経済産業省では、中小企業の雇用状況に関する調査を実施。 平成 26 年の春闘結果等を踏まえた中小企業・小規模事業者の賃上げ状況を含む雇用状況等を把握し、公表するため、本年6月に中小企業・小規模事業者3万社に調査票を送り、回収・集計を行いました。7月23日までに提出のあった10,380社の状況について、集計結果の概要等を公表。

【調査結果】

常用労働者(いわゆる正社員)の賃金の引き上げ状況について

(1) 平成 26 年度、平成 25 年度の常用労働者の 1 人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給分を含む)の状況
常用労働者(いわゆる正社員)の 1 人当たり平均賃金の引き上げ(定期昇給分を含む)の状況について、「引き上げる/引き上げた」とする企業の割合は、平成 25 年度の 56.8%に対し、平成 26 年度は 64.5%に増加している。

(2) 平成 26 年度に賃金を引き上げる/引き上げた主な理由(複数回答)
平成 26 年度に常用労働者の 1 人当たり平均賃金について、「引き上げる/引き上げた」と回答した企業の主な理由は、「従業員の定着・確保」が 75.7%で最も多くなっており、中小企業の人手不足感が見てとれる。

(3) 平成 26 年度に賃金を引き上げない/引き上げていない主な理由(複数回答)
平成 26 年度に常用労働者の 1 人当たり平均賃金を「引き上げない/引き上げていない」と回答した企業の主な理由は、「業績の低迷」が 71.7%で最も多くなっており、業績の低迷が賃上げを妨げている状況が見てとれる。また、次いで「賃金より従業員の雇用維持を優先」「原油・原材料価格の高騰」が多くなっており、雇用維持への努力やコストアップの影響が見てとれる。

地域ごとの賃金の引き上げの状況

常用労働者の 1 人当たり平均賃金を「引き上げる/引き上げた」と回答した企業の地域ごとの実施割合については、平成 25 年度においては、都市部(関東・中部・近畿)の平均割合が 58.2%と他の地域よりも高かったが、平成 26 年度においては全地域においてこの値を上回り、地方へ「経済の好循環」が波及している様子が見てとれる。

賃金を引き上げた企業における引き上げ状況について

(1) 賃金を引き上げた企業におけるベースアップ又は賞与・一時金の増額の状況
平成 26 年度に賃上げを実施した企業のうち、ベースアップに相当する賃上げを「実施する/した」は36.2%、賞与・一時金の増額を「実施する/した」は 48.0%となっている。また、ベースアップに相当する賃上げ又は昨年を上回る賞与・一時金の額が支給された企業の割合は 63.3%となった。

(2) ベースアップ実施企業の割合
平成 26 年度に賃上げを実施した企業のうち、ベースアップに相当する賃上げを「実施する/した」は36.2%(全回答企業に占める割合は 23.4%)となった。また従業員規模別に見ると、従業員数が 20 人以下の企業においては全回答企業に占める割合は 12.3%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 30.2%となっており、従業員規模が大きくなるほど、ベースアップを実施した企業の割合が大きくなっている。

(3) ベースアップの引き上げ額(平成 26 年度)
平成 26 年度のべースアップの引き上げ額(予定を含む)については、「2,000~5,000 円未満」が 42.4%で最も多くなっており、「8,000 円以上」も 13.5%を占めている。従業員規模別に見ると、20 人以下の企業においては「5,000 円以上」引き上げた企業が 62.7%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 19.5%となっている。従業員規模が小さい企業ほど、ベースアップを実施した企業の割合は低いが、引き上げ額は大きくなる傾向がある。
また、平成 26 年度のべースアップの引き上げ率については、「1%以上~3%未満」が 54.4%で最も多くなっており、「5%以上」も 5.0%を占めている。従業員規模別に見ると、従業員数が 20 人以下の企業においては 3%以上引き上げた企業が 33.1%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては11.1%となっており、引き上げ額と同様の傾向となっている。

(4) 賞与・一時金の増額の実施の有無(平成 26 年度)
平成 26 年度に賃上げを実施した企業のうち、平成 26 年度に賞与・一時金の増額を「実施する/した」のは、48.0%(全回答企業に占める割合は 31.0%)となった。また従業員規模別に見ると、従業員数が20 人以下の企業においては全回答企業に占める割合は 17.4%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 39.2%となっており、従業員規模が大きくなるほど、賞与・一時金の増額を実施した企業の割合が大きくなっている。

(5) 賞与・一時金の引き上げ額、引き上げ率(平成 26 年度)
平成 26 年度の賞与・一時金の引き上げ額(予定を含む)については、「1~3 万円未満」が 35.7%で最も多く、次いで「6 万円以上」が 25.0%で多い。
賞与・一時金の引き上げ率については、「5%以上」が 37.0%で最も多くなっている。従業員規模別に見ると、従業員規模が大きい企業ほど、賞与・一時金の引き上げを実施した企業の割合は大きいが、引き上げ額や引き上げ率については大きな差はないことが分かる。

定期昇給を含む賃金制度の有無等

回答企業において、定期昇給を含む賃金制度を「持っている」のは 49.3%とほぼ半数となっている。
従業員規模別に見ると、20 人以下の企業において賃金制度を「持っている」のは 25.1%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 71.6%となっており、従業員規模が大きい企業ほど、賃金制度を備えていることが分かる。

〔定期昇給を含む賃金制度を持たない企業〕月給(月例給与)の引き上げの状況

(1) 月給(月例給与)の引き上げの実施の有無(平成 26 年度)
定期昇給を含む賃金制度を持たない企業のうち、平成 26 年度に月給(月例給与)の引き上げを「実施する/した」のは、41.9%となった。また従業員規模別に見ると、従業員数が 20 人以下の企業においては 27.5%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 59.7%となっており、従業員規模が大きくなるほど、月給(月例給与)を引き上げた企業の割合が大きくなっている。

(2) 月給の引き上げ額、引き上げ率(平成 26 年度)
平成 26 年度の月給の引き上げ額(予定を含む)については、「2,000~5,000 円未満」が 40.9%と最も多く、次いで「5,000~8,000 円未満」が 26.0%で多い。従業員規模別に見ると、20 人以下の企業においては「5,000 円以上」引き上げた企業は 63.2%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては29.4%となっている。従業員規模が小さい企業ほど、賃金制度がない企業における月給の引き上げ実施企業の割合は小さいが、引き上げ額は大きくなる傾向がある。
月給の引き上げ率については、「1%以上 3%未満」が 57.7%と過半数を占めて最も多い。従業員規模別に見ると、従業員数が 20 人以下の企業においては 3%以上引き上げた企業が 37.3%となっているが、従業員数が 100 人超の企業においては 11.2%となっており、引き上げ額と同様の傾向となっている。

(3) 前回、月給の引き上げをした時期
前回、月給の引き上げをした時期としては、「平成 25 年(1 年ぶり)」が 72.2%を占めて最も多く、次いで、「平成 24 年(2 年ぶり)」が 11.1%という順になっている。

雇用を巡る環境について

(1) 人員計画
「人員を増やした」と回答した割合は、平成 25 年度の 38.5%から平成 26 年度は 43.3%と増加している。その方法としては、平成 25 年度は「常用労働者を中途採用で増やした」が 63.5%と最も多かったのに対し、平成 26 年度は「常用労働者を新卒採用で増やした」が 57.4%と最も多くなっている。

(2) 常用労働者、及び非正規社員のキャリアアップ、意欲や能力を引き出す取組み等
常用労働者、及び非正規社員のキャリアアップ、意欲や能力を引き出す主な取組み等について、平成 25 年度以降に導入・拡充したもの(予定を含む)としては、常用労働者については「意欲や能力を引き出す取組み(資格取得、技能検定の受験料補助など)」(44.4%)、「処遇の改善(休暇、福利厚生の充実など)」(36.6%)が多い。非正規社員については「報酬面での改善」(34.9%)、「処遇の改善(休暇、福利厚生の充実など)」(30.0%)が多くなっている。

(3) 人材採用に関する問題点・課題(複数回答)
人材採用に関する問題点・課題としては、「募集をかけても採用したい人材がいない」が 48.0%と最も多い。その理由は、「特定の分野(営業・技術)で即戦力になる中堅がいない」が 67.6%で最も多い。

所得拡大促進税制の利用について

(1) 利用状況
所得拡大促進税制の利用については、「利用した」が 6.3%で、「知っていたが利用していない」が39.1%となった。従業員規模別にみると、所得拡大促進税制の認知度は、従業員数が 20 人以下の企業においては 27.7%にとどまる一方で、従業員数が 100 人超の企業においては 54.9%と半数を超えている。また利用状況は、従業員数が 100 人超の企業においては 7.4%の企業が利用している。平成 26 年 4 月に要件緩和がなされたことから、今後更に利用が進むことが考えられる。

(2) 所得拡大促進税制によって手元に残った資金の利用方法(複数回答)
所得拡大促進税制の利用によって手元に残った資金の利用方法については、「従業員への還元」が51.4%と最も多い。次いで「設備投資のための原資」が 48.3%となっており、さらなる所得の拡大や設備投資策等、経済の好循環のために利用されている。

復興特別法人税の前倒し廃止や所得拡大促進税制の創設・拡充が賃金引き上げ判断に及ぼした影響

復興特別法人税の前倒し廃止や所得拡大促進税制の創設・拡充が賃金引き上げの判断に及ぼした影響については、「判断を後押しした」とする企業の割合が 7.7%であった。定期昇給を含む賃金制度を持っている企業のうち、ベースアップを実施した企業の 10.2%が「判断を後押しした」と回答しており、ベースアップを実施しなかった企業の 4.4%を大きく上回っている。

※本設問は、平成 25 年度または平成 26 年度のいずれかで賃上げを実施した企業で、平成 25 年度または平成 26 年度のいずれかで法人税を納付した企業を対象にしている。

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[経済産業省]
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