「運転・操作技術向上の講座開催」が男性の2倍程度の水準であり、要望が高い。これら要望に対する施策を継続し、更に強化していくことが、二輪市場の裾野拡大に向けてのポイントとなる可能性があると思われる。

(2)二輪車に対する価値観
・二輪車に対するイメージは、保有状況に関わらず「趣味性の強い」が上位である。新規購入者/中古保有者では「便利」も上位項目として挙がっているが、二輪非保有者では「便利」は他の項目に比べ高くなく、「かっこいい」「スポーティ」などのイメージ項目が上位となっている。保有者に比べ非保有者は二輪車の利便性を正しく理解できていないことも二輪非保有につながっている可能性がある。
・新規購入者では、スクーター/ビジネスユーザーで「便利」「実用的」「経済的」など利便性に関する項目が高い。また、オンロード/オフロードユーザーでは「趣味性の強い」「かっこいい」などの娯楽性に関する項目が高く、保有者ではそのタイプで二輪車のイメージが分かれている。また、保有状況や年代に関わらず「おしゃれ」「若々しい」等は低水準であり、こうした傾向が若者離れの要因のひとつである可能性もうかがえる。
・二輪車の価値に対する気分・期待・感想については、保有状況に関わらず「自由気まま」「爽快」「解放的」「わくわくする」等が上位となり、二輪車運転によるリフレッシュ効果への期待が大きい。これらは新規購入者のうち、オンロード/オフロードユーザーではより顕著となっている。また、1000cc以上保有者では「優越感」「誇らしい」「勇気が湧いてくる」など、所有・運転することによる高揚感に価値を感じる傾向も強い。

3.二輪車を取り巻く環境
(1)消費税率引き上げ (2)軽自動車税の増税
・2017年4月予定の消費税率引き上げの認知度(「よく知っている」)は74%、軽自動車税増税の認知度は55%の結果となり、どちらも年代が高いほど認知度が上昇している。消費税率引き上げの影響については、年代が若いほど「引き上げ前の購入」や「他で節約する」等の意見が多く、購入予定の二輪車を買い控えたり、低いグレードで妥協する等の意見は少ないことがわかる。これらは軽自動車税の増税についても同様であり、新規購入者・中古保有者でも大きな違いはみられていない。

(3)排ガス規制対応 (4)ブレーキ操作補助システム(ABS等)の装着義務付け
・排ガス規制対応車による価格が購入に与える影響では、「特に影響を与えない」が約半数である一方、影響があるという回答の中では「従来車種を乗り続けたい」が高い。一方、ブレーキ操作補助システム装着義務付けによる価格が購入に与える影響では、影響があるという回答の中では「積極的に買い替え/買い増し」が高い。特にオンロードユーザーでは積極的に搭載車を購入する意向が比較的高めである。

(5)電動アシスト自転車
・電動アシスト自転車の保有者に対し、購入時の比較検討対象を聞いたところ、二輪車は、ほとんど比較対象となっていない結果が出ている。また、電動アシスト自転車の特徴に対する魅力では、「自転車に比べラク」と感じる点の評価が高くなっている。今後の二輪車への乗り換え意向も1割程度にとどまることから、自転車と二輪車で明確な線引きがされていることが推察される。上記の点からも、二輪車が今後、電動アシスト自転車ユーザーを取り込むのは難しいことが推測される。

4.中古車市場の状況
(1)保有状況
・中古車購入の約8割が国内メーカーであるものの、751cc以上保有者では外国メーカー/逆輸入車の割合が高く、国内メーカーは約4割にとどまっている。購入した中古車のタイプでは、全体の半数が「オンロードスポーツ」と回答し、特に251cc以上保有者では9割前後の高水準である。次いで多い「スクーター」と合わせ、中古車市場で大部分のシェアを占めていることがわかる。

(2)新車検討状況
・新車ではなく中古車を購入した理由として、「状態の良さ」「本体価格が安い」がそれぞれ約5割と高く、「欲しいモデルが中古でしかなかった」「欲しかったモデルが中古でもあった」もそれぞれ約3割と高い。
絶版車のほか、新車では手が届きにくい価格帯など、中古車は特定のこだわりを持ったユーザーの要求を満たし、根強い支持を得ている可能性があることもうかがえる。また、中古保有者の約8割が、購入時に「中古の二輪車以外考えなかった」と回答していることも特徴的である。
・中古保有者に新車購入意向を聞いたところ、401cc以上保有者で「気に入った車種があれば」「魅力的な二輪車が販売されたら」が高く、比較的新車購入のポテンシャルが高い層と言える。一方、排気量が小さい中古車保有者は、新車の購入意向が低い傾向にある。特に中古のビジネスタイプユーザーでは、新車の購入意向がないのが半数近くである。

(3)中古車購入時の重視点
・購入時に優先した条件として、小排気量では「価格帯」、大排気量では「特定のモデル」の割合が高くなっていることが特徴である。また、購入時に気になった点では「本体やエンジンの不具合」「消耗品の不具合」「事故歴の有無」を多くのユーザーが挙げており、1000cc以上保有者では特に顕著に現れている。


【調査概要】
(1)新車購入ユーザー調査
調査手法:郵送調査法
調査地域:全国
調査対象:2014年6月~2015年5月に新車を購入した二輪車ユーザー
対象者抽出:
 調査応諾者より、タイプ別×排気量別に市場構成に合わせ対象者を割当、抽出
 但し、輸入車は日本自動車輸入組合を通じ6社のインポーターからご協力を得た
調査期間:2015年8月~2015年9月
回収数:10,401人に調査票を発送し、5,159人から回収(回収率49.6%)

(2)トピック調査
1.インターネット調査
調査対象:
 A.二輪車中古保有者:現在中古二輪車を保有している人
 B.二輪車非保有者:二輪車免許(原付のみを含む)を保有しているが、現在二輪車を所有していない人
 C.電動アシスト自転車保有者:電動アシスト自転車を保有し、普段運転している人
調査期間:2015年8月27日~9月24日
サンプル数: A:1,053s、B:1,010s、C:228s回収
2.ヒアリング調査
調査対象:自動車教習所で、二輪免許取得のために講習を受けている人
調査方法:首都圏内の教習所にて、教習生にヒアリング(1人10分程度)
調査期間:2015年8月
サンプル数:8s

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[日本自動車工業会]
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