糖尿病網膜症の予防に関する糖尿病患者調査 

2015年04月23日
バイエル薬品と参天製薬は、2型糖尿病患者さん1,000 名を対象に、糖尿病網膜症の予防に関する実態と意識を把握し、今後の患者支援の参考とすべく、東京女子医科大学 糖尿病センター眼科 教授の北野滋彦先生のご監修のもと調査を実施。

糖尿病の3大合併症の一つである糖尿病網膜症は、進行すると失明にもつながる深刻な疾患です。一方で、ものを見るために最も重要な働きをする黄斑部(網膜の中心部)が障害されるまで視力への影響が出にくく、見えにくいなどの自覚症状が出てからの眼科受診では治療が困難な場合もあります。今回の調査結果においても、網膜症診断時に「見えにくいなどの自覚症状は全くなかった」という人が糖尿病網膜症罹患者(n=56)の37.5%に及びました。網膜症の発症と重症化を予防し、糖尿病患者さんにおける失明リスクを軽減するためには、血糖コントロールなどの糖尿病治療の継続はもちろん、糖尿病診断後の早期眼科受診とその後の適切な頻度での眼科定期受診が非常に重要です。そこで、今回の調査では、糖尿病患者さん自身が網膜症の発症や重症化の予防に積極的に取り組むために、眼科医や糖尿病治療医からのどのような働きかけが有効であるかを聞きました。

「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」(日本糖尿病学会)では、網膜症発症と進展のリスク因子として、①糖尿病の罹患期間が長い、②HbA1c(ヘモグロビンA1c)高値、③高血圧症の合併などが挙げられていますが、今回の調査対象者(n=1,000)においては以下のような状況でした。

・糖尿病罹患期間が10 年以上の人: 45.7%
・HbA1c 値7%以上の人: 44.9%
・高血圧症を合併している人: 42.0%

◆糖尿病の診断を受けたにもかかわらず、これまでに眼科を受診していない、もしくは1 年以上たってから受診した人が合わせて半数以上。さらには、約20%の人は眼科受診を中断。眼科受診の重要性について、啓発不足と患者さんの認識不足がうかがえる

糖尿病診療ガイドラインでは網膜症発症と進展のリスク因子として、初診時に重症な網膜症を認めることも挙げられています。「糖尿病網膜症は初期のみならず、進行した段階においても自覚症状を欠くことが多い」ことから、同ガイドラインにおいても糖尿病診断時の眼科受診が推奨されています。それにもかかわらず、今回の調査結果では、糖尿病の診断を受けてからいまだに網膜症検診のための眼科受診に至っていない、もしくは1 年以上たってから受診した人が60.9%を占めています(「受診していない」(23.9%)+「1~5 年以内に受診」(22.6%)+「5 年以上経ってから受診」(14.4%))。糖尿病の診断を受けたにもかかわらず眼科を「受診していない」としている人は、その理由を、「糖尿病治療医から眼科を受診するように言われなかったから」(48.5%)、「特に理由はない」(24.7%)、「日常生活に支障がでていなかったから」(22.2%)と回答しています。

さらに、同ガイドラインでは「少なくとも年1 回の(眼科)定期受診が望ましく、リスクの高い例ではより短い間隔での眼科受診が勧められる」とされていますが、今回の調査結果では1 年に1 回以上受診している人は53.8%にとどまり、22.3%は受診を中断しています。中断の理由としては、「眼科医や糖尿病治療医から眼科の受診を続けるようにと言われなかったから」(28.7%)、「前回の眼科受診の際、眼科医より『目は大丈夫』と言われたから」(26.9%)、「特に理由はない」(19.7%)が上位に挙がっており、眼科の受診やその継続においては医師の勧めや指示に依存する傾向がうかがえます。また、眼科を受診しないこと、受診を中断していること、いずれにおいても「特に理由はない」とする人が多数見られることについて、北野先生は「網膜症による視力や日常生活への影響の深刻さやその予防の重要性を自分事として十分な危機感を持って捉えきれていないことが背景にあると考えられます。糖尿病を罹患していること自体が網膜症を引き起こす要因であり、すべての糖尿病患者さんに網膜症発症リスクがあります。血糖コントロールや眼科検査の結果が一時的に良好であっても、網膜症の発症や進展には常に観察が必要です」と述べています。

なお、糖尿病と診断されたら、年1 回以上の眼科受診が必要であることを知らなかった人は46.9%と半数近くに上り、患者さんがきちんと認識するまでの情報提供に至っていない実態が示唆されました。

◆患者さんの理解を促す早期からの十分な情報提供と、眼科医と糖尿病治療医の連携をベースとした具体的な行動支援の重要性が明らかに

患者さん自身が糖尿病網膜症の発症・重症化の予防に取り組む動機づけとなりうる医師からの働きかけとして、「疾患や治療意義への理解を促す情報提供」と「具体的行動支援や心理的サポート」に当てはまるそれぞれの項目について、その有効性を聞いたところ、深刻さを含む網膜症理解につながる情報提供や眼科受診の意義についての情報提供が患者さんのモチベーション維持に効果的である可能性がうかがえるとともに、眼科医と糖尿病治療医の連携をベースとした、スムーズな眼科受診に向けた行動支援も求められていることがわかりました。「かなり積極的に取り組もうという気持ちになる」「ある程度なる」と回答した人の割合が多かった項目は以下の通りです。

患者さんの理解を促す早期からの十分な情報提供
下記についてよく理解できるまで眼科医や糖尿病治療医から十分な説明がある
2 位: 網膜症が進行すると失明する危険性があること(70.5%)
3 位: 高血糖が続くとなぜいけないかなど、糖尿病から網膜症が起こるしくみ(69.7%)
6 位: 適切なタイミングで網膜症の治療が受けられるよう、血糖コントロールが良好でも眼科を定期的に受診した方がいいこと(67.9%)
8 位: 目が見えにくくなることで、仕事が続けられなくなったり、日常生活が不便になること(67.1%)

眼科医と糖尿病治療医の連携をベースとした具体的な行動支援
1 位: 眼科への定期的な受診を、かかりつけの糖尿病治療医から勧められる(76.8%)
4 位: 眼科での予約取得や検査・診察がスムーズである(68.8%)
5 位: 眼科への定期的な受診を、かかりつけの眼科医や受診した眼科医から勧められる(68.2%)
7 位: かかりつけの糖尿病治療医から、適切な眼科を具体的に紹介してもらえる(67.5%)

◆十分な情報提供・啓発と、さらに踏み込んだ検診体制・診療連携が今後の課題として浮き彫りに

併せて、糖尿病網膜症の発症や重症化の予防に取り組むために周囲に求めることを自由回答で聞いたところ、医師からわかりやすい言葉で説明してもらうこと、現状の定量的説明、症状や体験談などがわかる映像、待合室で読める網膜症に関するパンフレットや啓発ポスター、糖尿病や網膜症の深刻さについてのメディア報道を通じた啓発や市民向け講座など、患者さんの求める啓発と情報提供の内容が具体的に挙げられました。加えて、公的な眼科無料検診の実施、健康診断への眼科検査項目の組み込み、内科でできる簡易眼科検査、眼科・内科の両科受診の簡便化や両科受診が必須となる仕組み作りなど、検診や診療における一歩踏み込んだ体制づくりや連携の必要性に対する提案が見られました。

◆相談窓口や医師からの配慮、医師以外の医療スタッフによるサポートを求める声も

一方で、「看護師、栄養士、薬剤師、検査技師等、眼科医や糖尿病治療医以外の医療スタッフによる情報提供やサポート」、「眼科医からの心理的サポート」に当てはまる項目についても、肯定評価が過半数に上りました。さらに自由回答からは、薬剤師からのアドバイス、栄養士による栄養指導、生活習慣を相談できるカウンセラーなど医師以外の医療スタッフによるサポートを求める声や、医師からのやさしい言葉がけやねぎらい、通院や治療の苦労に対する理解、気軽に相談できる体制など、医師の配慮・心理的サポート・相談機会に対する要望が改めて挙げられました。

この調査の結果を受けて、北野先生は次のようにコメントしています。「糖尿病の合併症である網膜症は失明にもつながる深刻な病気です。糖尿病と診断されたらなるべく早期に眼科を受診し、現時点での網膜症の有無やその病状を確認した上で、今後の治療方針を決定する必要があります。見えにくいなどの自覚症状が出てから眼科に来られる患者さんが多くいらっしゃいますが、その場合は治療のタイミングを逸しているケースもあります。糖尿病患者さんの失明予防に対する意識を向上させるためには、調査結果で見られたように、眼科医と糖尿病治療医が連携して広く啓発や情報提供を行うとともに、糖尿病患者さんの眼科受診とその継続に向けた具体的な支援を行っていくことが非常に重要となります」


【調査概要】
調査主体 バイエル薬品株式会社・参天製薬株式会社
調査内容 糖尿病網膜症の予防に関する糖尿病患者さんの実態・意識調査
調査対象 過去に「2 型糖尿病」と診断されたことがあり、現在糖尿病治療の為に通院している方
有効回答 20 歳~79 歳の男女1,000 名
調査時期 2015 年3 月26 日(木)~3 月27 日(金)
調査方法 インターネット調査
監修者 東京女子医科大学 糖尿病センター眼科 教授 北野滋彦 先生

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