1 年以内に日本への観光旅行を希望する中国人に関する調査 

2016年03月24日
ジェイティービーは、「1 年以内に日本への観光旅行を希望する中国人に関する調査」を実施しました。

JNTO(日本政府観光局)の発表によれば、2 月の訪日外国人数は、1,891,000 人(前年同月比 36.4%)で、うち中国人は、498,900 人(前年同月比 38.9%増)と 2 月として過去最高を記録しました。当初の中国経済の減速への懸念から、春節期間を含む 2 月の訪日人数は例年に比べて減少するのではないかといわれていましたが、予想に反する結果となりました。
今年の春節は、旅行の内容については変化が見られたという声も多く聞かれました。個人旅行化がすすみ、興味の対象はモノからコトへ、買い物の中心は家電から化粧品などの消費材へという報道が伝えられました。海外旅行頻度が上がり、旅行の経験を積むことで、中国人も旅行先の選び方、旅先でしたい事、買いたいものなどが変化していくと思われます。そしてその変化は、交通網や情報通信の発達により、日本人が経験してきたよりも明らかに速いペースで進んでいきます。また、中国の経済環境の変化による影響にも注意が必要です。
このような状況下で中国人旅行者にとり日本が魅力的な国であり続けるには、どのような対策が必要なのかを考える時期が来ています。
このたび、JTBは、1年以内に日本への観光旅行を希望している世帯年収 12 万元(約 240 万円)以上の中国人男女 1,000 名に調査を実施しました。日本へのリピーターになる可能性の高い、日本への数次ビザの発給要件である年収(10 万元)以上の収入があり、近い将来日本への旅行を考えている中国人は、どのような価値観を持って暮らしているのか、旅行に何を求めているのかをさぐっていきます。

【調査結果サマリー】

〇若い世代が多く、35 歳未満が全体の 35 歳未満が全体の 53.0%

〇64.3%が企業のサラリーマン %が企業のサラリーマン 旅行に求めるのは「リフレッシュ」 旅行に求めるのは「リフレッシュ」

〇日本の「食」への関心が高く 訪日経験の増加とともに興味は深まる 訪日経験の増加とともに興味は深まる

〇普段の生活から、品質や安全性、健康へのこだわりがあ 〇普段の生活から、品質や安全性、健康へのこだわりがある


【調査結果】

【調査対象者プロフィールと旅行経験について】
1.年収 12 万元(約 12 万元(約 240 万円)以上で1年以内に日本への観光旅行を希望している中国人は若い世代が多く 35 歳未満が全体の 53.0%。総合大学卒が 66.1%と高学歴。企業のサラリーマンが 66.1%と高学歴。企業のサラリーマンが 64.3%


調査対象者を年齢別にみると、20歳~25歳未満が 5.4%、25歳~30歳未満が 19.5%、30歳~35歳未満が 28.1%、で 20~35 歳未満で 53.0%を占めています。世帯年収別にみると、24 万元以上~60 万元未満が 36.7%、60 万元~120 万元未満 11.3%、120 万元以上 2.8%と、回答者の 50.8%が年収 24 万元以上でした。最終学歴は、中国の総合大学卒(66.1%)と中国の専門大学卒(15.3%)を合わせると 81.4%となりました。仕事をしている人の職業は「中国企業のサラリーマン」(45.1%)、「外資系企業のサラリーマン」(19.2%)と 64.3%が企業のサラリーマンでした。学生を含む調査対象者の 93.1%に配偶者があり、 配偶者の職業を聞いたところ、仕事をしていないは 2.7%で、共働きが多いです。 今回の調査対象者に多い 20歳~34歳は「ミレニアル世代」と言われ、世界では今後の消費を大きく変える 「新しい消費者」として注目されています。中国においてもこの世代の消費行動に注目していく必要があるでしょう。

2.調査対象者の旅行経験は
訪日旅行は 71.5%が経験あり。国内旅行は年3回以上が 44%、海外旅行は年1回が 43.8%
若い世代ほど、旅行は春節や労働節、国慶節などの国民の休日にあわせるが傾向が強い


調査対象者に日本への旅行経験についてきいたところ、71.5%が経験ありと回答しています。
また一般的な旅行の頻度は、中国の国内で「年に 3 回以上」(44.4%)と「年に 2 回程度」(36%)、海外は「年に 1 回程度」(43.8%)「年に 2 回程度」(25.7%)です。

また過去3年以内に行った旅行先としては、中国本土が 86.8%、以下、香港・マカオ・台湾が 74.0%、日本56.7%と続きます。休暇の取り方について聞いたところ、全体的には「春節や労働節、国慶節などの国民の休日にあわせてとる」が 59.2%でした。世代別にみると、20 歳~34 歳の世代では、同 62.3%と全体より高く、45 歳以上は、同 44.2%でした。若い世代のほうが、国民の休日を利用して休暇を取っているようです。

【調査対象者の訪日旅行と日本との関わりについて】
3.初めての訪日旅行は、「観光旅行」(43.1%)、出張、学会、インセンティブとビジネス関連の目的も多い
 2 回目以降の直近の旅行では、観光旅行とインセンティブ旅行が増加傾向に


調査対象者の中で日本旅行の経験者に内容について聞きました。初めての日本旅行の目的は、「観光旅行(家族、友人訪問含む)」(47.4%)「ビジネス旅行(出張、国際会議や学会などへの出席)」(22.2%)「職場の仲間との旅行(社員旅行)」(11.5%)「ビジネス旅行(インセンティブ旅行)」(11.1%)と、観光旅行が一番多い結果でした。直近の訪日旅行では「観光旅行(家族、友人訪問も含みます)」(52.5%)「ビジネス旅行(出張、国際会議や学会などへの出席)」(11.0%)となり、ビジネス旅行は減少しています。一方、インセンティブ旅行は 15.6%と増加しています。
日本への旅行に利用したビザの種類においても、「個人観光ビザ」は、初めての日本への旅行では 47.6%、直近では 60.1%という結果から、2 回目以降は個人で旅行をする傾向が高いと言えます。

日本での訪問先については、初訪日では「首都圏のみ訪問(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のいずれかのみ訪問)」(44.8%)「近畿圏のみ訪問(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県のいずれかのみ訪問)」(20.7%)「首都圏と近畿圏の訪問」(19.0%)と、首都圏のみの訪問が 4 割以上を占めていました。一方、直近では「近畿圏のみ訪問(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県のいずれかのみ訪問)」(30.7%)「首都圏のみ訪問(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県のいずれかのみ訪問)」(19.9%)「首都圏と近畿圏のみ訪問」(21.8%)、「首都圏と近畿圏の両方あるいはどちらか一方とそれ以外の地方(24.2%)となり、地域への分散が見られます。
初訪日で「首都圏近畿圏とそれ以外の地方」と回答した人に具体的な都道府県の訪問先を聞いたところ、「北海道」(57.4%)「福岡」(30.9%)「沖縄」(23.5%)「静岡」(23.5%)でしたが、直近の訪日で「首都圏近畿圏とそれ以外の地方」と回答した人の訪問先は、「北海道」(71.1%)「沖縄」(42.2%)「広島」(40.0%)となりました。沖縄と広島の訪問数が増えている事が分かります。

初訪日での食事について聞いてみると、「日本料理店で食事(寿司、天ぷら、刺身など)」(75,5%)「日本食ファーストフードチェーン」(38.0%)「ラーメン」(33.3%)の順ですが、直近の訪日では、「日本料理店で食事(寿司、天ぷら、刺身など)」(63.2%)「日本食ファーストフードチェーン」(44.8%)「コンビニなどで買って」(25.8%)、「西洋料理」(23.9%)、となりました。訪日経験の増加で様々な場所で食事を楽しむ傾向が見られます。

初訪日の主な宿泊先では、「ホテル」(65.0%)「日本旅館」(34.0%)が大きな割合を占めていますが、直近訪日の宿泊先は、「ホテル」(49.1%)「日本旅館」(33.1%)に続いて、「伝統的建造物を利用した宿泊先施設」(24.5%)「農家、宿坊」(20.3%)となり、リピーターになると、日本の伝統を感じられる施設や、農家、宿坊などでの宿泊も多くなり宿泊先も多様化する傾向にあることがわかります。

4.はじめて日本に行きたいと思ったきっかけは
 「アジアの先進国として日本を見てみたかった」「日本料理を食べ、日本でも食べてみたいと思った」
 日常生活に日本食や日用品、TV、アニメが浸透し、日本を訪れるきっかけに


初めて日本に行ってみたいと思ったきっかけは、「アジアの先進国として日本を見てみたかった」(37.4%)「日本料理を食べて、日本でも食べてみたいと思った」(34.8%)「日本製の商品を利用してみて日本で買ってみたいと思った」(30.4%)でした。日本の「技術」や「食」への関心が日本に行きたいと思うきっかけになっています。

全員に日常生活における日本との関係を聞いたところ、「日本食のレストランで食事をする 53.7%」「日本の食品や日用品を選んで買っている 50.3%」「日本の TV ドラマやアニメを見ている 45.9%」で、日本の「食」が大きい影響力を持っていることが分かります。

自国と日本でそれぞれ誇れることを聞いたところ、自国で誇れると思うことは「歴史と伝統」(66.9%)、食文化」(66.4%)、「文化・芸術」(54.9%)などを選んだ人が多いですが、「質の高いサービス」(25.7%)「教育水準」(25.2%)は低い評価でした(図 19)。中国人が考える日本で誇れると思うことは「質の高いサービス」(53.3%)「科学技術」(48.6%)「教育水準」(42.6%)「国民の勤勉さ」(40.9%)「食文化」(40.7%)でした。

【旅行全体の意向と訪日旅行での意向について】
5.旅行先を決める際に重視することは、「リフレッシュできるか」(70.8%)「趣味など、自分の目的が達成できるかどうか」(62.6%)「美しいものが食べられるか」(62.1%)
 旅行の予約は中国のオンライン旅行社のサイトからが 63.5%


旅行先を選ぶ際に重視することは、「リフレッシュできるか」(70.8%)「趣味など、自分の目的が達成できるかどうか」(62.6%)「美味しいものが食べられるか」(62.1%)などが高い結果になりました。旅行で自分がどんな気持ちになるかを重視する傾向があると思われます。

旅行の情報を得る方法を複数回答で聞いたところ、「旅行会社や旅行情報サイト」が 57.6%、「ポータルサイトから検索」52.8%、「ガイドブック」52.7%でした。インターネット利用率が高いですが、ガイドブックの利用率も高いです。

旅行の予約については、「中国のオンライン旅行会社のサイト」(63.5%)、「中国の旅行会社のサイト」(60.2%)と中国の旅行会社の利用率が高い割合となりました。ネットを通じて予約している割合が高いですが、「中国の旅行会社の店舗」(47.1%)行先の旅行会社の中国国内店舗も 25.7%ありました。

一番行きたい旅行先でしたいこと、買いたい物は、「その土地のマーケット(市場)に行く」(55.4%)「歴史的な街並みを散策する」(47.9%)「地元で人気の街や店で地元の人に人気なブランドのものを買う」(44.6%)でした。日本で買いたいものを全体と比べてみると、「その土地のマーケット(市場)に行く」(57.4%)、「地元で人気の街や店で地元の人に人気なブランドのものを買う」(46.3%)などが全体より高く、買いたいもののうち、「家電製品」(日本 39.0%)(全体 23.6%)、「お菓子、食料品」(日本 43.2%)(全体 36.0%)「日用雑貨や医薬品」(日本 30.3%)(全体 22.8%)などが全体より高くなりました。

一番行きたい海外旅行先を聞いたところ、「日本」(38%)「ヨーロッパ」(20.8%)「アメリカ・カナダ」(11.4%)となりました。

日本に来たら日本人とどんな接点を持ちたいか、どんな話をしたいか聞いたところ、「日本の日常生活に触れたい」(44%)「ホテルや観光案内所、ガイドの人と雑談をしてみたい」(33.4%)「日本の歴史や文化について、日本人に説明してもらいたい」(30.8%)が多く、「日常生活」に興味を持っている人が多いことがわかりました。

次の日本旅行で一番したいことを自由に記入してもらった結果から多く発現された言葉を抽出してみました。
訪日経験がない人は、「グルメ」、「ショッピング」などが多く、訪日経験がある人は「グルメ」「ショッピング」は少なくなり、「富士山」、「温泉」、「花見」、「見る」「食べる」などが多くなりました。訪日経験が多いほど具体的にしたいことが増えていくことがわかります。

日本に来たら買いたい物は、「日本の化粧品」(45.3%)「日本の菓子」(43.6%)「日本ブランドの服、バッグ、時計」(38.8%)となりました。性年代別にみてみると、女性は、どの年代も「日本の化粧品」が 50%以上(女性 20~34 歳:51.0%、女性 35~44 歳:58.4%、女性 45 歳以上:59.3%)でした。男性は、「家電製品」が 35~44 歳で 51.5%、45 歳以上が 50.8%と高いですが、20~34 歳のミレニアル世代では 35.4%です。男性20~34 歳は、「日本ブランドの服、バック、時計」が 35.4%、「日本の菓子」も 33.9%となっています。
また、日本でお土産を買うとしたら総額でどのくらいお金を使うか聞いたところ、全体では、「10~20 万円未満」(44.5%)「5~10 万円未満」(27.1%)「20~50 万円未満」(17.6%)「50 万円以上」(5.3%)となりました。
性年代別にみてみると、50 万円以上と回答した人は 45 歳以上の女性で 13.0%、一方で 5 万円未満と少ないのは、20~34 歳ミレニアル世代の女性(6.3%)が全体の中では一番多くなりました。

6.普段の生活から、品質や安全性へのこだわりが。インターネットを利用しての情報収集や買い物は日常。

普段の生活でこだわっていることについて聞いてみました。日常の買い物へのこだわりについて聞いたところ、「品質が良いか」(73.6%)「安全であるか」(59.8%)「自分や家族の健康に良いか」(57.4%)等となりました。「質」と「安全」へのこだわりが高いことがわかります。
 日常の買い物の場所については、「インターネットによる通信販売」84.8%、「ショッピングモール」81.2%、「スーパーマーケット」76.4%で、インターネットの利用率が高いです。買い物の情報を得るのは、「インターネットの検索エンジン」82.8%、「メッセージチャットアプリ」73.2%でした。

7.まとめ

今回の調査で、中国人が自国で誇れると思うことは「歴史と伝統」、食文化」、「文化・芸術」、日本で誇れると思うことは「質の高いサービス」、「科学技術」、「教育水準」でした。はじめて日本に行ってみたいと思ったきっけでも、「アジアの先進国として日本を見てみたかった」が多い結果となりました。日本のほうがすぐれていると感じている「質の高いサービス」を「体験」としてアピールすることも日本の魅力を伝えることになるのではないでしょうか。

旅行の予約については、中国の旅行会社の利用率が高い割合となりました。「中国の旅行会社の店舗」、「行先の旅行会社の中国国内店舗」もあり、店舗利用も多いです。旅行の情報を得る方法を聞いたところ、インターネット利用率が高いですが、ガイドブックの利用率も高い結果となりました。日本での宿泊先については、初訪日では「ホテル」「日本旅館」が大きな割合をしめていますが、直近訪日では「ホテル」「日本旅館」に続いて、「伝統的建造物を利用した宿泊先施設」や「農家、宿坊」が増加する傾向にあり、リピーターになると、地域の魅力や日本の生活文化に触れることに魅かれて宿泊先も多様化しています。日常の買い物へのこだわりについて聞いたところ、「品質が良いか」、「安全であるか」、「自分や家族の健康に良いか」等となり、「品質」と「安全」へのこだわりが高いことがわかりました。この点も日本の魅力がアピールできるポイントだと思います。

調査を通じて、多くの項目に「食」への関心の高さを感じました。「日本に行きたいと思ったきっかけ」「日本でしたい事」「日本で買いたい物」等での、「日本の食事」に関する回答のほか「旅行先を選ぶ際に重視すること」「旅行先でしたいこと、買いたい物」にも「食」への興味が感じられました。個人旅行化、都市から地域へ、モノからコトへと旅行の内容が変化している訪日中国人への対応について、「日本食」だけでなく、「食」への興味を刺激するような視点から考えることも有効ではないでしょうか。


【調査概要】
調査手法:インターネットアンケート調査
調査期間:2016 年 1 月 22 日~1 月 29 日
対象者:中国本土に在住し、1年以内に日本への観光旅行を希望している、年収 12 万元(約 240 万円)以上の
中国人男女 1,000 名(男性 532 名、女性 468 名)

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