日本における気候変動や地球温暖化対策への意識に関する調査 

2015年06月25日
生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研は、先日2015年6月7日~8日に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言の内容を受けて、日本における気候変動や地球温暖化対策への意識について調べました。
今回は、20代~50代の各世代125名ずつ、計500名を対象として、アンケート調査を実施。ドイツで開催されたサミットや気候変動、地球温暖化対策などに関する認知や理解について聞きました。

【調査家か】

◆ G7サミット開催の認知率は58%… その背景には「温室効果ガス&温暖化問題」への関心度の高さ
 
先日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の開催を受けて、はじめに、「2015年6月にG7サミットが開催されたことを知っていますか?」とたずねたところ、「知っている」と回答したのは58%。その認知度はおよそ6割で、半数以上を占めます。本調査を開始したのは、G7サミットが閉幕した翌日です。その日には、テレビや新聞など、各メディアでもG7に関する話題が大きく取りあげました。こうした状況も後押しし、G7サミット実施の認知率が高められたと言えるかもしれません。

そのG7サミットにおいて注目されていたテーマの1つが、地球温暖化対策に関する議論です。今回のG7サミットの議長国であるドイツの首相・メルケル氏は、「気候変動担当首相」という異名を持ち、「地球温暖化対策に効果があり、かつ、各国が実現可能な削減目標」を打ち出すことをサミットにおける重要課題に位置付けてきました。こうした中で実際に合意されたのが、「2050年までに世界の温室効果ガスを2010年比で40~70%の幅の上方に削減する」という目標です。
ちなみに、「温室効果ガスの排出量と地球温暖化問題」については、「関心がある」という人は70%にのぼります。多数派となる約7割の人が関心を示し、地球温暖化への関心度の高さを垣間見ることができたと言えるでしょう。
 
◆ 日本の温室効果ガス削減のカギは… 求められる、「電源構成のベストミックス」
 
地球温暖化対策には、世界的な枠組みで取り組んでいかなければなりません。その上で、各国が自国に課された責任を十分に果たすことが重要です。そこで、日本の温室効果ガスの削減に対する人々の理解について調べました。

「日本の温室効果ガスの排出量削減に期待できると思う方法」を複数回答形式で答えてもらったところ、最多となったのは、「太陽光発電の利用」(51%)という回答。2位と3位には、「省エネ技術の利用」(46%)と「新たな省エネ技術の開発」(45%)が続きます。日本では、新エネルギーや新技術に期待する人が多いようです。
しかし、日本の省エネ技術は世界的に高い水準にあるものの、これまでも積極的に取り組んできた経緯もあり、省エネ技術による温室効果ガスの排出量削減効果の余地は限定的だと言われています。それだけでは大幅な改善は期待できないでしょう。そこで重要になるのが、電源構成のベストミックスです。様々な発電方法において、完璧な手法はありません。それぞれの発電方法のメリットとデメリットを組み合わせて、バランス良く発電することが重要です。

その中で、温室効果ガスの排出量削減に期待されるのが「太陽光発電」と「原子力発電」です。
例えば、政府による2030年のベストミックス案では、原子力発電のシェアは20~22%。現在の1%を大きく上回り、政府の試算でも、温室効果ガスの削減において原子力発電の役割が期待されていることが分かります。しかし、「日本の温室効果ガスの排出量削減に期待できると思う方法」に対して「原子力発電の利用」と答えた人は、僅かに15%でした。決して多い結果とは言えません。原子力発電の本来の温室効果ガスの削減効果を考えると、十分な評価を得られていないというのが実情だと言えるでしょう。

◆ 温室効果ガス削減に期待される「原子力発電」&「太陽光発電」… 両者の理解の差が明らかに!
 
前述の通り、温室効果ガスの排出量削減のためには電源構成のベストミックスが重要なポイントになります。しかし、本来注目されるべき、温室効果ガスの排出量が少ない「原子力発電」と「太陽光発電」という2つの発電方法への期待値は大きく異なりました。ここでは、こうした期待値の違いの要因を探ります。期待値の差を生んでいる一因としては、原子力発電の事故リスクなどもあるでしょう。しかし、原因はそれだけなのでしょうか。それを探るため、「発電方法のイメージ」をそれぞれ複数回答形式で答えてもらいました。

「原子力発電」と「太陽光発電」のイメージには、大きな違いが見られました。太陽光発電については、「自然環境に与える影響が小さい」(75%)、「人の健康に与える影響が小さい」(75%)という回答が突出して多いことが分かります。環境や健康へのリスクが小さいというのが、太陽光発電の最大のイメージのようです。一方で、「温室効果ガスの排出量が少ない」の回答率を比較してみると、「太陽光発電」が70%だったのに対して、「原子力発電」は36%で、およそ半分にとどまります。温室効果ガスの排出量にフォーカスするのであれば、原子力発電は太陽光発電に必ずしも劣ることはありませんが、その理解は十分には得られていないようです。

そこで、「原子力発電所に関して、あなたが知りたいと思うこと」を複数回答形式でたずねたところ、上位に並んだのは「安全対策」(59%)、「廃棄物処理・処分」(56%)、「放射能の影響」(53%)、「被爆リスク」(52%)と、いずれもリスクに関する項目でした。東日本大震災以降、原子力発電はリスクが大きいものというイメージがあるようです。その結果、メリットへの理解が妨げられてしまっているという一面もあるでしょう。原子力発電については、安全対策やリスク管理について十分な発信を行い、徐々に正しい理解を広げることが重要です。

しかし、リスクがあるのは原子力発電ばかりではありません。例えば、顕在化していない一面もあるものの、気候変動を引き起こしかねない地球温暖化のリスクは非常に大きなものだと言えます。また、ここ数年間の電気料金の値上げの流れが続けば、経済的なリスクとなりかねません。こうした様々なリスクに対して、そのメリットも考慮しつつ総合的に評価することが求められます。それぞれの発電方法のメリットとデメリットを組み合わせて、リスクを最小化するベストミックスを実現するためにも、それぞれの発電方法に関する正しい理解やリスクへの適切な対処方法が検討されなければなりません。


【調査概要】
調査名 : 日本における気候変動や地球温暖化対策への意識に関する調査
調査対象 : 20歳~59歳の男女500名 (※性別・年代別に均等割付)
 ⇒ 20代男性:62名、30代男性:63名、40代男性:63名、50代男性:62名
 ⇒ 20代女性:63名、30代女性:62名、40代女性:62名、50代女性:63名
調査期間 : 2015年6月10日(水)~2015年6月12日(金)
調査方法 : インターネット調査
調査実施機関 : 楽天リサーチ株式会社

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[トレンド総研]
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