電力自由化に関するアンケート調査(20歳~59歳の男女対象) 

2016年03月25日
生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研は、20代~50代の男女500名を対象に「電力自由化に関するアンケート調査」を実施しました。本調査では、「電力自由化」の認知度の高さとともに、その制度や起こり得るデメリットへの理解度の低さが浮き彫りになりました。

【調査結果】

◆ 認知率96%! 着実に浸透する「電力自由化」の現状の課題とは!?

はじめに、「電力自由化」の認知率を明らかにするため、「“電力自由化”という言葉を見たり、聞いたりしたことはありますか?」とたずねました。その結果、「ある」と回答した人は全体の96%にのぼります。

20代では85%と若干低かったものの、それ以外の世代では、認知率はいずれも98%以上。「電力自由化」というワード自体は、すでに広く浸透していることが分かります。
このように認知率が96%であった「電力自由化」というワードですが、その認知率を高めるために大きな役割を果たしているのは、新たに提供を開始する会社です。これらの会社のCMにより、電力自由化について知ったという人も少なくないはずです。
そこで、「電力自由化により開始されるサービス」についても聞いてみました。まず、電力自由化により開始されるサービスに対して、「興味・関心がある」という人は65%で、半数を大きく上回ります。一方で、「利用を検討したいサービスがある」という人は24%にとどまります。さらに、「既に申し込んだサービスがある」という人は6%。

電力自由化の認知率や興味・関心がある人の割合を考えると、いずれも決して高いとは言えない結果でしょう。興味や関心はあっても、実際の利用には二の足を踏んでいるというのが現状のようです。

◆ 「選べるサービスが多すぎる」、「海外の電気料金の値上がり事例」、… 浮かび上がる、電力自由化への不安

電力自由化により開始されるサービスに対して、このように利用を躊躇させている原因は何なのでしょうか。それを探るために、まず、「電力自由化」というワードの認知層に対して、「電力自由化への不安はありますか?」と聞くと、37%が「ある」と回答しました。

3人に1人以上と、間もなくスタートする電力自由化に対して不安に感じている人は少なくありません。
続いて、その不安に感じていることを自由回答形式で具体的に聞いてみると、世代を問わず多くの人からあげられたのは、「どのサービスが一番得になるのか、分からない」(東京都・35歳女性)といった回答でした。様々なサービスが増え、期待も高まる一方で、サービスの多様化が判断を悩ましているというケースも多いということが分かります。また、中には「失敗したイギリスと同じような状況が起きそう。(奈良県・68歳男性)」、「電力消費量が多いほど得をするというのは、いかがなものかと思う。(大阪府・65歳男性)」というように、電力自由化に詳しい一部の人たちからは、電力自由化の構造的な課題に対して懸念する声も見られました。

◆ 課題となるリスクへの理解… 88%が「電力自由化のデメリットについても、もっと報道されるべき」

イギリスの事例のように、電力自由化を行っても、必ずしも電気料金は安くなるとは限りません。また、大部分の原子力発電所が稼働を停止し、火力発電に9割近く依存する今の日本では、燃料価格の変動によるリスクも大きいです。化石燃料の価格が急上昇するようなことがあれば、そのコストは電気料金に上乗せされ、家計を圧迫する可能性もあります。
そこで、「電力自由化により、電気料金が上がる可能性があることを知っていますか?」とたずねたところ、「全く知らなかった」という人は40%にものぼりました。

電力自由化により、選べるサービスは増えます。もちろん、自身の家庭に適したサービスを選べば、電気代を安く抑えられるケースもあるでしょう。しかし、様々な新サービスが登場し、その広告が展開されている今は、電気料金を安く抑えられるケースばかりがフォーカスされる傾向にあります。その結果、4割もの人が「電気代が高くなる可能性について全く想定していなかった」と回答した今回の調査結果のように、“電力自由化=電気代ダウン”という一面的なメリットにのみ注目が集まっているというのが現状でしょう。
また、こうした価格に関する話題ばかりでなく、電力自由化のデメリットについては、全般的に非常に理解が低いようです。以下の2点を伝えた上で、いくつかの質問を行いました。

[電力自由化によるデメリットの一例]

(1)電力供給の不安定化
これまで電力を供給してきた大手電力会社は、供給の安定性を保つために技術の向上を図り、ノウハウを蓄積してきました。その結果、人為的なミスや事故による大規模な停電が、日本で起こることはほとんどありません。しかし、電力自由化後は、発電能力が十分でない企業が、市場参入する可能性もあります。また、市場競争の激化とともに目先の利益が最優先され、発電コストが安い火力発電への依存度がさらに高まり、電力供給が不安定化することも想定されます。

(2)電気料金が上がる可能性
イギリスやドイツなどでそうであったように、日本でも、電力自由化の後に電気料金が上昇することも想定されます。また、市場の原理により、今後、電気料金が大きく変動することも想定されます。特に、原油価格が高騰する場合は、これまで以上に電気料金への影響は大きくなり、その影響はよりダイレクトに家計を直撃するでしょう。

その結果、55%もの人が「電力自由化のデメリットをこれまで知らなかった」と回答。「デメリットについて知って、電力自由化への不安が高まった」という人が73%にものぼります。

これまで、電力自由化のデメリットについて考える機会が少なかったことがうかがえます。こうした傾向には、メディアの報道による影響も少なくないようです。実際に、「電力自由化のデメリットについても、メディアでもっときちんと報道されるべきだと思う」という人も88%にものぼります。

電力自由化は、新たな選択肢を得られるチャンスとともに、受け入れなければならない様々なリスクも内包します。その両者をしっかり理解した上でなければ、消費者が最適なサービスを選ぶことはできません。きちんと情報が得られているという安心感がなければ、電力自由化により開始されるサービスに対する懸念が払拭されることはないでしょう。自由化を間近に控えるタイミングではありますが、改めて多様な情報発信の必要性が浮き彫りになりました。


【調査概要】
調査名:電力自由化に関するアンケート調査
調査対象:20歳~59歳の男女500名 ※性別・年代別に均等割付
調査期間:2016年2月24日(水)~2016年3月1日(火)
調査方法:インターネット調査
調査実施機関:楽天リサーチ株式会社

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[トレンド総研]
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