LCC利用者の意識と行動調査2014 

2014年07月30日
JTB総合研究所は、「国内線LCC利用者の意識と行動調査2014」を実施しました。当社は、生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を継続的に行っています。
LCC※2は、LCC元年と呼ばれた2012年以降、急速に浸透してきました。2014年ゴールデンウィーク(GW)の国内LCC3社(ピーチアビエーション、ジェットスター・ジャパン、バニラエア)の搭乗者数は約29万人で、航空機利用の旅行者全体の7.8%と前年のGWより2ポイント、約12万人増加しました。市場の広がりに伴い、路線の拡充やLCC専用ターミナルの建設など、利用者にとっての利便性も向上しつつあります。

一方、パイロット不足による減便や増便計画の見直しなど、先行きに不確定要素が全くないわけではありません。就航から約2年半が経過した現在、旅行者はLCCをどのようにとらえているのでしょうか。LCCについてのイメージや利用実態、今後の利用意向について2013年7月の第一回調査に続き第二回のアンケート調査を実施しました。

【調査結果サマリー】

○航空機利用者のうち、国内線LCC利用率は 15.8%(前年+4.3 ポイント)(※1)

○レジャー性の高い利用が増加。業務出張の割合は 12.7%(前年▲6.2 ポイント)

○LCCを利用する理由は「他の手段より安いから」(国内線 87.9%、国際線 82.3%)ただし約3割が「最近価格が高くなってきた」と感じる(国内線 35.3%、国際線 28.7%)

○国内線LCCを利用して不便だったこと:「搭乗口が遠かった」(47.5%)「予約の際、付加料金がわかりにくかった」(35.1%)


※1:2012年以降に飛行機で旅行をした人を対象とする
※2:Low Cost Carrier(低コスト航空会社)の略。本リリースでは国内線LCC=ピーチアビエーション、ジェットスター・ジャパン、バニラエア(旧エアアジア・ジャパン)の3社いずれかが運航するものとする)

【調査結果】

1.国内線LCC利用率はこの 1 年で 4.3 ポイント上昇し 15.8%へ。特に若い世代で伸び

2013 年と 2014 年の調査結果を比較してみると、2012 年以降に航空機を利用した旅行者における国内線LCCの利用率は全体で 11.5%から 15.8%へと 4.3 ポイント増加した。特に男性 18~29 歳の伸びが最も大きく、7.8 ポイント増加して29.7%となった。次いで女性 18~29 歳も 6.3 ポイント増加の 22.8%となり、国内線LCCは特に若い世代で利用が広がっていることがわかる。また、地域別では、関西での利用経験率が 18.8%から 29.6%と 10.8 ポイントの大きな伸びをみせた。航空会社別にみると、ピーチアビエーションは6.7%(+0.3ポイント)、ジェットスター・ジャパンは7.9%(+1.6ポイント)、利用率を延ばしている。エアアジア・ジャパンが運航していた中部=新千歳/福岡、成田=福岡間は現在運航されていないものの、昨年 7 月の調査時より国内LCC3社で6路線が新規に就航しており、特に西日本方面の地方路線の利便性が上がったといえよう。

2.国内線LCC利用者の 28.7%が、LCC就航がきっかけで国内「旅行」をした。23.7%が「旅行回数が全体的に増えた」

国内線LCC利用者に、国内線LCCの就航前後でどんな旅行の変化があったか聞いてみたところ、「同じ行き先でもLCCを選択するようになった」と回答した人が 32.5%と最も多い結果となった。「LCC就航がきっかけで国内旅行をした」が 28.7%、「旅行回数が全体的に増えた」が 23.7%と続いた。国内線LCCの就航は少なからず旅行機会の増加に一役かっているといえよう。「旅行回数が全体的に増えた」と回答した人に対して、旅行の回数がどの程度変化したかを聞いたところ、全体では、年間の平均旅行回数は 4.7 回で、2.3 回上昇する結果となった。男女別では、男性が4.9 回、女性が 3.9 回となり、男性の旅行回数が女性を 1 回上回った。中でも 40 代男性利用者の上昇幅が最も大きかった。40 代男性は観光の他、業務出張や親せき、知人訪問、単身赴任先と自宅との往復など、様々な目的で活用しているようだ。

3.「業務出張」の割合が 12.7%と前年から 6.2 ポイント減少。この 1 年はレジャー性の高い利用が増加
国内線LCCの利用目的は「観光」が 73.4%で最も高い
「親族訪問」が 2.0 ポイント、「友人・知人訪問」が 1.2 ポイント増加


国内線LCCを利用した旅行の目的は、「観光」が 73.4%と最も高い結果となったが、前年からは 1.3 ポイント下がった。しかし、「親族訪問」が 2.0 ポイント、「友人・知人訪問」が 1.2 ポイント前年から増加した。一方、「業務出張」の割合は12.7%と昨年の 18.9%から 6.2 ポイント減少し、観光に次いで 2 位だった昨年から4位に順位を下げた。国内線LCCはこの1年でビジネス以外のレジャー性の高い利用が高まったといえよう。性年代別では「観光」目的は男性 18~29 歳が 84.5%、男性 30 代は 87.3%と、全体より 10 ポイント以上、上回った。

国際線LCCについては、「観光」目的での利用は、全体で 81.6%、「業務出張」での利用は 16.3%で2位となった。年代別にみると、「観光」での利用が高いのは女性 60 歳以上(100%)、男性 18~29 歳(88.2%)、男性 30~39 歳(90.3%)だった。また 30 代女性では「両親や祖父母等親族のところへ遊びに行く」(30.8%)が全体の 15.7%と比較して 15.1 ポイント高かった。旅行の同行者をみると、国際線LCCを利用した 30 代女性は「家族旅行」の割合が 24.1%と 50 代女性に次いで高く、子供を連れて海外に住む家族や親せきを訪ねることも多いと考えられる。

旅行の同行者で注目すべきは、一人旅の割合の高さである。国内線LCCの利用については、「自分ひとり」が全体で31.8%と最も高い結果となり、「夫婦・恋人のみ」が27.4%と続いた。性年代別では、男性40代、50代の「自分ひとり」は共に半数以上の割合を占めたが、これは業務出張の利用の多さが要因と考えられる。女性については50代が「自分ひとり」と回答した割合が最も多かった。この層は親族・友人訪問が多い。国際線LCCは「夫婦・恋人のみ」が全体で 30.4%と最も高く、「自分ひとり」が 25.7%と続いた。性年代別では国内同様に業務出張目的の多い 40 代、50 代男性の一人旅が多かった。女性で一人旅で利用すると答えた年代は 50 代が最も多く 25.8%、続いて 60 歳以上の 19.9%と、若者より熟年、
シニアの利用が多かった。近年、海外旅行において熟年シニアの一人旅が増加しているが(※4)、同行者に気兼ねなく利用できるLCCは手頃な交通手段といえよう。
※4:JTBレポート2014「IV 海外旅行マーケットの動向と展望2013~2015年」より

4.LCCを利用する理由は「他の手段より安いから」(国内線:87.9%、国際線:82.3%、)が1位。ただし、LCCに対する評価では「最近価格が高くなってきた」と感じている人も 3 割前後となった(国内線:35.3%、国際線:28.7%)

LCCを選択する理由としてあげられたのは、「他の手段より安いから」が国内線、国際線共に圧倒的に高く、それぞれ87.9%、82.3%だった。国内線では「LCCに乗ってみたかったから」(13.9%)、「目的地への到着時間がちょうどよかったから」(10.3%)と 10%強の回答が続いたが、「他の手段より安いから」との差は大きく、LCCはやはり主として価格訴求力の高さから選択されていることがわかる。
 国内線LCCに対する評価としては、「前の座席との間隔が狭い」(73.6% *「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)、「飛行機の出発・到着が遅れる可能性が高い」(57.8%)、「従来からある航空会社の方が安心できる」(55.1%)、「減便や休便が多い」(51.5%)など、マイナスのイメージが完全に払しょくできているわけではないようだ。
また、LCCを選択する理由とは裏腹に、35.3%の利用者が「最近価格が高くなってきた」と感じていることも注目できる。

5.LCCを利用して不便だったことは「搭乗口が遠い」(47.5%)、「予約の際に付加料金がわかりにくい」(35.1%)

 直近の旅行でLCCを利用して不便だったことを聞いたところ、国内線、国際線共に「搭乗口が遠かった」「予約の際、付加料金がわかりくにかった」が1位、2位になった。「搭乗口が遠かった」は特に国内線で割合が高く、47.5%と、約半数近くの利用者が不便さを感じているようだ。また、国内線LCCと国際線LCCの違いをみると、国内線LCCでは「発着空港が自宅から遠かった」「早朝便の利用で空港までの地上交通が不便」「到着便が遅い時間で地上交通に間に合うか不安」など、空港アクセスの不便さが多かった。空港アクセスについては国際線LCCで利用した海外の空港でよかった点を自由回答式で回答してもらったところ、「市内から空港まで 24 時間公共交通機関が走っていて便利だった」「空港が市内から近かった」など、空港までの利便性の良さをあげる人も多く、日本のLCC就航の空港と市内のアクセスについては、まだ工夫の余地がありそうだ。
一方、国際線では「座席指定料が高かった」「機内販売の飲み物が高かった」など、付加料金の高さがあげられており、前章でも触れたとおり、安いはずのLCCでも意外にお金がかかった、という不満が出てきているようだ。

6.自宅から空港までの所要時間は関東より関西の方が短い傾向。関西でのLCC利用率の高さに影響か?

では、空港へ所要時間に地域別の違いはあるのだろうか。関東と関西で自宅から空港までにかかる時間を比較してみると、所要時間が2時間未満の割合が関東では国内線、国際線共に 60%台であるのに対し、関西では共に 80%を超えている。関東と関西の国内線LCC利用率には 10 ポイント以上の差があることを考えると、やはり空港までのアクセスを如何に改善していくかが、普及の課題となりそうだ。

7.LCC利用で浮いたお金は、国内線、国際線共に「旅行中の食事」や「宿泊」に利用。

安く旅行できることが魅力として選択されているLCCであるが、安く旅行できた分のお金はどのように使われているのだろうか。LCCを利用したことで節約できたお金の使い道として、国内線LCC利用者では「様々な食事、あるいは高価な食事をした」(30.8%)が1位、「旅行中には使わなかった」(26.4%)が 2 位となった。国際線でも1位は食事で 27.5%、2位、3位は「良いホテル・旅館に泊まった」(21.9%)、「多くの買い物、あるいは高い買い物をした」(21.7%)となった。やはり、「せっかく海外旅行に行くなら現地でお金を使おう」という意識は国内旅行よりも強いものだと考えられる。国内線LCC利用では、旅行中に浮いたお金は使わなかった人も多く、節約につながっていると言える。一方、国際線LCCの利用者では「節約できたという印象はなかった」が 18.6%と国内線LCC利用者と比較して高い傾向が見られた。

8. チケット予約は「LCC航空会社のホームページで予約」が圧倒的に多い(国内線 80.5%、国際線 72.9%)
旅行予約サイト利用も 10%を超える(国内線 13.0%、国際線 17.5%)
国際線LCCを利用した旅行では、航空券だけでなく現地のホテルや二次交通も一緒に予約したい


LCC航空券の予約方法としては、「LCC航空会社のホームページ」が国内線 80.5%、国際線 72.9%と圧倒的に高い結果となったが、「旅行予約サイト」の利用も 10%を超え、特に国際線では 17.5%が旅行予約サイトでの予約であった。また、今後の予約方法への意向では、国内旅行については、「航空券だけ予約できれば良い」が 59.0%と半数以上だった。海外旅行では、航空券と一緒に予約したいものとして「現地のホテルも一緒に予約できるとよい」が42.5%と、「航空券だけでよい」の 35.3%を超えた。「LCCを利用するパッケージツアーがあるとよい」(28.3%)、「現地の交通手段も一緒に予約できるとよい」(19.5%)も比較的高く、特に海外旅行では、まとめて予約したいという意向が強いものと考えられる。

9.LCCの利用は「3時間まで」(46.9%)、「5時間まで」(31.1%)、「7 時間より長くてもよい」(14.3%)「7時間より長くてもよい」は 40 代男性と 60 歳以上男性で高い

今後日本でも就航が予想される長距離国際線LCCだが、実際にLCCに長時間乗ることについて、どのように考えているのだろうか。全体としてみると、「3時間まで」が 46.9%と最も高く、次いで「5時間まで」の 31.1%となった。また「7時間より長くてもよい」という人も 14.3%であった。「7時間より長くてもよい」という回答は、女性より男性で高い傾向が見られ、中でも男性 60 歳以上が 22.1%、40 代が 20.9%となった。女性の中では 50 代が 14.0%と、他の年代より高かった。
とはいうものの、前述の現在の国際線LCCに対する評価で、「前の座席の間隔が狭い」が 54.8%、「シートの座り心地が良い」がわずか 11.6%しかいないことを考慮すれば、長距離の運行はシートの課題と価格の兼ね合いなど課題はありそうだ。

10.LCCの利用は、流行ものとして乗ってみたい「みんなに合わせる同調型」タイプが減り、無駄のないシンプルなものとして捉える「シンプルライフ」タイプが増加。単なる流行ではなく、着実に日常の足として定着してきていることがうかがえる

LCC利用者の特徴を明らかにするため、昨年の調査では日常生活や旅行に対する意識や行動についての回答をもとに因子分析とクラスター分析を行い、各因子への反応の強弱からLCC利用者を5つのタイプに分けた。昨年は、「みんなに合わせる同調型」タイプ(旅行意欲はそれほど高くないものの、SNS利用率も高く、人と繋がっていたい、たとえ「1 人」でも「みんな」と同じでいたいという意向があり、LCCも“押さえておくべき流行の一つ”と捉えている)が最多であった。しかし、LCCの就航から2年以上を経た今回の調査では、このタイプに属する人は8ポイント減少、全体の 33%となり、その他のタイプに分散した。最も増えたタイプは、LCCを無駄のない、シンプルなサービスとして捉えている「シンプルライフ」タイプで 14%から 18%へ 4 ポイント増加。このことからも、LCCは一時的な流行ものではなく、無駄のない日常の足として市場に浸透してきていることがうかがえる。

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