日本の『電力・エネルギー』に関する意識・実態調査 

2015年03月17日
生活者の意識・実態に関する調査を行うトレンド総研は、20代~50代の男女500名を対象に「日本の『電力・エネルギー』に関する意識・実態調査」を実施。本調査では、東日本大震災から丸4年経った“今”の人々の「電力・エネルギー問題」への関心度の変化や理解度を探りました。

【調査結果】

◆ “高まる関心”と“低い理解”、複雑な「電力・エネルギー問題」に、「理解できている」は僅か12%
 
はじめに、「東日本大震災後に、『電力・エネルギー問題』に関する行動に変化はありましたか?」と聞くと、「変化があった」と回答した人は71%と、7割を超えました。無意識の内に使われることの多い電気にまつわる「電力・エネルギー問題」なので、きっかけがなければ、普段はなかなか意識されることはありません。日本の電力事情の大きな転換点となった東日本大震災ですが、「電力・エネルギー問題」について人々に考えるきっかけにもなったようです。

また、先ほどの質問に「変化があった」と回答した人に「具体的にどのように行動が変わりましたか?」とたずねたところ、最も多かった回答は「電力・エネルギーに関する情報やニュースが気になるようになった」(81%)。以下、「エネルギーや電力に関する情報やニュースを積極的に見るようになった」(31%)、「エネルギーや電力について、周囲の人と議論したことがある」(21%)と続きます。[グラフ2] 自ら情報収集をするというのはもちろん、周囲の人とも積極的に意見交換をしている人も多く見られました。「電力・エネルギー問題」について、“知りたい”、“知ってもらいたい”という意識の拡がりが見受けられます。

しかし、その一方で、今回の調査において、「『電力・エネルギー問題』について、分かりやすい情報を手に入れられていると思う」という人は9%。「『電力・エネルギー問題』について、客観的な情報を手に入れられていると思う」という人も9%にとどまります。経済、資源、環境など、複数の領域にまたがるのが、「電力・エネルギー問題」の特徴です。関係者も多方面にわたり、その間には複雑な利害関係が絡み合うことも少なくありません。同じ事実でも、見る人の立場が異なれば、全く違う見解を生むこともあるため、分かりやすい情報や、正しい情報を手に入れることが難しいとも言えるでしょう。
その結果、今回の調査でも、「『電力・エネルギー問題』について、十分に理解できていると思いますか?」という質問に対して「理解できていると思う」という人はわずかに12%にとどまりました。東日本大震災をきっかけに関心を高めている「電力・エネルギー問題」ですが、その複雑さ故に、十分な理解ができているという人はそれほど多くないようです。

◆ 火力発電の正解率は僅か2%! 人々のイメージと異なる「電力構成比」、信頼するメディアによる回答傾向も
 
こうした傾向をよく反映しているのが、次の「電力構成」に関する質問です。2013年度における、日本の発電方法別の電力の割合は、以下の通りです。

≪2013年度の電源別発電電力量構成比≫
火力発電:88.3%  水力発電:8.5%  原子力発電:1.0%
地熱、および、新エネルギー(太陽光発電など):2.2%
※ 電気事業連合会の発表より引用
 
稼働を停止しているため原子力発電の割合は少なく、その発電量を補っている火力発電の割合が非常に多くなっているというのが、大きな特徴です。
今回の調査では、これらの電力構成に対して、各発電方法の発電量の割合がどの程度を占めるかを予想してもらいました。その結果、全回答者の回答の平均を調べると、「火力発電は42.7%」、「水力発電は19.3%」、「原子力発電は29.7%」、「地熱、および、新エネルギーは12.4%」となりました。いずれの発電方法においても、回答者のイメージと実際の電力構成比には大きな隔たりがあることが分かりました。

また、正しく答えられている人の割合も、水力発電で19%、原子力発電で20%、地熱、および、新エネルギーで33%と、いずれも低い正答率にとどまります。特に、火力発電については正答率が2%のみ。およそ9割に迫る火力発電への依存度について、その実態を把握している人はごく僅かです。「電力構成」というテーマにおいては、各発電方法に対して、実際とは異なる誤ったイメージを持っている人も少なくありません。
さらに、こうした各発電方法の発電量のイメージが、普段見ているメディアによりどのように異なるのかを探りました。

今回の調査において、5大メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット)の内、「最も信頼しているメディア」を答えてもらったところ、上位3位は「テレビ」(38%)、「新聞」(29%)、「インターネット」(29%)で、これらの回答者を合計すると96%を占めます。そこで、これら3メディアに限定して、電力構成の予想結果を比較したところ、「テレビを最も信頼しているメディア」とした人は「原子力発電」と「地熱、および、新エネルギー」が多いと予想。一方、「インターネットを最も信頼しているメディア」とした人は「火力発電」を多いと予想し、「新聞を最も信頼しているメディア」とした人は両者の間の予想をしています。「電力・エネルギー問題」に関する論調は、テレビ、新聞、インターネットで異なります。このようにメディアで触れる情報の違いは、人々の「電力・エネルギー問題」に関するイメージの形成に少なからず影響を与えていると言えるでしょう。

◆ 関心度最下位の「温室効果ガスの排出問題」、高い課題意識とは裏腹の理解度の低さも明らかに

 
最後に、温室効果ガスに関する人々の問題意識や課題の認知度について調べました。東日本大震災後、火力発電への依存度が高まったため、化石燃料の使用量は急速に増加しました。それに伴い増加しているのが、温室効果ガスの排出量です。前段では、火力発電の依存度の増大に対して正しく認識している人は僅かでしたが、この温室効果ガスに関する問題に関する理解はどのようなものなのでしょうか。

まず、「電力・エネルギー問題」に関する5つのテーマを提示した上で、その関心度をたずねたところ、関心を示した人が多かったのは、「原子力発電のリスク」(83%)と「電気料金の値上げ」(82%)という2つのテーマ。一方で、「太陽光発電などの再生可能なエネルギー」(77%)、「省エネ家電や水素自動車などを生み出す新技術」(75%)と続き、最も関心度が低かったのが、「温室効果ガスの排出量拡大」(65%)でした。関心を示した人の割合は決して少なくありませんでしたが、その他の「電力・エネルギー問題」に関するテーマと比較すると、注目度の低い話題であることが分かりました。

こうした傾向はこの課題に対する理解度とも紐付きます。「CO2などの温室効果ガスの排出量は減らしていかなければならないと思う」という人は83%にのぼる一方で、「東日本大震災後、日本の温室効果ガスの排出量が増加していることを知っている」という人は55%と半数程度。さらに、「温室効果ガスの排出量増加により、国際社会で日本を非難する声もあることを知っている」という人は50%にとどまりました。高い課題意識とは裏腹に、現状の温室効果ガスの課題に
対する理解度は高いとは言えないでしょう。

【調査概要】
調査名 :日本の『電力・エネルギー問題』に関する意識・実態調査
調査対象 : 20歳~59歳の男女500名(※ 性別・年代別に均等割付)
 ⇒ 20代男性:62名、30代男性:63名、40代男性:63名、50代男性:62名
 ⇒ 20代女性:63名、30代女性:62名、40代女性:62名、50代女性:63名
調査期間 : 2015年2月20日(金)~2015年2月25日(水)
調査方法 : インターネット調査
調査実施機関 : 楽天リサーチ株式会社

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[トレンド総研]
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