スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2015) 

2015年10月26日
JTB総合研究所は、「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2015)」を実施しました。当研究所では、生活者のライフスタイルや価値観が消費行動や旅行に与える影響に関する調査分析を継続的に行っています。

2013年には32.0%だったスマートフォンの利用率は2015年には62.3%と、この2年でほぼ倍増(総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)し、スマートフォンを通じ、場所や時間を気にせず情報の収集や発信を行うことは珍しいことではなくなりました。本調査は、生活者の日常、および旅行の場面でのスマートフォンの利用実態について2013年より年1回の調査を実施し、その変化と新たな動きを捉えたものです。

【調査結果概要】

〇スマホでの旅行予約や購入が2年連続で増加(2015年32.6%、2013年19.4%)。29歳以下女性、30代女性ともに47.6%と過半数に迫る

〇旅行体験の主な発信先:Facebookが64.0%と3年連続1位。Instagram、YouTubeの利用も大きく増加

〇コミュニケーションのあり方は“文字”から“映像”の時代へ。写真や動画の利用が増える。電話やメールの利用は減少

〇個人情報保護には敏感。ネットワークは絞る方向へ

・個人情報保護のため、「顔写真は出さない(54.7%)」「全く知らない人とはつながらない(48.7%)」「プロフィールの公開は最小限にする(41.4%)」「位置情報(GPS)機能をオフにする(38.0%)」

【調査結果】

【スマートフォンの利用について】

1.スマートフォンでよく利用するもの:画像投稿サイトが倍増(2014 年 6.7%→2015 年 12.5%)
Instagram が昨年の 5.7%から 13.9%と躍進。LINE は熟年層にも利用が広がる


スマートフォンでよく利用するものについて、昨年に引き続き質問をしたところ、メールや電話の利用はそれぞれ 83.0%、74.3%と多いものの、2014 年の結果より減少しました。一方、LINE などのメッセージ・チャットアプリや Facebook、Twitter などのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、まとめサイト、ニュースアプリなどは増加傾向が見られました。また、まだ割合としてはそれほど高くありませんが、画像投稿サイトの利用が昨年の 6.7%から 12.5%と倍増しています。

具体的にどんなサービスを利用しているかを聞いた質問では、「LINE」は男性の 50 代 60 代、女性の 40代 50代での利用が大きく増え、若い世代が使っていたものが、熟年層まで広がってきました。また、「Instagram」は 13.9%と昨年の 5.7%と 2 倍以上の伸びを見せましたが、特に女性の 29 歳以下と 30 代に 41.7%、27.2%と支持されています。男性の 29 歳以下では「ニコニコ動画」が支持を伸ばしました。「Facebook」は微減となりました。

スマートフォンでの利用が減少傾向にある「電話」ですが、電話をかけることについて、利用者はどのように感じているのでしょうか。プライベートで電話をすることについて聞いてみたところ、最も多い回答は「用事が早く済む(71.3%)」でした。リアルタイムでやり取りができることから、その場で意思決定をしたい場合などに利用されているようです。また、女性では「声がきけると安心できる、嬉しい」も比較的高くなりました。
一方、電話のデメリットとしては「かけてもよいタイミングがつかみにくい(30.1%)」「文章の方が相手の都合を気にしなくてすむ(25.8%)」「文章の方が気楽にできる(19.4%)」などがあげられました。特に女性では電話より文章を好む傾向が強いようです。このような背景から、電話の利用が減少傾向にあるのかもしれません。

2. スマートフォンで利用するアプリ:「地図(78.4%)」「天気予報(69.8%)」「乗り換え案内(67.5%)」
29 歳以下、30 代女性は「レシピ」「画像、動画加工」「フリマ」なども比較的高い


スマートフォンで利用するアプリは「地図(78.4%)」「天気予報(69.8%)」「乗り換え案内(67.5%)」がトップ3でした。性年代別にみると、女性は「レシピ」の利用も多く、また 29 歳以下の女性では「画像・動画加工」、29 歳以下と 30 代女性では「フリマ」アプリの利用も比較的高くなりました。

【普段の情報収集について】

3. 時事関連の情報源:「テレビのニュース番組(88.8%)」「インターネットニュース(81.7%)」「新聞(紙 47.3%)」

アンケート対象者に、普段、ニュースなど時事関連の情報はどこから得るのかを聞いたところ、「テレビのニュース番組(88.8%)」「インターネットニュース 81.7%」がそれぞれ 8 割を超えました。新聞(紙)は全体では 47.3%でしたが、男性は 53.8%で、女性の 40.8%より 13 ポイント高い結果となりました。
具体的な情報源としては、Yahoo!ニュースが 88.5%と最も多く、次いで NAVER まとめの 23.5%でした。年代別では、29 歳以下で、NAVER まとめや2ちゃんねるまとめなど“まとめサイト”の利用が多いと共に、SNSでの友人の反応からニュースを知るという場合も少なからずみられました(図4、5)。

4. 時事関連で興味のあるジャンル:
「時事(国内)(84.5%)」「政治経済(52.9%)」「時事(海外)(52.4%)」「国内旅行(51.7%)」


次に、時事関連のニュースの中でも、どのようなジャンルに興味を持っているかを聞いたところ、最も多かったのは「時事(国内)(84.5%)」で、「政治経済(52.9%)」「時事(海外)(52.4%)」「国内旅行(51.7%)」が続きました。性別に興味のあるジャンルの違いを見てみると、男性では「政治、経済」「時事(海外)」「スポーツ」「IT、科学技術」が高く、女性は「芸能、タレント」「国内旅行」「グルメ、料理」「映画」「健康」などが高くなりました。
興味のあるジャンルをどの程度の頻度で取得しているかについては、全体で「1日2回以上」が 55.3%と過半数を超えており、比較的高頻度での情報収集を行っていました。

5. テレビは「興味のある番組をチェックして見ている」が 71.7%。「番組をチェックして録画」は 50.6%
20 代男性はテレビ番組を「動画配信サイトで見る」も多い(全体 5.2%、20 代男性 16.5%)


近年若者はテレビを見なくなったと言われる中、定額動画配信の世界大手がこの秋日本に進出して話題になりましたが、テレビ番組はどのように視聴されているのでしょうか?どのようにテレビを見ているかを聞いたところ、「番組表をチェックして興味のある番組を見る」人は 71.7%、「番組表をチェックして興味のある番組を録画して見る」人は 50.6%となりました。また、「テレビはつけているがあまり見ていない」“ながら視聴”は 21.3%でした。「テレビ番組はみない」と答えている人は全体で 4.2%でしたので、テレビはリアルタイムで見なくても、大半の人が何らかの形でテレビ番組を見ているといえるでしょう。動画配信サイトでテレビ番組を見ている人は、全体では 5.2%でしたが、男性の 29 歳以下で 16.5%と全体より 10 ポイント以上高くなりました。若い人から、「テレビ番組は、テレビ画面を通してリアルタイムで見る」というパターンは徐々に変わってきているのかもし
れません。
テレビを見る、と回答した人の中でよく見るテレビ番組を性年代別にみると、29 歳以下、30 代、40 代の女性でバラエティが高く、ニュース番組やスポーツは男性、旅行番組は比較的年代の高い男女がよく見ていることがわかりました。

【インターネットでのつながりについて 】

6. SNS のフォロワーの数は 50 人以下が最も多い(Facebook59.7%、Twitter61.0%)
Twitter は 201 人以上も 16.9%。“SNS 疲れ”は昨年より進み、ネットワークを絞る傾向に。


昨年同様に、SNS で経験したことについて聞いた質問では、「投稿で行ってみたいと思った場所に行った」「昔の知り合いとつながり再び交流するようになった」がやや減ったものの、「SNS で知った情報でいいと思ったものを購入した」増加しており、SNS は引き続きつながりや移動のきっかけとなっているようです。一方、「見るだけで投稿はしなくなってきた」「いいと思わなくても投稿者に気を使っていいね、などの評価をつけた」「嫌なことがあったので、アカウントを変更して友達の数を減らした」への回答割合が昨年と比較して増加しており、“SNS 疲れ”については、やや進行していると言えるかもしれません。特に 29 歳以下の女性では、SNS からの情報で行ってみたい場所へ行ったり、商品を購入したりすることが多い反面、SNS の投稿に気を使い、投稿をしなくなってきたという回答も多く、良くも悪くも SNS の影響が強く見られました。
SNS での友人やフォロワーの数については、「50 人以下」が Facebook では 59.7%、Twitter では 61.0%と最も多いものの、201 人以上と回答した割合もそれぞれ 11.2%、16.9%と決して少ない数字ではありませんでした。
つながりが増えるにつれ、その影響力も大きい反面、嫌なことに遭遇したり気を使ったりといった場面が増えるのではないでしょうか。

7.個人情報保護には敏感に:「顔写真は出さない(54.7%)」「全く知らない人とはつながらない(48.7%)」

個人情報の観点から「顔写真は出さない(54.7%)」「全く知らない人とはつながらない(48.7%)」「公開するプロフィールは必要最低限にする(41.4%)」「位置情報(GPS)機能をオフにする(38.0%)」など、前章で触れたように“SNS 疲れ”が進行する中、リスクはある程度自分で気を付け、管理を心がけている様子が見られます。特に女性は、顔写真以外で、その傾向が強く見られました。

【旅行に関するスマートフォンの利用について】

8. スマートフォンを利用した旅行商品の予約や購入は 32.6%。昨年より 4.3 ポイント増加。29 歳以下女性、30 代女性ともに 47.6%と過半数にせまる
決済の方法は「クレジットカード決済」と「現地払い」に二極化か


スマートフォンを利用した旅行商品の予約や購入は2年連続で増加し、2013 年の調査時点の 19.4%から 2015年には 32.6%となりました。性年代別では、29 歳以下と 30 代女性で 47.6%と最も多い結果でした。購入した商品として最も多かったのは、「宿泊施設(17.3%)」で、「国内ツアー(10.3%)」「レストラン(5.7%)」「飛行機(5.5%)」が続いています。性年代別にみると、30 代男性は宿泊施設やレストランの予約や購入が多く、29歳以下女性は宿泊施設やイベント、コンサートなどのチケット、レンタカーなども比較的高くなりました。

実際に支払いをした決済の方法について変化を見てみると、全体的に銀行振り込みやコンビニ払いの割合が減少しました。その一方、飛行機ではサイト上でのクレジットカード決済の割合が 2014 年の 80.7%が 2015 年には 93.0%と大きく増え、レストランでは現地払いが 51.7%から 54.2%へ増加しています。スマホにおける決済の形態としては、クレジットカード決済と現地払いの二つに二極化してきていると言えるのではないでしょうか。

9. 外出先での「無料 Wi-Fi」を利用する人は 53.3%
無料 Wi-Fi の利用場所はカフェ・飲食店(48.5%)、ホテルや旅館(41.2%)、駅(37.9%)


スマートフォンの普及や訪日観光客の増加に伴い、飲食店や交通機関などで Wi-Fi の設置が進んでいます。スマートフォンの利用者が普段の利用場面において、Wi-Fi をどのように利用しているかを聞いたところ、全体では 53.3%が「無料 Wi-Fi」を、50.3%が「自宅で契約しているインターネットの無線 LAN」を利用していると回答しました。また、無料 Wi-Fi の主な利用場所は、「カフェ・飲食店(48.5%)」「ホテルや旅館(41.2%)」「駅(37.9%)」でした。有料 Wi-Fi の主な利用場所としては、オフィスや新幹線・特急、飛行機も比較的高くなりました。一方、「契約している携帯会社の通信機能以外は使わない」と回答した人は全体の 22.2%で、特に 50代、60代女性で多い傾向が見られました。

10.旅行体験の主な発信先:Facebook が 64.0%と3年連続1位。Instagram、YouTube の利用も大きく増加
旅行体験の発信形態は「画像(93.4%)」が主流だが、動画の利用も伸びる(2014 年 6.4%、2015 年 8.5%)


自分自身の旅行体験の発信先としては、Facebook が 64.0%で、3年連続で1位。2位も変わらず Twitter(43.1%)が上がりました。また、Instagram(2014 年 5.5%→2015 年 15.1%)と YouTube(2014 年 5.2%→2015 年 11.5%)は昨年と比較して大きな伸びを見せています。旅行の発信形態としては、「画像」が 93.4%と主流ではありますが、YouTube の利用が伸びていることからもわかるとおり、まだ少数ながらも「動画」での投稿が増加傾向にあるといえるでしょう(2014 年 6.4%、2015 年 8.5%)。一方、「チェックイン」は昨年の 6.4%から 5.5%と減少しました。当社が今年 9 月に発表した「タイ人の旅行とライフスタイル」(*1)調査において、45.6%のタイ人旅行者がチェックインによる旅行体験の発信を行っていたのとは、対照的な結果です。個人情報保護の観点から位置情報(GPS)機能をオフにしている人が多いことも関係していると考えられます。

11.旅行中の交通機関内でのスマホ利用:ビジネス旅行では「普段と変わらない利用」が 64.3%(プライベート旅行 46.6%)「その旅行に関連した利用」はプライベート旅行で多く、44.7%(ビジネス旅行 30.7%)
メールチェック、チャットアプリでのやりとり、ニュースを読む、ポータルサイトの検索を主に利用


旅行中の交通機関の中で、どのようにスマートフォンを利用しているかを聞いてみると、「普段と変わらない」と回答した人がビジネス旅行では 64.3%、プライベート旅行では 46.6%となりました。プライベート旅行では、「その旅行に関連した利用」も 44.7%と比較的多くなりました。主な用途としては「メールのチェック」「チャットアプリでのやり取り」「ニュースを読む」「ポータルサイトでの情報検索」などが上位にあがっています。またビジネス旅行では、ニュースを読んだり、電話をしたり、といった行動も比較的多くなりました。旅行中とはいえ、普段通りの利用が多く、必ずしも特別な利用をしているというわけではないようです。

12.旅行中の交通機関内で有料でも使いたいサービス:プライベート旅行では「充電用の電源(6.3%)、ビジネス旅行中は「Wi-Fi(10.9%)」

旅行中の交通機関内で有料でも使いたいと考えるサービスは、プライベート旅行では「充電用の電源」が 6.3%で最も高く、ビジネス旅行では「Wi-Fi」が 10.9%で1位となりました。「旅行先の情報やクーポン」を有料で使いたい割合はプライベートの旅行で 1.0%、ビジネス旅行で 3.5%とあまり高くはありませんでした。ただし、「無料で使いたい」割合はプライベート旅行で 79.1%、ビジネス旅行では 69.0%と共に高く、「旅行先の情報やクーポン」を有料では使いたくはないものの、無料でなら使いたい、という意識が垣間見られました。

13.いいと思う旅行やレジャーに関する写真:
女性は体験、食べ物、リゾートなどの写真、男性はスポーツ、祭り、電車、音楽などを好む


SNS などで見かけた場合“いいな”と思う写真を選んでもらった結果について、コレスポンデンス分析を用いて、性年代と好む写真との関係を見てみました。その結果、若い女性は、何かを体験している写真やキャラクター、40 代女性は海外のリゾート、50 代、60 代女性は土産物、若い男性はスポーツや祭り、40 代~60 代の男性は音楽や電車などを好む傾向があることがわかりました。当社が過去に実施した調査結果(*2)でも、女性は誰かが何かをしているシーンの写真を好み、40 代女性は海外のリゾートや高級ホテルにこだわりがあることがわかっており、それを裏付けるような結果と言えるでしょう。


【調査概要】
・調査方法:インターネットアンケート調査
・調査対象者:(スクリーニング調査)首都圏、名古屋圏、大阪圏に住む18歳から69歳までの男女 10,000名
(本調査)スクリーニング調査回答者の中で、以下に該当する 1,030名
 ・スマートフォンを利用している
 ・過去1年以内に1回以上の旅行(日帰りも含める)をしたことがある
・期間:2015年9月24日~9月26日

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
[JTB総合研究所]
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