主要日本人アスリートの魅力度分析(生活意識調査) 

2015年06月03日
ブランドコンサルティング会社のリスキーブランドは、同社が2008年から実施している生活意識調査MindVoice(R)調査(約4,000サンプル / 年)を用いて行なった「主要日本人アスリートの魅力度分析」について報告。

【調査サマリー】

1)「錦織圭」の魅力度はこの1年で1.8倍に。

2)特に「錦織圭」に魅力を感じているのは、アッパーミドル層と55歳以上女性。

3)いわゆるスポーツファンとは異なる「錦織圭」のファン層。彼らは、ロマンチック、楽天的、優柔不断。


【調査結果】

1.「錦織圭」の魅力度はこの1年で1.8倍に。
Chart1は、2010年から2015年における主要日本人アスリートの魅力度の推移を示したものです。
2010年には2.8ポイントに過ぎなかった「錦織圭」の魅力度は、2015年(2月)には13.5ポイントまで上昇。特にこの1年で約1.8倍にまで増加しました。

「錦織圭」が世界の檜舞台に初登場したのは2008年。弱冠18歳で世界ツアー優勝、日本人男子71年ぶりとなる全米選手権ベスト16入りを果たすなど際立った成績を上げた2年後の2010年も「錦織圭」の魅力度は2.8ポイントに過ぎませんでした。それ以降も錦織選手の活躍に伴い「錦織圭」の魅力度は増加しましたが、それでもテニス愛好家など一部のファン以外での魅力度は、錦織選手の実績に比して決して高いものではありませんでした。
ブランドとしての「錦織圭」がブレークしたのは2014年。2014年の8月、錦織選手は世界ナンバーワン(当時)のノバク・ジョコビッチに勝利し日本人初となる全米選手権シングルス決勝に進出、ジャパンオープンでの優勝、11月には世界の上位8人しか出場できないATPワールドツアー・ファイナルという最高峰の舞台でベスト4進出するなどし、その年の世界ランキングで5位にまで躍進しました。こうした際立った実績がきっかけとなってマスコミが大きく取り上げ始めたことが大きいと推察されます。

2015年の「錦織圭」の魅力度は、それまで圧倒的な魅力度を誇っていた「イチロー」と肩を並べるスコアになっています。アスリートとしてのイチロー選手の評価が色褪せることは決してないものの、ブランド力という観点では、2015年2月時点で「錦織圭」は「イチロー」に並んだことを意味します。今後更に活躍が予想される錦織選手のブランド力は上昇すると予想されます。また、錦織選手の活躍の舞台が日本やアメリカなどと限定された地域ではなく、北南米、欧州全域、中国やアジアというグローバルであることを考えると、グローバルブランドとしてのブランド価値が期待されます。グローバル化を推進する国内外の有力各社が錦織選手のスポンサーとして名乗りを上げているのも、グローバルブランドとしての「錦織圭」への期待からくるものかもしれません。

2.特に「錦織圭」に魅力を感じているのは、アッパーミドル層と55歳以上女性。
Chart2-aは、世帯年収別にみた主要日本人アスリートの魅力度の違いを示したものです。

「錦織圭」の魅力度は、世帯年収1,000万円以上のアッパーミドル層で最も高いスコアを示しています。

「錦織圭」はアッパーミドル層に対して2割増しの魅力を与えていますが、これは明らかに他の日本人アスリートとは異なる傾向です。

もしかしたら、それはテニスというスポーツの特性からくるものかもしれません。テニスは多くの国や地方で富裕層やアッパーミドル層のファンが多いと言われることが多いようです。
海外に目を移すと、プロテニス選手が(スポーツ用品以外で)高級ブランドのブランド・アンバサダーとして起用される場合が少なくありません。「ロジャー・フェデラー」のROLEX、Mercedes-Benz、MOET & CHANDON、CREDIT SUISSE、「マリア・シャラポワ」のTIFFANY & Co.、TAG Heuerなどが有名です(それぞれ2015年5月時点)。もちろん、キャラクターイメージだけではなくテニスの歴史的にも際立った実績を誇る彼らと「錦織圭」を比べることはできませんが、「錦織圭」は、これまでのいわゆる日本人アスリートとは一線を画するブランド価値を有しているのかもしれません。

もうひとつ、「錦織圭」の特徴的なポイントは、特に55歳以上の女性に対する「錦織圭」の訴求力の強さです。Chart2-bは、性・年代別による違いを示したものです。

55歳~64歳女性が感じる「錦織圭」の魅力度は22.0ポイントと、35~44歳男性(9.1ポイント)の2倍以上のスコアを示しています。55歳以上女性は、子供が巣立ったライフステージに相当する人が多いと推測されます。彼女たちは、もしかしたら、錦織選手をアスリートとしての魅力と同時に「こんな息子がいたら…」という母性本能が刺激され、彼女たちにとって錦織選手の魅力が倍増しているのかもしれません。

「錦織圭」とほぼ逆のパターンを示しているのが「イチロー」です。「イチロー」に魅力を感じているのは男性全般、特に25~34歳男性が多いようです。25~34歳男性にとって、イチロー選手は彼らが少年時代のアイドルだったでしょうし、アスリートとしての全盛期を過ぎても、彼らはイチロー選手の人間性や大人としての魅力を感じているのかもしれません。

他の日本人アスリートと異なり、アッパーミドル層と55歳以上女性にアピールしている「錦織圭」は、これまでの日本人アスリートとはやや性格が異なるブランド価値を有していると言えるでしょう。

3.いわゆるスポーツファンとは異なる「錦織圭」のファン層。彼らは、ロマンチック、楽天的、優柔不断。
アッパーミドル層や55歳以上女性に強くアピールしている「錦織圭」。「錦織圭」は独自のファン層を獲得しているようです。そこで、ファン層の価値観やライフスタイルを分析することで、「錦織圭」のブランド価値を探ってみました。ここでは、これまでの代表的な日本人アスリートを仮に「イチロー」とし、両者のファン層の違いをまとめました。

「錦織圭派」と「イチロー派」の価値観・ライフスタイルの違いは、少なからず男女比の違いが影響しているようです。

まず価値観特性(*注1参照)を見てみると、「錦織圭派」は『ロマンチック、楽天的、優柔不断』といった傾向が、一方で「イチロー派」は『メカ好き、リスクテイク、自分の隠れ家』といった傾向があるようです。キャラとしては、前者が『元気のある、明るい、きさくな』、後者が『こだわりがある、知的な、もの静かな』といったキャラを自認しているようです。

次に、商品・サービスに期待することを見てみると、「錦織圭派」は『豊かな気分が味わえる、気分転換できる、夢中になれる』ものを求める傾向が、一方で「イチロー派」は『刺激が得られる、知的好奇心が満たされる、時代を先取りできる』ものを求める傾向があるようです。好きな食品では、それぞれ前者は『チーズ、牛乳、果物』、後者は『即席カップ麺、炭酸飲料、焼酎』を好むようです。

男らしさ・女らしさについての意識も違いが見られます。「錦織圭派」は、男らしさを『包容力がある、優しい、冷静な』と、女らしさを『豊かな感性、勘が鋭い、ほがらかな』と考えていますが、一方で「イチロー派」は、男らしさを『自己犠牲をいとわない、忍耐強い、誇り高い』と、女らしさを『かわいい、美しい、忍耐強い』と考えているようです。

仮に、(「イチロー派」に代表される)これまでのいわゆるスポーツファンが、こだわりをもち刺激を求める、男性的なタイプとすれば、「錦織圭派」は、ロマンチックで楽天的な、女性的なタイプと言えるでしょう。

2014年全米選手権のプレスインタビューで、何の気負いも感じさせない静かな口調で「勝てない相手も、もういないと思うので…」と淡々と語った錦織選手も、見方によってはロマンチックで楽天的なタイプなのかもしれませんし、「錦織圭」は、日本におけるスポーツという概念を変えるキッカケになる存在なのかもしれません。

*注1.価値観特性:リスキーブランド社が開発した価値観分析手法。生活者の価値観を分析するために50の価値観要素を設け、それぞれに対応した設問文の回答結果による比較分析を行なうもの。

【MindVoice(R)とは】
MindVoice(R)は、ブランド戦略コンサルティングを行う株式会社リスキーブランドと、ネットリサーチの大手マイボイスコム株式会社との共同調査です。毎年約4,000サンプルの定量調査から得たデータベースを基に、商品企画やコミュニケーションなど企業のマーケティング戦略を支援するプログラムです。
調査地域:全国
調査対象:15~64歳の日本人男女(世帯年収300万円以上)
調査手法:インターネット調査
調査時期:2月(2014年までは5月)
有効回答:約4,000サンプル/年

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[リスキーブランド]
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