産業能率大学は、中小企業の経営者を対象に2015年の経営環境認識や経営方針・施策などを尋ねる調査を実施。調査はインターネット調査会社を通じて実施し、従業員数6人以上300人以下の企業経営者(経営トップ)635人から回答を得た。

【全体総括】

今年(2014年)の中小企業は、消費税率の引き上げにより経営活動に大きな影響を受けた。加えて、深刻さを増しているのが人材不足。中途採用で即戦力を確保したいとする経営者が多いなか、半数以上が今年の採用活動全般の実感として“例年より厳しい状況であった”と回答。
来年(2015年)の経営施策の上位は「営業力の強化」「利益率の向上」「市場シェアの拡大」と積極的な施策が並んだ。また、常態化する人材不足を背景に、来年の施策として「従業員の新規採用」をあげた割合が2010年の調査開始以来最高に。

【調査結果】

1.経営活動

1-1.2014年の経営活動について
今年の経営活動を振り返ってもらったところ、影響が大きかった要因として「消費税率の引き上げ」(56.7%)が最も多く、これに「人材の不足」(45.2%)、「国の政策の変化」(42.2%)が続いた。増税後の買い控えや増税分の価格転嫁など、熾烈な価格競争の渦中にある中小企業経営者にとっての影響は大きかったようだ。
経年で見ると、「人材の不足」(45.2% 前年比+11.0㌽)、「原材料コストの増大」(27.7%前年比+5.2㌽)がいずれも過去最高となった。「需要の不足」は昨年(2013年)調査で大きく減少し、今年も同水準であることから需要に関しては回復傾向にあると見ているようだ。

1-2. 2015年の経営活動について
来年の経営活動において、影響を与えると想定している要因を尋ねたところ、「人材の不足」(46.5%)が最多となり、前年と比較しても14.5ポイントの増加となった。およそ半数の中小企業経営者は人材不足が来年も続くと見ており、経年で比較しても「人材の不足」は増加傾向にあり、今回過去最高の数値となった。次いで「国の政策の変化」(44.1%)、「消費税率の引き上げ」(43.6%)だった。消費税率10%への引き上げ延期が決まったが、中小企業への支援策も含めて国の政策に中小経営者は高い関心を持っている様子がわかる。
経営者として2015年に取り組みたいことは「営業力の強化」(35.9%)、利益率の向上(35.3%)、市場シェアの拡大(34.0%)と、積極的な施策がならんだ。前年から大きく増加したのは、「従業員の新規採用」で+3.8㌽、「新規事業への進出」(+1.7㌽)、「他企業との戦略的提携」(+1.4㌽)と積極施策が増加している。人材不足を背景として「従業員の新規採用」に取り組みたいとする回答は17.6%となり過去最高となった。

2.採用活動

2-1. 新卒採用について
来春(2015年)の新卒採用予定について尋ねたところ、「ある」(24.3%)、「ない」(75.7%)となり、およそ4社に1社が採用を予定していると答えた。経年で見ると「ある」と答える割合は年々増加傾向にあり、前年の過去最高24.5%と同水準の高い数値となった。新卒の採用意向は高まっているものの、実際の採用人数について尋ねた結果では、「予定どおりの人数を確保できた」が51.3%と半数を占めたものの、「予定を下回る人数しか確保できなかった」(38.3%)となり、およそ4割の中小企業が予定の採用人数に満たない状況であった。

2-2. 中途採用について
今年(2014年)の中途採用の実施状況について尋ねたところ、「中途採用を行った」(30.9%)、「まだ採用活動を続けている」(24.9%)となり合わせて55.8%が中途採用を行ったと回答した。2014年に中途採用を実施した(継続している企業)に、中途採用人数について尋ねたところ、「予定どおりの人数を確保できた」(62.8%)となった。「予定を下回る人数しか確保できなかった」とする回答は31.1%となり、新卒同様に予定人数を確保できない企業が目立った。
中途採用の理由について尋ねたところ、「即戦力となる人員を確保したいため」(57.3%)、「人員が不足しており、人員を増加するため」(52.5%)が過半数となった。来年(2015年)の中途採用予定については、55.7%が「ある」と回答し、半数以上が即戦力確保と人員不足解消につなげたい意向があるようだ。

2-3. 採用全般について
強化している採用施策について尋ねたところ、「中途採用」が最も多く33.4%、次いで「大卒採用」(21.4%)、「高卒採用」(15.1%)、「女性採用」(13.4%)と続いた。それぞれ採用施策を強化している理由を自由記述で尋ねたところ、中途採用では「即戦力確保」という意見が目立ち、「教育にかけられる費用や日数が限られる」という意見もあった。
今年(2014年)の採用活動全般を通じた実感については、「例年と比べ人員確保が難しい状況であった」(55.6%)、「例年と大きな変化は感じられなかった」(38.4%)、「例年と比べ、採用しやすい状況であった」(6.0%)となり、新卒・中途採用ともに採用予定人数に満たないとする中小企業が多いなか、人員確保が厳しいという認識が多数派となった。来年(2015年)の採用活動全般の見通しについては、「人員確保が難しくなると思う」(50.1%)、「大きな変化はないと思う」(45.8%)、「採用しやすい状況になると思う」(4.1%)となり、採用活動全般が好転すると見立ては少ない。

3.女性活躍推進

3-1. 女性管理職割合
女性活躍推進策が進むなか、女性管理職の割合について尋ねた。結果は「0%」が41.3%、「1~10%」が28.8%となり、調査した中小企業では、女性管理職が1割以下の企業が7割を占めた。

3-2. 女性の活躍推進取り組み状況

女性活躍推進の取り組み状況を尋ねたところ「特に取り組みを行っていない」(46.0%)が最多。次いで「今後推進していく予定である」(22.4%)、「積極的に推進している」(21.6%)、「課題が多く取り組むことが難しい」(10.1%)となった。
「積極的に推進している」と答えた経営者を対象に、実施している施策について複数回答で尋ねたところ、「意欲・能力のある女性を積極的に採用」が最も多く83.9%、次いで「意欲・能力のある女性を積極的に管理職登用」(58.4%)となった。「今後推進していく予定である」とした回答者に、取り組む予定の施策について尋ねた結果、「意欲・能力のある女性を積極的に管理職登用」(34.5%)、「意欲・能力のある女性を積極的に採用」(21.8%)だった。女性活躍を推進している企業に目的を複数回答で尋ねたところ、「多様な人材の活用」(59.9%)に続き、「人材不足の解消」(46.2%)、「自社の競争力強化」(28.0%)となり、人員不足の解消という専らの課題解決の側面もあるものの、ダイバーシィティ推進や自社の競争力強化など前向きな理由が上位に並んだ。
また、「課題が多く取り組むことができない」と答えた経営者に対して、女性の活躍推進を阻む障壁についてで尋ねたところ「管理職を希望する女性社員が少ない」(45.3%)、「入社を希望する女性社員が少ない」(25.0%)だった。企業側で女性の活躍を推進したくても、希望者がおらず推進を阻んでいる現状もあるようだ。
「特に取り組みを行っていない」理由としては「男女の別なく採用や管理職登用を行っている」が最も多く43.2%となった。


【調査概要】
調査対象 従業員数6人以上300人以下の企業の経営者(経営トップ)
調査方法 インターネット調査
調査期間 2014年11月13日~11月19日 (7日間)
有効回答 635

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[産業能率大学]
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