賃上げに関するアンケート調査(労・使の当事者および労働経済分野の専門家対象) 

2015年01月29日
民間調査機関の労務行政研究所では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、「賃上げに関するアンケート調査」を労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施している。このほど、2015年の調査結果がまとまった。

これによると、15年の賃上げ見通しは、全回答者504人の平均で「6788円・2.18%」(定期昇給分を含む)となった。厚生労働省の昨14年主要企業賃上げ実績(6711円・2.19%)と同水準という予測である。労使別に見た平均値は、労働側6867円・2.21%、経営側6507円・2.08%である。
また、自社における15年の定期昇給については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が9割程度とほとんどである。一方、ベースアップについては、経営側では「実施する予定」35.7%、「実施しない予定」37.6%となった。例年、ベア実施には慎重な姿勢を示す経営側であるが、「実施する予定」の割合は14年16.1%、15年35.7%と増加傾向にある。労働側では、ベアを「実施すべき」が70.5%と7割を占めた。

【調査結果のポイント】

1 実際の賃上げ見通し
・全回答者の平均:6788円・2.18%で、昨14年実績と同水準との予測
・労使の見通し:労働側6867円・2.21%、経営側6507円・2.08%

●額・率の見通し
15年の賃上げ見通しを東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安とした世間相場の観点から回答いただいたところ、全回答者の平均で6788円・2.18%となった。厚生労働省調査における主要企業の昨14年賃上げ実績は6711円・2.19%であり、これと同水準との予測である。
労使別では、労働側6867円・2.21%、経営側6507円・2.08%となった。本アンケートにおける「実際の賃上げ見通し」は、ここ数年、労働側と経営側の平均値が極めて近接した水準で推移していた。昨14年は企業業績の回復、政府の賃上げ要請などもあって社会的にも賃上げムードが高まる中、労使の見通しには開きが生じる結果となったが、15年はその差はやや縮小している。
賃上げ率の分布は、労使とも「2.0~2.1%」が3割弱で最も多く、2.0~2.5%の範囲に、労働側では4割台、経営側では5割超が集中している。各種調査による大手企業の“定期昇給率”は平均で1.6~1.8%程度とみられ、今回の調査の前提としては定昇率を「1.8%程度」と提示している。調査結果から、定昇にどれだけのベアを積むかが交渉の争点になるものとみられる。

2 自社における2015年定昇・ベアの実施
※前項の「実際の賃上げ見通し」は、“世間相場”の観点から一般論として回答いただいたものであるが、ここでは自社における来る交渉に向けた考えを尋ねた。
・定昇の実施:労使とも「実施すべき」「実施する予定」が9割程度とほとんどを占める
・ベアの実施:経営側の「実施する予定」は35.7%、労働側の「実施すべき」は70.5%

●定昇の実施
アンケートでは、賃上げ額・率の世間一般的な見通しに加え、自社における賃金制度上の定期昇給(賃金カーブ維持分を含む)および業績等に応じたベースアップ(賃金改善分を含む)の実施についても労使双方に尋ねた(なお、労働側・経営側の回答者は、それぞれ異なる企業に属しているケースが多い点に留意いただきたい)。
15年の定昇については、労働側90.0%、経営側87.3%と9割程度が「実施すべき」「実施する予定」と回答。経営側の「実施しない(凍結する)予定」は1.9%(3人)にとどまった。実質的な賃金制度維持分に当たる定期昇給については、労使ともほとんどが実施する意向を示している。

●ベアの実施
ベアに関しては、経営側では「実施する予定」35.7%、「実施しない予定」37.6%で、拮抗する結果となった。一方、労働側では、ベアを「実施すべき」が70.5%と7割を占めた。
各年においてベアを「実施すべき」または「実施する予定」と回答した割合の推移を示している。10年以降、先行き不透明な経済経営環境から、労使ともベアの実施には否定的な傾向が続いていたが、14年は、労働側は一転、実施派が主流となった。例年、ベア実施には慎重な姿勢を示す経営側も、14年16.1%、15年35.7%と「実施する予定」の割合は増加傾向にある。
経営側に自社における14年のベアの実績を尋ねたところ、「実施した」は51.0%であった。集計対象(回答者)が異なるため厳密な比較ではないが、14年の経営側のベア「実施予定」は16.1%であり、実際にはこれを大幅に上回る企業がベアを実施したことになる。
今回の集計対象における14年実績と15年の予定を併せて見ると、14・15年とも“実施しない”が31.2%で最も多いものの、両年とも“実施”も26.8%と4社に1社に上った。

3 2015年夏季賞与水準の見通し
※自社における15年夏季賞与水準の見通しを尋ねた。
・夏季賞与の見通し:前年夏季と「同程度」が5割台だが、「増加する」も4社に1社

●夏季賞与の見通し
前年(14年)夏季と比べて「同程度」が労働側で54.0%、経営側で56.1%といずれも5割台を占める結果となった。各機関集計による昨14年の夏季賞与支給実績(主要企業)は製造業を中心に前年同期比増加となったが、15年についても引き続きこれと同水準になるとの見方である。
また、労働側では26.5%、経営側では24.8%が「増加する」としており、「減少する」はそれぞれ18.0%、11.5%であった。産業別に見ると、「増加する」の割合は労使とも製造業のほうが高い。


【調査概要】
・調査時期:2014 年 12 月 8 日~2015 年 1 月 14 日
・調査対象:被調査者 6079 人(内訳は下記のとおり)
 ◇労働側 東証第 1 部および 2 部上場企業の労働組合委員長等 2135 人(労働組合がない企業は除く)
 ◇経営側 東証第 1 部および 2 部上場企業の人事・労務担当部長 2250 人
 ◇労働経済分野の専門家 主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど 1694 人
・回答者数および集計対象:1 月 14 日までに回答のあった合計 504 人。
 対象別内訳は、労働側 200 人、経営側157 人、労働経済分野の専門家 147 人

詳しいリサーチ内容はネタ元へ
リンク先リサーチPDF
[労務行政研究所]
 マイページ TOP